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徹底討論「ジャーナリズムの復興をめざして」
立花隆氏の基調講演(3)

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立花隆氏

●ジャーナリストの条件

 それで、そういうところで働く人たちは、基本的にどういう能力を持たなきゃいけないか、それを分けてみると、大体次ようになります。つまり、これが先ほどの「報道パワーの源泉」の内容とほぼ対応するんですが、もうちょっと違う表現で言うと、こういうものがジャーナリストの能力として必要なわけです。

 基本は、(1)取材力(対人関係形成力/信頼される人格)、(2)筆力(文章力より説得力/ナルホド/その通り)、(3)眼力(広く、深く、遠くをみる力/裏側を読む力)、(4)バランス感覚、というふうに分かれると思います。その取材力という時に、何よりも大切なのは、その取材対象の人間と対人関係をうまく形成できる能力、その取材相手から信頼される能力、そういう能力ですね。

 2番目の筆力というのは、一般的に名文を書く能力ではないんです。そうじゃなくて、むしろ説得力がある文章を書く能力で、読む人になるほどと思わせたり、そのとおりだと思わせる、そういう説得力があるものを書く力です。

 そういうものを書く前提として、3番目のこの眼力というのが必要でして、これは「広く、深く、遠くを見る力」とありますが、これはこの目の前の現象を見た時に、それをもうちょっと広い視野でとらえて、表面だけじゃなくて、もっと深いところをとらえて、さらに時間軸でもっと遠いところ、後ろのほうにも遠いところ、それから、前のほうにも遠いところを見る。そういうふうにものを見る眼力、プラス、この「裏側を読む力」が必要で、何かが表面に現れる場合、その裏側というものが必ずあるわけです。その裏側を読む力、これは「広く、深く、遠く」とは全く違う別の次元ですね。物理の用語で言えば位相的な違いで、その背景を見るという、そういう力が必要なわけです。

 こういう三つの力を兼ね備えて、さらに4番目のバランス感覚がある人が、初めてちゃんとしたジャーナリストになり得るわけです。

 そういうジャーナリストが、今のジャーナリストの中に、果たしてどれだけいるのか。先ほど「報道人が報道機関を通してする、報道という仕事」と言いましたが、この報道人と、報道という仕事というところに、今のこの「ジャーナリストの条件」に合う人間がちゃんといるかどうか、現実に個々の報道機関の中にそういう人たちがいて、ちゃんと能力を発揮しているかどうか、そこが非常に重要なわけです。

 先ほど言いましたように、ジャーナリズムの三つの要素のすべてに危機があるというなかの、報道のジャーナリストの資質という面で危機があるのは、要するに、ここのところにあるということですね。

●新聞ジャーナリズムいまそこにある危機

 今、新聞ジャーナリズムは、いろんな意味で非常に危機にさらされています。何よりも大きな危機は、「新聞を読まない人がものすごく増加」している問題です。僕は、大学の先生も時々やっています。10年ぐらい前からほぼ一貫してジャーナリズムを教えるということを幾つかの大学でやっているんですが、そこの教室にいる学生に、「毎日、新聞を必ず読んでいる人はどれぐらいいますか」といって手を挙げさせるんです。おそらく、ここへ来ている人はほとんど毎日、新聞を読む人でしょう。でも、大学の普通の教室へ行ってその質問を発したらどれだけの学生が手を挙げるかというと、今は半分いません。半分いないんです。相当前から、新聞を毎日読まない学生のほうが増えていて、今はもうはっきり半分以上になっています。おそらく新聞を毎日読むという人のほうが少ないんです。おそらく3分の1いるかいないかです。

 じゃあ、そういう人たちはどうやってニュースを接取しているかといえば、基本的にはインターネットなんです。今インターネットでニュースを読むということを日常的にやっている人、どれくらいいらっしゃいますか、新聞と併読していてもいいです。インターネットでニュースをしょっちゅう見ている人って、ちょっと手を挙げてみてください。この会場でもこれぐらいいるわけですね。(開場のあちこちで挙手)

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立花隆氏

 インターネットでニュースのページを、どういうふうに見ているかはわかりません。それはアサヒ・コムを見てる人もいるでしょうし、それから、ヤフー、あるいは、グーグルのニュースのページを見る人もいるでしょう。だけど、何らかで今、インターネットでニュースを検索すれば、非常に簡単に普通の紙面以上の情報がどどっと出てくるわけですね。しかも、クロスして、どんどん、幾らでも調べられる。そうしますと、新聞というのはそれほど便利なメディアではないということに、いろんな人が気がついているわけですね。その結果、金を出して読むことはないやと思うわけです。

