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朝日新聞シンポジウム 「討論:日本の新戦略『地球貢献国家』をめざして」
討論2 「地球貢献への進路―国際交易と日本の課題」(4)
浅岡美恵氏 |
伊勢崎賢治氏 |
- きょうはスライドを用いての詳しい説明はやめておきますが、こうした中で、ブッシュ政権が議定書の死を宣告した2001年3月、日本に激震が走りました。日米関係のそれまでの経過から言いますと、日本はアメリカに追随する、少なくとも米国と明確に異なる意思を表明することはないのではないかと懸念されました。辛うじて踏みとどまりまして、EUとともに京都議定書を批准し、カナダ、ロシアの批准が遅れたため2005年2月になりましたが、発効させる一翼に加わったわけであります。カナダも日本と共通する難しい立場であったと思います。
- このように、日本が京都議定書を蘇らせることに寄与、貢献したということは、当然ながら日本にとりましてなすべき選択をしたとして歴史的に評価されると思います。
- そうしたプロセスに私たちも参加する機会に恵まれまして、市民参加のあり方ということも勉強させていただきました。こうして見ますと、京都議定書というのは日本の社会にとりまして非常に民主主義を高める契機となった、また、社会経済構造を21世紀型に日本自身が変わっていく、変えていくための国際社会からの贈り物であったと思っています。このことも含めて、COP3を京都で開催すると決められたのではないかと、こう思うわけであります。
- しかしながら、日本は批准いたしました後も、経済界は経団連などを中心といたしまして、決して実質的に前向きとは言えません。アメリカのブッシュ政権が主張していることと、その実質はほとんど変わっておりません。先ほどの少し申し上げたことは日米に共通しています。
- 日本の場合、どうしてそうなるのかといった時に、ヨーロッパと対比して、日本の政策決定に産業界の意見があまりに強く反映されているということがあると思います。
- そういう意味で、ナイ先生がさきほど、日本は最早1930年ではないとおっしゃられたのですが、他方で、まだ民主主義成熟の途上にあるということではないかと思います。排出量でいいますとエネルギー転換と製造業からの排出が64%を占めますし、欧米と比較してその割合が大きく、わずか80ほどの企業の180ほどの事業所からの排出が日本の排出量の半分を占めており、その割合よりも大きな発言力を発揮されていると思います。
- こうしたことから、日本の長期的な排出削減の課題にどういう政策をとるべきか、日本の産業界、企業はどういう方向に行くべきかについて、入り口の議論で十年一日のごとく足踏みをして過ぎておりまして、ヨーロッパのとっている政策にたどりつかないだけでなく、アメリカの東北部の8州やカリフォルニア州では既に排出枠を定めた排出量取引制度が州内では動き出していますけれども、日本は抵抗が強く、具体的な制度設計の議論に入れておりません。
- 気候問題については、地球規模で何をなすべきかという問題では、国際公益的、地球公共財的な発想で取り組むべきという総論では、多分どなたも反論がないという時代に入っておりますけれども、やはり狭い国益論、あるいは、個別企業の利益の衝突を解決していかなければいけない。ここには日本の国としての今後の産業政策、大きなストラテジーが必要になっていると思います。
- そうした中で、NGOとして私どもがなぜ関わるのかという論点が登場いたします。市民の立場から分析し、その声を反映させる。これは、第1に、南の人たちの被害の実情を代弁することであり、2つ目には、将来世代の代弁者となり、そして、国際公益と日本の国益が同じものとして社会的に受けとめていけるように、発信を続けているものです。
- この十数年、こうした問題に関わってまいりまして、国連というものはよく貢献してきたと思います。一国一票主義という仕組みが、政治的に弱い国や途上国の立場を反映しやすいことに加え、弱小の国の参加を促すために透明性が高いのですが、NGOもその透明性をテコに市民参加が可能となり、また、国連もできるだけNGOを参加させようとしてきました。そういう中で、京都議定書が、幾多の試練を乗り越えて今日まで生き延び、今後も可能性を持ち続けているわけであります。
- 24日の安倍首相が2050年までに世界で現状から50%削減しようと提言したことは、長期目標を示した点では前進だと思いますが、90年の水準からですと50%で安定化に至るのですが、現状では90年から既に約20%増加しており、50%削減では温暖化を止めるには不足しています。また、日本はどうするのかに答えるものとなっておらず、その国内合意には首相の強いリーダーシップが必要です。京都議定書の目標達成のために国内政策の抜本的な見直し強化が必要ですし、2013年以降の目標については途上国も共通のセクター別の効率目標とすべきとして総量での削減に抵抗している経済界に対して、日本が京都議定書を今後も継続し、第2約束期間の目標を合意していくのだとの十分なメッセージはまだないという点では不十分だと思っております。
- 社説で提起されていますように、日本が京都議定書を原点といたしまして、これを深化させ、この問題で本当に世界の「世話役」になっていくことを期待いたしますし、その可能性がないわけではないと期待しながら温暖化問題に関わっているところでございます。
- ありがとうございました。(拍手)
- 高成田
- どうもありがとうございました。
- 先ほどのグラフで、2度よりちょっと手前のほうで危機のいろんなものが出てきているものですから、我々の提言は2番目で2度ということを言っているので、1.5度のほうがよかったかななんてあのグラフを思っていました。
- 環境外交というんでしょうか、そういうところを進めていく上で、やっぱりその外交というところだけではなくて、まさに国家のモデル、あるいは、経済国家のモデル、あるいは、産業国家のモデル、そこがしっかりしていかないと外交だけはできないということで、また後ほど議論をしていきたいと思います。
- それでは、伊勢崎さん、よろしくお願いします。
- 伊勢崎
- どうも、伊勢崎です。
- 僕は社説の16番目の人間の安全保障について少し語りたいと思います。
- その中でも、2005年の国連サミット以来、国際的に話題になりつつある「保護する責任」、Responsibility to Protect、R2Pと言われますけれども、カナダが積極的にこれを推し進めております。
- 「保護する責任」が主張するのは、たとえ主権国家といえども、大規模な人権侵害を自ら先導、もしくはその発生を傍観する場合、国際社会には、それを防ぐ為に武力の行使を厭わない介入を行う責任があるというものです。 これは言葉を変えますと、いわゆる内政不干渉の原則への挑戦、つまり脱国家論みたいな趣がある議論であります。
- 実は去年の年末にNHKドキュメンタリー番組がありまして、そこで僕はカナダで上院議員を勤めておられるロメオ・ダレールさんと対談しました。元々彼は軍人でありまして、少将としてルワンダ国連平和維持軍の最高司令官を務めた人物です。あのジェノサイドがあった時の責任者です。その番組の中で、大変おもしろい議論を彼といたしました。
- ルワンダのあのケースでは、100日間という短い期間に実に80万人が死んだわけであります。それに対して、国際社会は事実上何もできなかったわけでありますね。なぜルワンダのケースがR2Pの話題にすぐ上るかというと、いわゆるクイック・レスポンスの問題。つまり人道的軍事介入の即応の問題です。
- でも、僕が彼に言ったのは、このルワンダのケースは胸が張り裂けるぐらい本当に深刻で大変な教訓を人類に残したわけなんですけれども、どうも武力介入だけが強調され過ぎて、それに至る上位概念が忘れ去られるのではないかという危険性を指摘したわけであります。
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