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フィンランドシンポジウム「ユビキタス社会――通信の革新と未来」
蝶野光氏の基調講演(1)
テーマ「ユビキタスネットワーク社会の実現に向けて」

 蝶野 総務省総合通信基盤局で国際部長をやっております蝶野と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

 冒頭、大使のほうからお話がありましたように、本来、きょう総務副大臣の田村(憲久)がこちらでお話をさせていただくつもりでしたが、実は午後一番から本会議をやっておりまして、総務大臣、総務副大臣等々、私どもの関係者は全員来れないということです。それで、すべての準備をしておりました国際部のほうで対応せざるを得ないということで私がまいりました。皆さん方には大変申しわけないことでございます。

 私自身、この会場は非常に懐かしゅうございまして、今大臣のお話を聞きながら、つらつら思っておりましたら、15年前に、アメリカからヴィント・サーフ(インターネットプロトコルTCP/IPの開発者、2006年12月現在グーグルの副社長)さんに来てもらって、日本で始めて、多分、こういう数百人規模のインターネットの講演会をやらせていただいたのがここでした。それから15年たって、大臣の言葉にありましたように、インターネットがさまざまな通信のバックボーンになり、これからの社会に非常に大きな影響力を与える存在になった、世の中を大きく変えてきたんだなというのを実感した次第です。

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 本題に入りまして、日本のICT(情報通信技術)の現状について紹介をしておりますのが、このグラフ(図1)です。左側にありますのが、いわゆるブロードバンドと言われております加入者数の内訳です。

 ブロードバンドって一体何だろうという定義はさまざまありますので、ここではあえて何キロビット以上のサービスの場合はブロードバンドと言う等々を議論してもしようがありませんので、傾向を見ていただければと思います。DSLと書いてあります。世間的に一番多いのはADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)でして、一時期さまざまなターミナル等に非常に目につくような、販売員の方がADSLのルーターや装置を皆さんに渡しながら契約してくださいというような、大変な時期がありました。ですから、デジタル契約者が、ずっと増えていたんですが、この数年来、頭打ちから減少傾向に入りました。それが一番上の部分にありますFTTH(Fiber To The Home)でして、光ファイバーを家庭まで入れたという部分が、しっかりした形で増えてきました。その結果、現実問題としてADSLが減ってきているというのが、左図で見ていただくブロードバンドの現状です。

 さらに右図が、1カ月当たりどういう状況になっているかというグラフです。1カ月当たりで一番増えているのが、加入状況としては、当然まだDSLが半数以上です。やや見づらいのですが、このグラフの右端の一番下の丸、ちょうどその上がプラスになるかマイナスになるかという線ですから、DSLがADSLを中心としてスタートして以来、初めて1カ月ベースで明確に数字が減り始めたというのが、一番右の数字です。では、一番上で上がっているのは何か。FTTHでして、確実に光ファイバーが家庭に引かれ始めているということです。

 もう一つ大きな通信の変化があります。携帯電話です。携帯電話が、皆さんが普通に自宅に引いていらっしゃる加入電話を乗り越えて、もう2年、3年たっておりますが、この携帯電話の加入数も、さまざまな機能を持ったものに順次入れ替わっており、今、その総数が9381万加入というところまできました。電話最盛期でも6000万加入というふうな言い方をしておりました。既に携帯電話は9381万加入ですから、日本人の人口が1億強、赤ちゃん、さらに、ほとんど寝たきりの方々を外しますと、1人2台持っている方も大分いらっしゃいますので、あまり断言するわけにいきませんが、ほとんどの方が持っているというのが今の携帯の契約数かなということです。現実問題、さまざまな機能がどんどん増えてきていますが、これが日本の一番大きな、ある意味では世界的な特徴かと思います。

 せっかくの機会ですから、一つだけ蛇足的な話をしなければと思いますのは、実は、案外ご存じない方が多いのですが、1979年、世界で一番最初に携帯電話を始めたのは、日本です。2番目に始めたのはフィンランドです。その後を追っかけで始まりましたアメリカ。なぜかモトローラが非常に有名になりましたので、さも携帯電話というのはモトローラが開発して、世界中に普及させたにもかかわらず、日本が独特の制度をやっているというふうな受けとめ方が一時ありましたが、実は79年に東京で、当時の電電公社が携帯電話を始めたのが世界で一番最初でした。

