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国際シンポジウム「アジアにおける経済統合とインド」
チュララート・ステートーン氏の講演(1)

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チュララート・ステートーン氏

 司会 それでは続きまして「タイ・インドの経済協力及びアジア共同体との関係」と題しまして、タイ財務省財務政策局副局長のチュララート・ステートーン様にご講演をいただきます。それではチュララート様、よろしくお願いいたします。

 チュララート・ステートーン(タイ財務省財務政策局副局長) 皆様こんにちは。本日このような形で、タイとインドの間の経済協力、そしてそれがアジアに与える影響ということでお話しできることを非常に光栄に存じます。この場をお借りいたしまして、アジア経済研究所の皆様、朝日新聞の皆様、そして東京の世銀の皆様方にお礼を申し上げます。今回のこのシンポジウムは非常にタイムリーで、素晴しいものだと思っております。どうもありがとうございます。

 本日の私の話ですが、まず背景として、タイとインドの貿易について。それからなぜインドとの経済の協力を拡大しようとしているのか。それからタイの貿易国、あるいはその投資先としての魅力。それからFTAについて、特にタイとインドについて。それからインド、そしてタイを含めたASEANとの結びつき。そしてBIMSTECといったもの。そして将来の課題などについて順にお話し申し上げます。

●急速に拡大するタイ・インド貿易

 まずタイとインドの間の貿易ですが、実はタイとインドも長い文化的、歴史的なつながりがあります。また50年前にも外交関係が結ばれました。ですが実は貿易額は非常に小さく、この5年間を見てもわずかに14億ドルということで、タイの、世界のその他の地域との貿易と比べましても非常に小さな規模になっていますが、この3年間非常に伸びており、貿易額がそれぞれ2003年には27%、2004年には35%伸びています。

 そして2004年の貿易統計を見ますと、インドへの輸出品目のトップ10はほとんどが工業製品で、これらが75%をまかなっています。特に目立つのが機械設備、それから電子機器、プラスチック、ゴム、そして宝石・貴金属類です。一方インドからの輸入ですが、トップ10品目で84%を占めています。ほとんどは原材料で、宝石・貴金属、鉄鋼、そして一部の絹、それから有機化学薬品などです。

●経済協力の必要性

 では、なぜタイとしてインドとの経済協力を進めようとしているのかですが、インドは、実はわれわれの2国の経済「統合」と申し上げるにはまだ先は長いのですが、その目標に向かって進んでいます。インドはまだ関税が高く、平均が18%となっています。バグワティ先生は先ほど15%とおっしゃいましたが、これはおそらく違った統計を見ているのではないかと思います。そしてタイは、輸入関税が平均12%となっています。ですがFTAの作業を進めておりますので、将来的には自由なもののやりとりが行われると思います。インドは、将来の投資先として、そして貿易先としても非常に良いと思っております。1991年から始まった経済改革、それからいわゆる東方政策がインドの政権によって進められており、結果としてインドがより世界に開かれた経済になってきています。特に途上国、例えば東南アジアに対して開かれたものになっています。

 そしてインドが投資、そして貿易先として魅力的な要因というのは3つあります。それは人口。インドの人口の30%は富裕層に属しているということもあります。また労働力。インドはアジアのハイテクの中心地になっていまして、毎年35万人以上のエンジニアが大学を卒業しています。今労働コストは低いですし、英語も話す方も多いということでハイテク、あるいはサービスのアウトソーシングで、一番の投資先となっています。一方経済的にはインドの経済成長率は大体6%か7%ですので、アジアにおいては中国に次いで2位です。これだけの成長率があるので、これが一貫して続けばインドは確実に、短期間の間に世界的な経済大国になるはずです。ですがインドには財政赤字の問題があり、GDPの10%に上っています。ですので、長期的にインドが取り組まなくてはならない課題の1つと言えるでしょう。

