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文民を守り 平和構築に貢献を

緒方貞子・国際協力機構理事長
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国連公使、上智大外国語学部長などを経て91年から10年間、国連難民高等弁務官。03年から国際協力機構(JICA)理事長。国連のハイレベル委員会委員、国連の「人間の安全保障諮問委員会」の委員長も務めている。78歳。

 ――米国と国連の対立が目立ちます。

 「米国は第2次世界大戦後、自分の主導で国連をつくり、世界の安定をはかろうとした。戦勝国の力のバランスも考え、安全保障理事会(安保理)で協調する仕組みをつくった。冷戦中にそれはあまり機能せず、東西陣営のバランスによって安定をはかってきた」

 「冷戦が終わり、世界の問題は多様化、多元化している。絶対的な軍事力を保持しているとはいえ、米国だけで対応できる状況にはなく、国連への期待が強まった。だが、米国には一貫して、国連に統治、命令される意図はない。自分の権力の維持、世界秩序の安定のために国連を使おうという考えはあるが、使える場合と使えない場合がある。その結果、非常に恣意的(しいてき)な政策が出てきていると思う」

 ――国連の機能を強化するにはどんな方法があるでしょうか。

 「安保理の役割をどう考えるかが鍵になる。大国、とくに安保理の常任理事国である5カ国の利害が一致しない時は、国連の外での決着しかない場合もある。だが、大国が最低限でも合意できることは何か、大国が関心を寄せないことで行動が必要な場合は何かと、知恵を出していくのが安保理なんです」

 「国連を軸にした集団安全保障も時代に即した応用が必要だと思う。常設の国連軍ができるめどはないが、欧州連合(EU)やアフリカ連合(AU)の地域軍など新たな形が出てきている。時代の実態に合わせて役に立つことを実行するというのが大事です」

 ――平和や人道主義のために武力介入が必要な場合もありますか。

 「国連難民高等弁務官をしていた時のことでした。ボスニア・ヘルツェゴビナの戦争は、終盤で敵対する民族の虐殺を防ぐために北大西洋条約機構(NATO)軍が空爆し、セルビア軍を抑えて戦争終結に導いた。あれを見ていて、軍事力の行使も必要な場合もあると思いました。平和的な交渉ですべてが解決するほど、世界は甘くはないのです」

 ――武力介入は安保理決議が前提でしょうか。

 「決議によって武力行使を国連が正当化するのは極めて難しい作業だが、あった方がいい。一方で現実には、大国の利害は対立しがちです。ボスニア戦争では、ボスニア国内の国民からも武力介入を期待する声があったが、米国が慎重な態度をなかなか崩さなかった。安保理は大事だが、安保理至上主義では解決できないケースもありうる。やはり国際政治、安全保障というのは生ものですからね。ただ、イラク戦争での米国のような予防戦争は容認しにくい」

 ――安全保障面で日本はどんな国際貢献をしていけばいいでしょうか。

 「ひとつは『人間の安全保障』。端的に言えば、暴力や貧困、人権侵害などで苦しむ文民を守ることだ。この考えは日本が国際社会に広める役割を担ってきた」

 「紛争後の『平和構築』でも、日本がやれることは多い。自衛隊が最適なら自衛隊でいいし、治安維持のための警察など非軍事的な分野で貢献できることはたくさんある。憲法の解釈はしゃくし定規ではなく、役立つ枠組みを決める方向で扱ってはどうでしょうか」

 (聞き手=論説委員・吉田文彦、写真=浅野哲司) [戻る]

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