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国際シンポジウム「アジアにおける経済統合とインド」
ジャグディシュ・バグワティ氏の基調講演(3)

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ジャグディシュ・バグワティ氏

●アジアにおける経済統合

 スピーカーがおっしゃったこと、もう1つ要因があったかと思います。つまりNAFTAと比較し、あるいはEU、欧州共同体と比べた場合、アジア内の貿易がまだそれほど盛んではない。でも、なぜそこまでならなければいけないでしょうか。と言うのも、この地域は既に外に目を向けていたのです。地域への内向きや二国間ベースではないのです。世界全体に自分たちの製品を輸出していたことこそが、正に日本の強みであり、そしてアジア型のアプローチであったのです。ところが、私自身の好みから少し言わせていただければ、残念なことに、ヨーロッパが二国ベースであったと。これはヨーロッパの中核的な強い結びつきという話ではなくて、いわゆるFTAが今いろいろな形で行われており、これは欧州が先鞭をつけたわけですが、そしてヨーロッパ病というようなことが経済学の分野では言われていた。と言うのも、いわゆる最恵国待遇など、そういったことが言われている中で、今や鳥インフルエンザの問題なども盛んに出てまいりましたが、ともあれアメリカはその代わりに独自の道を歩み始めたと。そして独自のFTAをどんどん結び始めたわけです。そうするとアジアは常にMFNを維持してきた。APECも含めてですが。これは前に聞いたことでしたが、一方的な自由化を強調した形でやるという、すなわちGATT24条というよりも、自動的にMFNということで提供していたら、実質的に何か大きなことが起こるわけではないですが、そんなことをしてしまったら最終的にアジアも崩壊してしまうのではないか。つまり誰もが取り残されてしまうと思って、また政治的にも何かやらなければいけないと。つまり、そうでないとほかの市場から閉め出されてしまうということで交渉力を失うと思う。そうなってしまったらアジアは崩壊してしまいます。

 中国自体いろいろなFTAを交渉しており、日本も、インドもそういった交渉を始めました。つまり誰もがFTAを始めてしまったら、混乱した状態が生まれてしまいます。そして、こんな混沌とした状態の中から、しかもなぜそんなことが生まれるかと言うと、必ずこの道だ、理想的なやり方だと信じたのではなく、そうでないと乗り遅れるという、そういったあせりからやっているわけです。そうなってしまったらどうでしょうか。本当にこれを1つの大きな地域的なイニシアティブに固めることができるでしょうか。私は、気を付けなさい、あまり楽観視はできませんよ、と言いたいと思います。と言うのも、アメリカ型の自由貿易協定は正にそういうものだからです。そして国によって見方は違います。特にアンデス圏、あるいはメルコスールの人たちなど、これはブラジルが中心ですが、メルコスールというのは共通市場であり、ブラジル、アルゼンチン、パラグアイ、ウルグアイが加わっています。ブッシュ大統領が南米に行ってFTAAの話をした時、彼は手痛い反応を受けたわけですが、ですから、むしろそれよりはドーハ・ラウンド、そして香港に集中するべきです。アメリカはEUと同じように、あるいはそれ以上に、ありとあらゆるこういった厄介な問題を取り込もうとしている。例えばWTOプラスIPPだの労働基準だの、これもやれ、あれもやれということを貿易協定の中に取り込もうとしています。ですから貿易問題に専心できないわけです。今そういう形で、政治的にとても皮肉な形で行われている。一方、労働基準ということはしたくないということを首相は言っています。首相自身が労働組合のリーダーで、彼は靴磨きをやっていたわけですが、私に向かって労働基準の話をしないでほしいと。労働問題に関しては誰よりもよくわかっているのだと言っています。ですから、ほかの場でそれは取り上げてほしいと思っているわけです。貿易が必要なのです。ということから、この二国間の貿易問題あるいは交渉に関しては、いろいろな見方があるのであって、このばらばらな見方を1つのまとまりに持ってこようとすれば、言ってみればサイズもばらばらなレンガで建物を造ろうとしているようなものです。

