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徹底討論「ジャーナリズムの復興をめざして」
【討論(後半)】(2)

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外岡秀俊氏

●インターネットの持つ三つの落とし穴

 外岡 旧メディアからしてみると、インターネットのパワーというのはものすごく脅威ですけれども、逆に、落とし穴みたいなものが見えることがあるんですね。

 それは大きく分けて三つあると思うんですが、一つは、要するに、インターネットというのは、特に検索エンジンが発達してから、あるものを引き出すスピード、技量というのはとてつもない力を持っているわけですね。しかし、ないものは引き出せない。

 我々はよく取材のヒントとしてインターネットから入ることがありますけれども、しかし、我々が書く記事というのはインターネットにないことを書くわけですよね。インターネットにすべてがあると思い込むのはこれは幻想で、少なくとも英語が圧倒的な多数を占めているわけですから、そうでない非英語言語の情報がどの程度あるのか、まずこの偏りがものすごく大きい。

 それから、インターネットにアクセスできない、あるいは、入力できない、出力できない人たちが、これまた圧倒的にいるわけですよね。その現実がインターネットの中では反映されていないというのがあると思います。

 もう一つは、これは私、BBCの報道部長と話をしていて、その方が言ったんですが、我々はデジタル移民であると。しかし、今ここにいる若い人たちというのは、デジタルネイティブ(デジタル原住民)だと。つまり、対面のコミュニケーションがもともとあって、そこからデジタルに移行した。つまり、代替手段としてデジタルに移行したんではなくて、もともとデジタルなんだと。そういうコミュニケーションが基本にある人たちで、ここには世代間の断絶があるとおっしゃったんですけれども、私は一つにはその問題があるのかなと思うんです。

 つまり、デジタルというのは、我々のこの今までのコミュニケーションとか生き方の延長として便利になった、力があると思い描くわけですけれども、そうでない全く新しい感性というか、つき合い方、コミュニケーションの仕方をする人間がこれからは出てくるだろうと。

 その時に、我々は旧メディアの延長上で、その力を拡張した技術としてニューメディアをとらえることはもうできなくなる。全く違う生き方、価値観、コミュニケーションのツールとして使う人たちが出てくるだろうと。それは我々が多分想定していなかった問題だろうと思うんですね。それが二つ目。

 三つ目は、MITのコンピューターの先生に話を聞いた時に、インターネットは何を変えたかという話をした時に、彼は「緊急性の喪失」ということを言うんですね。

 立花 何、それ。

 外岡 緊急性。つまり、かつては例えば大きな変事、例えばだれかが病気になったとか亡くなったという場合には電報を送ったと。電報が来ただけで、あ、これは何か大変なことだと。あるいは、夜中に電話がかかってくる。これは何か変事があったに違いないと。つまり、そのメッセージそのものがメディアに体現されているというか、ある意味でメディアがメッセージを果たしていた時期というのがあるわけですね。

 ところが、eメールが何を変えたかというと、ジャンク(くず)メールも非常に重要な問題も、すべて同列になってしまう。つまり、緊急性がなくなってしまう。あらゆることが即時に着くことの意味合いというのが、重要性というか、自分にとっての大事さ、相手の発信者にとっての大事さがそこで消えちゃうということだろうと思うんですよ。

 つまり、そうなった時に、我々はどうやってその選別をするのかという問題に迫られるわけですね。そうすると、あらゆるeメールの文頭に「重要」というふうに書くわけですね。そうすると、あらゆることが重要であるから、これはまたどれが重要かわからないという、今そういう状況に私たちは立たされているのかなと思うんですよ。

 そういう中で、旧メディアとしてまずできることは、一番最初に立花さんがおっしゃったように、どれが重要なのか、やっぱり一覧性の中でニュースの意味合いを、重みをつけると。もちろん、それが間違っているかもしれませんけれども、少なくともこういうスタンスで我々はこういう報道をしてますということを打ち出して、その重みについていろんな批判を受けて、しかもそれを紙面の中でまた議論を通して変えていくという、そこの部分が我々の役割の一つなのかなということ。

 もう一つは、「ジャーナリストの条件」の中でおっしゃいましたけれども、「広く、深く、遠く」、そこの部分で、いよいよ我々は歴史の側面、それから、世界、国際的な視点の中でこれはどういう問題なのかというのを位置づけること、それから、さっきおっしゃった「ウラを読む」というからくりを読み通す、それを明かすということが、旧メディアにとっては大事なんではないかなと思います。

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会場風景

●インターネットの脅威

 立花 もう一つうかがいたいのは、今アメリカで現に起きてることは、インターネットに既成メディアが経営的にどんどん浸蝕されていって、いろんな面で経営的に危ないような状態に立たされて、実際に人員整理などが起きているわけですね。

