●北東アジアを、自由貿易圏の真空地帯にするな
桐村 ディスカッションの最後に、日本の生きる道を探る上で、もちろんのことですが、日中二国間の視点だけではだめで、アジアとどういうふうに連携していくかということで、先ほど生田さんは冒頭の中で、今ごろシンガポールとだけFTAをやっているという現状を嘆いておられましたが、この自由貿易協定一つとっても、どういう手順でアジアに広げていくのか、アジアとの連携というのはどうあるべきか、生田さんと深川さんに一言ずつお願いしたいと思います。
生田 朱鎔基さんですか、去年の11月に中国プラスASEANのFTAを10年後につくるという発表をされまして、世界が、もっと時間がかかるんじゃないかなと思っていた中国がおっしゃったので、非常に驚いたと。それで、日本の新聞や識者の中も、あれは中国の脅威論があるから、それをなだめるためにリップサービスで言ったんだろうという見方のほうがどっちかといったら多いんじゃないかなと思うんですが、私は、中国は言ったらやると思っているんです。
中国の政治家といいますか、指導層というのは、大昔から、50年、100年、場合によったら200年のスパンで戦略を立ててやるステーツマンシップを持っていらっしゃる。これは歴史を見ると、紀元前の4、3世紀につくった万里の長城がそうですよね。それから、紀元前1、2世紀につくった四川省の水利をつくった都江堰という川の大きなものすごいかんがい工事があるんですが、これも200年ぐらいかけていますね。それから、私は年2回ぐらい中国に行くんですけど、近いところじゃ長江の三峡ダム、あれは発想は孫文さんで、孫文さんがやったのを、蒋介石が設計図をかくところまで持っていったんですね。それが、蒋介石さんが台湾に行った後、毛沢東が引き継いで、それでトウ小平が引き継いでそれを具体化しようということで、今、江沢民さんのときにそれが実現しようとしているという、それだけのステーツマンシップが発揮できる民族性を持っているので、軽々に朱鎔基さんがリップサービスで言うことはないので、必ずやるだろうと思っております。
トウ小平さんの指導のもとに、今、江沢民さんがやっていらっしゃるのは、内陸と沿岸州の格差の是正というのは、西部開拓で何とか解決していく努力をされるんだろうと思います。アメリカも西部開拓で発展したわけで、手法としてはたまたま西部で同じなんですけれども、いい発想だと思うんです。
さらに、国内が治まった後、伸びるのは何かというのは、やっぱり海外展開であろうと思うので、それで華僑の方たちが東南アジアの経済を実体的にかなり支配しているわけですから、下地はあるわけですから、そうした人たちの力もかりながら、ASEAN諸国に経済圏を伸ばしていくというのは当然の発想だろうと思うので、多分10年後にはほんとうにおやりになるというふうに考えたほうがいいと思うんです。
それで、今、猛烈な勢いで中国は国際化していますよね。特に去年は中国の指導部ご自身が国際年度とおっしゃったけれども、APECの首脳会議はありましたし、WTOの加盟承認が11月でしょう。それからオリンピックが決まりましたね。いろんな民間企業の産業の会議も北京に集中しまして、国際的な中国、開かれた中国というのを今、非常に売り出していらっしゃいます。
WTOに加盟して、2005〜2007年ぐらいにはほとんど段階的に関税を落とすのも行き渡ってくるわけで、その間、GDPで今言っているように7%ぐらいの伸び率とすれば、相当の経済大国になります。オリンピックまでには中国の威信をかけて、今の元というものは多分国際的に兌換可能なハードカレンシーになっていくだろうというふうに考えれば、ちょうど2010年ぐらいは国際的に輪を広げていく。大型FTAを結んでいく環境は整うと思うんです。
中国のあの発表の中に、ASEANと中国とだけ書いてあることに我々は注意すべきだろうと思うんです。1つのメッセージがあると思うんですね。東北アジアがFTAの真空地帯になっているにもかかわらず、日本と韓国はきれいに抜けているわけですね。だから、中国を中心としたアジア圏ということを多分、中国の今の指導層は考えていらっしゃるのかなと。そこで、今でも孤立している日本はよほどしっかりせにゃいかんなと、こう思うわけであります。
日本はどうかというと、貿易の自由化はWTOを中心に多角的自由化でやるんだということを金科玉条で去年まで言い続けておりまして、一歩も出ないと。WTOを通じてやるということはやらないということで、あれは国連と一緒で、多数国が入っているから利害相反してまとまらないわけですよ。日本は、産業としての農業問題というよりも、農業に絡む政治問題があるから、避けて通ろうという意味で私は延ばしていたんだと思います。