 ですから地域統合は、言うは易しいことですが、私の予測、期待としては、あるいは私の判断では次のようにやるべきだと思います。政治は変えられない。結局、背景にあるのは政治であって、そしてほかの人の動きに対しての対応ということから生まれてきているわけですが、1つできることがあるとすれば、アメリカもEUもどちらもこういった厄介な問題を全部取り込もうとしてきている。しかしこの問題は全て貿易とは無関係な問題だと私は判断しています。ですから、このアジアの三大国がリーダーシップを発揮してはどうでしょうか。そしてわれわれは貿易に関連した統合を求めているのだと。つまり貿易障壁を低くしたい。そして調和の中で改善を図っていきたい。独自の型、モデルを作っていきたい。と言うのも、西側は様々なロビー活動を通じて、そしてありとあらゆる問題をその中に取り込もうとしている。背景には圧力団体の突き上げがあるから、それに対してはっきりと言うべきです。二国間の貿易協定を発展途上国の中で結ぶ。欧米が全く関与しないで結ぼうとする時、そこでは貿易の問題だけを取り上げると言うべきです。例えばNAFTAのようなアメリカやEUがやっていること。NAFTAの場合ですと、文書はこれくらい厚いのです。ほかの交渉でもそうです。と言うのも貿易とは関係ないありとあらゆる問題がその中に入っていて、サリーナス大統領のもとにこれが突きつけられたりしたわけです。ですから、私の判断では1つ言えることは、アジアの経済統合から、もし有益な成果を結ぶことができるとすれば、ブッシュ大統領にルーラ大統領が言ったように、「表現の自由だの、WTOプラスの義務だの、あれもこれもと言うのではなく、それはお宅のロビイストたちが求めているのでしょう。貿易の話だけをしましょう」と。そう言えばこの地域の果たすべき役割も出てくると思います。と言うのも、この地域はもう既に十分な大きさを持っていて、そういった役割を果たすことができるからです。ですから、例えばタイとインドが交渉する時には労働基準の話は出てきません。IPPのルールなんて話は貿易の交渉ではしません。WTOを超えて、それ以上の問題、大体そもそもWTOで取り上げるべきでないことまで入ってきていますが、とにかく貿易に専念しようということで、リーダーシップを示せるのではないかと思います。

●アジアのビッグ3

 今、3つの勢力がある。そして決してこれはアメリカによって、あるいはEUによって突き上げられるということはない。つまり、この3つの国がリーダーシップを発揮するべきであると。エレーナス大統領がやったように貿易に専念しましょうと。これは貿易協定なのだから、労働基準はILOでやりましょう。環境はUNEPでやりましょうと。それぞれにそうする機関や機構があるのです。MFNに固執することが、今消えようとしている。今、そういったいろいろな状況が、先ほどご説明したような状況があるからです。でも、それでもわれわれとしては雄々しく独自のリーダーシップを発揮することはできるはずです。そういったことこそ正に大変重要なものに結びついていくのではないか。そして、この地域は今までMFNに賛成してきた。地域統合ということではなかった、あるいは二国ベースの、ほかでやっているようなものではなかったわけですから、われわれとしてはむしろドーハ・ラウンドの背景でリーダーシップを発揮することが重要だと思います。中国が果たすべき大きな役割もある。いろいろな理由がその背景にあります。インドもちょっとした役割を果たしていますが、中国ほどではありません。日本、残念ですが、いつも日本はこういった問題にはとても静かです。小泉首相は素晴らしいリーダーシップを国内的に発揮してきました。今度は対外的にその改革の精神を発揮し、リーダーシップを国際の場で発揮するべきです。日本の友好国あるいは友人、私に限らず、常に嘆いてきたのは、日本は強いが、どうも沈黙を保っていると。日本こそリーダーシップを、この多国間のシステムの中で発揮するべきです。と言うのも、結局この地域は貿易に大きく依存しているからです。貿易に依存するのであれば、多国間主義でなければなりません。そして、もっとはっきりとリーダーシップを示す。もっと積極的に介入していく。そういうことこそが自らの将来を保証するものにもなると思います。以上です。


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