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フィンランドシンポジウム「ユビキタス社会――通信の革新と未来」
蝶野光氏の基調講演(2)
テーマ「ユビキタスネットワーク社会の実現に向けて」

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蝶野光氏

 ただ、そういう形でつながっていったとしても、先ほど大臣のお話にもありました、インターネットをはじめとした現在のネットワークの脆弱性、いわゆるセキュリティー問題を含めた課題を超えていくためには、インターネットにかわる新たな通信技術が、今までの電話ISDNの延長線ではなく、必要ではないだろうかと考えております。私どもは、それを新世代のネットワークという意味でNGN(Next Generation Network)という名前をつけて呼んでおります。

 どうも最近NGNと言いますと、NTTの新しいサービスコンセプトのように言われます。今、私、主に担当しておりますが、来月6日からトルコのアンタリアというところでITU(国際電気通信連合)の全権会議があります。そこに日本から国際的な電気通信の標準化をやるための局長選挙に立候補をお願いしているんですが、その方が、たまたま現職としてNTTの研究開発本部担当の取締役でいらっしゃる。その人の売りがNGNという話になりますと、何かNTTの人が国際標準として自社の開発内容を売り込みに行くんじゃないか、そういう悪い冗談がNTTの競争相手から出たりしております。

 一般的に言っておりますのは決してそういうものではありませんで、NGNを実現する一つのコンセプトとして、NTTもお持ちですし、KDDIも持っているということです。NTTのIP化コンセプト、基本的にも今までのような電話のさらにデジタル化したISDNをベースとした次世代のネットワークではなくて、基本としてはインターネットプロトコル、IPをベースに考えましょうということです。

 ただ、現在のIPネットワークの最大の問題点は、セキュリティー上弱いということです。さらに、通信としての信頼性がないなど、いろんな問題があります。それをどう乗り越えていくかということで、本年の下期からフィールドトライアル(実際の環境での検証実験)を開始し、何とか来年の下期にはサービスを提供したいというのがNTTの進め方です。KDDIにつきましては、既に固定電話のIP化に着手しており、ソフトスイッチの置き換えというのを来年末までに完了するよう進めたいということです。

 この結果、日本の通信サービスは、今までのような電話サービスだけではなく、インターネット、さらには大容量の情報伝送が必要な映像配信をセットにしたサービスが最近続々と出てきております。値段的には今まででは考えられないような7000円、8000円ぐらいで利用できる状況になってきています。私個人も非常にうらやましく思っていまして、現実問題、私自身は、光のベーシックの100メガを家庭で契約しておりますので、それだけで料金の中で一番高い。そのほかに、映像を受けるためにCATVと契約し、光ファイバーをもう1本引いてあります。何のために光ファイバーを2本も引かなければいけないのかというのを、個人的には問題に思いながら、こういうサービスが早く普及することを願っているような状況です。

 若干、今までの流れとは違う、少し変わったサービスが最近言われるようになっております。FMC(Fixed Mobile Convergence)という呼び名で言われております。何か、はやりのようで、フィックス(固定)とモバイル(携帯)をコンバージェンス(融合)するサービスですということで、さも新しいサービスだというのですが、実際どういう形で新しく提供されるのかは、実物を見なければと思います。

 私の承知している限りでは、約20年前にアメリカの携帯電話会社から出されたサービスがあります。アメリカの人は、人生で平均27回電話番号が変わるそうです。生まれた瞬間から、お父さんの転勤、学校に入る、勤めに行く、転勤をする、リタイアするというところまで、結婚したり、いろんなことがありますから、27回電話番号が変わる。それを毎月、たしか1ドルか2ドルだったと思いますが、そのお金さえ払ってくだされば、一生あなたに対してはたった一つの電話番号でつなぎ続けますというサービスを、アメリカのある移動通信会社が始めました。これが約20年前です。ドコモも、十数年前に同じような話をしていました。そういうサービスとこれがどういうふうに違う中身になっていくのかというのも、一つ楽しみではありますが、そういうものが実用化していくようになりました。

 日本として、今後どういう形に進んでいくかということです。ユビキタスをしっかり実現させなければならないということですが、とりあえず「e-Japan」として進めていたものを、2005年以降、ユビキタス・ジャパン「u-Japan」として新たな展開を進めております。戦略的なさまざまなパッケージを進めながら、役所が公的な支援だけではなく、より民間の方が前に出ていただいて、そして、規制分野を含めて、私ども役所の関与というものを、どんどん後ろに下げながら、なおかつビジョンとしては前に出していただけるような形、非常に難しい立場になってきておりますが、そういうものをどんどん進めていくという話のようです。

