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 今日は最初に、「プランB」についてご説明したいと思います。この言葉は、今アメリカで広く使われています。特によく使われるようになったのがイラク戦争の後です。「イラク戦争のプランAは、明らかにうまくいっていない。そうしたら、その代替案としてのプランBは何だろう」、こんな話をしているんです。簡単に言ってみれば、「プランB」とは、「プランA」がうまくいかないときにとる代替の方法ということになります。

 なぜ新しい本に「プランB」という名前をつけたのか。それは世界の現状維持を意味する「プランA」は大きな問題を起こしていることが明らかになっているからです。

 今世界の経済を環境的な眼鏡をかけて見てみると、グローバル経済は、バブル経済だと言うことができます。すなわち経済の算出高、これは天然資源を過剰に消費することで大きく膨らませられている。森林の過剰伐採、地下水の枯渇、過剰な放牧、開墾、漁業などでもそれは明らかです。すなわち、自然資本を自然が作り出せる以上に消費してしまっているのです。


 まず食糧の話をしたいと思います。この10年間の経済と環境の趨勢を見ると、これはずっと続けることはできない、もしくは大きなトラブルに陥ってしまうだろうと思います。ただ、どのような形でそのトラブルが起きてくるかは分からない。いつ起こるかも分かっていないわけです。

 恐らく危機は、食糧経済から来るでしょう。それも、2〜3年のうちにです。「目覚めよ」ということです。食糧の分野では問題はいろいろありますが、その1つが天然資源の使い過ぎです。

 今の世界の食糧は地下水を汲み上げることによって満たされていますが、過剰の汲み上げが続いています。今のままでは将来必ずどこかで食糧の生産量が減ってしまうことになります。

 世界を見渡すと、大体半分ぐらいの人たちは、地下水位がどんどん低下している地域に住んでいます。帯水層が枯渇しつつある地域に住んでいるわけです。これは歴史的に見ると新しい現象です。

 私たちはディーゼルや電動のポンプができてから、初めて過剰汲み上げという能力を身につけたのです。中国、インド、アメリカという3つの国についてお話します。この3つの国で世界の穀物の半分を生産しています。この3カ国とも地下水を過剰に使っています。

 中国の例をお話ししましょう。中国の華北平原では水が非常に不足しています。もう通常の現象です。これはどういう意味を持つのか。中国の農家はかんがい用水を失いつつあるということです。華北平原の地下水位は毎年1〜3メートルずつという速さで低下しています。

 そのうえ、都市の水需要が増えているので、農家はなおさら苦しくなる。全体的に減っているのに、使える量も減ってしまう。そうなれば中国の穀物生産も減ってしまうということになる。

 同じような状況がインドにもあります。インドの人口は10億人以上。この人口を支える食糧を地下水の過剰使用で生産している。長期的に続けることはできません。インドでは北西部を除いてどこでも地下水位が低下しています。

 アメリカでも地下水の過剰使用が大きな問題です。例えば、アメリカのグレート・プレーンズの南部が穀倉地帯になっています。ここは世界の穀倉地帯でもありますが、カンザス、オクラホマ、テキサスといった地域で地下水位が低下しています。水は、またカリフォルニアでも不足しつつあります。毎年何千人も農家がかんがい用水を使えなくなっている。というよりも、かんがい用水をロサンゼルスとかサンディエゴとか、都市に売ってしまっているんです。このように、穀物の大生産国で水不足が広がっているということです。水不足の危機は十分分かっていただけると思います。

 私たちは毎日水を飲みます。大体1日4リットルぐらい飲んでいます。ジュースとかコーヒー、ビールとか、いろいろな形で飲んでいますが、私たちの食べ物をつくるための水は2000リットルも必要なんです。非常に水の集約度が高い、水をたくさん使ってつくるのが食糧です。水と食糧のつながりがどんな重要かを私たちは忘れてしまっています。