ここで勇猛というか、もう当たり前のことで、ほんとうは10年前ぐらいからやるべきなんだけれども、小泉さんが東アジア経済連帯というのを出されましたね。これは、冒頭申し上げたようにそんな言い方じゃなくて、自由貿易投資協定とはっきりおっしゃったほうがいいと思うんですが、そういう考え方が出てきたことを私は大変歓迎したいと思っているし、これは絶対必要だと思います。
私自身は経済同友会なんかの場も通じて提言しているんですが、実はおととしから提言しているんですが、ASEANプラス日中韓の3カ国プラスオーストラリア、ニュージーランドで、もし可能であれば、莫さんがいらっしゃってどういう反応が出るか知りませんが、台湾も含めて自由貿易経済圏をつくることが将来の生きる道だろうと私は考えております。それを10年後ぐらいに見据え、それまで近隣諸国とできるだけFTAを促進していく。
農業問題というのは、農業政治問題なんでしょう。そんな国内問題のために国益を犠牲にするべきじゃないので、これは国内的に解決していく工夫をしていくべきだろうと思います。そうやって10年後の協定の発効ぐらいまでにアジアでの相関関係というものを思い切り深める必要があると思います。
GDPで見ますと日本は4・7兆ドルぐらいです。これにASEANの主要な国を足してもやっと7兆ドルですよ。アメリカは1カ国で10兆ドルです。それが、NAFTAであとメキシコとカナダを抱えているわけでしょう。それが2005年には34カ国にさらに拡大しようとしている。日本はたった4・7兆、ASEAN足しても7兆と。それがばらばらにやっている時代は完全に去っているというのも同じであります。そういう認識を国民がきちっと持って、政府にハッパをかけていくべきだなと。幸い、小泉さんがそっちのほうを向いてくれていますから、支持していきたいなと、こんな感じでおります。
●タイムスパン区切らぬ日本。「そのうち」はだめだ
桐村 ありがとうございました。
それでは、深川さん、お願いします。
深川 ここしばらくはFTAが花盛りで、ずっといろいろにかかわってきたものですから、少なくとも少し進歩したかなと最近感じておりますのは、改革と開放がようやくセットで日本でも語られるようになったと。構造改革のためにFTAというのはやっぱり1つのてこにしていこうという発想がようやく出てきたというのは、ここしばらくの間としては大きな進歩だったと思います。
世界のFTA業界の常識というのは、日本は農業問題を抱えているから絶対FTAができないというのが世界の常識ですから、これをどういうふうに裏切っていくことができるかというのは非常に大きな問題になっていると思います。
その意味で、改革と開放はリンクしているのであって、今までの東アジアの経済協力というのは、日本が先進国で、「やってあげる」経済協力の次元で語られてきたものが多かったんですけれども、FTAを通じて日本の経済的攻勢がアップする、よくなるということを目指して、日本は自分の戦略的意義というのをもう少し改革の中で明確化していく必要があると思います。
そのためには、FTAというのをどこの国とやるかにかかわらず、FTAをめぐる国民的議論というのがなければいけないですし、それから、どの国を入れてどういう性格を持ってFTAをつくるのかというのは非常にあいまいなまま過ぎてきています。例えばFTAと安全保障というのは非常に密接な関係がございますので、中国というのはセンシティビティーはもちろんありますし、あと、ASEANプラスの中にニュージーランド、オーストラリアグループを入れてくるのに対するASEANの反発というのは実はあるんですね。ですから、結構複雑な話ですので、いきなり理想に行くことがいいかどうかというのはあります。
最後に、日本は何事もタイムスパンを区切ってやらないので、一体いつどうなるのか非常に予想しにくいという疑問を投げかけられていると思います。それは構造改革もそうですし、中国、ASEANのFTAの話というのは、少なくとも10年内に何か結論を出しますと言っているからみんな注目してくれるので、今の日本のように、そのうちできるかもというのではやっぱりだめだということだと思います。
●会場との質疑応答/対中含む政府援助に監視を。議論はし直せ
桐村 ありがとうございました。それではここで質問に答えていただきます。端的にお答えいただければ幸いです。
深川さんに、まず29歳の主婦の方。毎年、日本は莫大なODAを中国に出しているけれども、これだけ1日聞いて元気のある中国に何で元気のない日本が援助しなきゃいけないのかと、こういう質問。どうぞその場で答えてください。
