アサヒ・コム このサイトの使い方へ 検索へジャンプ メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

朝日新聞社からアスパラクラブクラブA&A携帯サービスWeb朝日新聞サイトマップ文字拡大・音声

天気住まい就職・転職BOOK健康愛車教育サイエンスデジタルトラベル囲碁将棋社説コラムショッピングbe

ここから本文エリア現在位置asahi.comトップ >  シンポジウム記事

朝日新聞シンポジウム「子どもを守る――いま、できること、すべきこと」
【質疑応答】(2)

写真

鈴木光司氏

 上野 今のお話は、結局、今の子どもというのは将来大人になるということですよね。で、地域をつくっていくのは、今の子どもたちが将来の社会をつくっていく。じゃあ、今どういう教育をするかということが、将来の地域を決めていくということになるんだと思うんですけど。

 鈴木さん、今の話、さっきのケアの話も実は地続きだと思うんですね。被害に遭ったお子さん、思い切ってそれを告白、報告したと。でも、その子にとってはすごいつらい体験で、おそらく大人に対する不信感もすごく強くなっていると思うんですね。

 それから、中村先生が言ったことともどこかつながっていて、大人に対する不信感だけじゃない、そういう子どもにしないためにも、きちんと大人が君たちのことを守っているよというスタンスを見せる。それによって、ああ、自分たちは大人に守られて、さらに、その思いを持って大人になっていける。で、それが次の社会にもまた関係してくるというような。

 端を発したのは会場からのご質問で、人を信じるなということだけ教えて大丈夫なのか、それでいいのかというところから始まって今そういう議論になっているんですけれども、いかがですか。

 鈴木 どのように子どもを守るかという問題が提起された時に、これが正解だというようなマニュアルはまずないと僕は思うんですね。これは一人一人が考えるべき問題だと思うんです。それぞれそれぞれの家庭にそれぞれの事情があるわけですね。僕のように、たまたま小説家なんというものを目指した結果、子育てに深く関わっちゃって、子どもたちとのコミュニケーションがきっちりとうまくいっているという父さんもいれば、そうじゃない父さんもいるわけですよ。

 そこで間違ってはいけないのは、全員が同じように動いちゃうこと。要するに、池田小学校の事件が起こった時に、あの後、8割から9割の学校が校門を閉ざしちゃった。これだと議論の余地がないんですよ。もうちょっと、4割、5割ぐらいにとどまっていたなら、両方の勢力でいろんなことを言い合うということができるんだけれども、同じマニュアルを全部採用ということになっちゃうと、何かまずいと思うんですね。

 だから、マニュアルはそれぞれ、皆さんの家庭の事情に応じてコミュニケーションをとりながらとっていかなくちゃいけないことだと思うんですね。例を言いますと、僕の娘、これから大学生ですけれども、この後、どうやったって交通社会というものに組み入れられていくわけですよ。そこで、オートバイに興味を持ったとしますね。

 オートバイに興味を持った娘、じゃあ、オートバイの免許を取りたいといったら、僕はどうするか。それは取らせます。なぜかといったら、僕はバイク乗りですから、バイクのライディングテクニックとか交通マナーを教えることができる。できるという自信があるから、じゃあ、娘に取らせます。

 そのかわり、おれが徹底的にトレーニングするよ、君をものすごく愛してる、君がもしバイク事故で死んだら、おれはもうとても悲しい、とても悲しいどころじゃない。そのためにはどうするかといったら、自分の持っている経験を全部おまえに授けるから、その後でもう自由にオートバイを楽しんでごらんということを僕だったらやるわけです。

 でも、すべての家庭でそれができるかといったら、それはできないわけですね。お父さんもお母さんもオートバイ乗らない人だっていっぱいいると思うんです。それから、教育方針としてはそういったオートバイの免許は取らせないという家庭だってあるかもしれない。それぞれのやっぱり事情が違うんです。

 先ほど、杉山さんのところに届いたお母さんの生の声の中で、これは僕が言ってることの引用かなと思ったのがあるんですよ。弱い危険でならしてから大きい危険を察知する能力を身につけると。僕の家庭の基本的な子どもを守る方法はこれなんですね。

 最初から無菌状態にはしないということですね。その中では、もちろん、大人を信じるななんていうことは絶対僕は言いません。まず子どもは、僕の娘たちは僕の言うことをとてもよく信じますから、僕に代表される大人たちはやっぱり信頼の対象であると思うんですね。

