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国際シンポジウム「ジャーナリズムの力」 ―試練と可能性―
【討議(後半)】(8)

 高成田 どうぞ。

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ジル・エイブラムソン氏

 エイブラムソン 戦争前の報道の具体的内容のすべてを点検し直すことに大きな意味があるかどうか分りません。しかし、強調しておきたいのは、ジャーナリズムがインターネットに移行するに伴って決定的に重要なことが一つあるという点です。それはタイムズ紙が何回となく立証してきたことだと思いますが、ニュースを報道して真実を国民に伝えるためには、本当に懸命に闘い、時には政府権力に挑戦しなければならないということです。

 国家安全保障局(NSA)が米国内で令状なしの盗聴を行ったことについての報道であっても、われわれが中国で行った報道であっても、それは同じことです。後者との関連では、われわれのジャーナリストの1人が中国で投獄されています。中国ではインターネットに若干の中断がみられました。

 私には確証はありませんが、ニュースサイトをもっている大手会社の一部が、中国など一部の国の政府検閲を理由に、掲示したニュースを進んで撤回したようです。この種のニュースを出しておいて、最大多数の読者が閲覧できるようにするために戦うには、やはりそれなりの水準の経験とジャーナリスト的な筋力がなければなりません。

 ときどき心配になるのは、政府権力と対決した場合、あまりにも多くのニュースサイトがすくんでしまい、クオリティ・ジャーナリズムの一部だけがこれらの記事を公開しておくために闘っているのではないか、ということです。

 フェレンジ 1つの数字をご紹介したいと思います。ファイナンシャル・タイムズで報道されたことですけれども、数日前のファイナンシャル・タイムズです。ヨーロッパ、アメリカ、イタリア、スペイン、フランスの比較研究なんですけが、平均的にヨーロッパ人は週あたりインターネットを4時間使うと。新聞を読む時間はせいぜい3時間だと。その3倍ぐらいテレビを見る。ですから、テレビとインターネットが非常に今優勢になってきている。

 で、インターネットは新しいコミュニケーションの手段だというふうに言われるわけです。しかも、仕事のやり方、ジャーナリズムのスタイルも変えつつあるということであります。このような革命、これはテレビが興ったときに、ジャーナリズムのあり方が変わった――これは30前、40年前でしょうか、アメリカが最初ですけれども、テレビが発達したことによってジャーナリズムが変わってしまったわけですね。それと同じような変化が、今インターネットの発達によって、いわゆる書き言葉、活字によるジャーナリズムのあり方が変わってきた。

 というのは、映像のレトリック、テレビの映像のレトリックと、それから活字のメディアのレトリックは違うわけですね。もちろん、テレビはこの活字媒体の新聞を殺したわけではありません。しかし、そのスタイルを変えてしまったということはあるわけですね。

 映像のスクリーンで生きている人間、それに慣れている人間に対して、同じような形で、伝統的な、映像よりもテキストに慣れ親しんできた読者層と同じような語り方はしないわけです、テレビの視聴者に対しては。ですから、新しいメディアが我々の風景の中に今はっきりと定着している。したがって、インフォメーションの出し方、スタイルというもの、あるいは作業の方法まで変えてしまった、変えつつあるということですね。ですから、テレビのジャーナリストなのか、新聞のジャーナリストなのか、あるいは、ブログ、インターネットを通してのジャーナリストなのかによって、ずいぶん違ったスタイルがあるわけですね。

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トマ・フェレンジ氏

 活字、テレビに加えインターネット、オンラインのジャーナリズムの3つあるわけですが、オンラインのジャーナリズムの場合は断片的だが、より双方向かもしれません、活字の新聞の場合よりははるかに。ですから、このような変化、あるいは革命と言ってもいいでしょうか、これを十分認識しなければいけない。そして、特に今の若者層、これはインターネット世代ですね。それから、映像で育っている。したがって、これまでのスタイルは、いわゆる新聞のジャーナリストは、そういった新しい事態にこたえていかなければいけない。

