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安全保障や経済的統合、日米中の協調ビジョンを

 中国は、米国とはまったく異なる発展モデルで経済成長を続けている。軍備増強も目立ち、米国内には警戒論も根強い。だが、二つの大国が利害を共有する場面も多く、北朝鮮の核問題での対応でも米中の連携が要になっている。対中抑止の意味合いがこもる日米同盟だが、さや当てばかりでは東アジアの安定は望めない。米中協力の新展開も織り込んだうえで、3カ国が協調するビジョンを描くべき時がきている。(論説委員・五十川倫義、外報部・野嶋剛)

日本の課題
・東アジアの秩序作りにおいて、日米同盟という基本軸に加えて、米中協力という新たな軸が強まりつつある。
・日米同盟で中国と向き合う図式だけでなく、日本も中国との二国間関係を再構築し、地域の安定感を高めていきたい。
・安全保障問題や経済的な統合など、日米中がビジョンを提示し合い、率直に意見交換する場が必要だろう。3国間による対話を定期化することも一案である。

深まる米中協力──警戒しつつも握手に重み

 胡錦涛(フー・チンタオ)主席 中国は一貫して朝鮮半島の非核化を訴え、核拡散に反対している。

 ライス長官 米中の協力は世界、地域の平和と安全にとって非常に重要だ。密接に歩調を合わせていくことが必要だ。

 核実験を発表した北朝鮮への対応を話し合うため、ライス米国務長官は10月20日、北京で胡主席と会い、緊密な連携を約束した。

 友好の裏に深い不信感がある北朝鮮に核兵器を持たせたくない。日本や台湾に広がる「核ドミノ」も恐れる。中国のそうした懸念を振り払うには、米国の力を借りるのが得策だ。米国の方は中国の協力を得て、北朝鮮の核がテロ集団に渡ることを阻止したい。双方の利害がかみ合い、重みのある握手が交わされた。

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 ブッシュ大統領は就任当初、中国を「戦略的競争相手」と呼んだ。だが、テロとの戦いや中東外交に時間をとられたこともあり、「中国とは可能な限り摩擦や対立を避ける主張が政権内で力を持った」(カーネギー国際平和財団のスウェイン上級研究員)。米国のゼーリック氏は国務副長官だった時、「中国は責任ある利害共有者」と位置づけた。中国側でも、米国とは意見の相違はあっても、必要に応じて共同歩調をとる「限定協力」の立場が主流だ。

 北朝鮮問題は台湾問題とも深く結びついている。

 中国は、台湾の民進党政権による独立に向けた動きを抑えるよう、米国に協力を求めている。米国はこれに応じ、「中国であれ台湾であれ、現状を変える一方的な決定に反対する」として、民進党政権にもくぎを刺している。逆に米国側は中国に対し、北朝鮮への核放棄の説得を強めるよう求めている。

 北朝鮮の核問題で米中の協力が深まるほど、台湾問題でも米中が協調的になる構造にある。米ブルッキングス研究所のリチャード・ブッシュ上級研究員は「ここ数年、米中とも台湾に抑制的姿勢をとっているので、台湾情勢は安定した」と語る。

 米中関係を支える要因としてはもちろん、経済の相互依存の強まりもある。米国務省でアジア太平洋担当次官補代理を務めたランディ・シュライバー氏は、現在の米中の経済関係を冷戦期の米ソ間の「MAD」(相互確証破壊)に例える。

 中国は米国の国債を大量に購入し、貿易相手としても互いに上位に名を連ねる。シュライバー氏は「すでに経済的に深く結びつき過ぎていて、お互いに強硬な政策はとれない。例えば経済制裁を中国に向けるなどは不可能に近い」と述べる。

 核兵器で相手を確実に破壊する能力を持った結果、どちらも強硬策に出られない。冷戦時代の米ソにはそうした核抑止力が働いたが、その経済版が米中で機能しているというわけだ。

 とはいえ、米国内では主に安全保障の観点から、中国に対する警戒論も根強い。

 シカゴ大のジョン・ミアシャイマー教授は「実力をつけた中国はいずれ米国をアジアから追い出そうとする」と懐疑的だ。ボストン・カレッジの中国研究者、ロバート・ロス教授は「アジアの軍事バランスで米国は中国の台頭を座視しない。同盟強化と軍事技術の革新で現状維持をめざす」と語る。あくまで米国の「覇権」を脅かさない範囲での協力関係であることが前提という点で、米国の多くの専門家は一致している。

三つの二国間関係──対話の定期化も一案

 協力の必要性と警戒心が混在する米中関係だが、中国を見る米国内の目は変わってきている。日本外務省が米国で行っている世論調査では今春、「アジアで最も重要なパートナー」の問いに対して、有識者の47%が日本、43%が中国を挙げた。その差は年々縮まっている。

