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国際シンポジウム「アジアにおける経済統合とインド」
チュララート・ステートーン氏の講演(2)

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チュララート・ステートーン氏

●自由貿易協定の現状と未来

 ここからはFTAについてお話し申し上げます。まずASEAN自由貿易地域があります。それからインドとのFTAもあります。それからASEANとインドの包括的な経済協力の枠組み、それからBIMSTECについてお話ししたいと思います。

 まずASEANの自由貿易地域については、これは何も新しいものではありませんのでおなじみかと思います。この合意が調印されたのは1992年、実施が始まったのは1993年です。そして最初の6カ国は、すでに関税率が5%未満となっています。そして貿易の60%は全く関税が掛からない形で行われています。それからブルネイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイにおいては、2010年には関税が全廃されます。また新しい加盟国に関しては、2015年が期限となっております。そしてインドとタイの間の自由貿易地域については、枠組み合意が2003年に署名されました。このカバーする対象としては、物、サービス、そして投資といった3分野になりますし、また経済協力も含まれます。そしてこの枠組み合意の中では、アーリー・ハーベスト、早期収穫方式が定められており、82品目が非常に急速に関税の引き下げを進める形で定義されています。2004年の9月に始まりまして、2006年の9月には関税がゼロになることになっています。それから物の貿易に関するFTAですが、交渉はまだ続いています。今申し上げたのは、アーリー・ハーベスト以外の、82品目以外のものに関してです。この82品目は先に関税の引き下げが進んでいるわけです。そのほかについては交渉が続いていまして、予定では来年、場合によっては2006年中、ということで交渉が終了することになっています。ここで大切なのは、関税全廃のターゲットですが、やはりこれも2010年となっています。これはタイとインドの間のものです。

 それからサービス分野におきましては、そして投資においてもそうですが、あまり大きな進展は見られているとは言えません。予定では交渉はもうすぐ済むはずだったのですが、そして来年のはじめには完結、ということだったのですが、残念ながら、それはどうかという気もします。いずれにいたしましても、このサービスと投資に関するFTAも、このタイとインドのFTAの、非常に大切な柱です。

 もう1つ、両国のFTAの間の大切なものは、経済協力という側面です。貿易の円滑化、例えば相互承認をどうするのか、あるいは非関税障壁の撤廃や、税関の協力、それから貿易信用、ビザなどです。それから特定の協力のための分野、漁業、情報通信、航空、宇宙、バイオテクノロジー、金融、観光、などと定められています。また貿易と投資の促進、それから知的所有権や中小企業、そしてエネルギーなどの面での産業協力も含まれています。

 先ほど来申し上げているアーリー・ハーベスト、早期収穫方式ですが、82品目が対象となっていまして、これに関しては両国が合意をし、先倒しで関税を撤廃することになっています。2004年の9月1日にこれが始まりまして、2006年の9月1日までにゼロにすることになっています。これは農産品、そして工業製品が両方入っていまして、農産品においては、新鮮な果物、それから小麦、そして魚類がいくつか入っています。それから工業製品に関しては貴金属、宝石、そしてプラスチック、アルミ、そしていくつかの電気製品が入っています。そしてその進捗度合いをこちらの表に示しました。1年少し経った頃ですが、この82品目のアーリー・ハーベストが始まって以来、すなわち2004年9月以来、こうした品目の貿易が大きく伸びています。輸出は135%の伸び、そしてトータルの貿易額は、263.9%伸びています。それから輸出に関しては、特に大きい、タイからインドに出ていくものとしては、ポリカーボネイト、テレビ、それからCRT、そしてエアコンとなっています。最初のポリカーボネイトですが、貿易量は6倍の伸びとなっています。一方輸入側ですが、インドからタイへの輸入、こちらはギアボックス、この貿易量は、1,734%となっています。めざましい伸びだと思います。あとは合金でないアルミ、それから宝石、パーツなども大きく伸びています。このように、非常に短期間の間に、大きな関税の引き下げが見られ、結果として大きな貿易の拡大が見られているわけです。