 それから若干時間がたって、私、たまたまフィンランドにうかがう機会がありました。その際びっくりしたのが、日本と同じように、400メガ帯のサービス、800メガ帯のサービス、さらに1・5だったと思います、2ギガまではいってなかったと思いますが、そのあたりのギガヘルツ帯のサービスを含めて、3種類の携帯電話サービスを国内で提供されていた。4番目の周波数を使うことを考えているという話を、そのときうかがいました。

 日本もほとんど同じような周波数構成でやっている。携帯電話に関する取り組みについては似たような傾向があります。しかし、それから15年たちまして、フィンランドのノキアが、中国から南アフリカまで、ユーラシア大陸をすべて覆い、なおかつ、アフリカ大陸まで含めて、ノキアの端末は普及しておりますが、残念ながら、日本では非常に影が薄いという現状です。

 日本のサービスの大きな特徴ですが、普通の通信だけではなく、情報処理、エンターテインメント系など、非常に多くなっております。朝夕の通勤時間帯に若い人たちがほとんど携帯を操作している。ついこの間まではメールを見ていたんですが、最近はほとんどゲームをしているということでして、携帯電話が、電話機というよりはさまざまな情報のツールになってきています。

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 このような携帯電話の隆盛、さらには、ようやく花開くような光ファイバーの展開という中で、日本のICT産業はどういう影響を与えてきたかというのを、若干マクロ的に見たのがこのグラフ(図2)です。実質GDPに、ICT、情報通信産業というのが、果たしてどのくらい寄与したのかというのがこのグラフです。産業連関を含めてさまざまな計算をしております、その前提を説明し出しますと、これ、きりがありませんので、こういう一つの計算結果があるというふうにご理解いただければと思います。

 最近よく使っております数字、2004年度の日本の経済成長率は2.5%でしたが、情報通信産業は何と1%寄与した。すなわち、成長の4割を情報通信産業が頑張っているんですよ。この数字ばかり言われるんですが、実はもう少しさかのぼって考えてみますと、日本がいわゆるデフレかスタグフレーションの真っ盛りのころから含めて、情報通信産業の実質成長率のみはすべて上にありまして、ほんとうの意味で日本経済がとんでもないところにまで落ちるのを支えてきたのが情報通信産業、ICT分野ではないかと思っております。こういうふうにしっかり引き続いてきましたが、これをどういう形で維持できるのか、また維持してもらうのかというのが、これからの大きな課題ではないかと思っております。

 では、今後のICTについて、私どもがどういうことを考えているのかをお話します。携帯電話の世界、もうこれ以上いいよという一部の方のご叱責もあるのですが、技術的に進んできており、現在、3G世代(3rd Generation:音声通話用の第2世代に画像、動画、デジタル情報などを組み合わせたもの)というふうに言われているところでして、これが3・5世代、さらに3・9世代、4世代という形で、次のバージョンアップをねらっていきたいと考えております。本来、4Gをつくる最大の目的は、1台の携帯電話で世界中どこへ行っても同じように完璧に使える、なおかつ、その第4世代携帯電話には、無線系サービスにもかかわらず、光ファイバーと同じだけの情報のやりとりができるような機能を持たせたい。

 この時代になって初めて、この表題にあります「ユビキタス」、どこにいても、どういうところにあっても、どういうものに対してもというサービスが、光ファイバーという、一つの線に引っ張られるといいますか、それに依存せざるを得ない世界から、まさに自由に人間が移動できるような世界にまで移れるのではないか。これが、ある意味ではユビキタスの一つの大きな柱になるのではないでしょうか。

 携帯電話だけがこうなっても困るわけでして、ほんとうに光ファイバーが、かつての電話の6000万加入、そして、携帯電話で言えば9000万加入の方々をカバーできるような形でやっていけるのか。最も大きな問題は、最後の、ラスト・ワンマイルと言われていますが、まさに利用者のところに直接届けるところであります。ここの分野を、光ファイバーを1本1本引いていくというのは、大変な工事が必要ですし、大変なコストがかかるのは事実です。

 これを新しい技術で何とか変えられないかということで、無線LANとか、超高速LAN、さらには、一般的なランワン(LAN/WAN)以外に、新しいものとしてWiMAXなどの広帯域移動無線アクセスというものを、ただいま審議会で議論中でして、できれば来年あたりには商品化できるように、審議会としての結論を出していただきたいと考えております。さらに、高速無線LANにつきましても、技術基準の見直しを本年度中に行いたいと考えており、さまざまな分野で無線を積極的に活用し、ボトルネックを乗り越えていこうと考えております。


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