 実はこの2001年の手前まで情報通信政策局で政策課長をやっておりましたので、そういう意味では、こういう形をずっと引き継いでくれた後輩に対してお礼を言わないとだめなんですが、当初、無責任につくっていたのとは違いまして、今はどんどん難しくなってきている、現実との格闘で実現すべき年が近づいているという状況ではないかと思っています。

 ユビキタス社会というものがこれからできていくときに、単に通信の高度化・高速化、有線無線の一体化というだけではなく、社会のさまざまな面でプラスが出てこないとだめですね。実はe-Japanの手前で既にやっていたのは、こういうネットワーク、こういう社会を電気通信の中で実現するとすると、不可欠のものは何だろうか、やはりこれはデジタル化ではないだろうかというものです。デジタル化というのは、通信網、通信関連機器のデジタル化だけでは不十分であって、やはり放送まで含めたすべてのメディアのデジタル化ができないと、利用環境を含めて、どんなにいいものをやっても、ほんとうの中身を共通利用できないと考えておりました。

 そういう意味で、新しい時代に向かって、私どもも抜本的に技術的な融合だとか何とか以上に、制度にわたってまですべて見直していくことをしっかりやっていかなければならないという時代になってきたということで、競争政策だけではなくて、さまざまな面をすべて見直していきましょう。

 さらに、デジタル化の大きな課題であります放送につきましても、非常に時間をかけておりますが、2001年に決定しまして、03年から実質8年間かけて、日本中の放送局をデジタル波を流せる形に変えさせていただく。そして、2011年の7月ですが、24日までに、ということは23日以前に、日本のアナログ放送はとまってしまいます。日本の場合には、無理やりサイマル放送(複数のチャンネルや放送方式で同時間に同番組を放送すること)を流して、その上でとめるという形でやっております。日本は非常に恵まれております。日本の東側には、日本の周波数で悪影響を受けるところは一切ありませんので、日本ほど放送波をたくさん使っている先進国はありません。

 ヨーロッパは、もし放送波を倍にしようものなら、周りの国ととんでもない電波の干渉が起こりますから、こういう形でやるにしても、できたところから直ちにとめていかないとだめだという状況の中で、ドイツをはじめ、フィンランドもそうですし、イギリスも非常に積極的にやっているというのは事実です。日本は、おかげさまで、何とか8年間のサイマル放送が可能ですが、この経過を経た上で、2011年の7月にはとめるということです。なぜ8年か。大体今のテレビの買い換えサイクルが10年弱です。ほぼこのサイクルで何とか大部分の方が買い換えがすむだろうという状況です。

 最後になりますが、このような全体の見直し、当然通信事業をはじめ、さまざまな制度の見直しもやります。放送についても、すべてアナログからデジタルに変え、そして、そういうものの技術的なメディアとして、フィジカルなメディアとしてのバリアをなくしていくということで、大きな可能性をつくり出しました。ただ、その中で、新しい時代、日本はどういう形で生きていくのかという、非常に大きな問題を新しい総務大臣、さらには、安倍新総理のほうから宿題としていただいております。

 かつてファクシミリを標準化しましたときに、これはある意味では逆の極端な例ですが、日本が国際標準に対して大いに寄与したのは事実ですが、一時期アメリカやEC、EUから非常なクレームがきました。世界中のファクシミリの99%が日本製ではないか、貿易摩擦であると言われたこともあります。そういう時代が片方であった。基礎的な研究開発能力、技術力はあるにもかかわらず、今日携帯電話を見てみますと、トップはフィンランドのノキアであり、そしてモトローラであり、3番目は韓国のサムスン、こういうところが大きなパーセントを占める中、日本は、残念ながら、世界的なマーケットでは存在感が見えないような状況です。それだけ日本が、例えば携帯電話の技術で遅れているんだろうか、ハンディキャップがあるんだろうか、さらには、こういう携帯電話のような「ものづくり」が日本にとって不得意な、全く難しい分野なのかと言いますと、とんでもない、それこそ日本が得意な分野であるはずです。

 そういう分野を、もう一度、さまざまな原点に立ち返り、法律を全体的に、規制の体系を含めて見直しながら再構築していこうというのが、新しいユビキタスの時代に当たって役所として取り組むべき最も重要な課題ではないだろうかと思っております。そういう意味でも、ぜひ会場にいらっしゃる方、日本の方はもちろんですが、特にフィンランドの方にぜひお願いしたいんですが、日本に対してさまざまなアドバイス、ご協力、さらにはお力づけをぜひいただきたいということを最後にお願いしまして、まとまりのない話になりましたが、田村副大臣にかわりましての話を以上で終わらせていただきたいと思います。

 どうもご清聴ありがとうございました(拍手)。


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