●インドとのFTA

 それではごく手短に、ASEANとインドのFTAについて触れてみたいと思います。基本的にカバー対象は同じでして、サービスも物も投資も入っていますし、経済協力も含まれています。そしてターゲットとなる、関税の撤廃の日程ですが、基本的には2011年、そして一部の例外は2016年まで、となっています。ただ現状を見ますと、ASEANとインドのFTAの交渉において、当初の想定ほどのスピードでは進んでおりません。というのは、そもそもASEANの中で立場を統一するのも、中々難しいという事情があります。ということで、一部の交渉の妥結の期限が延長されています。来週、サミットが開かれますが、場合によっては、その時の内容に応じて枠組み合意を改定する必要もあるかもしれません。残念ながら、元々の枠組み合意に従った日程では、物事は進んでいません。例えば、アーリー・ハーベストについて合意があったのですが、ASEANとインドでは、タイとインドとの場合とは異なりまして、アーリー・ハーベストをしないことで合意していました。

 ざっと触れた所で次にまいります。今度はBIMSTECとの枠組み合意です。これは南アジアを中心に、インド、スリランカ、タイ、ブータン、ミャンマー、バングラディッシュとネパールといった国が参加しております。7カ国が参加しております。少しややこしいのは、途上国もいるし、それから後発途上国も入っているからです。かいつまんで申し上げますと、関税の撤廃期限としては、基本的には2012年ですが、後発途上国に関しては2017年も認められています。まだこれは交渉が続いておりまして、今年中には妥結することになっているのですが、それも難しいかもしれません。また、サービス投資に関しても投資が進んでおりまして、2007年のうちにまとめることになっています。ごく手短にこのあたりで、タイとインドのほかに、どういった動きがあるかをご説明申し上げました。

 ここのスライドですが、タイとインドのFTAが導入されて以来、貿易額は32.5%伸びました。これは2005年の最初の9カ月を見た数字です。恐らくこの2、3年のうちには、これは倍になるでしょう。そして2010年にはASEANの中での関税撤廃が進みますし、タイとインドのFTAも進み、やはり関税がゼロになるはずです。これによって、FDIが誘致できると考えております。また、タイもインドも、それぞれの相互のメリットも、様々な産業で見られます。宝石関係、自動車関係、そして電子機、電子、情報通信などです。また、パートナーシップという意味でも、投資が進むでしょう。特に中小企業に関する投資が進むと期待しています。それから将来の見通し、そして課題という意味では、やはりある国が複数のFTAに入っていますと、それはほかの国に対する競争優位が生まれます。例えば、たくさんの所とFTAがありまして、その相手国が実は別の所とは障壁があるとなりますと、そういった複数の所とFTAを持っている国こそに投資が集まるわけです。ですが、もちろん気を付けないと、いわゆるスパゲッティ・ボール効果もあり得ます。課題といたしましては、やはり産業がお互いに競争しあってより効率をあげ、コスト効果が高い活動になっていかなければいけません。そういう意味では、製品の質を向上させ国際水準にする必要もありますし、国の側では政策を改善し、より国際的なシステムに合致したものにしていく必要があります。またさらに、研究開発への投資も必要ですし、技術移転あるいはジョイントベンチャーを進めること、そしてM&Aもタイムリーに行われるようにしなくてはなりません。それから、クラスターを作ることも必要になります。前方向、それから後ろ方向にもつなげることが必要です。

 最後になりますが、自由貿易の枠組みの中で一番課題となるのは、やはり分配の問題だと思います。アマルティア・センというインドのエコノミストによれば、やはり自由貿易の恩恵が意味をなすのは、恩恵が分配される時に、きちんと平等に分配される時であり、一部の人だけがその恩恵を受けるのではいけないと言っています。一般的な言い方になりますと、やはりインドは、まさに今ようやくふさわしい地位をグローバルに築きつつあると思います。これはアジア、そして世界に対する影響は非常に大きなものになるでしょう。そして、インドが市場を全面的に解放したのであれば、非常に大きなことになりますが、それに対してASEANとの自由貿易の枠組み、そしてタイとの枠組みが、最初の一本になります。そしてタイは、そのメリットを十分に受けることになります。そして、インドとの地理的な近さ、それから長い文化交流の歴史がありますので、タイこそがインドへの玄関口になれると考えております。ご静聴ありがとうございました。


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