 一方タイにおいては、やはり将来的には貿易、そして投資先としてのマーケットだと見ていますし、またタイが実はインドに対するちょうど玄関口に位置していると思います。東アジア、あるいは東南アジア、そして環太平洋からインドに行く時の玄関口であると。そしてこの先、インフラも陸上、海上、そして空路、いずれもさらに改善が予定されています。ですからやはり地理的な意味でも、インドと東南アジア、あるいは東アジア、その他アジアとを結ぶ要所になれると考えています。

●投資先としてのタイ

 では、なぜタイか、とお考えになるかもしれませんので、タイについて簡単にご紹介させていただきたいと思います。まず、UNCTADの2005年、今年の9月に行った投資調査を行いますと、FDIの配分先として、中国、インドに続いてタイは3位となっています。これはUNCTADが世界の多国籍企業325社を対象に行った調査の結果です。ちなみに世界全体では、タイは9位でした。また、インスティテュート・オブ・マネージメント・ディベロップメントの調査によりますと、競争力という点ではタイは27位となっています。また先ほどのスピーカーの方からもお話しがありましたように、日本はタイへのナンバー1の投資国でいらっしゃいまして、FDIの1/3が日本からのものとなっています。

 日本のメーカーを対象に2004年に行われた調査ですが、これによりますと海外の事業の場所としては、中国に次いでタイを2位に選んでいただきました。これはJBICの調査によるものです。そしてタイへの投資の理由としては、市場の可能性や、サプライ・ベースがあるとか、産業クラスターがあるということ。そして政治社会的に安定しているということ。それから政府の政策、インセンティブが挙げられました。

 様々な投資先がありまして、それぞれインセンティブがある中で、なぜタイか、ということを考えたいと思います。そのうちの1部、特に大切なものを挙げてみました。まず政権が安定しているということ。そして経済・社会が安定しているということ。それからインフラが整備されているということ。ビジネスがしやすい環境であるということ。コストに競争力があるということ。そして投資の制度、そして投資のインセンティブが非常に魅力的であるということ。それからアジア、あるいはFTAのアクセスという点で、戦略的に良い位置にあるということです。

 まずタイですが、政権は非常に安定していますし、また先見の明のあるリーダーがビジネスを理解しています。そして貿易の自由化、経済成長にコミットしています。またタクシン首相は、この前の選挙で大勝利に再選されました。このように大差で勝利をしたことにより、自由化、改革をより進めていける信任を得たと言えます。また社会的な安定も大切な要素だと思います。そして非常に寛容な社会を持っていまして、外国人、あるいは外資を受け入れる土壌がきちんとあります。それからインフラの面でもきちんと整っており、道路や鉄道、海上輸送路、公共交通網が揃っていますし、新しい国際空港が来年開業します。そして1時間に76便、そして年に4,500万の旅客量が可能になっています。

 そしてタイの政府では、大きなインフラ整備のための投資を認めています。5年間の総額で425億ドルに上るもので、国中の路地の改善、そして輸送、それから教育、医療なども含まれています。位置的には東南アジアの中心にあり、インドと、東アジアあるいはオーストラリアを結ぶ拠点となり得ます。そしてインドと航空協定を結んでいます。そしてタイとインドを結ぶ航空ルートがたくさんあります。タイ航空がバンコクから、国内からカルカッタ、デリー、ムンバイ、チェンナイ、バンガロールにもつながっていますし、また新しい港湾の建設も進んでいます。そして先ほど申し上げました新しい空港もありますので、さらに便が旅客に関しても貨物に関しても増える余地があります。それから陸上輸送においては、やはり地理的にはインドと接していますし、それからミャンマー、中国にも接していますし、東南アジア各国もあるということで、われわれ南側は、南アジアにも接していると。そうするとタイとミャンマーとインドを結ぶ道路がつながりますので、インドのほうからASEANにつながるルートになると思います。そして要するにインドからその他のASEANへつながるところになるわけです。これはインドとASEANの平和と共栄のためのパートナーシップでも明確に打ち出された計画です。