 この水不足の危機は国境を越えています。1トンの穀物をつくるのに1000トンの水が必要です。水がなくなれば穀物を輸入するようになります。これが一番効率がいいからです。ですから、これからの穀物の先物を考える、これは水の先物を考えるということと同じになります。

 もう一つ農家にとっての大きな問題が温度が上がっているということです。フィリピンにある国際稲研究所、アメリカの農務省の研究によると、温度上昇と穀物収量との関係はかなり敏感です。1度温度が上がれば収穫量が10%減ることもあると言われます。これは小麦、トウモロコシ、米で同じなんです。

 今、気温が上がっていることはよく分かっています。データがあるのは1868年以降です。1980年までは変化がなかった。その後、ぐんぐん上がっています。この150年近くのなかで一番気温が高かった4年間はこの6年の間に起こっているのです。

 非常に簡単で重要なことは、気温が上がれば食糧の価格が上がるということです。それが非常に新しい現象として出てくるでしょう。天候不順や害虫の発生といった問題は昔からありましたが、今後は、地下水の減少、気温上昇という新しい問題が入ってくる。気温上昇は1万年ぐらい前に農業が始まって以来、初めての現象なんです。IPCCの予測によると、この100年の間に1・4〜5・8度上がるだろうと言われています。

 今、世界の穀物の生産量は消費に追いつかなくなっている、この4年間ずっとそうなんです。2000年、1600万トンと少し不足していたわけです。それが2002年に2700万トンになっている。その次が9300万トン、そのようにどんどん不足分が増えています。

 不足ができれば備蓄を取り崩します。でも、4年間ずっと不足しているわけですから、世界の備蓄の量は、この30年間で最低のレベルまでいっています。今後世界の農家は、この大きな不足分を埋め合わせることができるのでしょうか。そして、消費の伸びについていけるのでしょうか。不足すれば食糧の価格が来年大きく上がるのは間違いないと思います。

 中国の話に戻りますが、中国ではかんがい用水がどんどん不足しています。中国では、穀物の生産量を1950年の9000万トンから現在の3億9200万トンまで、どんどん上げてきた。ただ、この5年間収穫量は減ってきています。6600万トンぐらい減ってきています。水不足が厳しくなり、収穫量もどんどん減っている関係がすでに現れています。

 この6600万トンという量は、中国だけ考えたらそんなに大きな量ではないんですが、カナダの年間穀物生産量に等しい量です。そして、カナダ、オーストラリア、アルゼンチンの3カ国の輸出量合計よりも大きいのです。その大きさが分かっていただけるでしょう。

 中国の備蓄取り崩しは、恐らくあと1年ぐらいは続けることができるでしょう。でも、その後、必ず中国は穀物を世界市場に求めるようになるでしょう。これまでなかったような規模で輸入が始まる。必ずやアメリカに頼ることになるでしょう。アメリカは大体世界の穀物輸出量の半分を提供しています。非常に面白い地勢学的な状況が起こると思います。

 今、中国のアメリカに対する貿易黒字は1000億ドルです。これだけあれば、アメリカの穀物の収穫量の2倍買うことができる。それはアメリカに対して購買力があるかどうかではなく、13億人の中国が、アメリカの穀物を争うようになる。そうすると、どんどん価格が上がる。アメリカではすでに、すべての耕地を生産に使っています。アメリカでもかんがい用水が減っているわけですから、たくさん輸入したいというところが出てきても、対応することがなかなかできなくなっている。これは非常に興味深い状況だと思います。

 アメリカは中国に幾らでも穀物を輸出してあげるのか、それとも制限をかけるのかを考えなければならなくなります。30年前でしたら簡単に決定できたでしょう。アメリカの大統領は、中国は負けた、ほかの国に穀物を売って国内価格を高くすることはできないと言ったでしょう。でも、今や安定した中国が欲しいのがアメリカです。ですから、最終的には中国に対してわれわれの穀物使用に対するアクセスを許すでしょう。そうすると穀物価格は全世界で上がることになります。

