アサヒ・コム このサイトの使い方へ 検索へジャンプ メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

朝日新聞社からアスパラクラブクラブA&A携帯サービスWeb朝日新聞サイトマップ文字拡大・音声

天気住まい就職・転職BOOK健康愛車教育サイエンスデジタルトラベル囲碁将棋社説コラムショッピングbe

ここから本文エリア現在位置asahi.comトップ >  シンポジウム記事

徹底討論「ジャーナリズムの復興をめざして」
【質疑応答】(1)

写真

会場風景

Q:将来ジャーナリストになりたい学生がやるべきことは?

 村松 ここで、会場から幾つか質問をいただいているんで、これにそれぞれお答えいただければと思います。

 今出たお話と絡むんですが、「将来ジャーナリストになりたいと考えている学生が大学時代にすべきことは何だとお考えですか」。先ほど四つの条件を挙げられましたけれども、立花隆さん、こういうご質問なんですが、学生は何をしたらいいんでしょうか。

A:勉強すること――ゆとり教育の弊害で知識量が劇的に低下

 立花 勉強することです。(笑)

 今の若い人は、本当に勉強の水準が下がっているんです。日本の大学生の水準というのはグローバルスタンダードからいって、驚くほど下がっています。その下がっている実態というのを日本の大学生はほとんど気がついてない。それは外国へ行って、外国で仕事をした時に、おそらくすぐ気がつくことですよね。日本の一流大学、僕は一応東大で今先生をやっているんですが、そこですら、相当質的にレベルががくんと落ちています。それはもう本当に劇的に落ちてるんです。

 それは一つは、今年の新入生から、要するに、初等、中等教育すべてをゆとり教育になって育った学生たちが今年の1年生になっているんです。それは大学の同僚の先生に聞いても、今までの、それ以前の学生と質的に相当違う現象が現れているんですね。それはまだ大学1年生です。

 それが4年たつと社会に出てきます。これまで何年かおきに、社会全体で、今の新しく社会に出てきた連中は宇宙人であるみたいな、そういう表現で、世代で独特の変化が現れたことが何度かあるんですね。何度かあるそれは、ほとんどが教育制度が劇的に変わった時に、それが生産した新しい世代が社会に出てきた時に、これまでそういう言われ方がされている。この後4年目、今の1年生が社会に出る時に、おそらくもっと大きくそのことが言われると思います。

 それで、変化の方向がどういう方向なのかというと、どちらかというと僕はネガティブに、必ずしもすべてがネガティブではありませんけれども、ネガティブな方向で受けとめています。それはあまりにも教育、中身のコンテンツの量を、あのゆとり教育で減らし過ぎたんです。これまでも当然大学に入るまでに個人の頭の中に蓄積せねばならない必要な情報量があったとすると、ずいぶん減ってるんです。

 ゆとり教育にもいい面はあるんですよ。いい面はあるんだけれども、それが補えないぐらい劇的に知識の量が下がっています。

 それが、今度は社会に出た時に、グローバルの競争っていうのにさらされるわけです。そうすると、そうじゃない社会の人たちとイーブンに競争ができるかといったら、できない人たちが、今の日本の社会の下のほうにどんどん出てきていますね。これはものすごく恐ろしいことだと思うんです。

 ここで僕は朝日新聞に問いたいことは、特にゆとり教育のそういう弊害がどこにあらわれているかというと、いわゆる理科教育の側面なんです。だから、日本が科学技術創造立国と言いながら、理科教育の中身が、それこそがくんと下がっているんです。単に絶対数の時間をとっても、おそらく昔の4割減ぐらいになっているわけですね。

 それほど劇的に、日本人総体の科学技術に関する知識量の劇的な変化が、実は朝日新聞にも反映しているんですね。何に反映しているかというと、今、主要なメジャーな日本の新聞の中で、常設の科学欄を持っていない新聞は、朝日だけなんです。ほかの新聞は全部朝刊に常設の科学欄があるんです。朝日新聞の場合は、夕刊には週2回ぐらいあるんですが、常設の科学欄を持つ朝刊というのは、しばらく前に消えたままになってますよね。

 だから、そういう社会的な変化を先取りしてそうなったのかもしれないけれども、これはやっぱり、これまで日本のクオリティペーパーを自称してきた朝日新聞としては非常に恥ずかしい現象だと思うんですが、それはどうなんでしょう。

 外岡 大変恥ずかしいと思います。科学について、立花さん、東大で連続講義をなさった中で、教育制度が学生たちの考え方、あるいは、知識に、どういうふうに影響を与えてきたのかというのをご紹介になっていて、その中で受験科目を減らした時に、例えば高校時代に、文系の人であれば理系をとらなくていいと、講義そのものをとらなくていいと。理系であっても、例えば生物とか物理をとらなくてもいいという、どんどん受験科目軽減のほうにいきましたね。