深川 今、中国だけにかかわらず、世界のODA業界では大きな変化が起きていまして、特にセプテンバー・イレブン、テロ事件以来、アメリカは貧困削減というのがトップ・プライオリティーに来ていまして、もう貧困国はどうせ返すことはできないんだから、グラントにどんどん切りかえていくべき。中国から上の、民間からお金を借りるところは援助は必要ないと。極端に言うと、このシフトが起きているんです。
日本にとってすごく難しいのは、日本は円借款というのをODAの中に含めていて、これはすごく大きいです。これの原資は我々の年金だったり郵便貯金だったり、もとのもとのもとはしているわけですから、返してもらわなければもちろん困るんですね。中国はこれまで着実に返してくれていますから、実は一番いい相手ではあったんですけれども、そこのまずグラントとローンの見直しからやらなくちゃいけないという話と、それから、一番冒頭に私が申し上げた安全保障のポジショニングというのは、やっぱりあんまりしっかりしていないので、ODAと安全保障というのは少なくとも政治の世界ではかなりくっついている話なので、それがまともに議論する場がこれまでなかった。いよいよODA総額としての削減が来たので、じゃあ、どこを削るかという話になってきたときに、中国、空洞化論みたいなのが浮上してきて、はっきり言って、議論はぐちゃぐちゃなまま続いてきているということです。
ただ、言えることは、ODAというのはやっぱり国民のものなので、国民が監視しない限り野放図にめちゃくちゃになっていってしまうというのは、この間の経緯ですごくよく皆さんわかったと思うんですね。そういう意味では、もう1回、議論はやり直しというところに今来ていると思います。
●情報公開は、結局は組織を健全にする
桐村 ありがとうございました。
片山知事に、群馬県の会社員の方ですね、55歳。鳥取県は大変情報公開が進んでいると聞いていますが、私の住む群馬県は保守王国ですと。情報公開はどうやったらうまく進めさせることができるんだろうかという。
片山 それはもう公開するだけなんですけれども、これは情報公開をどうとらえるかということなんですね。従来、ともすれば、情報公開というのは、住民の皆さん、納税者の皆さんのために情報を公開するんですよという発想なんですね。中央政府が情報公開法をつくりまして今やっていますけど、それなんです。みんな渋々で嫌なんです、公務員の人は。ですから、防衛庁の情報公開を請求した人のリスト作成みたいな変な話になっちゃうんですけどね。
私は今、鳥取県庁を預かっていまして、情報公開というのは私のためだと思っているんです。それはなぜかというと、例えば私の県庁、3000人ぐらい職員が働いていますけど、一人一人を全部私がチェックすることはできません。一人一人が仕事をしていまして、中にはひょっとしたら変な人がいるかもしれないし、むだ遣いがあるかもしれない。それを私が全部チェックできればいいですけど、忙しいですからできませんよね。それを全部情報公開するということになりますと、みんなが見張ってくれるわけです。納税者、県民の皆さんが。そうしますと、みんなに見張られているということになると、公開を前提にして仕事をするということは、職員は常に緊張感を持ってぴりっとしてやるわけですね。もちろん、県民、有権者、納税者の皆さんに情報を公開することによって行政の情報を共有して、お互いで政策をつくっていきましょうという意味はありますし、もう1つは、組織を健全にするために、常に外から刺激といい意味での監視の目があるということ、これが長い目で見て組織を健全に保つゆえんになる。これをみんなが了解すれば、情報公開というのはすぐ進みます。
私のところは、警察も最初、警察の情報を公開するというのは嫌がりましたけど、今、私が申し上げたようなことを警察の皆さんに話をして、皆さんのためだよと。決して警察は今まであんまり信頼されていないですよと。いろんな不祥事があったりして、新潟のほうでとんでもないときに雪見酒を飲んで麻雀をしていたなんてありましたでしょう。ああいうことをなくすためにも情報公開は必要なんです。だから、皆さんのために情報公開するんですよということで、お互い納得をして、警察の情報も公開するようにしたんですね。
だから、そういうことでやれば群馬県もすぐ情報公開になると思いますよ。
●知事と議会は車の両輪。距離がなければ走らない
桐村 これは65歳の役員の方、ちょっと便乗質問っぽいんですけれども、私も新聞記者ですからぜひ聞いてみたい。長野県の田中知事の不信任案の問題、これ、どう見られているか。地方の時代の挫折と見るかというご質問ですが。