 でも、懸念があります。それは穀物価格が高くなると、第三世界の政権が不安定になるということです。低所得の国で、多くの穀物を輸入している国の政権が不安定になります。もし大きな途上国が政治的に不安定になればどうなるか。特にインドネシア、ナイジェリア、メキシコなどが不安定になれば、大きな問題になります。食糧価格だけではなく、日経、ダウジョーンズそのほかの株価にも影響を及ぼされることになります。そうなると、食糧の安全保障こそがグローバルな経済的な問題となってしまうのです。

 中国が世界の穀物市場に進出するときには、大きな警告が発せられるときです。私たちがこれまで無視していた問題に目を向けなければならなくなるでしょう。

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 こうした状況で、特に3つのことが大事になってきます。これが「プランB」の原則となるものです。1つは、水の生産性を上げること、第2は、人口の激増を抑えること、そして、炭素の排出を削減することです。京都議定書は非常に削減の量としては少ないんです。もっともっと大きな削減を、京都議定書を超えたものを必要とするようになるでしょう。

 目の前の問題に目をつぶり、これまでどおりのやり方を続けるのではだめなのです。そして、新しい取り組み、「プランB」が必要になってきます。水の生産性を上げることがとても大事であると繰り返したいと思います。それは政策、技術によって可能です。

 世界はこの50年間で土地の生産性を上げる努力をし、成功いたしました。例えば、1ヘクタール当たりの収量を1・1トンから2・8トンあたりまで上げることができました。日本で、最初に米、麦の品種改良を行って、世界でも生産性を高める措置がとられました。ハイブリッドのコーンがアメリカで導入されたというように、いつも土地の生産性を上げることにのみ汲々としてきたわけです。

 今同じことを水に対してやらなければなりません。これまで土地の生産を上げるために、研究開発に随分お金を使い、農産物の価格を維持し、補助金を出して土地の生産性を農家が上げるようにしました。また、農業に対して信用を与え、普及計画などを行いました。同じことを「水の生産性」を上げるためにやらなければならないのです。

 やり方として、かんがい、今までのようなスプリンクラーそのほかのいろいろな水を使うかんがいから、細流かんがい、点滴かんがいが必要であります。イスラエルで導入されて、今相当広く使われています。高価な野菜だけではなく、穀物にも細流かんがいを使わなければなりません。もっと水の効率性を高めることが第一です。

 第2として、人口の激増を抑えねばなりません。世界の人口は63億人で、2050年までに今より30億人増えるといいます。増加の多くは、地下水位が非常に低く、水の供給の少ないところで起きます。

 国連では中期の予測をしています。そして、現在の人口は63億人ですけれども、2080年になると101億になるだろうと言われています。しかし、75億人で安定するようにしなければならないと思います。実行可能だと思います。

 家族計画をすることが必要であります。1億3000万の人たちが子どもを生む年齢にあると思いますけれども、この人たちは子どもをたくさん生みたくないのに、家族計画ができないのです。地理的にできない。また、お金がなくてできないのです。

 それから若い女性の教育が必要です。教育でいつも無視されているのは少女ですが、少女に少なくとも男の子と同じぐらいの教育を与えなければなりません。国連のミレニアム開発目標の一つとして、普遍的な初等教育という目標が上げられています。2015年が目標年ですが、もっと早くやらなければいけない。教育を受けた女性のほうが子どもの数が少ないからです。

 また、基本的なヘルスケアサービスが必要です。WHOは、ジェフリー・サックスのもとで、基本的なヘルスケアを与えるコストについて調べました。村のクリニックレベルのヘルスケア、予防接種を子どもに行うといったレベルです。これには年間28億ドルあればいいそうです。280億円あればいい。それに、家族計画を加える、初等教育を行うということになっても、全体的なコストは年間で620億ドルの追加で済みます。これだけあれば貧困撲滅、基本的なヘルスケア、教育、家族計画を享受できることになるのです。