 そのように、大人である我々がどのように子どもたち、自分の子どもと関わってきたか、地域と関わってきたか。それぞれ違う中で、一人一人が自分に合ったマニュアルを考えるしかないです。

 その場合、マスメディアがやることは、ムードをあおるんではなくて、正確なデータというものを示す。これはもう普通の皆さんがなかなか入手しにくいものです。その上で、一人一人が僕は自分なりに合ったやり方を考えていくしかないなと思いました。

 上野 子どもを守るというのは、一見非常に子どもの命を守るということで単純そうなテーマなんですけれども、子育ての問題、そして、男性の子育て参加、子育て、社会の中での働き方の問題にまでいってしまう。

 教育の問題はまさにダイレクトに関わってくるわけですし、地域の中での学校のあり方みたいなものにも話が行きますね。どんどんほとんどあらゆるものに重なっているんじゃないかというぐらい、この問題は大きい。それは別な言い方をすれば、きっと社会全体でやっぱり考えないと変わらないし、取り組めない。

 最後にちょっと一言ずつ答えていただければと思います。

 一つは、男性参加をどう促すか。なかなか門が閉じられて監視カメラや何かが進んで、同時に、保護者の学校への関心が薄れる、個人情報保護法でクラスの番号名簿もわからない。そんな中で、女ばかりの意見を言ってもなかなか進まない。男性にも参加していただきたい。どうしたらいいんだろうか。そういう32歳の方からのご意見です。

 杉山 やっぱり本人の心持ちというのも1つなんですけれども、次世代育成支援対策推進法という法律ができたのは皆さんご存じだと思います。企業の行動計画などもつくるように言っていて、父親の育児休業の推進を促したりとか、それから、父親ができるだけ仕事ばかりしないで、家庭に帰って、積極的に子育てをするようにみたいなところを、どのようにアクションプランをつくっていくかというようなことを行政がバックアップしたりしています。それにこたえて、企業も少しずつ変わりつつあるだろうと思っています。

 あとは、団塊世代に代表されるような仕事優先の猛烈サラリーマンがそろそろ地域にお戻りになる状況になってきておりますので、そういう意味で、企業風土が少し変わるんじゃないかなと思っているんですね。

 そういったところから、本当は家庭に帰ってちゃんと子育てしたいのに、企業の雰囲気がそれを許さなかったというような、そういった会社が変わり始めるだろう。それをやっぱり期待したい。

 その時に、何ができるかなというのは、ご本人の心持ち次第だと思いますので、いろんな情報も探せばいっぱいありますので、自分の一番得意なのは何なのかということをお調べいただいて、もしかしたら、何人かの方はこの防犯の部分で地域で役に立つということもできるんじゃないかなと思います。

写真

コーディネーター・朝日新聞記者 上野創

 上野 警察官と教師が大量にリタイアを迎えます。ですから、経験のある人が大いに地域に出てきて力を振るっていただける余地も増えていると思います。うまく参加してもらうことも1つの方法かなという気がしていますけれども。

 それから、大人の目からは怪しい人でも子どもにとっては優しいお兄さんということもありますと。感覚が違う。そういう時にどういうふうに教えたらいいんだろうかと。この質問、いかがでしょうか。

 桐生 声かけ事案については、子どもに求めるばかりじゃなくて、大人の声かけのルールをつくらなきゃいけないと僕は思うんですよ。つまり、声をかけるにしても、きちんとした大人がルールをつくって、むだな声かけはしないと。

 例えばですよ。非常にちょっと漠然とした話なんだけれども。例えば、アメリカなんかは、幼い子どもに声をかけること自体が禁じられているところもあったりしますよね。今やそういう時代になっているんで、まず大人がそういったルールをつくっていくと。ちゃんとした声かけ化をしましょうと。

 声かけ事案が例えば社会的にたくさん増えると、警察に相談がたくさん来て、そういうのを逐一見ていくと、本当にこれはちょっとまずいよねというのと、もう一つは、これは女子高生をナンパしてるのに、イケメンじゃないから声かけになってるんだみたいなのが、こういったこともあります。

