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国際シンポジウム「ジャーナリズムの力」 ―試練と可能性―
【討議(後半)】(4)

 高成田 はい、藤原さん。

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藤原治氏

 藤原 ちょっと流れ変えてみようかな。ちょっと今全体の流れにさおさす、2つぐらい、批判的なことを言ってみたいと思います。

 1つは、ご両人の共通点は、やっぱり書く側の論理だなというのをすごく感じるんですね。それで、ジャーナリズムの質が高くなってきたと判断するのはだれでしょう。ジャーナリストじゃないと思うんですね。今まではジャーナリストだった。みずからがどうだと言っていればよかったけど、ジルさんもちょっと触れましたけど、今は読者に移っているんですね、基本的には。

 それで、お聞きしていますと、メーンストリームの主流の書き手の論理と、それにかみつく傍流のブログ――と言うとちょっと言葉はとげとげしいのですけど、両者が一生懸命対峙しているだけになって、お互い書き手の論理だけだなということなんですね。くどいですけど、それを判断するのは読者だと。

 それで、ちょっとおもしろい事例がありまして、これは朝日新聞紙面審議会、これは朝日新聞に載っているんですけど、やなぎみわさん、次のように述べています。「新聞には双方向性はなく、読者は情報の一方的な受け手となり、場合によっては上から下に啓蒙されているかのような印象を抱く。ネットでの個人メディアに慣れ、情報発信にアイデンティティーを感じているような若者は、新聞のような組織メディアには反感すら感じているのが実情だ」と。これは朝日新聞に載っているんですね。

 要するに、情報がやっぱり2ウエーになりますから、かなり読者の判断力というのはしっかりしている。昔は読者は大衆だったんですね。言ってみれば、無知蒙昧だったんです。したがって、いわゆる志が高いジャーナリストに判断を委ねていた。今は違いますからね。

 そこでちょっと強調したいのは、ジャーナリズムの質を上げるってものすごく難しいんですが、崩すのはものすごく簡単なんです。言うか言うまいか迷ったんですが、例えば、朝日新聞長野総局の人が、知事のインタビューをせずに虚偽メモをつくり、それが紙面に載っちゃった。このときのマイナスの刺激、ジャーナリズムに対する信頼性の落ちていくスピードってものすごく速いんですね。それをひとつ考えていただきたいなと。

 それと、もう1点。もう1つ感じているのは、今回のシンポジウムでもネットとメディアは対峙しているんですね。でも、世の中の流れというのは、ネットとメディアの融合。新聞紙上にも躍っていますけど、ネットとメディアは融合するという時代なんですね。

 その証左に、ニューヨーク・タイムズはネットとメディアの編集のところを一緒にした。これは1つの融合の契機ですけど、僕の分析によると、2011年に地上波がデジタル化した後には、ものすごい社会変革が、ネットとメディアの融合が訪れます。ネットとメディアの融合というのは、両者が対峙しているんじゃないんです。

 一緒の土俵にもっと乗るんですね。そのとき、ジャーナリズムって一体何なんだ。紙というのはあるのか。かなりきょうは短期的な現状の論戦に近いなというのがちょっと僕の感じでした。

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田中宇氏

 田中 今の話にちょっと一言。1つは、私とジルさんは全然対峙していないんです。私はジルさんたちが書いたものを読んで、こうじゃないかというふうに言っている。ブロガーであるということは事実でしょうね。私はブロガーです。

 もう1つ。僕はメールマガジンを発行していて、17万部ぐらいあるんですね。読者からメールが来るんです。大体は中傷ないし攻撃です。

 例えば、北朝鮮問題なんかに関しては、ほんとうにひどいものが来る。今でもそうかもしれないけれども、「おまえは北朝鮮の犬か」みたいなね。朝日もひどい目に遭ったかもしれない。

 国民は簡単に乗せられちゃうから、(抗議の)電話をしたり、メールしたりするわけでしょう。そうすると、僕は個人でメール配信しているから、別に広告も減らないし、何でもやっちゃう。だけど朝日、マスコミはそうはいかないんですよ。政府からも圧力来るし、ちょっと報道を間違えると、小泉政権なんかすぐ、いくつかのテレビ局に圧力かけましたからね、実際に。

 読者で一番何か言う人というのは、ほかの目的があるんです。アメリカでは、例えば、今、問題になっているのは、いわゆるイスラエルロビーの問題がありますよね。それだって、いわゆるアメリカのユダヤ系の中の複雑ないろんな事情があっての話なんだけど、やっぱりそれは、アメリカのマスコミの人というのは、イスラエルロビーからばっと言われると、ぎゃっとなっちゃうんですよ。

 同じように、拉致家族の関係者からばっと言われると、ぎゅっとなっちゃう。それをバックアップしているのは国民だということですよ。だから、読者だということですよ。読者のふりをした人がまずメールを出してくる。

 だから僕は、藤原さんのおっしゃっているのはまったく空論に過ぎないと思う。実際、僕は毎日毎日、毎週毎週配信をして、つまり、マスコミの一部だというふうに、ある種自覚している。ウェブサイトは月に140万ページビューぐらいあります。外務省の人も見ているんですよ。朝日の人も見ている人もいるかもしれない。そうすると、マスコミのように振る舞わなきゃいけない。

 するとまず来るのは、「おまえはインターネットのNHKだろう。もっと公正にやれ」というふうに、「おまえの中国報道は間違っている」というふうに来るわけですよね。昔はアンチ・ブッシュだとか言われて、最近は、「あなたの言ったとおりでしたね」というメールも来ます。あんまり自慢すると嫌だから言わないけれども、でも、簡単に読者にゆだねるというふうにならないんですよ、これは。非常に難しいということです。


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