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お中元特集

被災地の百貨店、売り上げ急回復 不透明な「震災特需」

2011年6月26日

写真:川徳が今月開催した「いわて特産品フェア」。被災した地元の名店が集結し、盛況だった=6日、盛岡市菜園1丁目拡大川徳が今月開催した「いわて特産品フェア」。被災した地元の名店が集結し、盛況だった=6日、盛岡市菜園1丁目

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 東日本大震災の影響で大きく落ち込んだ被災地の百貨店の売り上げが、急回復している。前年割れが続く全国の傾向と一線を画し、5月は軒並み前年を上回る売り上げを記録した。しかしこの「震災特需」がいつまで続くかは不透明。各百貨店は不安を抱えつつ夏の中元商戦に臨んでいる。

 ■仕入れ 震災に負けず

 被災地の中で特にダメージが大きかったのは、仙台市の百貨店だ。日本百貨店協会によると、市内の「三越」「藤崎」「さくら野」の3店の3月の売上高の総額は27億8999万円。前年同月比61.1%減で、全国平均(同14.7%減)よりもはるかに落ち込んだ。

 翌4月の3店の売上高は計45億7995万円。3月の1.6倍強とはいえ、前年同月比は25.8%減。しかしその状況は5月に一変した。売上高は同6.7%増の計68億35万円に急伸。全国平均が同2.4%減と前年割れを続ける中、3店ともV字回復を果たした。

 被災後、3店が全館営業に近い形に戻ったのは大型連休前だ。そこから短期間で回復できた背景には、百貨店ならではの仕入れ先との太いパイプがある。

 藤崎の場合、店を開けなかった震災直後の3月15、16、18日にもリビング用品や食品を店の前のアーケードで販売した。周辺の多くのコンビニが流通の途絶などで休業する中、宮城県や山形県などの業者から商品をかき集めたという。

 4月23日まで売り場の縮小、営業時間の短縮などの悪条件を強いられたが、生活再建などで需要が膨らんだリビング用品の4月の売上高は同2%増。食品も、中止になった恒例の催事分を除くと前年を上回った。

 「取引先が商品をよくそろえてくれた」と担当者。こうした下地があって、ほぼフル営業した5月はリビング用品、衣料、食品の売上高がいずれも前年同月より1割ほど伸びた。

 盛岡市の「川徳」は3月の売上高が同30%減。4月も震災の影響で売り上げ1億円の恒例の大型催事が中止になったほか、余震による休業、営業時間の短縮など苦境が続き、主力商品のミセスの衣料品が前年同月比17%減と落ち込んだ。

 だが、その分をリビング用品がカバー。被災者の多くが食器や寝具を買い求めた結果、同116%増となり、4月の売上高を同4%増に押し上げた。食品(同25%増)や化粧品(同6%増)なども好調だった。

 川徳は創業145年の地場百貨店。「モノ不足の中、『まずは川徳さんに』と、うちに入れて下さった業者さんが多かった」と担当者。5月はミセスの衣料品も同13%増に転じるなど全体の売上高はさらに上向いた。また、市内にあった百貨店「中三」(本社・青森市)が爆発事故などで3月末に倒産したことも、売上増の一因になった。

 福島県郡山市の「うすい」の3月の売上高は前年同月比44%減だったが、4月は同10%増、5月はさらに同14%増にまで伸びた。

 中でも学生服を含む子ども服が好調だ。4月は同103%増と爆発的に売れ、5月も同56%増。担当者は「放射能の影響を心配して、まず子どもの服を買い替えた人が多かったのでしょう」と見る。対照的に、輸入モノの高価な衣料品の動きは鈍かったという。

 うすいは11年前に建物をリニューアルした際、耐震構造にした。周辺の店が閉まっていた3月13日にいち早く営業を再開すると、開店前に300人の列ができた。同26日には全館営業。衣料品だけでなく食品、寝具などの品ぞろえで、被災者の生活を支えた。

 担当者は「これを機に地元の百貨店の良さを見直してもらえれば、うれしい」と話している。

 ■山形・青森・秋田も

 震災被害が比較的少なかった山形、青森、秋田3県の百貨店も4月の売上高が前年同月比プラスに転じ、5月はさらに伸ばした。

 山形市の「大沼」は生鮮産品、衣料品の売れ行きがいいという。「震災後で厳しいと思っていた。想定外の結果」と担当者も驚きを隠さない。特に好調なのは催事で5月の北海道物産展は前年比29%増の売り上げだった。理由は何か。担当者は「楽しみを求めて来るお客様が多いのでは」。観光や派手な娯楽を自粛する空気が、百貨店に足を向けさせているという推測だ。

 やはり4月、5月の売上高が前年を大きく上回った青森市の「さくら野」の担当者も「青森駅周辺はお出かけスポットが少ないので、うちに流れて来た分もある」との見方も示す。

 地方の中心街を研究している山形大学の是川晴彦教授も、東北の百貨店の売り上げが急回復した背景をこう指摘する。「東北の街は首都圏より行楽の場所が少なく、若者を中心に県外に遊びに出かける人が多かった。だが震災後は余震を恐れたりして遠出をしない人が増え、地元百貨店など特定の場所にお出かけ先が集中したのではないか」

■全体のパイ縮小 客争奪など不安要素も

 震災特需はいつまで続くのか。

 「夏までに震災で落ち込んだ分を取り返したい」という各店。中元商戦が始まった6月も「好調」と口をそろえ、「仮設住宅への移住も始まり、リビング用品は昨年の5割増。夏物衣料も動いている」(川徳)。

 だが、不安要素もある。仙台市の百貨店には、競合相手の郊外のアウトレット店が震災後休業していた追い風もあった。その仙台泉プレミアム・アウトレットは今月17日に営業を再開。三井アウトレットパーク仙台港も25日に再開予定で、競争が激化するのは必至だ。また美術品や宝飾品などの売り上げは大きく落ち込んだまま。百貨店ならではの高額品だけに、その苦戦に各店とも「安心はできない」と気を引き締める。

 一方、3月末に倒産した中三は、4月9日に青森店と弘前店の営業を再開したが、盛岡店は休業中。東北の百貨店の5月の売上高は既存店ベースで前年同月比6.4%増だが、中三を含めた全店ベースでは同3.3%減で、東北全体のパイは縮んだ格好になっている。(奥田貫)

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