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ここから本文エリア 現在位置:asahi.com > 提言 日本の新戦略 ![]() 〈地球と人間〉
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・地球の平均気温上昇を2度以下に抑える ・省資源社会のモデルを日本で実践し、世界に広める ・環境ビジネスの魅力を高め、米国や中国も温暖化防止に引き込む |
葵祭(あおいまつり)が近い5月初めの京都。におい立つような新緑に包まれた都大路を各国首脳の車が走る。どれもガソリンなしのエコカー。京都議定書発効10年を記念する地球環境サミットだ――
こんな2015年を思い描きながら、私たちは温暖化防止を戦略の中心におくことを提言したい。
日本は戦争の深い反省、広島、長崎の被爆体験から、平和を希求する戦後の歩みを踏み出した。「ヒロシマ」は戦後日本の原点でもある。同様に、21世紀日本の原点をこの議定書に置こう。「キョート」を、100年をかけた地球保全の出発点とすべきだ。
冷戦後、地球環境は国際政治の主要な議題になってきた。今日では「気候の安全保障」という言葉も聞かれる。なぜ、安全保障なのか。
世界の科学者でつくる「気候変動に関する政府間パネル」の部会報告によると、石油などの化石エネルギーに依存する高成長社会が続けば、今世紀末の地球は20世紀末より4度ほど暖かくなる。
4度高くなると、どうなるか。
地球の広い地域で深刻な水不足が起こり、穀物生産は減少する。生物種の4割以上が絶滅する。生態系が壊れ、感染症の分布地図が変わるなど、想像を超えた異変のリスクも高まる。
お金に換算しても損害は甚大だ。英政府の「スターン報告」は、5〜6度の気温上昇で世界の国内総生産(GDP)は平均5〜10%の損失を被ると見積もる。さまざまな格差や対立が先鋭化し、地球全体が大混乱に陥りかねない。
すさまじい脅威がそこまで迫っている。それからどう人々の安全を守るか。子や孫を守るか。戦争や核の脅威と同様、まさに安全保障の主要課題である。
08年から実施段階に入る京都議定書は、二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの排出削減を先進国に義務づけた。ところが、世界のCO2排出量(03年)の23%を占める最大排出国、米国が議定書を離脱している。16%で2位の中国も、4%のインドも、途上国ということで義務を課されていない。
この京都議定書の第1期が12年に終わった後すぐ、後継の枠組みにつなげなければならない。いわゆる「ポスト京都」だ。1期より実効のある枠組みをめざして日本は主導的な役割を果たすべきだ。
それにはまず、自らが温室効果ガスの「90年比6%減」という義務を果たす。次に米国への働きかけだ。米国では州レベル、議会などに温暖化対策への機運が高まっている。この内圧を背景に、日本からも議定書への復帰を迫る。そのうえで中国やインドなどにも排出抑制の義務を担うよう促すべきだ。
いま世界では、CO2を出さないという「脱炭素」が一つの経済価値を持ち始めている。各国の抑制策が強まり、排出量取引が広まれば、省エネなど「出さない」技術を備えることが経済競争力を支える重要な柱になってくるだろう。
次世代の経済大国を目指す中国、インドにとっても、脱炭素をめぐる競争力は欠かせないはずだ。排出量の抑制義務を課されるのは重荷かもしれない。だが、長期的にはそれが自らの利益にもつながる。日本外交の説得力が問われる。
13年以降も京都議定書の精神を育て、より精緻(せいち)な枠組みをつくるべきだ。そのための会合を京都で開くなど、環境外交の発信拠点として「キョート」を活用したい。まずは、08年のG8洞爺湖(とうやこ)サミットで先進国の結束を固めることだ。
目指すべき目標として、気温上昇を20世紀末に比べて「2度以内に抑える」ことを掲げよう。
欧州連合(EU)は、上昇幅を工業化前に比べて2度(90年に比べて約1.4度)以内にする独自の目標を示している。われわれがいう「2度以内」は非現実的な数字ではない。
そのためには「脱炭素」にそって社会を組み替えていかねばならない。先進国と途上国とで取り組み方に違いはあろうが、基本は資源多消費型から節約型への移行である。日本が得意とする省エネ、自然エネルギー技術をもとにその設計図を描き、実行してみせたい。
省エネはコストダウンにもなる。太陽光や風力などによる発電は、広大な国向きだ。中国やインドなどの関心を呼ぶに違いない。日本は技術を売るだけでなく、政府の途上国援助(ODA)も活用しながら普及を後押しすべきだ。
市場の力で脱炭素を進めることも大事だ。この面ではEUが先行する。排出量取引制度で発電所や製鉄所などに排出枠を割り振り、その枠を売買させている。米国の州にも同様の動きがある。
脱炭素がカネになる社会をつくり、そのビジネスを促す。この世界的な潮流に沿って日本も省資源社会の構築や排出量取引制度を進め、中国、インドなどの途上国も加えていく。米国も、そこに広大なビジネスチャンスを見れば、むしろ進んで議定書に参加してくるだろう。
世紀をまたぐ気候の安全保障では、価値観を地球大で転換させる外交が必要だ。日本はその先端を走っていきたい。
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