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朝日新聞シンポジウム 「討論:日本の新戦略『地球貢献国家』をめざして」
討論1 「世界・アジア・日本:繁栄と安定のための新たなフレームワーク」(6)
五百旗頭真氏 |
- 朝日のこの社説、非常に共感するところがありました。例えば、「国際社会の世話役」という言葉などは、私が大変愛用していたところで、もしかしたら採用してくださったのか、あるいは同時並行的に同じ言葉遣いになったのか。それから、日米中の定期協議を持つべきだという出張も、私の持論で、共感するところがあり、エンカレッジングでした。
- 若干ニュアンスが違うところもあります。それは、ジョセフ・ナイさんの議論の仕方というのは、ソフトパワーを強調されるのですが、ハードパワーを否定することなくソフトパワーを重視される。健全な全体性と重層的な対応の必要性を説かれるんですね。国家的安全については、依然として北朝鮮がある。そういう脅威というものへの対応を重視しながら、地球的なトランス・ナショナルなチャレンジというものに力を注いでいかなければいけない。そういう重層性、包括性、これが大変大事なところだと私は同感するんですけれども、朝日新聞は、ソフトパワーを非常に強調されるのですが、できたらハードパワーのほうは避けたいな、軍事安全保障のことは、できたらなしにして、ソフトパワーを伸ばしていきたいというふうなニュアンスを感じて、そのあたりがちょっと違うのかなと感じます。
- 私はその両方が必要だという立場です。例えば、北朝鮮の拉致問題で、最近日本が北朝鮮への反発に凝り固まっていますね。それは拉致とか不審船とか、前から行われていた問題について、安全保障上の対応をちゃんとしていないからなんですね。甘い警備が北朝鮮にやりたい放題をやらせ、それが明らかになったら、かーっと興奮するんですね。こういう振幅はあまりよくない。社会、国民の認識が分裂しないように、振幅し過ぎないように、あるバランスを持ってやっていくためには、やはり安全保障的な対応もちゃんとやっておいて、そして、日本のシビリアンパワーとしての強みを伸ばしていく。そういう姿勢が必要ではないかと思うわけです。
- 時間が限られておりますので、日本外交のあり方について、最後に思うところを申したいと思います。首脳会談すら開けなかった日中関係、それが、安倍政権ができるとともに回復した。大変よかったと思います。王毅大使がご苦労されたことを間近に拝見しておりましたし、それから、後でお話しになる小林陽太郎氏は、日中21世紀委員会の日本側座長として、やはり大変努力された。それらの努力もあって、安倍新政権のもとで東アジアで21世紀をやっていける形が何とかできつつある。もし東アジアで21世紀に日中がいがみ合い、争っていたら、これはもうどうにもなりません。
- そういう意味で、私は、日中の心得として、日本側は過去の戦争の問題が出たときには、中国・韓国の人に対して一礼するマナーを持つべきだ。「大変きつかったでしょう。先祖が申しわけないことをしました」という一言を言うマナーを持つ。「それほど悪くはなかった。もうちょっと少なく悪かった」という議論を一生懸命するよりも、「さぞや大変だったでしょう」と言うマナーを持つ。
- 中国側のほうは、戦後日本の平和的発展、そして格差の少ない豊かな社会を築いて、アジア諸国の発展にも大いに力を尽くした、そのことを評価すべきだ。その両方が相まって、健全な東アジアの関係ができると説いてきたわけです。大変うれしいことに、昨秋の胡錦濤・安倍首脳会談、そしてこの春、温家宝首相が来られて、戦後日本の平和的発展や、日本が尽力しているということを積極的に評価する健全な関係の基盤ができた。この基盤に立って進めていくべきことは、先ほど王毅大使もおっしゃって大変心強かったですが、東アジアで日本と中国が共同議長を務める立場を築いていくべきだ。この2国がコーディネーターをやらなければ、東アジアは決しておさまらない。
- 大きく言いますと、大事なことは、日米同盟プラス日中協商だ。「entente」と外交史の言葉で言いますが、同盟は日米間ですが、日中の間では具体的な共同利益についての合意をして、それをコアにして、両国は戦争をするのではなく、協力して同行するのだというオーラを漂わせていく、そういう協商という技法を日中間には持つべきだ。東シナ海での資源の問題で大きな共同開発の枠組みができれば、それが進むだろうと思います。
