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朝日新聞科学部創設50周年記念シンポジウム 「科学技術と国家」

猪口邦子氏(衆議院議員)の冒頭発言

写真猪口邦子氏
写真図29
写真図30
写真図31
写真図32
写真図33
猪口
私は、先ほど車の両輪になりきれていないと立花先生に言われました日本学術会議のメンバーでもございます。立花先生の基調講演にはほんとうに多くの示唆があったと思いますし、いろいろ考えさせられました。
私の直感と合っているところもたくさんありましたし、何より国の役割についての質問、問題提起がたくさんありました。私は立花先生のパワーポイントを拝見しないまま自分のパワーポイントをつくったのですが、立花先生とは、知的な意味でのいろいろなやりとりがぴったり合うことが多いんですね。
今回も、何とぴったり合うパワーポイントを、偶然ですが、つくってきてしまったんです。これ、立花先生の観点を完全に補完すると思います。
例えば、人口減少社会になって、3人に1人の教授は後継者を発見することができなくなると。私は男女共同参画の閣僚をやっていたましたが、そのときに第2次基本計画をつくり、まさに科学者、研究者、そういうところでの女性を増やしていこうと。意思決定過程の女性を3割にしていこうということを閣議決定しました。
現実はどうか。女性の研究者の日本における割合は極端に少ない(図29)。皆さん、ごらんになれないでしょう。一番下が日本なのです。アメリカなどは32%ぐらい、イタリア、フランスは27%台、そして日本は11%台と、こういうところで、もうたくさんの女性の研究者が出てくる可能性があると思います。
全体として世界における日本のランキングを見ますと(図30)、GDP、国内総生産で世界2位、1人あたりのGDPとしても15位です。
ところが、図31の左側のほうが、女性がどのぐらい決定過程に入っているかというランキングですが、我が国では42位なので、先進国最下位で、多くの途上国に抜かれている。右側は、ヒューマン・ディベロップメント・インデックスという、生活感を総合したランキングですが、これで日本は世界7位。
つまり、政策的に、あるいは人間の努力によってなすべきことで日本が42位に落ちるのは、男女共同参画や男女平等の指標以外にはあまりありません。そこで、ここを一気に強化することで、いろいろと問題が解決できるのではないかと思っていました。
それで、2005年に閣議決定された第2次男女共同参画基本計画では、新たな取り組みを必要とする分野の筆頭に科学技術を持ってきました。今後2020年を目指して、自然科学系全体として25%、保健系30%という数値目標を設定しました。
この数値目標を入れるときには相当なバトルがありましたが、医療も含む自然科学だけでなく、社会科学・人文も含めて、知識を生み出す側、そして、物事を決定していく側にも女性が多く入ることを考えています。
先ほど立花先生のご講演にもありましたが、図式的に書きますと(図32)、今、我々が我が国の人口の一番頂点にいるわけですが、一気に下降局面に入ってくる。2006年は少し回復しましたが、07年からはまたかなり厳しいだろうと。ピンクのところが高齢化率ですから、例えば、2045年には、1億人に戻ります。
高齢化率が、そのころは40%、東京オリンピックのころは6%という大きな違いがありますので、人口が減る中でも知識を生み出す国である。そして、人間社会の問題を解決する国であると思います。
科学技術の予算の拡大は何としても重要です。ご存じのとおり、我が国は先進国の中で最も悪い財政収支を持っている国の一つで、最悪の財政赤字を記録しています。にもかかわらず、内閣特別顧問の黒川先生や、あるいは何人かの方々の一生懸命の努力で、科学技術だけが特別に予算の規模を確保しています(図33)。
しかし、若干の問題提起をしますと、我が国の論文数が、あるいは突破力が科学技術的に不足しているという点で、それは予算面もあるだろうが、やはり多様性が不足しているのではないかと思います。
女性も含めて、いろんな背景の人が交わる中で、考えがぶつかって、そこからクリエイティビティが生まれるだろうと思います。同じ考えをする人が密室に10人いたとして、よい考えがないかと聞いても、絶対にものは生まれない。
それから、大きな問題についての答えを出す訓練を受ける機会が少ないのではないかと思います。やはりグランドセオリー(基本理念)やパラダイムは海外の人がつくり出し、そして、それの一部の実証を日本の研究者はきちっとやるというふうになってしまっている。ですから、教育において、大きなものを考えるという勇気を与えられないのではないかと感じています。
少し大胆ですが、例えば、私だったら、今、どういうことを考えたいかということをここで示したいと思います。日本はどういう分野で、どういう特徴を持って世界に知識を生み出していくべきか。そのときに自分の特徴を知らなければなりません。たくさんあるでしょうが単純化して、2つの特徴を示します。
まず、世界から見ると、この国は奇跡の国とも呼ばれます。なぜかというと、なぜ無資源国が世界第2位の経済国家になれるのか。これこそがまず特徴で、資源がない国だということです。教育、改革、科学技術、勤勉さ、そういうところが特徴だったと思います。しかし、勤勉でも、同じことを毎日やるのではなくて、ちょっといい方法でやろう、それが改革マインドだったと思います。それで、科学技術が奨励された。