 今、新聞、結構高いですよね。僕は習慣的に朝日と日経をずっととっているんですが、僕もほんと、何度か朝日はやめようかと思ったことがあります(笑)。日経はやめようとは思わないんですね。日経のほうがはるかに情報の質として高い部分があるわけです。それは、朝日に出ているようなことは大体日経に出ています。朝日を読まなきゃどうしてもだめということはなくて、僕はむしろ習慣でとっているという程度でして。

 学生が次々に新聞を読まない人たちの中に入ってきているということが、大学で自然にわかったわけですね。しかもそれが、僕が非常に信頼する学生たちというか、やっぱり学生にも相当でこぼこがあります。なかなかできるやつらがたくさんいるんです。そいつらがどんどん新聞を読まなくなっているということに気がついたわけです。

 それで、聞けば、それはもうインターネットで十分です、と言うわけです。初めのころは、やっぱりおまえら、新聞読まなきゃだめだよということを言ってたんですが、だんだんそうでもないなと思い出したんです、自分で。

 特に、去年2カ月ばかり海外に行ってた時に、必然的に、物理的に、日本の新聞を読まなくなるわけです。それで、何をやっているかというと、結局はインターネットでニュースを読むわけですね。それはアサヒ・コムや何か、いろんなページを読みますが、あるいは、英語の、例えばCNNのページなんかを読むと、もう情報量がはるかに多いわけですね。なまじ日本で普通の新聞を読むよりも、インターネットでニュースを検索したほうが、質的にも非常に高いものが確かに読めるという自覚がありまして。それからしばらく、朝日、高くなったし、やめようかなと思って(笑)、特にこの最近、何だかやたら全面広告が多くて。僕は基本的にラジオ・テレビ欄とスポーツ欄は一切見ないんです。そうすると、新聞、ほとんど読むところなくなっちゃうんです。ちゃんとしたニュースが書いてあるページというのは、せいぜい4面ぐらいなんですね。そうするとますます費用対効果でと思いつつ、今でも読んでます、金払ってます。

 ただ、そういう変化の中で、日本の新聞、特に朝日新聞は、ちゃんとしたニュースに紙面を割く率がどんどん減ってるわけです。本当に中身が薄くなっているわけですね。

 そうすると、「新聞の読み方の変化」がどんどん現れるわけですね。結局、読まない人が増えることによって、新聞の影響力はどんどん低下しつつあって、オピニオン形成力そのもの、前は新聞はそれを誇りにしてたんですが、それが低下する。朝日が書けば社会は変わるんだみたいなことを朝日人はみんな言ってたんですが、だんだんそうでもなくなってきたんですね。

 そういうことがありまして、まさに「インターネットパワーに負けつつある」と。それが情報力の面で、ある一つのニュースアイテムをとった時に、その幅の広さ、深さ、それがインターネットのほうがはるかに情報量が多い、今そういう状態になっているということは間違いないと思います。

 さらにもう一つの問題は、「広告媒体としてのパワーがインターネットに負けつつある」わけです。その結果として、新聞の経営の問題。新聞というのは新聞購読料、プラス、広告料で成り立っているわけです。大ざっぱに言うと半々ぐらいということになっているんですが、この広告の料金がどんどん減る、しばらく前の不景気な時代はそれががたがた減ったわけですね。それで、大手の新聞社はみんな経営危機に襲われたわけです。

 その背景にあったのは、インターネットのほうがはるかに広告効果があるということで、広告主がそちらのほうに今どどっと動いているんですね。これは日本だけじゃなくて、世界中の傾向でして、今、アメリカはもっと大きな新聞の経営危機というのがあるわけです。ですから、あのニューヨーク・タイムズですら、紙面を縮小して人員整理をし始めているんですね。

 そういうインターネットパワーに負けつつある、特に広告媒体の能力として負けつつあるメディアは、実は新聞以上に雑誌がそうなんです。例えばニューズ・ウィークなんかは、もうとっくの昔に人員整理を始めています。それから、ビジネス・ウィークなんていう雑誌はもう事実上消えかかっていますね。有名雑誌が次から次へ消えかかっている、今そういう状況にあるわけです。


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