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国際シンポジウム「アジアにおける経済統合とインド」
パネルディスカッション(3)

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チュララート・ステートーン氏

●タイ・インド間に残る課題

 チュララート・ステートーン(タイ財務省財務政策局副局長) ありがとうございます、議長。もうすでに私は、かなり要点はプレゼンの中で申し上げたのですが、少し注意を喚起したいと思います。つまりタイとインドの間において、ダウン・サイドのリスクがあるということです。プレゼンの中でも申し上げましたが、マクロ経済的に言えば、1つの側面として、インドが考慮すべき問題は、内部における財政赤字です。つまり財政赤字がGDPの10%になっていることが、大きな要因になってインドの経済の安定を長期的に脅かしかねないということです。ですからインドとしては、高成長率を維持しようと思えば、もっと堅調な投資と貿易の拡大を図っていかなければなりません。必要な経費の投入を行い、投資を行い、そしてインフレを抑え込んでいかなければなりません。 もう1つは、いくつか、タイとインドの間で取り組まなければいけない問題があるということです。貿易交渉の中で出てきた問題です。というのも、そもそも原産国に関するルールに関しては交渉が難しいのです。というのは、FTAにおいては関税を軽減すると言われておりますが、そのメリットを実現しようと思えば、この原産国、あるいは原産地証明に関するルールをきちんと行っていかなければ、この自由貿易の合意の結果、いろいろなメリットを享受することはできません。これ以外にもデリケートな問題がいくつかあって、両国としてもこれはFTAの枠外で置いておきたいと思っている問題がありますが、これはWTOのルールに従って、われわれ両国の貿易はかなりの部分、こういったWTOのルールに依拠していかなければいけないと思います。

 もう1つのダウン・サイドのリスクとしては関税率ですが、これをかなり引き下げなければいけないと思います。そうなりますと、この歳入の伸びを考える時、両国においては、それを保証する措置を考えなければいけません。というのも、一部こういった関税引き下げによって影響を受ける人たちが出てくるからです。いくつかの分野において、もうすでに今までのところ保護主義的な措置を得てきたところが、これからはむしろグローバル化の時代において生き残る道を模索しなければなりません。それからASEANということで、ホミ・カラスさんもおっしゃったこととの関連で、サービス分野についてですが、さらに金融サービスの重要性、そして資本市場の重要性について、少し触れてみたいと思います。

 1つみなさんにお知らせしたいことがあります。タイ政府におきましても、この点については重要視しており、ホミ・カラスさんがおっしゃったように、アジアにおいては、かなり貯蓄率が高いこと。これに関しては、タイの首相もまた強調し、アジアの債権市場を促進していこうとしております。つまりアジアにあるこの巨額の貯蓄額を活用して、アジアをもっと繁栄に導きたいと考えています。

 すでにプレゼンの中で少し申し上げたことではありますが、より広範な文脈の中で、ASEANもすでに、まずASEANがあって、そしてASEANプラス3という形で日中韓が入り、さらにインドも入ろうとしている。さらにもっと広範なアジアの協力の対話ということで、いまや28カ国が参加しております。タイが、このアジアの統一市場を、アジア協力対話の中で推進しようとしております。このアジア債権市場のイニシアティブに関して言えば、中央銀行、EMEAPのトップの間におきましても、このアジア債権基金を作って、米ドルで投資を行う。米ドル立てのアジア債権ということで、これが10億ドル規模になっていると。そしてアジア債権、アジア・ボンド2ですが、これはまた、地元通貨でも投資ができます。地元通貨建てでのアジア債権への投資も、もう行われています。

 最も重要なのは、インドがすでにこれに参加したいという意向を示しております。もうすでにこのアジア債権基金に加わるということで、10億ドルを拠出して、アジア債権市場をより広範なアジアという、アジア地域全体という中で奨励しようとしております。ありがとうございます。

 藤田昌久(日本貿易振興機構アジア経済研究所長) いくつか重要な点を指摘してくださいました。特に原産地関連のルールですが、バグワティ先生が先ほどスパゲッティ・ボールの効果をおっしゃいました。まさにこれが現実の問題となろうとしております。今南アジアにおける貿易は、それほど大きなものではありませんが、もしこれがどんどん拡大して、その中でこの原産地に関わるルールが大変複雑化してしまったら、動きがとれなくなってしまいます。ということから、こういった深刻な悪影響を排除するためには、まずはビッグ・スリー。日本、中国、インドが、ASEAN諸国と協力することが必要だと思われます。バグワティ先生は、そういった意味からもドーハ・ラウンドに関して、真剣な協力が必要だとおっしゃいました。多国間の貿易合意を推進していかなければいけないとおっしゃっていました。また後で、バグワティ先生にその点についてコメントいただきたいと思いますが、その前に内川さん、どうぞ。