 それから海上に関しては、ラノン港が現在非常に大切な港湾になっていまして、今拡張作業が進んでいます。より大型の船舶の停泊ができるようになります。今バンコクからシンガポール、マレーシア、そして南アジアに向かいますと大体25日くらいかかります。しかし次のスライドでご覧いただけますように、これがラノン港を通れば4日ないし7日でできるようになります。そうすると20日間移動が少なくてすむ。ですから輸送コストも大幅な低減ができます。このラノン港ですが、2006年には正式に国際港湾と認められるはずです。ですからこのラノンという港は、南西部の交易の玄関口となります。バングラディッシュ、インド、ミャンマー、スリランカとの重要な交易路を作ることができるわけです。こちらが海上輸送路の全容です。

 そしてビジネスのしやすさですが、世界155カ国の中で20位になっています。これは世銀の評価によるものです。その理由として挙げられているのは、コスト競争力があることなどがあります。そのコストについてですが、ごくササッと、コストがどれだけ安いかを示したいと思います。

 こちらは労働者の月当たりの賃金です。バンコクは右から5番目にあります。非常に安くなっています。こちらはオフィスの賃料です。月当たり、平方メートル当たりです。マニラを除けば、1番安いというところになっています。それからこちらは駐在員の生活費、こちらもバンコクは非常に安くなっております。1番安い国の1つです。それからこちらは工業用の電気料金です。やはりバンコクも非常に安くなっています。それからこれがトータルのコストです。1年間にかかるコストを考えてみました。賃金やオフィスの賃料、駐在員のための住宅や電力といったものを全部合わせたものです。バンコク全部を合わせますと、1番安いということになります。

 それからコスト構造に関する指標ですが、バンコクを100としますとシンガポールは倍、ソウルに行きますと3倍、ほとんど4倍近いです。そして今度は投資の枠組みですが、タイにおきましては、非常にリベラルな政策がとられています。輸出の条件もありませんし、製造業に関しては外資の規制もありません。また現地調達比率に関する規制もありませんし、ロケーションに関しての条件も、基本的にはありません。それから投資に関する優遇策ですが、それは税制面でも、それからそれ以外のインセンティブも揃っています。次にこちらの絵では、6つのターゲットセクターとして、私どもの政府が力を入れている分野です。その6つの中で特に3つはタイ・インドにとって非常に大切なもので、相互にメリットがあるものです。貴金属、宝石、それから自動車、そして電子機器、情報通信などです。そしてタイにおいては、FTAもありますし、それからアジアの市場には非常に有利な地理的な条件があります。そして重要な貿易相手国とのFTAの交渉を進めております。それはさらなる輸出市場の拡大のためです。このうちの多くはすでに実施されています。

 例えばASEAN内のもの、ASEAN自由貿易地域があります。それからASEANと中国のもの、タイとオーストラリア、それからニュージーランドとのもの。それからタイとインドに関しては後でご説明申し上げます。また、まだ交渉中のものとしては、アメリカとのもの、ペルーのものなどがあります。それからインドも、おそらくいろいろなところと自由貿易協定の交渉をしています、南アジアの自由貿易地域、シンガポールあるいはスリランカとのものなどがあります。そしてそのインドの影響はアジア中でひしひしと感じられるようになっています。

 こちらのスライドですが、タイがASEANの10カ国とブルネイ、インドネシアなどを含めたもの、それからカンボジア、ラオス、ベトナムといった新しいところと東アジア、ASEANプラス3、日本と中国、韓国を加えたものをつなぎ、かつBIMSTECと言われる、ベンガル湾を囲む国との技術的、経済的な協力の枠組みとをつなぐことができることを表しています。BIMSTECのメンバーは、ネパール、ブータン、バングラディッシュ、スリランカ、そしてインドとなっておりますので、ちょうど東アジアと南アジアを結び、かつ東南アジアも結ぶことができます。またさらに、幅広い枠組みとして、ACDがあります。これはアジアン・コーポレイション・ダイアログの略で、28カ国が参加しているものです。東アジアの国も入っています。あとはバーレーンやクウェート、モンゴル、オマーン、パキスタン、サウジアラビア、そしてアラブ首長国連邦などが入った、広い枠組みとなっています。


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