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平和と繁栄をどう創る朝日新聞は今日から1年にわたり、シリーズ「新戦略を求めて」を掲載する。人類史上でも稀(まれ)な変化の時代を迎えた世界にあって、日本はどんな構想のもと平和と繁栄を目指すべきか。それを探っていきたい。 ◇ ◇ あれから16年半が過ぎた。東西ドイツを隔てた「ベルリンの壁」が瞬く間に壊されるのを、世界の人がテレビの前で見守った。「歴史は読むものだと思っていたら、見るものだった」と、後にドイツのコール首相を迎えて宮沢喜一首相が語る。 重苦しい米ソ冷戦が幕を下ろし、世界が一つになった。自由経済は活動範囲を大きく広げ、人類は世界戦争の不安から解き放たれた。 リアルタイムで歴史を「見る」「知る」ことを可能にしたのは、情報通信革命だった。18世紀に始まった産業革命が世界を変えて以来の大変化で、地球は一気に小さくなった。 だが、湾岸戦争、旧ユーゴの内戦、そして01年の「9・11」……。冷戦後の世界は不安と混乱も生み出した。米ソ対立の重しがとれ、地域戦争、そしてテロと核拡散の時代が幕を開けた。 唯一の超大国となった米国が、いささか独善的に振る舞う時代の到来でもあった。その超大国にして、イラク戦争の失敗に泣き、北朝鮮やイランの核開発に手を焼く。 地球上の人口急増、環境破壊、温暖化……。エネルギーや食糧も重い課題になりつつある。21世紀には未知の希望と不安が入り交じる。 さて、私たちの国はどうだろう。 明治維新後、富国強兵で近代国家に急成長しながら、アジア支配の野望を抱いて大失敗した教訓を生かし、戦後は世界がうらやむ成功国家となった。憲法9条と日米安保条約の組み合わせの下で、戦争を経験することなく経済活動に力を集中できたからである。 それは冷戦の中、自由陣営のアジアの拠点として享受した幸運でもあった。だから冷戦の後、多くの難題に直面したのは偶然ではあるまい。 バブル経済の崩壊による「失われた10年」。グローバリゼーションがもたらした大競争にもさらされて、日本の経済構造は激変した。 湾岸戦争をきっかけに迫られた「平和主義」の変質も著しい。9・11後の事態は、ついに自衛隊をイラク派遣にまで至らせた。大きく割れた国論にはまだ結論が出ていない。 ソ連という標的が消え、中国の「愛国」エネルギーは日本の過去に向かいがちだ。朝鮮半島では南北融和が新たな民族感情を盛り上げる。広がる国際化の波がナショナリズムを刺激するのは日本も例外ではない。きしむ日中韓の底流にも、冷戦後の地殻変動が見てとれる。 日本が今後も米国との同盟を軸にすべきなのは疑いない。自由経済の中心であり、いざとなれば身を賭して民主主義を守る米国である。東アジアの平和維持も、エネルギー源の確保も、その協力なしにはありえない。 だが、米国は米国だ。日本の立場から言うべきことを言えなければ、本当の国益は守れない。そのためにもアジアに確かな基盤がほしい。 中国、インドをはじめ急激な経済発展を見せるアジアには、躍動的な可能性が横たわる。経済の相互依存に加え、エネルギーや環境問題の共同対処が平和に役立つことは欧州の例からも明らかだ。ゆるやかな共同体へ、アジアにも大きな絵を描きたい。 自衛隊の海外派遣には、場当たりでない指針がいる。平和主義という戦後日本の看板を捨てず、平和づくりに自衛隊をどう生かすか。国連中心主義のあり方も問われる。 ◇ ◇ 歴史はただ「見る」ものではない。大きな構想力によって平和や繁栄につながる歴史を「創(つく)る」こともできる。そんな総合戦略が日本に乏しいことが、外国の不安にも結びついているのではないか。私たちが新戦略を探る意図はそこにある。 このシリーズでは朝日新聞の力を結集し、内外の識者に知恵を借りつつ、読者の皆さんとともに考えていきたい。従来の発想をどこまで超えられるか、私たちに向けられた問いでもある。シリーズの最後には、私たちの提言もお届けしたい。
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