●冒頭発言・片山善博氏/労働と時間の高コスト構造、政府が是正を
桐村 どうも、新聞社として耳が痛い苦言も含めてありがとうございました。
片山さんは、宮城県の浅野知事、それから三重県の北川知事らとともに有名知事のお一人で、東京都の石原知事のホテル税には強烈なパンチを出されていました。内外にわたって意欲的な県政を展開されている片山さん、お願いいたします。
片山 ご紹介いただきました片山です。
鳥取県というのは日本海に面しておりまして、中国に非常に近い。朝鮮半島にはもっと近いわけでありまして、最近の世界情勢の変化、特に日本海が、従来のようにアジア大陸と日本列島を隔てる海から、ぐっと近づける海に変わりつつあるということを実感しております。直接の貿易も随分増えておりますし、定期航路、定期航空路も着実にできております。今、そういう最前線におりまして、きょう、こういう機会を与えていただきましたのは大変ありがたいと思います。
日本と中国との問題で、私、今、一番痛感していますのは、やっぱりコストの差であります。特に労働コストの差であります。我が国は今、大変な経済的な不況に陥っていて、ご多分に漏れず鳥取県でも失業問題、雇用問題というのは大きいわけであります。産業もかなり店じまいをしたり、大幅なリストラを余儀なくされたりしております。それは例えば繊維であったり電機機械器具であったりするわけです。また一方、倒産というのとはちょっと違うんですけれども、農業の分野なども、鳥取県は白ネギの大産地なんですが、例の白ネギのセーフガード問題が昨年ありました。そういう問題でも大きな影響を受けております。これらはほかにもいろんな原因がありますけれども、やっぱり労働コストの差というのが一番大きいと思います。
日本は、中国との間の労働コストの差は完全には縮まりませんけど、多少なりとも縮めようとして努力されているときに、民間企業の場合には、人員を減らすことによって調整をされるわけです。単価を下げて調整をしようというのではなくて、人員をリストラして減らして、それで労働コスト、トータルコストを減らそうとするわけですね。私は、あのやり方というのは、それぞれの企業がやられるわけですけれども、あんまりトータルとして効果を発揮しないのではないかという気がするんです。
といいますのは、みんな企業がそれぞれ自分のところの労働コスト、トータルコストを減らそうと思って人員を整理する。そうすると、ますます雇用情勢というのは悪くなるわけですね。場合によっては、単価調整をして、人員は減らさないで労働コストの調整をするということもあってもいいのではないかとかねがね思っていまして、そこで、実は鳥取県庁の職員、それから教職員、警察官も含めてですけれども、今年の4月から労働単価を切り下げました。5%カットいたしました。これによって大体35億円ぐらい県の使えるお金がリザーブできました。
それで多少なりとも鳥取県内の労働事情、雇用情勢というものを緩和したいと思いまして、官と民とで新しい雇用を創出しようと今頑張っているところです。民間企業の皆さんもちょっと頑張って、例えば学卒で仕事のない人を採用する、そういう企業を応援しましょう。それから、中高年のリストラ、意に反して職を失った、リストラされた人たちに新しい職を提供する、そういう企業を応援しましょうという基金をつくったり、それから行政の側も、この際、今まで光が当たっていなかったような分野、例えば教育とか福祉とか、そういう分野に5%カットで浮いた財源で職員を採用しましょうということをやっております。7月に県庁の職員、それから教員もそうなんですけれども、今年4月には不幸にして仕事がなかったけれども大変フレッシュな人たちが新たに参入してきました。みんな、一時期、仕事がない状態を経てきたものですから、大変目が輝いて、県民のために一生懸命働くというようないい変化も出てきております。
もう1つ、私、日中の関係で最近気になりますのは、単価のコストもそうなんですけれども、時間コストというのがすごく違うような気がします。といいますのは、時々、中国に行くんですけれども、私が行きますのは東北地方で吉林省なんか多いんですが、高速道路なんかがあっという間にできるんです。もう見る見るうちにできるんですね。日本の場合には、私のところでも高速道路を国がつくってくれていますけれども、ほんとうに遅々として、遅々として進んでいるんです。日本語が変ですけれども。ほんとうに時間がかかるんですね。それはいろんな理由があります。財政上の問題もありますけれども、でもやっぱり、行政、これは県の行政も含めて、中央の行政が特にそうなんですが、やっぱり能率の問題もあるんだろうと思うんですね。
ただ、中国の場合には、中国の方がおられたら大変申しわけないんですけど、やっぱり民主主義の不足というのはちょっとあると思うんです。日本に比べますとやっぱり民主主義の不足というものがあって、その民主主義が不足している分、効率性がいいという面もあるんだろうと思います。いろんな手続がちょっとはしょれるとか、仮にそういうことがあれば、時間をぐっと短縮することができる。ただ、日本の場合にはいろんな手続を踏まなきゃいけないのでかなり時間がかかるという面もあると思いますけれども、中央政府の効率性の問題もあるんだと思います。
いずれにしても、結果で見ると、例えばこれから環日本海時代、日本海を挟んでいろんな物や人のやりとりが盛んになる時代が来つつありますけれども、そういうときに対応したインフラ整備なんかにしても、中国はすごく早いです。北朝鮮に向けて高速道路があっという間にできています。ロシアのザルビノとか、そういうところに向けて鉄道もあっという間に敷いています。韓国もそうなんです。韓国も東海岸に立派な道路が南北にできていますし、ソウルとの大動脈の高速道路も今、着々とできてあります。ひとり日本はのんびりやっているんですね。