 日本のメディアの世界では、まだそれほどインターネットの脅威というのは起きてないのか。既に広告費の面で、2年ぐらい前にラジオを抜いて、今また雑誌を抜くか抜かないかがもう既に現実のものになっているというか、今年2006年ですね、たしか2007年にはほぼ確実に抜くことになっているわけですね。

 そうすると、その先、今は新聞や何かは、まだまだインターネットなんていうのはこんなもんだろうと思ってるけれども、その上、つまり、雑誌を抜いた時は、次はもう新聞ですよね。

 そこで、そういう脅威というのが、もうほとんど我が身に迫っているという感じであるのか、それとも、まだまだ新聞志向の中では、それは遠い話みたいな感じになっているのか、そのあたりはどういう感覚で受けとめていらっしゃるんですか。

 外岡 イギリスにガーディアンという新聞がありまして、去年、そこで世界の発行部数トップ10のランキングが出たことがあるんです。その10の中で5紙が日本の新聞だったんですね。それで、そのうち、それ以外に無料紙が2紙入っていたんです。

 これを見て私は愕然としまして、かつてはプラウダとか人民日報という巨大なメディアがありましたけれど、今、世界の10紙の中の5紙が日本の新聞という状況なんですね。それで、多分これはもう私は長続きしないだろうと、その時思いました。

 先ほどご指摘のあったように、日本の新聞の場合は、購読料と広告というのはほぼ半々の収入で、記事とそれから広告もほぼ半々という伝統を持ってきたわけですけれども、広告がやはり、これはどこの新聞もそうだと思うんですが、一時は景気が落ち込んで広告が減っていった。しかし、景気がよくなりかけても、以前のようには持ち直さないという状況が、長期的なトレンドとして今出てきてるわけですね。

 インターネットに移行する部分というのが確実にあって、これはやっぱり避けられない傾向だろうなと思います。

 ところが、どこの新聞社、テレビ局もそうなんですが、インターネットを開設して、それがビジネスモデルとして今まで成功した例がないというのが事実としてあると思うんですね。しかし、だからといって、我々はインターネットのほうに全く目を閉ざしていけるのかというと、それもできないと。というのは、これからどんどん活字メディアが、活字ではなくて電子メディアとして、いろんな、例えば新聞に印刷する、インターネットサイトに流す、あるいは、電光掲示板に流すというふうに汎用性を持たせて、それをいろんな方向で発信していくというふうに多分変わるんだと思うんですよ。

 そうなると、インターネットに投資するというのではなくて、我々がいろんなところに汎用可能な電子メディア媒体として追求していかなくちゃいけないという、そういう環境に置かれていると思うんですね。

 ですから、おっしゃるように、新聞というのはタコ足みたいに、ある意味で自分の資産というのを食いつぶしながら、インターネットにどんどん進出しているという状況なんだろうと思います。

 ただ、最近、私はこっちに帰ってきて、いろんな方に新聞をどういうふうに読んでいらっしゃいますかということをうかがうんですが、自分でも予想外な答えが一つありまして、夕刊が読まれなくなっている。夕刊をとっていても読まない方が非常に多いという話は知っていたんですが、ある人に聞いてみましたら、今、会社でテレビを見てる人がほとんどいないと。もちろん、役所とかマスコミは昼のニュースを少なくとも見て、マスコミはもう四六時中テレビを流しっ放しにしてるわけですが、こういう会社というのはむしろ少なくて、ほとんどの人が日中テレビ見てないんだと。

 じゃあ、何でニュースをチェックしてるかというと、インターネットと携帯だと。夕方帰るころには、大体きょうの午後、夕方までに起きたニュースをわかっていて、うちに帰って奥さんに、「あなた、きょう夕刊でこんなこと出てたの知ってる」と聞かれて、「そんなの知ってるよ」と言うと、奥さんががっかりするという、そういう話を聞きましたけれども、多分そういうことなんだろうと思います。

 その話を聞いて、一つ強みがあるなと思ったのは、例えば朝日をお読みの方だったら、アサヒ・コムに日中接触していると。日経を読んでる人は日経のサイトでチェックしてると。そういう結びつきがかなり強いということがわかったんですね。これは一つのやっぱり強みなのかなと。ここを何とか生かしていく工夫というのは必要なのかなという気がします。

 それと、もう一つ、テレビが、私はやっぱりインターネットの脅威にさらされていると思うんです。というのは、以前、私は例えばNHKは必ず12時とか7時のニュースをチェックしていたわけですが、もう最近はテレビの前に座っていないわけですね。それはNHKのサイトがあるから、そこでニュースをチェックすればすむわけです。これはもうBBCもCNNも同じで、ある意味で言うと、つまりそこに、ある定時に座っていなくてもテレビのニュースがチェックできてしまう、あるいは、もう動画そのものが出てきてしまうというのが今の状況なんだろうと思うんです。

 ですから、インターネットは脅威であると同時に、ある意味では活字媒体にとってはプラス面もあるのかなという気がちょっとしています。


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