|
|
|
朝日新聞シンポジウム「世界が見るアジア――著名コラムニスト鼎談」 |
![]() |
トーマス・フリードマン氏 |
フリードマン われわれ米国とインドとの外交関係がより親密に、経済関係はさらに緊密に、なりつつあることに疑いはありません。そして、軍事的にはより戦略的な関係になる、と私は思っています。
ライス米国務長官は、米・インド関係の改善を期待すると述べています。これは彼女が国務長官として就任してから押した太鼓判の一つです。いま、この関係は明らかに部分的には両国の経済的結びつきの強化によって促進されています。そして、ある部分では、インドが西欧からは無論のこと、中国に対する地域的なカウンターバランスとして期待されていることで促進されると私は思います。
従って、米印関係は実際に間違いなく、またさらに重視されると私は見ています。最近インドのシン首相がワシントンを訪問したばかりで、ブッシュ大統領も今年の後半にはインドを訪れると思います。これは核拡散問題に関しては非常に厳しい訪問となります。明らかに、世界で最大の民主主義国家であるインドが核兵器を持つことと、北朝鮮が核を持つのとは大きな違いがあります。実際には別の要因も絡んでいますね。
それは実はエネルギー問題です。インドは原子力産業の拡大を強く望んでいます。米国の大企業ゼネラル・エレクトリック社(GE)もインドにおける原子力産業の拡大を強く望んでいます。米自動車企業も、インドが、中国のように今後何年かのうちにガソリンをこれまで以上に消費するようになろうとしている時に、原子力産業を拡大しようとしていることに大きな関心を持っています。
インドはその核実験後に課せられた制裁問題が解決されるまで、発展のために必要とし求めていた核技術を獲得できませんでした。そして実は問題のすべてが原子力についてであったため、これが一つの大問題だったのです。われわれが正しいことをしたのかどうか十分には分かっていないことを告白します。整合性の点で戸惑っています。国際的核政権というものが存在するか否か。それと同時に、ファフさんが言われるように、北朝鮮のような狂気の政権とインドでは核の保有するにしても違いがある、ということです。
船橋 引き続き、朝鮮半島を見ていきたいと思います。朝日新聞と東亜日報の合同の世論調査が8月6日の紙面に出ていました。韓国の人々は、どの国が一番南北朝鮮の統一に反対かと、そういう質問があるんですが、それに対して、一番反対しているのはアメリカだと答えている人が40%近いか、あるいは40%超えているかなんですね。
2番目に一番反対している国に挙げられたのが日本で、中国は10%ぐらい。つまり、韓国の多くの人々は、中国は賛成してくれていると。反対はしてないと、こういう世論調査の結果ですね。
ただ、私は、韓国の外交官とか政策のプロに聞きますと、いや、これはおかしいと。中国はそんな少ないはずはないと。多分、アメリカと同じぐらいじゃないかとか、要するに、みんなあまり賛成してないんだと。最後に、いや、実は韓国も賛成していませんからというのがありますけれども、ここを、じゃあ、アメリカはそれほどまでに南北朝鮮の統一にほんとうに反対しているのか、嫌なのか。それは朝鮮戦争があったからなのか、どうなのか。
金正日という人が嫌いで嫌いでしようがないからなのか。いや、そもそも、そういうのは全く間違いで、そんな多くのアメリカ人が反対しているはずはないということなのか、どうなんでしょうかね。どちらからでも結構ですけれども。
![]() |
フリードマン 船橋さん、私はその世論調査を信用できません。残念ですが、アメリカ人のほとんどは、朝鮮が世界地図のどこにあるのか知りません。まして、朝鮮が一つなのか、二つなのか、あるいは三つなのか正確に言える人なんかいませんよ。
実は、私はこの問題についてあまり書いていません。というのも、この点ファフさんの意見にまったく賛成なのですが、中味があまりにハッキリしているからです。核兵器を持たないと政権を維持できないと思っている狂信的な政権が存在するということです。そこで、私の言いたいのは、あなたが引用した調査というのは非常に面白いけれど、まったく逆なんです。
私には、朝鮮問題というのはハッキリしていて、北朝鮮を明日にでも非核国に変えられる国が世界に一つあるということです。それは中国です。北朝鮮は相当量の燃料や食糧の供給を中国から受けています。もし中国が「明日にでも非核国に戻れ。再び核施設を国連の監視下に置くんだ」と言えば、北朝鮮はそうするでしょう。私はピョンヤンがある時点でこれに踏み切ると考えるのは決して無理だとは思いません。彼らには他に選択肢がないからです。
従って、これは全面的に中国の問題だと私には思えます。そして、ファフさんが言うように、中国人が朝鮮に非常な好意を持っており、二国の共存を求めているというのはまったく正しく、これが変わるとは思えません。従って、「自殺幇助(切腹)」とでも呼ぶべき解決がいいと思います。そこで、私は北朝鮮との貿易をオープンにして統合する案を支持します。狂信的な政権なので内部から倒すしかありません。