 確かに新聞社もウェブサイトをつくったり、読者との交流のページをつくったりしているわけです、ルモンドも。95年につくりましたので、11年前になるでしょうか。はじめはルモンドのウェブサイトは小さいものでした。しかし、それがだんだん拡大発展して、ほぼ新聞の購読者と同じだけの、ウェブサイトの訪問者がいるという事態を迎えております。

 したがって、私はこのインターネットの発達によって新聞が消えてしまうというふうには思いません。ジルさんが名前をあげたルパート・マードックと同じように、私はデジタル世界の移民者であると。つまり、私はそういったインターネット時代に生まれ育った子供ではないわけですね。

 ですから、十分インターネットを使いこなすような世代ではないわけですけれども、しかし、ジルさんがおっしゃったように、テレビのジャーナリストであれ、新聞のジャーナリストであれ、オンラインのジャーナリストであれ、この倫理、あるいは報道の姿勢というものは同じだというふうに私は思っています。

 その媒体の違いによって仕事が変わる、あるいは考え方が変わる、倫理が変わるというふうには思いません。ですから、私は同じ仕事をやっているんだと。もちろん、技術的な、あるいは媒体上の、あるいはアプローチの違いというのはあっても、基本は一緒だと。

 ブログについてずいぶん話題になりました。しかし、私はブログで流す情報と、それから新聞の日々のクロニクル的な記事、これは本質的には違わないと考えています。ただ、ブログで伝えられる情報は、直ちに読者からの反応が寄せられるわけですよね。このルモンドでも、オンブズマンはずいぶん読者からの反応をたくさんもらっております。

 私もルモンド紙のオンブズマンの経験があります。それによってさまざまな読者の反応を、あるいは批判を受けながら、しかし、うわさとかセンセーショナルな報道に対抗して、特にプロパガンダに対抗して、あるいは世論操作に対抗して、的確な情報を収集し伝えていくという、この姿勢、これはテレビであれ、インターネットであれ、あるいは紙面報道であれ、根本は変わらないのだと思っております。

 高成田 藤原さんは近く、『ネット時代 10年後新聞とテレビはこうなる』という本をお出しになるとうかがっております。この壇上で話題になっていたんですが、インターネットはもうからないという話がありました。ビジネスというところから、どんなふうにお考えになっていますか。

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藤原治氏

 藤原 現状でどう判断するかというのと、ネットとメディアの融合が起こった後にどう判断するかは大分違うんですね。だから、時間軸を入れなくてはいけない。

 今はやっぱりもうからないでしょうね。だからこそ、新聞も逡巡しているんですね。そうかといって、対抗しなくちゃいけないから、ファッションと言ったら語弊がありますが、恐る恐るそちらに軸足を入れている状態ですね。

 確かに、ジルさんもおっしゃったように、ビジネスモデルはなかなか難しいんですよね。結論は簡単で、ビジネスモデルをつくることは難しいんだけど、結論は簡単なんですよ。記事の質で課金するか。例えば、ニューヨーク・タイムズのトーマス・フリードマンなんかは、フリードマンの論調だけで年額50ドル近く取っているんです、月。それと、もう1つ簡単なやつは、広告なんですね。この2つしか、今のところ手がないんですよ。

 だから、これをうまく記事とどう連動するか。例えば、広告の話はきょうするつもりではなかったんですが、いろんな試みがあります。でも、今の新聞社のずっと培われた100年の歴史から見ると、何でも難しいと思うんです。

 ネットの記事はただで見えるというのは見えるだけで、あれは、例えば、グーグルですね。あれ、かちゃかちゃやって、何でこんなのがただで見えちゃうのかなと思うんですが、あれはただで見えるだけなんですよ。グーグルの去年の損益計算書を見たらわかるんですが、99%広告で全体がバランスされているんですね。

 それが露出しないところがあるから、ただで見えるだけなんですね。だから、ネット記事はただではないんです。ご苦労されていると思いますね。それは非常に年収が少ないのはよくわかりますんですが、今はかなり難しいですね。


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