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朝日新聞シンポジウム 「討論:日本の新戦略『地球貢献国家』をめざして」
討論2 「地球貢献への進路―国際交易と日本の課題」(8)
ジョセフ・ナイ氏 |
五百旗頭真氏 |
- 高成田
- ありがとうございます。
- それでは、ナイさん、お願いします。
- ナイ
- ソフトパワーといいますのは、とにかく魅力を持った国をつくるということでありますけれども、一番興味深いこととして政府がソフトパワーの国々をコントロールしているわけではないわけです。ソフトパワーというのは文化から発生します。政府は価値観とか、あるいはまた、文化をコントロールしているわけではありません。こういったものは社会で共有されているものです。政府の政策は政府がコントロールすることができます。
- ただ、1つ言えますのは、アメリカのソフトパワーを考えてみますと、ほとんどは大体市民社会から発生します。政府から出てくるわけではないんです。政府はソフトパワーを壊すことはありますけれども、ばかなことをして、場合によっては、ソフトパワーをつくることもありますけど、しかし、ほとんどの人たち、例えばアメリカは政府を通じて遭遇するのではなくて、NGOを通じてアメリカに遭遇するということがよくあります。
- ですから、例えばアメリカにどういうふうに引きつけられるかということを考えますと、例えば大学とか学生とか、そういったものがあるんですけれども、例えば財団というものの役割を考えていただきたいと思います。例えばフォード財団が教育機関をサポートする、アフリカでサポートする、あるいはまた、ロックフェラー財団が農業の開発をサポートする、あるいはまた、ゲイツ財団がマラリアあるいはエイズに今アフリカで取り組んでいます。こういったものが魅力を出していくわけです。これは市民社会です。政府ではないんです。
- それから、もう一つ考えるべきことは、シンクタンクの役割です。単に大学関係のシンクタンクというだけではなく、例えば8,000ぐらいアメリカにはシンクタンクがあるでしょうか、多くのものは。つまらないものもあるんですけど、いいものもたくさんあります。こういったものが多く相当貢献しているのが貧しい国々の貧しい人たちです。一つ興味深いのが、次の朝日のこの論説でありますけれども、若干NGOについて、あるいはまた、シンクタンクについても最初のこの21においては書かれておりますけども、日本の市民社会がこういったふうなコンタクトを出す。そうすると、日本のソフトパワーはもっと強くなるのではないかと思います。
- 高成田
- ……迫ってきたので。先ほど浅岡さんのほうから、日本の経済界はとっても気候問題に消極的で、十年一日変わってないということがありましたので、小林さんのほうから少し前向きに、経済界も変わるぞというようなことを言っていただけないでしょうか。
- 小林
- 私は国際的なレベルで考えた時に、先ほどおっしゃった日本の経済界が環境問題等について十年一日全く変わってないというコメントは、ちょっとどうかなと思います。アメリカと比べても、あるいは、ヨーロッパの一部と比べても、日本のやっぱり企業が今までやってきている活動そのものは評価されてもいいのではないでしょうか。
- 1つ例を挙げますと、つい1月ぐらい前にアメリカのアクセンチュアグループが4年ぐらいずっと続けているエネルギー問題についての、それこそ多国籍グループの会合がありました。前の米国の国務長官をされたジョージ・シュルツさんがチェアをされていますが、どこで会議をするかが議論になり、結論的に日本でやることになった。中国でやろうかという話があったけれども、省エネの問題であれば日本じゃないかという判断です。日本企業の省エネへの取り組みの評価は、もうそれで尽きていると思います。
- もちろん、産業としてまだまだやらなきゃいけないところはあると思います。
- しかし、一方で、かなり産業以外の、例えば民生での問題が相対的には大きくなってきているというのがむしろ一般的な見方だと思います。私は別に経済界を単に弁護するつもりはさらさらありませんけど、確かに京都議定書のターゲットの立て方そのものに対して、日本の産業界には非常に批判がありました。批判がありましたけど、あえてそれを受け入れて、しかし、残念ながらそれを達成するところには至っていない。今、それについてはポスト京都について非常に前向きなサジェスチョンがもちろんアメリカからも出てきていますし、安倍総理の提言もすばらしいことだと思います。むしろ非常にいいチャンスなのではないかと思います。あえて経済界は何もやっていないというのはひどいということだけを申し上げるつもりはありませんけど、あのコメントそのままというのは私はちょっと首肯しかねるので、そのことだけ申し上げたい。当然、将来に向かってきちんとやることが企業そのもののまさにソサエティ・インのあり方だし、それをやらないで今後の企業の存在というのは社会から許されるはずがないと思っております。
- 高成田
- ありがとうございます。
- 五百旗頭さんから手が挙がったので。
- 五百旗頭
- すみません。率直に今の小林さんの発言と、その前のナイ先生の発言に対して疑念を呈したいと思うんです。日本もバブルの頃、80年代、非常に経済力がついた時に、メセナとか社会貢献ということをどの企業もおっしゃるようになって、小林さんは特に今もそういう面でよくしてくださっていると思うんですが、だから、小林さんに文句を言ってもしようがないんですけれども、不況になったところでそんなのんきに社会貢献だ、メセナと言っていたら企業の存続そのものが危ういというので非常に厳しく締まりましたですね。最近少し経済がよくなってきた。ところが、一向に社会をサポートしようというのが企業のほうから盛り上がらない。それは一体どういうわけかということを一つ小林さんに伺いたい。
- それから、ナイ先生に伺いたいのは、政府はソフトパワーをしばしばつぶして、むしろ民間社会が担うといわれます。それはそうだと思うんですが、ただ、例えば留学制度というアメリカが持っているすばらしいソフトパワー、フルブライト計画というのは若いフルブライト議員が提案したけれども、それが議会を通し政府が決定したことによって世界中から留学生を招く制度になった。その意味で、政府の決定というのはやっぱり非常に大きい。
- ロックフェラー財団、ロックフェラーさんが1902年だったか財団をつくる時に、もしもうけにもうけたお金を放っておいたら税金に取られる。それを取られるか、あるいは、財団をつくって自分が好きな意味のあることをするか、どっちがいいのかというふうに助言者が聞いたと。つまり制度が免税措置を非常に大きく認めているんですね。パブリックに意味のあることにお金を出すならばその人は免税されるというので、そういう政府による制度設計が非常に大事だと。そういう意味で、やっぱり政治の決定が大きいと思うんですが、いかがでしょうか。
- 高成田
- それでは、時間がないので1分ルールということで、じゃあ、浅岡さん、お願いします。
- 浅岡
- 先ほどは時間がなくなりましたので説明が十分でできませんでした。1分でしないといけませんが。
- 個々の事業者の方、企業がいろいろなさっていることを否定しているわけではありません。今、私が申し上げた点は、京都議定書の目標達成のための政策措置についての産業界の対応です。ヨーロッパの主要国が環境税を取り入れ、域内での排出上限枠を設けた排出量取引を開始していますが、日本の経済界はそれらに強く抵抗しており、そのために政策決定が進んでいないということを申し上げているわけです。
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