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国際シンポジウム「グローバル化と地域統合〜空間経済学の視点から」
【シンポジウムの進め方】藤田昌久アジア経済研究所所長

 藤田昌久氏

 藤田 ジェトロ・アジア経済研究所の藤田でございます。皆様、大変お忙しい中、本日のシンポジウムにご出席していただきまして大変ありがとうございます。

 第1セッションの基調講演に入ります前に本日のシンポジウムの企画を担当した者の一人といたしまして、当シンポジウムの趣旨につきまして簡単に補足的な説明をさせていただこうと思います。

 まず、本日のシンポジウムの主題は、「グローバル化と地域統合」となっておりますが、このテーマ自体には格別新しいものはございません。本日のシンポジウムはむしろ副題の「空間経済学の視点から」というところにあります。サプライジングな方もいらっしゃるかと思いますけれども、つまり、ファッションないしムードとして語られるようになってきておりますグローバル化や地域統合、またFTA、自由貿易協定ということにつきまして、少しクールに空間経済学という学問的視点から統一的に考えてみようということであります。

 さらには、それを背景といたしまして、東アジアにおける地域統合につきまして展望と課題、これを中国、韓国、タイからの新進気鋭の学者を交えまして、中長期的な観点から意見交換し、討論しようということであります。

 それでは、まず、あまり耳なれない言葉ですが、この空間経済学とは一体何なのかということであります。それを説明するために、まず思い出してほしいのですが、従来地理的空間におけるさまざまな経済現象を説明する上で、個々の都市を分析する都市経済学、また国内を適当に地域に分割して分析する地域経済学、さらには国際間の貿易を説明する国際貿易理論などと、対象とする地理的空間の大きさに応じまして個別の細分化された学問が形成されてまいりました。

 しかし、そういう細分化された学問ではグローバル化、ボーダーレス化の急速な進展のもとにおきます都市、地域、国際経済が複雑に絡み合いまして、全体として大きく変わってきております世界経済地図のダイナミックな編成をとてもとらえ切ることはできません。

 そこで、従来の都市経済学、地域経済学及び国際貿易理論を出発点としながらも、生産における規模の経済(例えば、大きな規模になるほど平均生産コストが下がる効果)及び広い意味での輸送費ないし近接性、こういう概念を理論の中核に据えまして、従来の個別の学問の統一ないし一般化をするとともに、かなりラジカルに深化させたものが空間経済学であります。別名、新しい経済地理学、ニューエコノミックジオグラフィーとも呼ばれております。

 この新しい空間経済学の理論構築は、第1セッションでの基調講演者でありますポール・クルーグマン教授、アンソニー・ベナブルズ教授を中心にいたしまして、さらには私も参加させていただきまして、90年代の初めより急速に進んでまいりました。

 その具体的な内容につきましては、引き続き行われます基調講演におきましてより詳しいお話をさせていただく予定でありますが、時間の関係上、ここではクルーグマン教授とベナブルズ教授の紹介を兼ねまして、空間経済学の発展の経緯、特に我々3人がその基礎理論の構築を目指して、どのように協力してきたかということにつきまして、私事にわたりまして恐縮でございますが、手短に述べさせていただこうと思います。

 まず、空間経済学の基礎理論の構築におきまして最も重要な最初の貢献は、クルーグマン教授が91年に発表いたしました「Increasing Return and Economic Geography(インクリージング・リターン・アンド・エコノミック・ジオグラフィー、規模の経済と経済地理)」と題する有名な論文であります。時間の関係上、詳しく説明することはできませんが、この論文におきまして、クルーグマン教授はもともと一様でありました地理的空間が、コア(核)−ペリフェリー(周辺)構造、つまり規模の経済に基づく経済活動を集積した核の地域、それを取り巻く農業などの土地に縛られた活動を中心とする周辺地域へと自己組織化的に分化していくメカニズムを説明する数理経済モデルを提案しております。

 このクルーグマン教授のコア−ペリフェリーモデル、核周辺地域モデルは、その後、さまざまな形で変形ないし拡張されておりますが、まず最も重要な拡張といたしまして、もう一人の著名な国際経済学者であり、本日の基調講演をしていただきますベナブルズ教授がクルーグマン教授と共同で国際間における産業特化と交易のモデルにさまざまに活用しまして、例えば東アジアにおける雁行形態型、フライング・ギース・パターンの経済発展を説明するなどの多数の論文を発表しております。

 一方、私はもともと都市経済学者でありますが、クルーグマン教授のコア−ペリフェリーモデル発表直後の91年11月にヒューストンで開催されました北米地域学会でクルーグマン教授と初めて直接会いまして、その直後からクルーグマン教授と共同で都市及び都市システムの形成と発展につきまして、研究を開始いたしました。

 我々3人を中心とするそれらの研究の大部分は、90年代半ばまでにでき上がっておりまして、ちょうど96年の1月初め、今から約10年前ですが、東京で開催されました、ある小さな国際会議で我々3人が一緒になりました機会に、空間経済学についての我々の今までの研究をもとにして大学院レベルの体系的な専門書を書こうということで合意いたしました。もともと私は25年間近くフィラデルフィアのペンシルベニア大学にいたのですが、ちょうどこれは私が京都大学に帰ってまいりました直後であります。

 さて、3人が共同で一冊の本を書くと決めるのは簡単でございますが、その当時、ポール・クルーグマンはボストンのMIT、ベナブルズ教授はロンドンのLSE、私は京都大学におりまして、またそれぞれ、特にクルーグマン教授は猛烈に忙しいですから、約束を実行するのは簡単ではありません。

 そこで、私は、クルーグマン教授の親しい友人で、彼と一緒に本を書いたことがありますハーバード大学のヘルプマン教授に、あの忙しいクルーグマンと一緒に本を書くにはどうしたらいいかと相談いたしました。その答えは、その唯一の方法は彼を1カ月間一切外部から遮断して部屋に閉じ込めておくことだと言われました。

 そこで、私は、96年の7月にロンドンで早速それを実行いたしました。ベナブルズ教授にLSE、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの3方が黒板になっております大きな部屋を借りていただきまして、朝から晩までほとんどそこに閉じこもって、3方の黒板に数式を書きなぐりながら、床の上いっぱいに草稿の原稿をまき散らして、ほぼ1カ月たって本の大枠ができてまいりました。

 その後、インターネットを通じまして、さらには半年おきぐらいに、ロンドン、ボストンなどで2週間程度一緒に集まって共同作業し、3年近くかけて完成した本がMITプレスより99年に出版されました「The Spatial Economy-Cities, Regions and International Trade(スペーシャル・エコノミー:シティーズ、リージョンズ、アンド・インターナショナルトレード、日本語訳は、空間経済学―都市・地域・国際貿易の新しい分析」であります。

 本日は、96年の1月初めに東京で我々3人が空間経済学の本を一緒に書こうと決めたときから、ほぼ10年目の東京でのリユニオンということになりまして、私自身としては本日の国際シンポジウムの開催を特別喜んでいる次第でございます。

 長々と私事にわたったことを話して申しわけありませんでしたが、本日のこれからの基調講演では、まずクルーグマン教授に印刷されておりますプログラムのタイトルと少し違いますが、「The “New” Economic Geography: Where Are We?」と題しまして、空間経済学の基本的な考え方と、その実証面からの検討についてお話いただきます。

 次いで、空間経済学を背景といたしまして、ベナブルズ教授にヨーロッパにおける地域統合につきまして、さらに私が、東アジア地域経済の将来についてお話しさせていただく予定でございますので、どうかよろしくお願いいたします。(拍手)


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