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アジアに新たな枠組み創造を
─―イラク戦争開始から3年。この戦争をどう見ますか。米欧の亀裂は修復されつつあるのでしょうか。 「イラクで米国は古典的な『植民地の罠(わな)』にはまった。あらゆる情報や分析に背を向け、戦争一筋に凝り固まってゆく過ちを犯した。それ以上に大きなのは政治的過ちだろう。第2次大戦後のドイツや日本とは事情がまったく異なるのに、議会主義が存在したことのない国に民主主義を外から押し付けようというのは常軌を逸した試みだった」 「フランスはその後、米国と協力する機会を探ってきたし、ドイツのメルケル首相もシュレーダー前首相と同じ路線を取ってはいない。(イラク戦争に踏み切った)ブレア英首相の力も衰えてきた。だれもイラクをめぐる米国との亀裂の問題をこれ以上深刻化させることを望んでいない。2期目のブッシュ米政権は進歩したし、米欧間の不和は減っている。ただ、欧州は(イラクの泥沼化を救うために)米国に差し出しうるいかなる解決策も持ってはいない」 ─―欧州は欧州連合(EU)のもとで、いずれは統合された独自の地域安全保障の枠組みをつくることを目指しているのですか。主権国家の間の外交・安全保障政策の調整は至難のわざです。 「欧州統合の理念と、国民国家としての同一性は両立することが可能だ。ただ、EUは人々の生活の細部にわたる規制などの面ではかなりの役割を演じてきた半面、外交、安全保障の領域での統制力はまだ弱い。EUが統一した外交を手にするためには、単にそれを憲法に書けば済むという話ではない。共通通貨よりやっかいな問題だ」 「自分たちの生活様式を続けたいのなら、欧州は『強国』でなければならないということだ。そうでなければ、他の諸強国に依存的になってしまうだろう」
─―超大国米国に対抗しうる「強い欧州」という意味でしょうか。 「単に米国だけでなく、中国、アラブ諸国、ロシアなどに対してもそうだが、最初に解決すべき問題は米国だ。フランスを含めたいくつかの国は、ある程度の自立性を確保するために、ときには米国の覇権にあらがう必要がある、と考えている。ペンタゴン(米国防総省)から指令を受けるだけの同盟国ではなく、パートナーとして均衡の取れた付き合いが重要だ」 ─―ムハンマド風刺漫画問題はイスラム教徒の強い反発を招きました。「多様な欧州」には対立の火種も多いですね。 「残念なことだが、イスラムと西洋に衝突の危機があるのは事実だ。現在、欧州には多数のイスラム教徒の移民がおり、住んでいる国の法を守って同化している人もいれば、そうでない人もいる。それこそが問題だ。欧州的な諸価値を尊重しない人には原則を厳しくせざるを得ない。それは知的になされるべきで、人々をむやみに(排除へと)あおりたてる必要はない」 ─―中国やインドの台頭は、世界にどれほどの地政学的なインパクトを与えるでしょうか。 「アジアには確固とした地域協調のメカニズムがなく、ある国の台頭によって権力均衡が崩れる不安は少なからずある。将来、中国が米国と張り合うほどの大国になるかどうかわからないが、古典的なタイプの軍事国粋主義の大国にはなるまい。内部で政策修正のメカニズムは働いており、宿命的に避けがたい危機に向かっているとは思わない」 「それよりも世界レベルでの危機は、エネルギーの巨大消費国間の競争が容赦ないものとなり、イランやロシアといったエネルギー資源国の権力が増大し、地政学の主要要素になるであろうということだ」 ─―ポスト「冷戦」の戦略地図が塗り替えられつつあるなか、日米同盟は「合理性」を持ちえますか。 「エネルギー問題を見ても、世界はもはや固定的な同盟関係をつくり上げることを許さなくなった。中国の台頭と均衡をとるため、米国はインドと部分的な同盟関係に入ろうとしている。アジアの指導者たちは、単に米国の動揺を傍観するのではなく、新たな枠組みを創造すべきだ」 「それが日米安保に取って代わるのではなく、アジアに日本を排除する同盟など存在しない、という日本外交の利点を組み合わせる。試してみる価値はあるのではないか」 (聞き手=ヨーロッパ総局長・木村伊量、写真=野村洋司) [戻る]
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