- そして、日米中の3国の関係、先ほども論じられましたけれども、3国それぞれに不安と悪夢があります。中国の方がよくおっしゃったのは、日米同盟があって、日米で中国を封じ込めするのではないかという猜疑心、不安があるんですね。では、日本はアメリカと組んでいるから安心かというと、そうではなくて、ニクソンのときのように頭越しで米中が接近したり、あるいは、クリントンのときのようにジャパン・パッシングで日本を横に置いて米中でよろしくする、そうなることの悪夢があるわけですね。では、アメリカは安心かというと、そうではなくて、日本と中国がアメリカを排除した東アジア秩序をつくるのではないかということが、やはり歴史的な不安である。そのような不安の共同体で漂流するのではなくて、3国が定期協議を持つ。アジア・太平洋の重要な問題、難しい問題は、実は日米中が一緒にしなければ、結局は解決しない。もちろん、いろんなレベルでマルチがあり、6者会議があり、そして、韓国・中国・日本の関係があり、ASEANプラス3がありますが、しかし、最重要の問題は、やはり日米中が合意してリードしていく。その合意の枠組みができたときに、いろんなマルチのものもみんな輝くことができるようになる。21世紀の日本外交の航海にとって、それが大事ではないかと思う次第です。
- ありがとうございました。
- 若宮
- ありがとうございました。国際社会の世話役とか、日米中の定期協議とか、五百旗頭さんのをパクッたわけではないんですけれど、当然、私たちもこれまでご意見を伺ったり取材したりで、おそらく先生のアイデアも頭にあったのかなと思います。そういう意味では、もちろんナイ先生のソフトパワーもそうですし、きょういらしているような方々をはじめ、多くの方の知恵をいただいて作った社説だということです。
- それで、3時10分前ですが、このセッションは3時40分までということで、50分ぐらいありますので、少し各論に入っていきたいと思います。その中で、3つのことにちょっと絞りたいと思います。日米関係、日米同盟のあり方、それから日中韓や東アジアの協調のあり方、そして憲法9条と自衛隊ということで、ちょっと絞っていきたいと思います。日米の関係というのは、私どもの社説でも日米安保体制を基盤にするということは、もう揺るぎないこととしております。それから、今、ハードパワーについて若干朝日新聞は逃げたいんじゃないかということをおっしゃられましたし、この辺はナイさんも同じような印象を少し持っているのではないかなと思いますが、五百旗頭先生から指摘をいただいたところです。
- 若干釈明をいたしますと、私どももハードパワーを避けるつもりは毛頭なくて、日米安全保障条約をきちっと評価し、そのもとで自衛隊が自衛隊の役割を果たすという意味では、今度の社説は従来よりもハードパワーもきちっと認識しようということでした。ただ、それがまだ足りないよと見える方もいらっしゃるということかな、というふうに、お話をお聞きしました。
- それで、今も話に出たイラク戦争、あるいは、ナイさんのおっしゃったネオコン主導のアメリカということです。日米安保を緊密にとするのはいいんですけれども、イラク戦争の失敗というようなこともありますと、日米同盟をこれ以上緊密化して、まさに集団的自衛権も認めるとか憲法を改正するというようなことに広がると、将来、あのような戦争があったときに、イギリスのように、これは極端な話かもしれませんけれども、日本も最初から戦争につき合え、というようなことにならないか。どうしても日本とアメリカの力関係を考えると、そういうふうになるのではないかというおそれも、現実にイラク戦争というものを見て、我々、感じたところなんですね。そういう意味で、そこの距離の取り方というのが一つのポイントかなというふうに思っております。
- キャロンさん、カナダはイラクに派遣しませんでしたよね。要請を断りましたよね。ちょっとその辺の話、日本のヒントになれば。
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