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米に取って代わる戦略認めぬ
─―アジア太平洋地域にはテロの脅威に加えて北朝鮮、台湾という伝統的な潜在的紛争地域があります。 「アジアは五つの問題を抱えている。第1が排外的なナショナリズムだ。日本、中国、韓国のいずれでも見られ、しかも悪化している。2番目には台湾海峡を巡る緊張だ。3番目は朝鮮半島、4番目は領土紛争、最後がフィリピンやタイでの反乱だ。最後以外のすべてが日本に直接関係している」 ─―00年のアーミテージ・リポートでは、この地域で紛争が起こる可能性は低くないと指摘しました。今もそうでしょうか。 「変わらない。00年から06年までに起きたことは、今や世界第2と第3の経済大国、日本と中国が隣同士で並ぶようになったということだ。両国がほぼ互角というのは歴史上初めてのことだ。既存の大国が、新たに台頭してくる大国に対応しようとすると問題が起きるのが常だ。この地域には世界でも有数の規模の軍事力が存在しており、エネルギーや資源の消費の面でも抜きんでている」 ─―中国は何を目指しているのでしょうか。 「中国は今、インド、ロシア、ベトナムなど国境を接する国々といわば『安定のための合意』を作ろうとしている。国内の安定や台湾問題に専念するためだ」 「それを超えて、攻撃的に覇権を求めるかどうかは分からない。ただし、中国が台湾危機のために必要だとして増強している軍事力は、日本に対しても使えるものだ。中国の将来に向けた方向性がはっきりしない限り、そうした可能性に備える必要もある」 ─―9・11以降の米国の戦略は。 「米国は9・11以降、伝統的に輸出してきたものを変えてきた。それまでは希望と楽観主義を世界に輸出してきたが、今は怒りと恐怖を送り出している」
「米国は、『テロとの戦い』、正しくは『過激主義との戦い』にあまりにも注意を奪われた結果、より大きな『中核的な利益』を無視してしまっている。その一例が、世界全体の利益がアジアにシフトしているという潮流だ」 ─―米国の地域戦略の基本は、覇権国や覇権主義的な同盟の出現を許さないということでは。 「米国に取って代わろうとするのであれば、だ。米国とともに世界の舞台に立ち、支援してくれるのであれば歓迎する。しかし、取って代わろうとするのであれば、当然反対する」 ─―その意味で中国とは、衝突コースにあるのでは。 「必ずしもそうではない。問題は中国が米国に取って代わろうとしているかどうかだ。複数政党制が達成できれば、覇権を求める傾向は弱まるだろう」 ─―日米同盟はどう進化すべきだと考えますか。 「この地域で我々は、20年を超える平和と安定を維持し、経済発展も実現した。両国関係は強固なものだと思う。日本が最終的に憲法9条の問題を解決すれば、両国関係はより一層、対等なものになる。この地域は、日本が安全保障を含むあらゆる問題に、全面的にかかわることで利益を得ると思う。私はインドネシアのユドヨノ大統領が『歴史問題を日本に対抗する形で使うつもりはない』と言ったのを聞いて、大変うれしく思った。驚くかもしれないが、地域の多くの国々は日本を、中国より不安を感じないより良いお手本とみている」 ─―日本が地域での役割を拡大することについてはどう思いますか。 「好ましいことだと思う。インド洋津波に対する救援で、日米が協力できたことと、自衛隊が歓迎されたことにはとても元気づけられた。イラクやインド洋での活動もある。日本は国際社会の責任ある一員として立派にやっている」 ─―歴史問題は解決済みということですか。 「米国に関していえば解決した。ただいくつかの国は、国内問題から国民の目をそらし、ナショナリズムをもり立てるために利用している。首相の靖国神社参拝は、中国が不満を言い続ける限り継続すべきだ。ただ歴史問題で日本はもう何もする必要はないとは言っていない。日本の歴史教科書の中には、不正確で不快感を覚えるものもある。これを是正すれば、靖国問題よりも何よりも、日本が歴史を正しく理解していることを示すことになる」 (聞き手=アメリカ総局長・加藤洋一、写真=小村田義之) [戻る]
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