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人材の確保、外国から 受け入れ政策、長期的視野で少子化の進行で、日本の労働力人口は減っていく。日本総合研究所の試算によると、経済成長率を1%台半ばと想定した場合、15年に見込まれる日本での人手不足は520万人にのぼる。不足分は女性、高齢者、若者の就労促進などで対応するのが最良だが、外国人の労働力にも頼らざるをえない。グローバル化の中で、優秀な人材、留学生に来てもらうことは日本経済にとってプラスにもなる。長期的な視点から、外国人受け入れ戦略を練り直す時がきている。(編集委員・竹内幸史)
日本は、人口の割には外国人の受け入れが少ない国だ。「単純労働者<注1>は受け入れない」というのが政府の基本方針で、図のように限られた形でしか、入国・定住を認めてこなかった。その一方で、研修・技能実習制度や日系人受け入れによって、部分的ながら単純労働にも門戸を開けてきた。 研修・技能実習は「途上国への技術移転」という趣旨でつくられ、日本企業で技術を学ぶ3年間はその企業で働きながら稼ぐことが認められている。出稼ぎを送りたい途上国からの「送出圧力」にも応えた形だ。狭き門だが、日本で働く機会を得ようと次々に外国人がやってくる。人手不足の日本企業にとっても、貴重な働き手になることが少なくない。
群馬県太田市の自動車部品メーカー、京和装備ではインドネシア人55人が働く。工場にはインドネシア語で段取りが書かれている。社員が現地まで面接に行き、選んできた。「地方の工場では日本の高卒者の半分が3年と根付かない。技術移転が主な目的とはいえ、外国人はまじめで貴重な人材です」と吉野明俊専務は語る。 首都圏の鋳物業界でつくる東京合金鋳造工業協同組合も加盟11社で計68人の中国人を受け入れている。「求人しても、日本人は未経験の定年者しか集まらない」 だが、この制度は弱点を抱える。対象職種が限定されるうえ、受け入れに複雑な手続き、手間がかかり、小さな企業は対応しにくい。悪質なあっせん業者もまかり通り、研修は名ばかりで人手だけがほしい企業は脱法行為に走りやすい。 「研修期間」中は残業が禁止されているのに低賃金でこき使われ、未払いなどを理由に途中で失踪(しっそう)する例が多い。最大の受け入れ窓口になっている国際研修協力機構には04年度、約1200件の失踪報告があった。 ■単純労働者──産業基盤保つ力に 日本国内で外国人労働力の需要があるのに、受け入れ制度が未整備なままでいいのか。法務省や自民党、経済界、自治体などで改革論議が動き出している。 日本には現在、約200万人の外国人が登録されている。このうち、論議の対象になっているのは特別永住者<注2>らを除く約87万人だ。医療、研究などの専門職、研修・技能実習、日系人の在留資格を持つ人々、一定時間のアルバイトが認められた留学生、不法滞在者を含めた人数だ。 改革案の多くが外国人受け入れ拡大を求めている。法務省は河野太郎副大臣が主査を務める中間報告で「総人口の3%(現在は1.2%。特別永住者を除く)を上限に拡大」する案を示した。製造業などの需要に応じるため、日本語力のある労働者を企業が雇用契約を結んで受け入れる新制度の導入も促している。「研修・技能実習は単純労働者を入れる隠れみのになっている。むしろ、量的な枠などを設けて受け入れるべきだ」(河野副大臣)という。
自民党の外国人労働者等特別委員会の中間報告は、3年間の研修・技能実習の終了後もさらに2年間、実習の形で滞在できるよう提案している。違法な残業などの不正行為については、受け入れ企業への処分を強めることも求めている。 少子化の中、特に人手不足が予想されるのは工場や建設、運輸、農林業など力仕事、時間外労働の多い分野だ。人手不足で産業基盤がほころぶのを防ぐ戦略は、日本の未来にとって不可欠である。日本の発展モデルを描く中で、必要に応じて単純労働職も含めて一定の条件のもとで、受け入れを増やしていくべきである。 ただ、受け入れ枠を広げるにしても、誰でも歓迎というわけにはいかない。二国間協定を結んで、送り出し国の政府に身元保証や就労実績の確認などで協力を求めるのも一案だろう。 ■留学生──就職・登用の促進を 21世紀の日本は産業の高度化が大きな課題だ。