片山 ダムの話が唐突である、一方的である、独善であるということで、今回、不信任案――きょうどうなったか知りませんけど、なったらしいですね。実は私もダムを1つやめたんです。中部ダムといって、中部地方のダムじゃなくて、私のところの鳥取県の中部にある中部ダムというのをやめたんですけど、これをやめるときに脱ダム宣言とかやりませんでした、私は。そうじゃなくて、情報公開したんです。さっきの情報公開を。
どういう情報公開をしたかというと、ダムが得か、それともダムにかわる他の手法が合理的か。要するに、治水のため、洪水を防ぐためにダムをつくるわけですから、ダムという手法をとったら幾らかかるか、ダム以外の、川幅をちょっと曲げたり、川底をきれいにしたり、堤防をかさ上げしたりすることによって治水の効果をもたらすために幾らかかるか、それの比較考量することが必要なんですね。
従来は、私が当選して就任する前は、ダムのほうがお得ですということで、そういう比較をしていたんです。でも、私は長年の経験で、どう見てもまゆにつばをつけないとおかしいと思って、徹底的にそれを調べてみたんです。そうしたら、やっぱりまやかしがあったんです。ダムのほうがお得というのはまやかしがあったんです。
どういうのかというと、ダムが140億円しかかかりませんという説明だったんです。一方、治水のための工事は147億円かかりますという、そういう説明だったんです。ところが、ダムの140億円というのは、昭和48年の計画策定時の金額なんです。「今に置きかえたら幾らですか」と聞いたら、240億円になりますと。換算したら。147億円かかるって、ほんとうにそうかと言ったら、それは、いろんな立派な石を、中国から御影石を輸入してきて敷くとかですね――それはちょっと冗談ですけど、そういうようなやらんでもいいようなことを積み上げて147億円。だからダムが得だと言っていたんですね。それで、ダム以外の手法で幾らですかと言ったら、30億から40億ですということになるわけですね。そうすると、240対30ですから、だれが見てもダムは要らない。それを全部情報公開しました。
それで、やめたいんですと言ったら、県議会では、うちの県議会は自民党から共産党までみんな廃止に賛成してくれました。だから、一切けんかもしていませんし、不信任案も出されません。だから、私は、長野県もそういうふうに情報公開をされたらいいと思うんです、徹底的に。
それからもう1つは、ちょっと長くなりますけど、首長、知事と議会というのは車の両輪だと私は言っているんです。車の両輪というのは、ぴったりと常に一致するという意味じゃないんですよ。両輪ですから、適度な距離がないといけない。こうなったら一輪車ですから、転んでしまいます。だから、適当な距離があって、お互いに異論、反論があっていいと思うんです。お互いに、知事はこう考えるというけど、議会は反対だよとか、うちはそうなんです。だから、私が出した議案でも否決されたこともありました。不信任はありませんけど、否決はありました。修正もあります。しょっちゅうあります。私が出した案も、議会で議論している間に、ああ、議員さんの言うことのほうが結構正しいなということもあるんです。なるほど、そういう考えもあるのか、じゃあ、それで修正しましょうと。それで県民の皆さんもそういうのを見て合意形成ができていく。
これがこうなることがあるんです。よく与党だとかいって、こうなるともう、県民の取りつく島がないわけです。何を言ったって、みんなぴたっとして、異論、反論を寄せつけてくれない。だけど、こうあるといい。
だけど、車の両輪ということは、一輪車になってもいけませんけど、ばらけてもいけないんです。ばらけたら前に進みませんから。どうも今、長野県はばらけかかっているんじゃないかという。まあ、いい機会だから、もう1回、選挙をやったらどうかなという気はしますけど。
●だれがやろうと、構造改革は支持していく
桐村 ありがとうございました。
生田さんには、小泉さんのもとで日本経済再生というのはもう期待できないんじゃないだろうかと、ちょっと悲観論の55歳の会社員の方からですが、どうでしょう。
生田 小泉さんであろうとなかろうと、構造改革がなければ日本の再生ができないことははっきりしているんですね。小泉さんが去年の6月に出した骨太案、えらく斬新的で極端で、よく過激なことを言うなと思われたかもわからないけれども、何のことはない、あんなのは、筋においてほとんど10数年前にサッチャーさんが言ったことと同じだし、10年前にレーガンさんがやったのと同じことで、ほんとうは90年代の初めに宮沢さんぐらいが出してやっておくべきことだったんですね。そこでやっていればどうってことはなかった。今ごろこんな大きな不良債権のツケも残っていないし、日本国は今、競争力がそこそこにはあっただろうと思うけれども、全部10年間先送りしてきた大きなツケが今残っているわけですね。