 今、アメリカ合衆国で870億ドルをことしのイラク軍事及び再建のためのコストとして要求しています。それと比較してみてください。

 3つ目に考えるべきことは温暖化です。食糧の危機を救うには気候を安定化させることが必要です。すなわち、炭素ベースの経済から、水素ベースの経済へと移行することが必要です。これも実行可能であります。

 世界レベルで決断することが必要です。2012年までに7%減ではなくて、炭素の排出をもっともっと少なくしなければいけない。2015年までに50%削減しなければなりません。これだけのことは必要です。難しいというかもしれませんけれども、実行可能です。世界的にこれから3年の間に新しい効率性のよい、今までの電力の3分の1しか使わない電球を使ったらどうでしょうか。省エネ型の電球です。これによって、数百の石炭発電所を閉鎖することができます。

 例えば、アメリカ合衆国で自動車の燃料効率をトヨタのプリウスまで上げることができれば、ガソリンのアメリカでの消費を50%削減できます。クルマの数を減らすことではなく、効率を上げるだけでこれだけの削減ができるんです。ですから、実行可能なのです。

 もっと素晴らしい可能性を秘めているのは再生可能エネルギーです。風、太陽熱、バイオマス、地熱など、資源がたくさんあります。そのなかで風力が最も短期的には素晴らしい可能性を持っています。デンマーク、今や全電力の22%までを風力で賄っています。ドイツ、特に北部のほうは28%の電力が風力によって賄われています。

 なぜ風力の可能性が大きいかについては6つの理由があります。まずたくさんあるということ。2つ目は安いこと。3つ目は枯渇しないこと。4つ目、広く分布していること。5つ目がクリーンであること。そして、最後が環境にやさしいということです。こんなに素晴らしい可能性を持ったエネルギー源がほかにあるでしょうか。

 どの程度あるのか。アメリカでしたらデータを出せます。91年にアメリカのエネルギー省で全米の風力調査をしました。それによると50州のうち3つ、テキサス、ノースダコタ、カンザス、これだけの風力を使えば全国の電力を風力で起こすことができる。そのような結果でした。

 少し振り返ってみればそれでも過小評価だと分かります。計算の基本になったのが、91年当時の風力タービンの技術だったのです。その後、タービンの性能はどんどんと向上しています。風力タービンが、風速が少なくても回るようになってきており、電気への転換の効率もよくなった。今では新しい風力タービン、高さ100メートルぐらいの風車もあります。とても大きく、たくさんの風を使うことができます。

 エネルギー省では、91年にノースダコタ、カンザス、テキサス、この3つの州だけで全国の電力ニーズを満たすことができると言っていますが、今では電気だけでなく「全国のエネルギー需要」を満たすことができると言うことができます。

 80年代、風力産業がカリフォルニアのあたりで起こってきたころ、発電コストは1キロワット時当たり38セントでした。今では4セント、長期的な契約を結んでいるところだと、1キロワット時当たり発電コストが3セントになっています。今の予測ですと、風力のコストは、2010年までに2セントまで落ちるだろうと言われています。どんどん安くなってきている。

 いったん安い風力発電ができればオプションが出てきます。すなわち、水を電気分解して水素を取り出すことができます。水素は新しい燃料電池車の燃料です。そして、ほかにも暖房とか、調理とかにも今の天然ガスから転用していくことができます。

 今、アメリカの今後を考えたときに、農家、そして牧場主たちが、ある日、国の電気のほとんどを供給するだけではなくて、全国の自動車の燃料も供給している。そういう将来がくるでしょう。