 その結果、立花さんの言い方によれば、中学のレベルでとまってしまった。つまり、物理科学でいえば、19世紀の知識しかないという学生が、例えば理系にいっているとか、あるいは、文系の学生でも19世紀までの歴史しか知らないと、中学校の知識がすべてという学生が登場しているんだという、そういうご指摘をなさったことがあると思うんです。

 私はやっぱりそのバランスのなさというか、それが一番大きな問題になっているのかなと思うんですね。ですから、特に朝日でいえば、やっぱり朝刊から科学面がなくなったということは、今考え直さなくちゃいけない時期に来てるなとやっぱり思いますね。

 村松 よろしいですか。それでは、次の質問……。

 立花 今の問題で、実は大学のほうでもやっぱりこういう状況をこのままじゃいけないというので、例えば東大で理1というのは工学部と理学部へ行く。その理学部で、これまでは生命科学というのは必修じゃなかったんですが、今年から理1全学必修になりました。それで、そのために新しい教科書もつくって、とにかく全学生が今、生命科学を学ばなきゃいけないという、そういう段階に来ているんですね。

 これはアメリカがいち早く生命科学を必須にしたんですが、メジャーな大学のほとんどが、もう5、6年前ですか、そのあたりから生命科学を必修にしたんですね。つまり、今いろんな科学の、あるいは、技術のいろんな側面で、生命科学の基本知識がないと全くわからない、そういう時代に非常に早くなりつつあるという自覚からそれが起きてまして、その後追いをしたという感じなんですが。そういう時代ですので、朝日もその後追いというか(笑)、もうちょっと科学の、サイエンスの側面に力を入れていただきたいと思います。

写真

村松泰雄氏

Q:ウェブ2.0時代のメディアの役割は?

 村松 次の質問です。外岡さんに、「ウェブ2.0の時代になると、第4の権力たる報道機関というのが不必要になる可能性がありませんか」、という質問です。このウェブ2.0の時代とジャーナリズムの本来の役割について、どのようにお考えでしょうか。

A:新聞は権力監視役を続けなければならない

 外岡 先ほど申し上げたように、ウェブ2.0って何かというと、一言で言うと、かつてはコンピューターというのは、あるフロア全体を占めていて計算の機械だったと。それが卓上に置かれ、性能がどんどん進化しながら、今度はラップトップになって、今や身につけることができるようになった、それがコンピュータの進化だと思うんですね。それがさらにネットワークを形成する、横に連絡がつくようになった、これがウェブの成したことですね。

 ウェブ2.0って何かというと、こちらの、つまりハードディスクの中になくても構わないと。要するに、ウェブの向こう側にデータがあれば、構築すればいいんだと、こちらには何も持たなくていいというのがウェブ2.0ですね。

 そこで何が起きるかというと、つまり、ウェブの向こうにあるものをすべて組織して、あるいは、そこから検索して、ウェブ全体を自分のデータベースにしちゃうといった時に何が起きるのかというのが、ウェブ2.0が突きつけている問題なんだろうと思うんです。

 その時に、私がさっき申し上げたように、権威がなくなる、あるいは、ある意味では権力、つまり、その時々にだれが力を持ってどう作用しているのかというのが見えにくくなるという時代が、多分来るんだろうと思います。

 立花さんがご指摘になったように、メディアというのは詰まるところ何かというと、権力を監視する、権力をチェックできるかどうか、というのが問われると思うんです。

 私はウェブ2.0の時代になっても、その機能というかその必要性はおそらく変わらないし、それ以上に、今まで以上に要請は強まると思うんです。ただ、それが、我々の発信力の低下とか、あるいは、信頼性の低下につながって、それが弱まるかもしれない。それを何とかここで復権しなくちゃいけないというのが今問われることなんだろうと思います。

 朝日はもちろん去年いろんなことがあったわけですけれども、その問題とは別に、活字メディアあるいは新聞メディア、あるいは旧メディアとして、ものすごく大きなチャレンジを受けていて、そこの部分をどうやって克服するのかというのを見出さない限りは、この状態というのはやっぱり最終的には克服できないだろうと思っています。

 はっきりとした、つまり、これが回答だということは、正直言って今浮かばないんですが、権力監視の役割としての新聞というのは続くだろう、続かなくちゃいけないというのがとりあえずの答えです。


ここから広告です 広告終わり
▲このページのトップに戻る

asahi.comトップ社会スポーツビジネス暮らし政治国際文化・芸能ENGLISHマイタウン

ニュースの詳細は朝日新聞紙面で。» インターネットで購読申し込み
asahi.comに掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。
| 朝日新聞社から | サイトポリシー | 個人情報 | 著作権 | リンク| 広告掲載 | お問い合わせ・ヘルプ |
Copyright The Asahi Shimbun Company. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.