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内川秀二氏

●インドにおける雇用問題

 内川秀二(日本貿易振興機構アジア経済研究所研究企画部研究企画課長) はい。インドは確かにとても良い例だと思います。発展途上国であってもグローバル化を活用できる。そして、そこからメリットを享受できるという、例えばIT産業の例があります。例えばスズキがインドに進出して工場を建てました。そして重要な部品は日本から輸入していましたが、今では国内調達が可能となっています。100パーセント、インドの会社が良い部品を作っているのです。技術移転も日本からインドに対して行われ、そしてこういった良い連携が出来上がったわけです。一方で、このグローバル化によって問題も生まれています。例えば雇用の弾力性がなくなりました。経済成長によって、あまり雇用が創出されるとは限っていません。例えば農業において機械化が進んでいます。そして製造業においてはインドの会社がほかの国と競争しようと思えば最新の技術がどうしても必要です。つまり、これは資本集約的な産業が必要になってきます。サービス産業について言えば合理化がどうしても必要です。そうなると、あまり雇用も進みません。IT分野においては、雇用が生まれています。IT産業はかなりの労働力を吸収しているのは事実ですが、普通の人はIT産業には参入できません。つまり教育水準の高い人でないとIT産業には参入できません。

 では、どうやって雇用を生んでいくのか。これが大きな問題となっているのがインドです。ラメシュ・チャンドさんがおっしゃいました。1つには農村地域に対する振興、農業に対する投資です。その後に農家の所得も水準が上がるでしょう。そうなれば農家ももっとお金をかけるようになる。支出が増える。つまりサービス支出が増えるわけです。農村地域におけるサービス産業がさらに振興することになります。ということから、インドとしては農村の振興に大いに力を入れていかなければなりません。WTOですが、自由化を全ての途上国にも推し進めようとしています。発展途上国における雇用の問題を無視してしまったら、WTOは合意に達することはできません。私の意見は以上です。

 藤田昌久(日本貿易振興機構アジア経済研究所長) ありがとうございました。ということでインドの雇用、確かにそれ自体は目に見えて増えているわけではありませんが、農業の重要性、そして製造業の成長を考える中において、もう既にわかっていることですが、よく言われていますが教育の問題があります。インド自体が1つの宇宙であって、実に多種多様であると。しかし、人材を考えた時、確かに素晴らしい聡明な人たちも数多く排出しており、多くの経済学者、その他、バグワティ先生など優秀な人材もいるのですが、平均の教育水準は低い。ここにいわゆる最新の分野、あるいはエリートの人たち、頭の良い人たちと、一方で中々雇用の道が見つからないような人々の格差があります。教育側においても大きな努力が必要だと思うのですが。

 それでは最後になってしまいましたが、チャンド先生、ご意見をお願いします。

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ラメシュ・チャンド氏

●インド経済をめぐる疑問点

 ラメシュ・チャンド(インド国立農業経済政策調査センター主任研究員) あまり追加することはないのですが、1つ提起したいことがあります。インドにおきましては農業のGDPの比率が60パーセントから24パーセントに下がってきました。インドは今その答えを探しています。例えば雇用はどうしてそんなに下がっていないのかと。通常は製造業において資本集約型のアプローチが行われて、労働集約型のことはなかったということはありますが、労働市場の問題なのでしょうか。バグワティ先生のほうから、その辺の指摘があったかと思います。私はインドがまだその状況にきちんと気づききっていないと思います。労働市場の問題があったことが、例えば先ほど、農業のシェアが58パーセントから24パーセントに落ちました。でも、そうでないところがあまり下がっていないというところが、やはりインドがきちんと気づくべきだと思います。それから、もう1つ強調したい点があるのですが、農業以外のところですが、例えばそちらでは自由化が進んでいます。農業も同じように自由化が進められようとしていますが、この15年間、農業分野においてはほとんど動いていませんでした。

 それからインドと中国の比較について、何人かの方からコメントがありましたが、中国に関してデータを見ますと、経済成長と共に人々の栄養状態もよくなっています。残念ながら、一部の人は私が嘘をついていると思われるかもしれませんが、インドの場合には栄養失調の人々の比率が、エネルギー摂取量あるいはタンパク質の摂取量を考えますと実は90年代に入ってから下がってきています。実は経済成長があるにもかかわらず、カロリーの摂取量、あるいはタンパク質の摂取量を考えると、実は悪くなっています。貧困層の数は減っているのに、なぜか栄養失調の人の比率は高くなっていると。なぜかと。食料以外のニーズがあると思いますが、結局、人々がわざわざ食料を切っていると。そして食料以外の物を買っているといったことを言う人もいますが、長期的な影響がある問題なので考えたいと思います。

