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国際シンポジウム「ジャーナリズムの力」 ―試練と可能性―
【討議(前半)】(5)

 高成田 田中さんと藤原さんにもう少しこの問題をお話いただきたいと思います。

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藤原治氏

 藤原 じゃあ、よろしいですか。また読者という立場なんですけれども、せっかく高成田さん、村松さんいらっしゃるんで、朝日のイラク戦争に対する論調について、読者としてちょっと質問してみたいと思うんです。

 朝日新聞は、昭和20年11月7日付で、「国民と共に立たん」という格調高い宣言文を書いたんですね。それは、明らかに戦前の大本営発表をそのまま載せた反省から、戦争に対してものすごく朝日新聞はセンシティブだと思っています。それは僕のケミストリー(相性)にものすごく合っているということなんですね。

 それで、詳しいことは僕もわかりませんが、イラク戦争のときの朝日の論調は、戦争はあかん、どんな戦争もいけないことだというふうな、僕は読み方をしたんですね。

 だから、いい戦争、悪い戦争なんてとても区別はできないから、これはやっちゃあかんという朝日に非常に賛意を表したということなんです。アメリカがあの戦争を正当化したのは、さっき田中さんおっしゃいましたけれども、要するに大量破壊兵器があったからだろうということなんですね。

 それで、朝日は大量破壊兵器があるなしにかかわらず戦争反対と僕は取ったんです。結果的に、大量破壊兵器はなかったわけで、朝日の論調がすごい世界的にもステータスを上げたと僕は思いました。

 しかし、もしも大量破壊兵器があった場合――歴史に ”if” (もしも)はないんで、これはナンセンスかもわかりませんが――朝日がすべての戦争反対という論調をとれたのかな。世界的に世論がものすごく盛り上がりますから、そのへん、答えていただきたいと思います。

 高成田 ありがとうございます。ということで、まったくシナリオなく進行していることがよくおわかりだと思います。では、ジャーナリスト学校長というよりは、イラク戦争開始のときの論説副主幹でもあった村松から。

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村松泰雄氏

 村松 私の理解を申し上げますと、こういうことです。大量破壊兵器はあるかないかわからないという段階が、ずっとあった。私たちは、大量破壊兵器がないに決まっているから戦争に反対すると言ったのではないんです。

 大量破壊兵器はあるかもしれないということを私たちはずっと疑っていました。2003年2月、パウエル国務長官が国連安保理で大演説をして――彼は今、それを後悔しているんですけれども――あの演説のときも、私たちは戦争には反対だというふうに書きました。

 しかし、それはあの時点で、大量破壊兵器があるかないか、国連が調べようと。そしてフランス政府は、もっと数カ月、あるいは夏まで国連の査察をやって、徹底的にないかあるかを調べよう、と主張した。国連のすべての手段を尽くして疑惑が残るのであれば、その段階で対処を考えましょうと。

 その考えるというところには、当然のことながら、軍事的手段が含まれているわけです。ただ、それには国連安保理の新しい決議が必要だし、ブッシュ政権は逆の道を行った。

 2001年の9・11テロがあって、アメリカとヨーロッパは一緒に闘おうと言ったんですね。日本も限られた制約の中でやるべきことはやるべきであると思いました。

 しかし、それとイラク戦争はずいぶん違う話になってしまいました。

 イラク戦争は国際法秩序から考えても、リスクが高すぎる。戦後のイラクを考えた場合にも、そうです。

 私は1991年の湾岸戦争のときにワシントン特派員をしておりまして、あのころ今の大統領のお父さんのブッシュさんが、多国籍軍をバグダッドに攻め込ませるのを思いとどまった。クウェートを解放して、そこで戦争は終わったんですね。

 これは、もちろん国連安保理決議を遵守したということなんですけれども、同時に、フセイン政権をいっきに倒してしまうと後が大変だというのが大きな判断材料だったというふうに私は記憶しています。

 つまり、政権を倒して民主化だと言葉で言うのはたやすいが、事はそう簡単ではないわけですね。イラクはアメリカでも日本でもない。やはりそれだけ現実的な判断をしないと、世界が大変なことになるし、アメリカ自身も深く傷つくということから反対をしたわけです。

 戦争はもともと、正当化されるものがあるにしても、最後の最後の手段だ。イラク戦争のことに関して申し上げれば、以上に尽きると思います。

 藤原 わかりました。


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