 水素というのは生産しやすい燃料なんです。安い電気があって、水があれば水素ができます。「水素のインフラをつくるには何十年もかかるだろう」とか言う人もいます。でも、私は、それはナンセンスだと言います。「電気と水さえあれば水素ができるんだ、アメリカのガソリンステーションはどこだって水と電気はある」と答えます。一つ必要なものがあるとしたらコンプレッサーです。水素をつくったら、これは気体ですから、ぎゅっと凝縮して、クルマのタンクに入れなければいけないですから。それで300キロ、400キロ走ることができます。やろうと思ったらできることなんです。水素中心の経済に替えることは簡単にできるんです。

 この再構成のために大切なことは何か、これは市場に環境的な正しい情報を伝えさせることです。今、例えば1ガロンのガソリンを買った場合、油井から石油を取り出して、精製してガソリンをつくって、ガソリンステーションに持ってくる、そのコストが反映されています。でも、そのガソリンを燃やすことで大気汚染を起こす、ぜんそくなどの呼吸器疾患を起こす。酸性雨を引き起こしているコストも、必要となる治療費も入っていません。

 それはどの程度のコストになるのでしょうか。アトランタにある全米疾病管理センターは1箱のたばこを吸ったとき、社会にどのようなコストを与えているのかを研究しました。喫煙に関連した疾病の治療費、もう一つは喫煙することで病気になったりして欠勤するコスト。この2つのコストだけを計算したところ、1箱のたばこを吸うコストは、7ドル18セントという結果が出ました。これはたばこを製造するコストは入っていない、社会に対する間接コストだけでこの値段です。だれかがこのコストを払っているんです。

 では、社会に対するコスト、ガソリンを1ガロン燃やしたときのコストはどれくらいでしょうか。これは分かっていません。そのような研究はまだ行われていませんから。ただ、IPCCの研究から、例えば、地球温暖化の結果については分かっています。一つは、海水面の上昇。この100年の間に最大1メートル上がるだろうとして、地図ができています。1メートル上がれば水田の半分が沈んでしまう、バングラデシュでは4000万人住んでいます。これだけの人が家を失うわけです。どこに引っ越しをさせたらいいのでしょうか。100万人だってバングラデシュの人たちを受け入れる国があるのでしょうか。これは気温上昇による被害のほんの一部です。

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 私たちはもう、プランA、すなわちこれまでの現状維持ではだめだということを考えなければならない。すぐに気候の変動をとめなければいけないのです。

 そのときのかぎを握っているのが税制です。すなわち、所得税を下げる、そして炭素税をかけていく。それによって投資を、例えば再生のエネルギー、例えば風力とか、ソーラーセルとか、そして燃料電池のほうに向けていくことができます。

 エンロンがやったことを思い出して下さい。エンロンはすべてのコストをアニュアルレポートに入れるのではなく、一部を外に外しておいたわけです。でも、私たちがやっていること、これは間接のコスト、環境コストを考えていないという点でエンロンと似ているのではないでしょうか。エンロンがやっていることは、小さいことだと言わざるを得ないほど大きいことを私たちはやってしまっているわけです。

 もし、この会計のシステムで真実を伝えてくれないのだとしたら、問題が起こるわけですね。でも、今それを私たちはやっている。だからこそ、今私たちは、この1年、2年、3年のうちに、特に食糧の面で大きな問題を抱えることになってしまうのです。

 できるだけ早く気候を安定化させなければいけないわけです。どれぐらいでそれができるのかを考えたときに、私は第二次世界大戦中の経済の展開について調べてみました。1942年1月、真珠湾攻撃の1カ月後ですが、そのときのルーズベルト大統領の一般教書を読んでみました。

 例えば12月6日、真珠湾攻撃の前の日だったら、アジアやヨーロッパの戦争に賛成かと聞かれたら、アメリカの人の80%以上は違うと、われわれは関係ないと言ったと思います。でも、一夜のうちにそれが変わってしまいました。

 一般教書のなかでルーズベルトが言っていたことは、われわれは6万機の戦闘機をつくらなければいけない、そして、2万台の対空砲をつくり、600万トン分の商船をつくらなければいけない。これは太平洋、大西洋、両方で戦争しなくてはいけない。このような話をしたわけです。

