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終わりに──「経済安保」複眼的に

 「新戦略を求めて」の3章では、グローバル化時代における日本の経済戦略のあり方をさぐってきた。締めくくりに、日本が重視すべき点を考えてみたい。

 経済規模で日本はやがて、中国に追いつかれる。だからと言って、日本と中国が「両雄並び立たず」という状態にしてはならない。日中も含めて互いに、経済という絆(きずな)で「切っても切れない仲」になり、地域の安定と繁栄につなげることができればいい。東アジア共同体構想などの根底には、そんな共通の願いもある。

 ドイツとフランスという両雄が戦争を繰り返した欧州では、第2次大戦後に地域統合が進んだ。EU統合の中核には独仏の強い意志があったが、アジアでは日中にそれがないから、共同体には進まない。そんな見方もある。

 しかし、通貨安定のため互いの資金を融通し合うチェンマイ・イニシアチブなどは、日中間の協調が基礎になって、内容が充実してきた。「金融関係での中国財務省との電話連絡は毎日のようだ」と財務省の担当者は言う。巨額のドルの外貨準備を持ち、両者の利害は一致することも多いのだ。

 「軍事は取るか取られるかの『ゼロサム・ゲーム』だが、経済はどちらも勝てる『ウィンウィン・ゲーム』になりうる」と、黒田東彦ADB総裁は強調する。

 中国やインドなどアジアが世界経済の成長エンジンであり続けるかぎり、米国や欧州の目は、日本だけでなくアジア全体に向けられる。日本も、欧米の市場をにらみながらも、アジア経済を基盤にしていくことになる。ただ、安保は日米、経済はアジアという身のこなし方は、「いいとこ取り」との非難を受ける恐れがある。

 どうすればいいのか。米国とは、双方に利益のある経済連携協定(EPA)の締結をめざす必要がある。アジア諸国との間では、政府の途上国援助(ODA)や人的交流などを活用しながら、地域の安定、持続可能な発展に寄与する姿勢をもっと明確にすることが大切だ。

 グローバル化とアジアの成長という時代における日本の経済安全保障は、米国とアジアをにらむ複眼的な視点に立脚すべきだ。

 条約で統合の形を綿密に設計してきたEUと違って、アジアは市場経済のつながりが緩やかな統合を引っ張っている。アジア型統合の設計図はアジアらしく、しなやかに進めるのが良い。

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