 日米同盟と米中協力――米国にとって、東アジアには二つの軸が併存する時代に入りつつある。もちろん、日米には安全保障条約があるうえ、民主主義や基本的人権を重視する立場も共有している。米中にはこうした共通項はないが、ともに国連安全保障理事会の常任理事国であるうえ、経済面での中国の存在感はすでに大きい。

 将来、日米中はどんな三角形を描くことになるのか。中国現代国際関係研究院の楊伯江・日本研究所長はこう語る。「中日では文化交流、特に経済協力は日米より多いだろう。日米同盟は将来も続いている。米中も北朝鮮問題のように協力が増えるだろう。三つの辺がいずれも特徴をもち、(辺の長さを)比べることはできない」

 同研究院の傅夢孜・米国研究所長は「トップ3の敵対は防がねばならない」と指摘する。数年先には、世界の国内総生産(GDP)の順位で米国、日本、中国が上位3カ国になる情勢で、「我々は今後、現実的な考え方を優先すべきだ。互いに(行動を)制約する時代ではなくなった」。

 米中の関係が太くなるなか、日本も対中関係を戦略的に組み直していく必要がある。

 安倍首相は就任後、最初の訪問国に中国と韓国を選んだ。歴訪は北朝鮮の核実験と重なり、日中、日韓の首脳会談は対応を協議する場となった。米中が協調し、日中韓が歩調をあわせたことが、国連安保理での制裁決議につながった。北朝鮮の核問題ひとつとってみても、日中の軸の重みは明らかだ。

 シンガポール国際問題研究所のサイモン・テイ所長はアジアの現状を「中国の台頭でアジアという胴体に日中の両翼が生えた」と例える。「せっかくアジアが飛ぶチャンスなのに、翼が別々の方向に向いたら、どうやってまっすぐ飛ぶのか」

 日米同盟と米中協力が併存すれば、3国の調整が必要になる。日本は米中協力の真意を確認したいし、中国は日米同盟のねらいを知りたい。日米中の定期対話も一案だろう。他の二者の接近をいぶかる三角関係でなく、三つの二国間関係の緊密化が相乗効果を生むような、懐の深い協調をめざすべきである。

鍵となる台湾問題──現状維持、どこまで

 東アジアの安定で重要な鍵となる台湾海峡の問題は、どうなっているのか。

 台湾のカネもモノも人も磁石のように中国に吸い寄せられている。台湾当局による昨年の統計によれば、台湾の海外投資の約7割が中国大陸に集中し、全輸出額の約4割が香港を含めた中国向けだ。中国に渡航した人は人口の約17%にあたる延べ400万人にのぼる。

 心の中はどうか。台湾当局が92年から半年ごとに続ける「自分を何人と思うか」という世論調査では、一貫して最も多い答えは「台湾人でもあり中国人でもある」。今年6月は44%だった。それと同率に並んだのが「台湾人」。92年にはわずか17%だった。総統直接選挙が実施された96年以降、ずっと上昇基調にある。「中国人だと思う」は92年の26%から6%まで下がった。

 中国が望む統一の実現には「中国人意識」の広がりが不可欠だが、現実に広がっているのは「台湾人意識」である。ただ、それは必ずしも独立志向の高まりを意味しない。現実感覚の強い庶民たちは、独立に向けた動きが中国を刺激し、台湾海峡を不安定にすることを百も承知だ。

 一方で「統一」への拒否反応は強い。台湾庶民にとっては、中台統一は共産党の事実上の独裁体制下にある中国の「押しつけ」に映る。国民党独裁時代を経験した台湾人には、せっかく手にした民主化社会を手放すものかという意識が強く、これが「台湾人意識」の核心部分にある。

 このため親中的とみられる馬英九国民党主席ですら、「統一交渉の前提は中国の民主化」と公言するほどだ。中国の民主化には長期間が必要なため、これは実質的に「台湾海峡の現状維持」を狙った発言といえる。

 米中間では当面、現状を動かさないことで一種の了解ができている。日本もこれに異論を唱えておらず、05年2月の日米安全保障協議委員会(2プラス2)で「台湾海峡問題の平和的解決」を日米の共通戦略目標に掲げ、中国の武力行使を牽制した。

 だが、台湾自身が大きな変化を見せれば、米中は独自の立場で動くことになる。そうした不確定要因が消えないことから、引き続き台湾の行方が米中関係に影を落とし続ける。日本の外交もこの点を常に考慮しておく必要がある。(台北・永持裕紀)

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