 ルーズベルトとその同僚たちは、このようなことを考えました。当時工業力が一番集中していたのは、アメリカの自動車産業だった。大不況のときであっても、300万台から400万台の車をつくっていたのがアメリカの自動車産業なんです。この一般教書の後、ルーズベルト大統領は、自動車産業の人たちを集めました。そして、アメリカはあなたたちを頼りにしている、産業の力があるのだからと言いました。そして、今言ったような軍備力増強に手伝ってほしいということを言ったわけです。そうしたときに、自動車産業のリーダーたちは、できるだけのことはやりますよと言いました。
一生懸命努力をしますと。でも、なかなか大変かもしれませんね。自動車をつくって軍備も一緒につくるというのは、なかなか大変ですよと自動車産業の人たちは言ったんです。

 そうしたときに大統領が、「いや、分かってないね。アメリカでは自動車の販売はもう禁止するんだ」と言ったわけです。それでやっと自動車産業の人たちは分かったのです。

 ルーズベルトは自動車産業を全く再構築したわけです。自動車生産をやめさせて例えば、戦闘機のエンジンとか、対空砲とか戦車とかをつくるように、全く形を変えさせたわけです。目標を上回る軍事生産ができたのです。

 なぜそれができたのでしょうか。それは正しく対応するニーズがあったからです。強いリーダーがいたからでありました。そしてそのリーダーは現状をきちんと理解していて、手だてを打ったということです。

 将来を見るとき、エネルギー経済のリストラがぜひ必要です。なるべく早く気候を安定させることが必要であれば、それはやる気があればやれるんです。アメリカの予算を見ますと、昨年の軍事予算は3430億ドルです。相当な額です。ことしはどうでしょうか。4040億ドルを議会に対して提出したということです。これはイラク戦争があるからです。

 ユージン・キャロルという退役海軍の海将が最近、この軍事費を見てこう言っています。「この45年間、アメリカはソビエトと軍拡競争をしてきた。しかし、今はアメリカは、アメリカとの軍拡競争に汲々としている」と。確かに彼の言ったとおりだと思います。

 もっと軍事費を減らして、ヘルスケア、教育、家族計画、環境に対する経費を高めるべきだと思います。そして貧困を削減することが必要です。アメリカがやればほかの先進国も追いかけてくると
思います。このような考え方が今必要なのです。

 日本ができることはたくさんあります。日本は太陽熱においてもリーダーシップを発揮してきました。これからも新しいエネルギーの世界で素晴らしい役割を果たしてくれるでしょう。

 風力の価格が下がってきています。太陽熱も価格が下がっていますが、もっといろいろな政府のプログラムのなかに、太陽熱発電を入れ価格を下げることが必要です。

 日本は家族計画でもほかの国にリーダーシップを発揮できるでしょう。また、日本も大きな役割を果たすことができます。日本の自動車産業は今、研究とか設計においてデトロイトを指導する立場にあります。デトロイトのほうがハイブリッドエンジンにおいては、うんと遅れています。アメリカは何とか日本に追いつこうと努力しているところです。日本は、大きな重要な役割を果たすことができます。

 最後に申し上げたいことは、2001年9月11日以来の2年間、世界は全く一つのこと、すなわちテロに頭がいっぱいになっています。われわれの時間やエネルギー、政治の指導者、メディアもあまりにも多くの時間とエネルギーをテロに対して割き過ぎてきた。特にアメリカはそうであったと思っています。

 もしオサマ・ビン・ラディンが、その同僚たちが、われわれの注目を、地下水面の下降とか温暖化といった環境からテロのほうに注目させたとすれば、彼は大変成功したことになります。

 きょう私がお話ししたことは全部私の本「プランB〜エコ・エコノミーをめざして」ワールド ウォッチ ジャパン刊)にあります。皆さん、きょうはありがとうございました。(終わり)

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