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朝日新聞シンポジウム 「討論:日本の新戦略『地球貢献国家』をめざして」
討論1 「世界・アジア・日本:繁栄と安定のための新たなフレームワーク」(8)
目加田説子氏 |
五百旗頭真氏 |
- 実際にサマワに派遣された自衛隊のある幹部と別の機会でご一緒した時のことですが、実は彼を中心に自衛隊内部でも、イラクではなくアフガンへという主張があったと聞いております。それを、あえて、カナダがやったことと逆。フランスやドイツとも逆のことをやった。同じ対米軍事協力という一線を守りながら、戦争の大義に独立した判断を下せる機会があったのに。追従ではなく、独自のモラル観を発しながら、米同盟国として日本の存在感を世界に示せたのに。追従を続ければ、社会が大義を議論する素質を失う。その素質は独立国としての社会の背骨ですから、それが失われるということは、これは「民度」の低下。その自衛隊の幹部も、軍人としてその危険性がわかっていたと思うんですね。それをあえて逆のことをやった小泉政権というのは、僕は大変罪い政権だと思います。
- 若宮
- 9条を持っているほうがいいのか、不便なのか、この辺は目加田さんもご関心が深いと思うんですね。
- 目加田
- 実は私、昨日ペルーから帰ってきました。クラスター爆弾を禁止するための外交交渉会議に、日本のNGOとして出席してきたんですが、そこでアフリカのNGOの人たちと話をする機会がありました。偶然、たまたま違う文脈の中で、日本の国際貢献という話に実はなったんですけれども、その中でそのアフリカのNGOの人が、こんなことを言っていました。「日本の印象、深くは知らないんだけれども、日本というのは極東のカナダのような印象を持っている」という発言でした。なぜそういう印象を持つかというと、ODAを通じた協力を実施しているということが1点と、それから、「やはり日本は9条があるがゆえに、軍事力によって必要のない圧力をかけたり、もしくは、軍事力によって何か日本の意思や国益を反映させるような政策に出ないという安心感を持っているんだ」とのことでした。
- この社説21本の中でも書いてあることですが、やはりこの憲法9条というのは、日本が60年間かけて守ってきて、それは国際社会の中で浸透させてきた日本の価値観であろうというふうに思っております。私は変える必要はないと考えていますが、もしそれを変えるという選択肢を真剣に検討するのであれば、やはりもう少しきちっとした議論をしていく必要があるだろうというふうに考えております。
- キャロン大使のご発言の中で、アフガニスタンで57名のカナダの方が命を落とされたというお話がありました。日本の中で憲法9条を変えよう、もしくは集団的自衛権を行使しようというふうに主張しておられる方々が、ほんとうに日本人が血を流して、命を失ってでも国際貢献をしていこうという覚悟がどこまであるのか。それをするという決断は、それはそれで尊重されるべきだと思うんですが、そういうリアルな議論というものが、現実、日本でおこなわれているでしょうか。例えば、私、教育現場におりまして、たまたま国民投票法案なんかの件で学生にレポートを書かせたりということがございます。そのときに、学生、若い人が主張するのが、日本はもっと国際貢献をするべきだ、やはりフリーライダーといいますか、平和を一方的に受けるべきだけではないということは非常に強く主張するんですね。ところが、軍事的な貢献、特に日本が9条を変えてでも、国軍として海外に出ていって血を流すということをよしとしている学生は、実はほとんどまだいないんですね。
- ですので、ほんとうに日本が国際社会の中で、特に大義のために協力するという覚悟を持って行動するためには、まだまだ議論して煮詰めていかなければいけないという部分があるんだろうと思うんですね。そこを抜きにして、まず憲法9条を変えることに先走ってしまうところに、ちょっと危険な印象を抱いております。
- 若宮
- 勇ましいことを言っている人が、案外、自分が血を流す覚悟があるのかというのは、最近の朝日新聞の世論調査でも私は感じたことです。「あなたは外国が――どこかわかりませんが――攻めてきたときに戦いますか」と。で、「戦う」「逃げる」「降参する」という3つのオプションを用意したんですね。そうしたら、「戦う」が平均で33ぐらいで、「逃げる」が32、そして「降参する」が22だったんですね。しかも、若い人ほど勇ましい人が最近多いと言われるんだけれども、この調査によると全く逆で、年をとるほど「戦う」人が多い。60〜70代は「戦う」という人が大変多くて、日本の戦力は60〜70で維持するのかな、と……。若い人になると「逃げる」「降参する」が多いというのに、私もある意味、日本ってあんまり好戦的でなくていいなと思う半面、ちょっと大丈夫かなと思ったりもしたんです。
