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シンポジウム「どこへ行く自衛隊」
【冒頭発言】加藤 紘一氏 イラク攻撃は政策的に疑問

 加藤 紘一氏

 加藤 加藤でございます。自衛隊と憲法とイラク、この3つについてまとめて10分という話でありますので、要点のみ申し上げます。

● 自衛隊は普通の軍隊、世界有数の装備

 まず、憲法改正と自衛隊のことですけれども、私は自衛隊は普通の軍隊だと思います。「戦力なき軍隊だ」とか、いろいろな議論の経過はありました。しかし、今や我が自衛隊は、装備の面からいいましたら世界有数で、予算の面でもアメリカ、ロシア、中国に次いで4番目ぐらいの予算規模を有していると思います。F15を200機持っています。イージス艦もあります。ですから、戦力なき軍隊どころではありません。年間の防衛費は、北朝鮮年間防衛費2500億円の20倍の5兆円を使っております。

 では、どこが違うかというと、実戦経験が今までない。それから、もちろん核を持とうとしない。それから、海外展開を絶対にしないというある種の制約を持っていることであります。「でも、自衛権はみんな持っているね」、「自衛隊はもう軍隊だよね」、「それはもう本当はわかりやすくしたほうがいいよね」というのは、ある種のコンセンサス(共通認識)になりつつあるんではないかなと思います。

●憲法9条は戦後日本の外交基本方針宣言

 でも、憲法9条にはもう1つの側面がありまして、集団的自衛権の話であります。ここのところが整理されていないから、憲法9条ないし、その他の項目も含めての憲法改正論議が、非常にごたごたするんではないかと思います。

 そして、その憲法9条の問題についてはもう1つといいますか、最も重要なことは、これは我が国の軍隊のあり方を規定しているだけではなくて、第二次世界大戦後の我が国の「外交基本方針宣言」という色彩を持っていたし、またそういうものだと国民も思ったし、諸外国もそう受けとめてきた、というところのこの部分が、実は憲法改正論議を非常に複雑にしているのだと思います。「自衛隊は軍隊だ。そこはもう文面上はっきりしてもいいんじゃないか。しかし、今この時点で改正はね」という気持ちがかなりある人が多いことは事実なのは、そういう憲法9条というものが戦後どういう役割を果たしてきたか、というところを見ることが必要じゃないかなと思います。

 この議論が内外ともに成熟していくためには、今後、我々はいろいろなところで、丁寧に自衛隊の運営を見ていかなければいけませんし、政治はそれを方針決定しなければなりません。例えば、PKO(国連平和維持活動)というのは、PKO5原則などで丁寧に丁寧に、紛争介入しないように決められて、ゴラン高原(中東のシリア)から東ティモール(アジア)まで、いろいろなところでいい活動をしていると思います。これは前向きに事を進めていくと思います。

●総理は靖国神社に参拝すべきではない  

 靖国神社問題、これは実は非常に大きなテーマで、戦争責任問題がその背後にある。昭和53年まで天皇陛下も、日本の総理も靖国神社を訪問していました。韓国、中国、文句言いませんでした。でも、53年秋の例大祭でA級戦犯の14の柱を合祀することによって、国際問題になりました。私は、ここの認識をしっかり持たないと、今後とも対アジア外交というものがうまく進んでいかないと思います。

 総理大臣は、靖国に参拝すべきではありません。もちろん亡くなった方に敬意を表するのは当たり前です。どこの国でも当たり前です。ですから、分祀ないし慰霊公園のような形というものを早くつくり上げていかない限り、実は憲法改正の大きな環境を整えることには大きな阻害要因になるだろうと思っております。

● 集団的自衛権行使の許容は慎重に

 こういった中で、今、我が国の集団的自衛権はどうするべきかの議論がありますが、私は3つのケースが、今後考えなければならないのだろうと思います。1つは日米安全保障条約で米国が双務性を要求した場合。2番目に、国際連合で各国とも警察軍というものを供出することを合意し、そして日本もその義務を負わなければならない場合。3番目、アジアにNATO(北大西洋条約機構)のような集団安全保障の条約ないし取り決めができて、韓国、中国も含めて、日本にもそういう軍を出すことを要請し、また認めた場合。この3つのケースは、憲法を改正しても、私は集団的自衛権の行使にあたる条項をつくらなきゃならんと思いますが、我が国だけでですね、この条項を簡単にいじることは、いろいろな誤解を招くことになるだろうと思っています。

 さて、今度のイラクの件について手短に申します。今言ったように自衛隊と憲法についての枠組みについて、私は自分の考えを述べましたが、今度、私はイラクに自衛隊が派遣されることに反対をしましたが、いろいろなところで、インタビューに応じてきましたけれども、「憲法の観点から」とか「イラク特措法の観点から」という言葉を一回も言ったつもりはありません。仮に我が国の憲法が集団的自衛権行使で、または日米安保条約が双務性を持っていて、日本がやらなきゃならんというような場合でも、本当に今度の対イラク先制攻撃開戦が政策的に正しいものであったか、ということは疑問だと思います。

 大義は、大量破壊兵器の存在でした。その破壊兵器が使われることが、非常に緊急にイミネント(切迫した)である、ということでした。結果は、ありませんでした。大義というものを間違えた場合には、必ず戦争は泥沼に入っていきます。

●日本はアメリカを説得すべきだった

 9・11の後にアメリカ社会がバランスを失ったということは当然だと思います。トラウマがあったことは当然だったと思います。アフガニスタンの戦争で勝って、7割ぐらいはある種の心の静まりがあったけれども、残り3割ぐらい、何かをしなきゃならぬというアメリカ社会があり、そこに大統領選挙を抱えたブッシュさんがいたということは事実です。その時に、実は日本は静かに説得すべきだったのではないかなと思います。

 日本はキリスト教社会ではありません。アラブ社会でもありません。その相剋に無縁な唯一の国際政治の中における影響力の強い大国じゃないでしょうか。その立場から私は、この戦いについては、客観的に見て疑問を呈すべきものであったと思います。

 外務省がイラク戦争の当初、アメリカを支持する選択以外に日本にはあり得ないと言ってしまったのは思考停止であり、そこで間違いが始まったと私は思っています。そして、派遣した以上、何らかのことが起こることは国民も覚悟です。しかし、国内で万が一のことが起きた場合に、それに耐えていくだけの宗教的な心構えが、日本人にはないのだと思います。そして、その時の混乱を私は恐れます。かなり緊張した日々を過ごさなければならない、今日この頃ではないかなと思っております。(拍手)

 本田 ありがとうございます。やや時間がオーバーしましたが、あとの方、公平を期したいわけですが、10分の厳守でぜひお願いいたします。

 次は志方さん。志方さんは、防衛大学卒の2期生。陸上自衛隊ご出身ですが、最近自衛隊でだいぶ出てきておられる国際派の先駆けです。毎年、陸上自衛隊では、同期生300人ぐらいの中でたった1人だけ、アメリカのウォー・カレッジという陸軍戦略大学に留学するわけです。今、イラクの隊長の番匠(ばんしょう)隊長であるとか、あるいは今陸幕長の先崎(まっさき)陸幕長も、その人たちですが、その第1号が志方さんです。ワシントンに防衛駐在官として駐在もされました。それでは、志方さん、よろしくお願いします。


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