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世界のエネルギー需給、原発の盛衰が分かれ目

 原油高騰、温暖化時代を迎え、米国や英国が原発建設の再開に身を乗り出してきた。エネルギー需要が急増するアジアでは建設計画が目白押しだ。しかし、原子力が21世紀のエネルギー供給の柱となるには越えるべきハードルがいくつもある。日本自身の国際的な原子力戦略も大きな岐路に差しかかっている。(編集委員・竹内敬二、論説委員・吉田文彦)

日本の課題
・老朽原発が次々に閉鎖される。建て替えには、安全性を高め、廃棄物問題を解決することが先決だ。
・アジアで増える原発の安全確保を、日本のエネルギー安全保障の重要なテーマとする。
・核拡散を防ぐ新たな核燃料の管理構想を日本から発信する。

 石油の多くは、政治的に不安定な地域に偏在している。日本など多くを消費する国が原子力利用を進めれば、エネルギーの安定供給に役立つ。原子力関係者にはそんな期待がある。

 フランス原子力庁のプラデル原子力開発局長は、4月に横浜で開かれた日本原子力産業協会の大会で講演に立ち、一つの想定を示した。「世界のエネルギー全体の6%を担う原子力が、21世紀半ばに主要な柱として20%を占めるとすれば、1500〜2000基の原発が必要になる」

 だが、こうした想定は現実と大きくかけ離れている。

近づく寿命──建て替えに難問山積

 1979年の米スリーマイル島原発事故と86年の旧ソ連チェルノブイリ原発事故の後、日仏を除き先進国での原発建設はほとんど止まっている。

 昨年の運転開始は日本の2基を含めて6基だけ。総数は90年以降ほぼ横ばいで、昨年末で439基だ。

グラフ

 これからは、原発が閉鎖される時代がくる。それに見合う分を建て替えないと、世界の原発は減っていく。

 英国ではこれまで40基以上を建設したが、すでに閉鎖が進み、2020年代半ばには1基だけになる見通しだ。約100基の原発を持つ米国でも20年代から大量閉鎖時代に入る。

 一斉に寿命を迎える原発の建て替えが進まず、代替エネルギーの開発が進まなければ、世界のエネルギー需給にも大きな影響を与えることになる。

 ブレア政権、ブッシュ政権ともに、ここにきて原発復興を掲げ、世界の原子力業界の期待も高まる。しかし、どこまで新しい原発の建設につながるかは、はっきりしない。

 原子力が低迷した背景に、三つの理由がある。

 まずは安全性の問題だ。チェルノブイリ事故は、大事故が起きれば取り返しがつかないことを教えた。

 第二は、放射性廃棄物の問題だ。とくに高レベル廃棄物が難題で、処分方法と最終処分場が決まっている国はほとんどない。これが解決しない限り、「廃棄物を増やすな」「脱原発を」という反対運動はなくならない。

 第三は、世界で進む「電力自由化」での生き残りだ。原発は計画から運転開始まで15〜20年もかかる。いつ反対運動が起きるかも分からない。こんな原発を自由市場の中で、あえて造ろうという企業は現れにくい。

 ドイツ・ベルリン自由大学のイェニッケ教授(環境政策学)は「民主主義社会で、完全に自由化された電力市場を持つところでは、原発の新規建設という選択肢はない」とみる。

 こうした課題を解決できなければ、原発の建て替えは難しい。原発が今後、エネルギー供給源の柱にとどまるかどうか。今はその岐路にある。

安全性──アジアとの協力必須

 世界的な逆風の中でも、日本は原発増設を続けてきた。チェルノブイリ事故当時32基だったが今は55基もある。

 これらの原発がふつうの稼働率で動けば、総発電量の三十数%の電気をつくることができる。では今後、原子力をどう位置づけるべきなのか。経済産業省が5月末に発表した「新・国家エネルギー戦略」では、2030年以降の目標を「電力の30〜40%程度以上」とした。

 エネルギーの安定供給を考えると、原発抜きの政策は現実的ではない。そうであるにしても、この目標を満たしていくことは容易ではない。

 日本は、30〜40年といわれてきた運転寿命を60年にしようとしている。だが、老朽化による事故、トラブルが相次いでいる。最近では耐震性への疑問も持ち上がり、浜岡原発では実際に補強を始めた。高レベル廃棄物の処分では、候補地さえなかなか決まらない。

 建て替えも難題が待ちかまえている。電力会社が新しい建設地をさがしてきたが、地元の合意が得られないままの状態が長く続いている。

 そもそも、「30〜40%程度以上」という目標が妥当なのかどうか疑問が残る。日本の人口はすでに減り始めた。「新・国家エネルギー戦略」でも、エネルギー消費が2021年以降は減っていくと予測している。省エネが進むことを考え合わせると、この目標以下で需要を満たしていく道もあるだろう。

 原発の本当の適正規模はどこにあるのか。それを見定めたうえで、適切な安全管理を集中する戦略が求められる。

 日本のもう一つの課題は、外国との関係だ。これまでの原発行政では「日本の原発が増えればいい」「日本の核燃料サイクルができればいい」という内向きの姿勢が目立った。

 チェルノブイリ事故がそうであったように、大事故が起きれば、放射線被害が広がるだけでなく、安全性の不安は国境をたちまち飛び越える。日本を含め多くの国で原発が止まる事態をもたらすかも知れない。

 そうなれば、石油ショックと同じように、エネルギー不足を招きかねない。

 世界の原発の安全性を日本のエネルギー安全保障の重要な柱に位置づけ、国際協力を通じて人材育成や技術開発を進めていくべきだ。

グラフ

※クリックすると、拡大します

 エネルギー需要が急速に伸びるアジアでは原子力利用が広まると予想されている。アジアで原子力が増えれば、石油需給が緩和されて日本にとってプラスの面もある。しかし、安全性の確保がその前提だ。

 日本は他の国、とりわけアジアの原子力政策に傍観者ではいられない。

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