だから、これは遅ればせだけど、やらざるを得ないわけですよ。これは途中の議論で出たように、例えば中国の政治家、指導層の場合に、50年、100年の計でいろいろ進めると申し上げたけど、そういうところがあるんですよね。だけど、今の江沢民さんなんか体制が楽ですよね。与党がいないんだし、党内抵抗派がいたら切っちゃえばいいんだから、それがないから気の毒だけどもね。だけど、小泉さんが出てきて、それを10年遅れとはいえきちんと出したんですから、これは貫徹してもらわないと日本国は救われないと、こう思います。
じゃあ、小泉さんにできるのかと。この後は私の個人的な感想になるけど、小泉総理はかたい信念でやっていらっしゃるから、変な妥協はされないと思いますよ。妥協したんじゃ日本国は救われないから、最後まで妥協をせずに押し通していかれるだろうと思うし、そうすると大体、今までのいろんな古い習慣や、古いいろんな意味のおつき合いがあって反対だと言っていた方も、やっぱりいろんな問題でなだれ打ってやむを得ないという方向で今行っていますよね。だから、これは小泉さんにできるかできないかではなくて、やっていただかざるを得ないと。ご苦労さんだけど、やっていただかざるを得ない。
彼にだれが代わるにしても、構造改革はもう変えるべきじゃないし、この流れは変わらないと思います。それを引き継げる、例えば片山さんが出てきてやってくださるなら、情報公開をしながら、それはそれで拍手は送ります。けど、はっきりしたそういう方が出てこない限り、小泉さんを守り立てていくと。
1つ一緒に考えておきたいのは、小泉さんが何でここまでわりあい勇猛果敢に来られたのか。これだけ旧態依然とした大きな国の方向をたった1年間で大きく変えたわけですから、これは大成功だと思うけれども、その力は国民世論のサポートだったと思うんです。決して自民党の中のサポートじゃなくて、世論のサポートだった。ところが、やっぱり国民というのはどうしても物を短期的に見るから、何だ、ちっとも変わらないじゃないかと。方向が変わったことにあんまり気がつかずに、具体的な問題としてあんまり変わったことに実感がないから、遅いと、こうなるんですね。
待っていましたと、今まで黙っていた身近の反対の方が、反対、反対と。これは小泉さんの力をそぐと思います。だからやっぱり、ほんとうにいいことをやっていると国民が思ったら、支持という面で強い支援を総理に送ることが、この先、彼に日本国を再生させてくださる力を与えることになると、私は固く思っていますし、私のいる経済同友会なんかではそういう方向で、微力ですけれども、努力をしているつもりであります。
●日本の技術、勤勉さに中国はなかなか追いつけない
桐村 ありがとうございました。
莫邦富さんに、これはもしかしたら日本の電機メーカーの方かもしれませんが、確かに携帯電話では出遅れたかもしれないけれども、ゲーム機などソフトを利用する技術ではまだ優れている。日本の物づくり産業を担う人へ、バッシングではなく激励の言葉をくださいというのがありますが。
莫 正直言いますと、私がもし会社をつくったら、まず雇うのは日本人です。なぜかといいますと、安心して仕事を任せられる。これは中国でもものすごく高く評価されていて、中国を取材したとき、いろいろな家電メーカーのトップから、日本人のベテランの技術者とか、現場管理の経験者を紹介してくれないかと。その意味では、もし日本の会社がもうだめになったら、人生をもう一度新天地で挑戦する手もあるのじゃないかと思いますよ。
だから、日本人の技術力、仕事に対する勤勉さ、そして職人気質というようなものは、情けないですけど、中国人は多分あと50年かけても追いつかないと思います。
そういう意味では、私は今、非常に辛口のことを言っているんですが、やはり日本の方々に猛省を促したいと思いますが、私が日本語を勉強したとき、私の知っているあの輝かしい日本を、もう一度、皆さんの手で取り戻してください。皆さんは廃墟からはい上がった国ですから、廃墟から世界ナンバー2の経済大国を築いた、そういう輝かしい歴史を持っていた国ですから、私もこの輝かしさに魅了されて日本語を選んだんですよ。当初、文学青年だったので、詩人の道を歩もうと思ったんですが、途中で道草を食ってしまって日本語を選んだんですが、だから、ぜひ私を悲しませないような日本を皆さんの手でもう一度つくってください。