にもかかわらず、高度な知識や技術を持つ外国からの人材流入は伸び悩んでいる。韓国やシンガポールも少子化時代に入り、国際的な人材獲得競争が起きている。この面でも外国人受け入れ政策を練り直さないと、優秀な人材は集まらない。 力を発揮してくれる人材は身近にいる。日本への留学生で、企業は獲得に動き出している。大分県別府市の立命館アジア太平洋大学では、企業の人事担当者による採用説明会が頻繁に開かれている。大学も面接に役立つ講座を設けて後押しする。留学生は学生の4割の約1900人で、日本語と英語が必修だ。 今春卒業の留学生のうち、143人が日本企業に就職した。採用したのは国際展開をしている大企業が多い。富士通の場合、03年度から同大を含めて年間20〜30人の新卒の留学生を定期採用している。すぐに海外戦略に使うわけでなく、まず「総合職」として日本人社員と競わせる。「高い志と挑戦者魂があり、ぬるま湯育ちの日本人の模範になる」と人事担当者。 留学生は年間12万人にのぼるものの、日本での就職を後押しする助言制度などが手薄だった。政府は就職促進に役立つ講座開設などを来年度から支援する方針だが、今後さらに拡充すべきだ。 留学で育った「知日派」に日本、あるいは日本企業で活躍してもらい、より開かれた日本にする。企業の意識転換も必要で、採用や研修受け入れの枠を増やし、管理職登用も進める。そうした努力が、グローバルな競争が加速する時代を生きる日本企業の力を強めることになる。 ■受け皿──「生活環境整えよ」 外国人の受け入れ拡大には、生活者として迎え入れる受け皿の整備も必要だ。 静岡県浜松市は、外国籍住民が3万人を超える外国人集住都市。市人口のうち3.8%が外国人。ブラジル(約1万8千人)、ペルー(約2200人)など南米の日系人が多い。スズキ、ヤマハなど大企業のすそ野で多くが働く。 集住都市が直面しているのは、外国人社員の社会保障制度への加入問題だ。厚生年金や国民年金は外国人も加入でき、25年積み立てれば65歳から受給できる。しかし、3年ほどの出稼ぎのつもりで来た外国人は切実さがない。短期間だけ加入して帰国したら、一部しか払い戻されないこともあり、未加入が多い。 他方、90年の出入国管理法の改正で入国しやすくなった日系2世・3世は、滞在が長期化し、「新移民」ともいわれる。将来、年金もないまま高齢化すると、生活支援の社会負担は重くなってくる。 教育支援も大きな課題だ。市立遠州浜小学校では、夏休み中もボランティア27人が外国人児童の補習を手伝っている。教員2人を増やし、通訳1人を置いて親への通信簿などを翻訳する。「進学の基礎をつくる必要があるが、教員の不足は明らか」(釈精子校長)だ。 市役所窓口の通訳配置などの費用もかさみ、浜松市の外国人向け施策の財政負担は年に約8億6500万円。一般会計予算の0.4%にあたり、北脇保之市長は「社会的コストをどうしていくか。政府は検討しないまま日系人を受け入れ、自治体の負担ばかり増している」と指摘する。 外国人が集まる自治体の悩みは同じだ。静岡、愛知、岐阜、三重、群馬、長野6県の18市町でつくる「外国人集住都市会議」は政府に改革案を示している。年金加入を増やすために受給までの加入年限を15年程度に短くすることや、外国人登録制度の改善と「外国人データベース」作成などを求めている。 今の登録制度は、法務省が自治体に事務を委託する形だが、どんな在留資格でどこに住んでいるかについて断片的な情報しか分からない。自治体が生活者としての外国人と接するには、本人の就労や子供の就学、保険・年金の加入状況も含めて総合的に知っておくことが必要だ。 外国人が自治体の窓口に寄れば、生活者としての権利と義務の両方について情報を得られるようにする。そのために「外国人データベース」ができれば、自治体は外国人住民の相談に乗りやすくなる。人権や個人情報の保護が前提だが、不法就労や不法滞在、外国人の犯罪組織の潜入を防ぐ基礎にもなる。 仕方ないから外国人を受け入れるという発想は時代遅れだ。異国からの人たちが暮らしてみようか、働いてみようかと思うような日本をめざして、総合的な受け入れ政策を備えていかないと、加速する国際的な「人流」の中で日本は孤島になりかねない。
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