 それから中国との比較に関して、民主主義と全体主義だけではなくNGOの数がいっぱいあるということが違いです。要するに何か経済的な政策をとろうとすると反対するNGOがたくさんいるのが問題です。例えば水力発電の多目的なプロジェクトがあるのですが、15年から20年進捗が見られていません。なぜかと言いますとたくさんの環境団体が反対していて進まないのです。長期的にそれが正しいかどうかは別として、今はそういったNGOのお陰で一部の意思決定がとんでもなく時間がかかってしまうことがあります。灌漑事業などいろいろな問題があるのですが、NGOの影響力が大きいことが1つあります。それから1つ、心を軽くするためのジョークを申し上げます。インドと中国の間には実は良いことも、お互い学び合えることもあります。でも、外から見ますと明るいところしか見ません。暗いところには、中々目を向けなくなります。

 60年代に学校で、ある先生が私にこう言いました。これはジョークで1つ教訓があるのですが、お互いから学べるということは、別にお互いに真似をすることではありません。インドが食料危機になりました。そして民主主義なのになぜこんなことになってしまったのかとインド人は考えました。そうすると北京でヒンズー語のラジオを流していました。そして「食べ物が中国にはあるよ、材料はあるよ」と流しています。そうするとインドでは中国語のラジオ放送を始めます。「こっちには言論の自由があるよ。何でも好きなことを言えるよ」と中国語で伝えます。そうすると中国にいた犬がインドのラジオを聞いていました。それからインドにいた犬も中国から来ているラジオを聞いていた。そしてインドにいる犬は中国語のラジオを聞いて「じゃあ、中国に俺は行こう」と思いました。それから中国にいた犬はインドから発されるラジオ放送を聞いて「よし、インドに行こう」と思いましたと。そしてお互いに国境で会いました。そして犬同士が話をしました。なぜお互いが反対方向に行こうとしたのかと。中国の犬は「僕はインドに行くよ。なぜかというと好きなだけ吠えられるらしいし」と。「中国では吠えちゃいけないんだよ」と、その犬は言います。そうするとインド側の犬も言います。「確かにインドでは好きな仕事はあるけど食べるものがないんだよ」と。「だから僕は中国に行くよ。そうしたら好きなだけ食べられるからね」とインド側の犬が言ったと。要するに中国とインドの比較を考えると、やはりもっと良い選択肢を考えるべきだと。お互いを真似することが正解ではないというのがコメントです。

 藤田昌久(日本貿易振興機構アジア経済研究所長) どうもありがとうございます。既にアメリカにおいてはインドと中国はITで注目されていますし、テクノロジーを支えている国だと考えていますが、それはアジアで実現することもできるのではないかと思います。

 少し時間がなくなってきましたが、締める前に最後にバグワティ先生にもう一度、それからカラス先生にも、締めのコメントをお願いします。が、その前に、少しお見せしたいものがあるのですが、画面をお願いします。これです。これは最近の「エコノミスト」の特集号の表紙です。「インドの輝く希望」と出ています。「エコノミスト」は英語の雑誌でして、私はこの「エコノミスト」という雑誌は少し傲慢でコンサバな意見を持っているところだと見ております。でもその「エコノミスト」が、インドが間もなく目覚ましい成長を中国に続いて実現するだろうと言っていることは特筆に値すると思います。そして、その特集号として、このようなものが出ているわけです。でも、私は実はインドは既に輝いていると言えると思います。

 この写真は夜間を撮った衛星写真ですが、ほとんどの明るいところはNAFTA、要するにアメリカであったりEU地域であったり、東京からバンコク、ジャカルタにつながるラインがあるわけですが、でもそれだけではなくインドも実は輝いています。輝き始めています、と言うべきでしょうか。そして、この活動が今始まりつつあるということだと思います。それから、インドも日本も含めたこの地域は、そんなに面積的には広いわけではありません。小さいとも言えませんが。そして30億の人口、世界の半分ほどがいる地域です。例えば東京とロサンジェルスの距離を考えると5,500マイルですが、それに比べて東京とデリーの間は3,500マイルです。ですので、そういう意味では半分と言っても良いわけです。でも、実は3便しか飛んでいないのが問題だと思います。これが本当に日本の航空会社、そしてインドの航空会社が今活動を展開していますが、3便しかないというのは良くないと思います。もっとバンガロールやボンベイなど、その辺に便を飛ばすべきではないでしょうか。もっとコネクションを良くするべきではないかと思います。世界はそんなに大きくありません。工業からも考えますと、もっと大きな可能性がこの地域には隠れていると思います。もちろんインドと日本の間の直行便に関しては少し遠いかもしれませんが、途中にちょうどいいASEANの国々もいらっしゃいますので、ASEANを通じてということで、非常に良い形の強力ができるのではないかと思います。本当に益々これは現実になっていくと思います。そしてビッグ・スリーとASEANと、それからタイガースの協力が非常に大切だと思います。平和的な協力を進め、そして中国の方もおっしゃっていましたが、善隣関係、良い隣人である関係を作れれば、アジアの世紀を本当に実現できると思います。終わる前に、やはり短くバグワティ先生とカラス先生から最後のコメントをいただきたいと思います。お願いします。


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