こういう時間コストの差というのは随分大きい。これが1つのこれからの日本の課題だろうと思うんです。いかに必要なことを早くやれるか。これは、単に高速道路を早くやってくれと言っているだけじゃないんですよ。いろんな政策の転換がもっとスピーディーに、もっと的確に、適時適切にやれる。そういうことを日本の政府に私は求める。我々も実は同じことなんですけれども、そういうことが1つの課題ではないかと思っています。
●冒頭発言・莫邦富氏/日本企業は、中国の消費者に学べ
桐村 ありがとうございました。
お待たせしました。莫邦富さんは、最近、『日本企業がなぜ中国に敗れるのか』という、きょうのシンポにぴったりな題名の本を出版されました。よろしくお願いします。
莫 先ほど片山知事のお話を聞いて非常に感心していましたんですが、中国の吉林省の高速道路の建設スピードを見て驚いているという話ですが、吉林省は中国では負け組の省ですよ。スピードが遅いほうの省ですが、それを見て驚いているのを見ると、私も日本は情けなくなってしまうと思いますが、先ほど一生懸命考えたんですが、日本は中国より何が早いのかと思うと、総理の首をすげかえるのが早いなと。平成14年で総理は11人かわりました。だから、そういう差もあるんじゃないかなと思います。
もう1つ、先ほど片山知事が労働コストの差のことを問題にしましたが、私から見れば、労働コストもそうですが、あと、インフラ関係のコストも非常に高いですよ。交通費、宿泊費なども。例えば日本の隅々まで私は講演に行ったと言いたかったんですが、鳥取県には行っていないんですよ。心理的には遠い。交通費と宿泊費を払って自分で行くのか。行かない。あと、知事の前で言うと何なんですけど、鳥取県に行っても情報的な付加価値が少ないです。青島に行くと、お金を出して行ってでもいろいろ吸収することができるんですが、じゃあ、今、鳥取に行って私は何を吸収できるのかというと、知事がいるから行くと思いますが、知事が代わると、あまり仕事しない知事がもしそのポストに座りついたら、多分だれも行きたくなくなるんです。
だから、中国を見ると、生産コストの安い製造基地としてどうしても日本の方はそればかり見ているところがあるんですが、それで日本の産業の空洞化とかなんとか言い出していますが、私はむしろ、成長する中国は日本の経済にとっては大きく依存する21世紀最大の市場として見なければならないと思います。そこから見ると、断然違ったものが見えてくると思います。
例えば中国の携帯電話、今年の4月で中国の携帯電話の所有台数が1億7000万台、中国の携帯電話は日本よりはるかに高いですよ。安くても1000元。1000元を日本円に直しますと1万5000円。そして、2000元もまだ安いほうの携帯電話と言われているんですよ。2000元となると3万円、例えば1000元で計算しても、中国7000万台だと日本円に直しますと2.3兆円の市場ですよ。
しかし、この市場に日本の企業がどれぐらいシェアをとっているのかといいますと、非常に惨たんたるもので、私、手元にこういう資料がありますが、中国消費者協会が去年の11月に中国の15の都市で行ったアンケート調査ですけど、そこで携帯電話のブランドの認知度と消費者の満足度を調べているんです。まず、ブランドの品質から見ると評価されている企業は、中国の企業を除いて外資系の企業といえば、ノキア、モトローラ、サムスン、シーメンス、エリクソン、フィリップス。そしてその後、外国ブランドの機能とかスタイルとかデザインとかサービスとか、全部見ても、ほとんどこれらの会社が占めている。残念ながら、松下もソニーも出ていないんです。これだけの大きな市場なのに日本の企業がそこに出ていないんですよ。評価されていないんですよ。
じゃあ、この消費者協会のアンケートをそのまま――先ほど皆さん、中国の統計を信じていいのかという疑問がありましたが、私もやはり保険は掛けたいので、もう1つ、中国で非常に有名なアンケート調査の会社が、これも去年、中国の10大都市に対して携帯電話についてアンケート調査をしたんですが、まず、ケータイのブランドといえば皆さん何を思いつくのかと。そこで45%の人がモトローラを提起する。次にノキア、これは42%。この2社だけで86%のシェアを占めてしまいました。そして、携帯電話のブランドのイメージから評価するものはというと、やはりモトローラとノキアが一番高かった。そして、メーカーとして一番関心を持っているシェアはどれぐらいですか。そのシェアを見ると、モトローラのシェアは30%、ノキアは28%。日本の企業が残念ながらないんですよ。
じゃあ、日本企業がなぜないのかと。例えば中国消費者協会が調査した中国のユーザーが好む携帯電話のデザイン、カラー、まず黒が一番喜ばれる。33%。次はブルー、26%。日本ではやっているシルバーが15%。日本でもややはやっているグレーは9%。つまり、日本が中国に投入していた機種は中国の消費者はあまり歓迎していない機種です。後で詳しく触れますが、やはり中国を、安い労働力を提供する生産基地だけではなく、皆さんにとっても、ぼっかりとお金を稼げる市場としてきちんと取り上げてください。それを取り上げるためには、まず、中国の市場の特徴と消費者にきちんと学ぶ、研究する姿勢を持たなければならないと考えます。以上です。