北朝鮮にカストロ戦略を用いれば恐らくキューバの時と同じようにうまく行くと思います。ですから、4者協議とか6者協議とかは問題を実際より複雑にしていると思うのです。重要なのはただ一国であり、それが中国です。中国は北朝鮮の核および半島の分裂をはっきり認める決定をしており、それが他の代替案よりも中国の国益に適うのだとしています。ですから、われわれに残された選択肢はただ北との経済を開放し、貿易の流れを出来る限り拡大することによる「自殺幇助」だと私には思えます。これによってのみ、それを倒すことが出来るのです。
ファフ いまフリードマンさんが言ったことに賛成です。しかし、米国が反対していると思っている人が30パーセントいることに非常に興味を引かれます。これは韓国のことですよね。引用された調査というのは、韓国人の30パーセントが米国は朝鮮半島の統一に反対していると思っている、ということですね。
これは非常に興味のあることです。というのは、日本もそうだからです。それが非常に興味深いのは、北朝鮮のプロパガンダがうまく成功したことを示すとともに、過去50年以上にわたる韓国内における米国の役割に対する韓国の人々の反感もあったと思うからです。駐留問題は、近年にいたるまである種の過重な軍事的負担でした。
北朝鮮は、アメリカ人が韓国に駐留しているのは彼らが半島の分裂を望んでおり、北を攻撃したいからだ、と言っています。私には、それが北朝鮮の一貫したプロパガンダのテーマなのだと思えます。そして、南にもそれに呼応する声がかなりあるように思えます。その対策としては、二つあると思います。
ひとつは、フリードマンさんが提案したような、北との貿易を開放することですが、それと同時に、米軍が韓国から撤退することです。駐留が続く限りこの解釈には確証を持つことになりますが、それとともに、駐留の有用性は何かということもあります。
というのは、通常のシナリオならば、北朝鮮がソウルを砲撃すると、韓国の軍隊が北の軍を撃破する、そして1950年の夏に起こったことを繰り返さないため、米国が核兵器を用意することになるということになる。
私は、それが本当だとは思いませんが、いずれにしても、これらの軍隊はトリップワイヤーを維持する機能を果たしていたと思います。つまり、北朝鮮が南を攻撃した場合、米軍が介入するということです。この機能は当該地区に駐留する大隊によって賄うことが出来ます。これによって米国は韓国を見捨てることはないことを簡単に保証できるわけです。
船橋 今、トリップワイヤーという表現をファフさんがお使いになって、これは南北の軍事境界線の近くのところにアメリカの軍隊を駐留させておくと。そういうことによって、もし北が何かしたときは、必ずアメリカ軍は攻撃を受けるわけですから、アメリカが反撃するというような冷戦の時代の米韓同盟の軍事ドクトリンですよね。
それを、韓国の南のほうにアメリカの駐留軍を引くということが今起こっているわけです。それから、同時に、イラクのほうにアメリカの駐韓米軍を相当程度振り向けると。余裕がないですから。ですから、実質的には、今、ファフさんがおっしゃったような、少しスリム化した、柔軟なアメリカのプレゼンスと変わりつつあるんですね。
これはどうなんでしょうか。長期的には、一番最初にファフさんがおっしゃった、アメリカの孤立主義ではないけれども、世界から、どちらかというと引いていきたい、撤退したいという気分、そういうものを考えたときに、さらに韓国からもっとアメリカは将来引いていくという方向が出てくるのか。それは、北の宣伝が相当うまく功を奏して、北朝鮮よりアメリカのほうが脅威が大きいと。
アメリカは南北統一に反対しているだろう、けしからん、こういう気分がさらに韓国で出てきたときには、アメリカもそこまで言うんだったら、もう韓国に置かなくてもいいかなというようなことになるのか。もしそういうような米韓同盟がさらに薄まっていった場合に、じゃあ、中国はそれをどういうふうに読んで、中国のゲームプランというのをつくってくるんだろうか、こういうところを少し入ってみたいと思うんですけれども。
まず、アメリカの国民の長期的な気分といいますか、これは朝鮮半島ではどうだろうかというところに少し絞り込んで、ファフさんにさらに伺いたいと思うんですけれども。
ファフ 先ほど言われたように、朝鮮問題に意見を持っているアメリカ人が、全国民の10分の1以上、あるいは1%いるというのは極めて楽観的でしょう。現在アメリカ人には、ルイジアナは言うにおよばず、イラク情勢もあり、なぜ韓国に軍隊を置いているのかと言っています。
そこで、問題は一つには韓国が米国のコントロール下にあるという韓国の人々の意識を取り除くことにあり、それと同時に、トリッププワイヤーを維持する。簡単な問題でなく逆説的ですが、米国は最後には韓国を北朝鮮の攻撃から守るということを示すのに十分なトリップワイヤーを維持するということです。ですから北朝鮮がそんな攻撃を仕掛けるのはあまりに無分別なことなのです。
asahi.comトップ|社会|スポーツ|ビジネス|暮らし|政治|国際|文化・芸能|ENGLISH|マイタウン