- 防衛大学はそんなことはないですよね。五百旗頭先生、緒方さんの話はどうでしょう。
- 五百旗頭
- ありがとうございます。緒方先生から、大量破壊兵器のような挑戦に対して、あるいは、紛争の中で人々を守るという役割ですね。大量破壊兵器的なレベルの問題については、日本は攻撃能力を持たないというのを自制的に続けてきました。核を持たないだけではなくて、北朝鮮というけしからん国がミサイルをぶっ放して実験をしておどかしても、それに対するストライクパワーをいまだに持とうとしない。日米同盟によってやっていくということをずっと続けているわけですね。
- したがって、日本が行う国防――自衛隊は、もちろん究極的な任務は国防という、冷戦期で言えば、もしソ連が北海道に着上陸作戦をしてきたときに、ソ連の心臓部を打ち破る抑止力はないけれども、日本本土に手を入れてきた、その指にしっかりかみついて、「いててて」と手を引かせる、そういう拒否力を持つということを限度として訓練、装備を準備しているわけですね。世界第5位の軍事力と言ってもちょっと疑問で、予算額で言われているんでしょうけれども、攻撃能力を持たないようにしている我が自衛隊であります。
- 国防の場合に拒否力のための装備を持ち、訓練をしておりますけれども、それとともに、PKOを、この正月に省に移行したときに伴って、本来任務といたしました。世界の紛争地における平和維持、これに対応するというので、カンボジアに始まって、東ティモール等々にも送っている。世界の開発と安定を支えることを通し、日本は平和に貢献すべきです。
- 緒方先生がおっしゃるのは、このレベルでほんとうに現場で何が必要だとわかっているのかという問いかけだと思うんですね。これは非常に大事なことで、ぜひ緒方先生に防大に来ていただいて講義をやっていただきたい。実際に触れる必要ということを考えなければいけない。それをやらなければ、空理空論になる。
- それとともに、自衛隊が非常に重視しているのが、大地震等の災害に対する救援活動です。神戸地震のときにも大変活躍してくれた。私は防大校長に去年なってから、三浦断層というのが横須賀市の下を走っていて、そこでもし地震が起こったら、神戸と同じように、瓦れきの下に市民が埋もれることを知りました。そのときに、「防大生諸君、諸君はどうするの」と。諸君はまだ訓練教育中だから、何も救援に行く義務はない。自衛官に任官していないから。ですけれども、「そのときは『勉強だ』と言って行かないの」という問いかけをやっております。そうしますと、防大生から返ってくる返事は、「何を言っているの。学校長は何度もそういうことを言うが、じれったい。自分が防大に入ったのは、災害救助で活躍している自衛隊を見て、共感して来たのに、そういうときに救いにも行かない防大であり自衛隊であるなら、自分はいない」、そういうふうに抗議に来る方がおられる。
- というので、その救援活動を何かの場合に防大生も参加するということで、今プランづくりの段階に入っております。国際的な紛争の現場で、伊勢崎さんの専門でありますけれども、何が役立つか。その議論は非常に大事です。9条をどうするかという「9条神学」の話でやると、崔大使のおっしゃったような、押しつけ憲法だから改正するという議論になる。中曽根さんのような――この間フジテレビで気持ちよく一緒に出演いたしましたが――世代の方が押しつけ憲法を掲げて、だから改憲しなければいけないとおっしゃいますが、世代が我々のようになると、そういう感覚はないんですね。いい憲法ならいいじゃないの。それを、いいものなら大事にしたらいいと。93年のカンボジアPKOの後、9条を変えたほうがいいという意見が増えてきたのは、押しつけ憲法だからじゃないんですね。紛争地の国家再建、平和回復のために自衛隊を派遣したのがほんとうに役に立った。それならば、そのようにすればいいじゃないか。国際貢献に役立つように憲法を改めたらどうかという形での憲法改正論が加わったために、多数になり始めているんですね。そういう意味で、新しい現実に対処するという緒方先生の視点を重視して考えるべきではないかというふうに思うわけです。
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