 だから、大人がまず子どもたちに示せるルールをきちんと共有して、そして、子どもたちに接するということも必要じゃないかなと思います。

 上野 かわいいなと思ったからといって、わっと抱いたりしちゃいけないということですよね、善意であったとしても。

 桐生 そういうことはもうできなくなってる時代じゃないかなと僕は思うんですよね。

 上野 わかりました。それから、鈴木さんへの質問ですが、犯罪を犯す人間をどう減らしていくか。これ、短く答えろってまず無理だと思うんですけれども、何かやはり非常にそういう気持ちが強いという方から、ぜひ答えてほしいという熱い要望が来ているんですが。

 鈴木 僕はさっきちょっと出かかった問題で、どうして不安感にかられるか。これは例えば戦後のころの犯罪に比べて、動機がわからなくなっているんですね。

 例えば昔の犯罪というのはある程度動機が明らか、やっぱりお金がないから強盗するために殺すとか、ある程度動機がわかりやすいと何となくわかるわけですよ。ところが、今の犯罪というのは動機がわからない。そこのところに不安感が非常にあおられるんじゃないかと思うんですけれども、この動機のない犯罪のほとんどの原因は僕は家庭にあると思っています。

 だから、こういったもし犯罪を減らそうと思ったら、家庭をどれだけ充実させるかということ。これは別に両親が2人そろっている必要とか、そういったことは全く関係ないことなんですね。ここをどうやってきちっと、特に親と子の関係がうまくいくように持っていくか、あるいは、子どもとその身の回りにいる大人たちとの関係をうまくいくように持っていくか、これが僕は直接というか一番有効的な犯罪を減らす方向だと思っています。

 しかし、僕は基本的にやっぱり世界というものは絶対にパーフェクトではあり得ないと。絶対にパーフェクトではあり得ないということを自分では認識しながら、なるべく減らそうと思ったらそのやり方でいくしかないなと思っていますね。

 上野 中村先生、守るということも大事だけれども、私は自由奔放に育てるほうがいいと思うという主張が来ています。いかがでしょう。

 中村 それは皆さん、一人一人が判断してもらわないといけないなと思います、確かに。これは鈴木さんも言われたけれども、答えのある1つというふうなものじゃなしに、それぞれの子どもなり家庭なり地域の環境によって、この問題に対する対応の仕方というのは変わってくるという、そういう事柄も踏まえなければいけないと思いますけれども、私は自由奔放に育てるというのが大事なんじゃないかという事柄については、半分は賛成ですけれども、そういう問題に一般化してしまってもいけないという固有の問題を持っていると思います。

 だから、私は2つのテーマを追及するということが大事だと思います。1つは、楽しくて人々が地域に出てくる、そういう地域社会をどうつくっていくのかということと、それから、子どもたちを安全に守っていく地域社会をどうつくっていくのかと。

 このことは、ずっと突き詰めていくと同じところに行く。だから、子どもたちを犯罪から守るということだけを突出して考えていくというのは、これはやっぱりじり貧だし、だけども、一般的なまちづくりとかそういうものの中に解消してしまってもいけないといいますか、楽しくて安全な町というものを子どもたちにどうつくっていくのかというのが私たちが求めるやっぱり活動の一つのスタイルではないかと思います。

 上野 時間が過ぎてしまいました。

 最後に中村先生がおっしゃった「楽しくないと続かない」。みんなでみけんにしわを寄せていても、多分、子どもは守れない、子どもは息が詰まると。だから、そこで楽しさ、それと、実効性のある活動を模索していくしかないんじゃないか。まさに鈴木さんもおっしゃったように、答えは一つではないし、それぞれが考えるしかないということなのかなということで、あまり結論になりません。

 結局、やはりまとまらないんですけれども、きょうの4人プラス1のいろんなやりとりが何かの参考になればと思います。朝日新聞に対してもいろんなご意見、要望などをいただければ、また紙面づくりで生かしていきたいと思います。

 本日はお忙しい中、ご清聴いただきまして、どうもありがとうございました。皆さん、ありがとうございました。(拍手)


ここから広告です 広告終わり
▲このページのトップに戻る

asahi.comトップ社会スポーツビジネス暮らし政治国際文化・芸能ENGLISHマイタウン

ニュースの詳細は朝日新聞紙面で。» インターネットで購読申し込み
asahi.comに掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。
| 朝日新聞社から | サイトポリシー | 個人情報 | 著作権 | リンク| 広告掲載 | お問い合わせ・ヘルプ |
Copyright The Asahi Shimbun Company. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.