世界から見たもう1つの特徴は、やはり広島・長崎の経験を抱いていることです。今日も国民社会はそれを深く抱いている。そのことから軍縮・不拡散についての科学技術、そういうことを促進するための科学技術を特徴的に持つべきであると。
例えば、地雷を除去する技術、あるいは、不当な核実験がなされたときに、気体を分析したり、遠隔操作でそれを察知するさまざまな技術などです。今、先端で競われているものですが、これからはすべての国がいろいろな形で努力するわけですから、すべての分野で自分がフロンティアに立つことはできない。そうなったときには、自分の特徴に基づくものをやったらどうかということです。
それから、エピスティミック・コミュニティという表現は知識共同体とよく言われます。これは、職業の所属はあまり関係ない。科学記者、大学勤め、シンクタンク、あるいはメディア、報道機関、しかし、何らかの専門的な知識を持って、政策志向的に、そして国境横断的に問題解決を志していく。
こういう人たちがネットワークをつくって、国際的な意思決定に影響していく時代であるというのが、この主張です。ぜひ科学部創設50周年を機に、私たちはやっぱりエピスティミック・コミュニティの一員なんだという意識を持って、政策決定に影響していくというべきではないかと思います。
最後にジェリアトリック・ピース、これはグランドセオリーの一つとして、私が考えているものです。少子高齢社会というのは、ジェリアトリック・ソサエティーといいます。
それには不戦構造があると考えたのです。つまり、少子高齢社会で民主主義である場合は、高齢者の尊厳や人権、医療を確保するために、社会保障支出を拡大することにおいて妥協はしないので、対外問題は軍事費拡大によってよりも、外交戦略や総合的な外交力によって解決していく。そういう必然性が出てくるので、非常に平和志向的に物事を解決するという内圧が働くという論理です (HP参照=URL http://www.kunikoinoguchi.jp/)。
これはまだ始まったばかりの仮説です。これから私は大きなエネルギーをかけて、この仮説を世界に対して証明していきたい。例えば、EUの中でも、オールド・ヨーロップと言われる古いヨーロッパの国々、フランスやドイツはこの理論に当てはまります。日本も多分そうだと思います。
先ほど収益性の期待できない、あるいは不確かなものについて、国でなければできないという指摘がありました。他方で、国のほうも、税の論理にはっきりしないことについては大量投資はすごくやりにくいのです。ですから、納税者が納得できる科学技術予算でなければならない。
そうなったときに、一体何に基づいて科学技術を開発するかということですが、ここでSOS(ソリューション・オリエンテッド・シナジー)と――SOSというのは「セイブ・アワー・シップ」ですが、それをもじって――要するに、問題解決型の発想を持たなければだめだと。
そのときに、では何の問題を解決するのかということで、一体知識とは何かということを考えると、その中でぜひ注目したいのが、ローカルノレッジという考え方です。これは、学者が知っていることではなくて、現場で知っていること、ほんとうにそれを生きている人が知っていること、つまり、苦労の本質を知っている人です。
例えば、地雷の被害に遭った人が、どういうロボット技術を求めていて、それがあれば地雷源を全部爆破できる、そして、その技術を持っているのは日本だけだというときに、日本の科学技術はそれにこたえることができているのかどうか。それは、学者や外交官のノレッジではなくて、アフェクテッド・パートナーズと言いますが、影響を受けた人の知識です。そういう知識への接近なくして、ほんとうのソリューション型の技術というのは生まれ得ないだろうということです。
また、アフェクテッド・パートナーズは、声を上げる勇気を持っていなければいけません。こういうことで苦労しているから、これを人間社会として解決すべく、科学技術というのは投入されるべきだということで発言すべきです。税の観点からも、こういう立論でいくと、予算もさらに拡大してこそ、日本の科学技術者がいて世界はよくなったという時代が来るのではないかと思います。
尾関
ありがとうございました。猪口さんには、男女共同参画社会や軍縮という、ご自身の活動の領域を踏まえて、大変貴重な提言をいただきました。これは立花さんの、アメリカが軍事中心の科学政策をやってきたが、日本はどうだろうという話にもつながるかと思います。
女性科学者が少ないというお話がありましたが、科学記者の世界は必ずしもそうではなくて、ちなみに、きょうのプログラムを見ていただければわかるとおり、朝日新聞の科学記者のトップには女性が座っております。
立花さんを含めて5人の方から大変貴重な、刺激的なお話をいただきました。討論に入る前に、幾つかポイントを言っておきますと、やはり、なぜ国なのかというところで、いろんなご意見が出ました。ここらをもう少し深めていきたいと思います。
それから、科学技術予算をどうやって配分するか。これも結構論争できそうで、楽しみです。
そして、できれば、後藤さんのお話にもありました、科学ジャーナリズムの役割にも言及できれば、きょうのシンポジウムにふさわしいかと思います。
それでは、これで前半を終了します。

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