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連続シンポジウム「転機の教育」第3回 「大学改革 ― 危機を抜け出せるか」

【提言】 生駒俊明氏(1)



 生駒 俊明氏

 司会 それでは続きまして、東京大学名誉教授で元日本テキサス・インスツルメンツ会長の生駒俊明さんに提言をお願いいたします。

 どうぞ皆さま、拍手でお迎えくださいませ。(拍手)

 それでは、よろしくお願いいたします。

 生駒 ご紹介いただきました生駒でございます。

 今まで山崎先生は、一言で言うと、大学の多様化、種別化というお話をされたと思うんですね。さすがに劇作家でもあられますので、大変ドラマチックにお話しされたと思いますけれども、大学が研究大学から教育大学、教育中心大学へ移っていく必要がある、その中でも、職能教育、教養教育というお話をされたと思うんですけれども、私はその説に大変賛成でございまして、文部省(文科省)の中教審の中でもそういう議論をしております。

●産学連携をめぐる本質

 ただ、これからは、私、30分時間をいただきまして、お話は産学連携を中心にして大学問題を論じてくれということを、コーディネーターの山岸先生から申しつけられておりまして、きょうは産学連携を中心とは申しませんけれども、産学連携をめぐって、大学のもう少し本質的な話をさせていただきたいと思います。

 時間が限られてございますから、3つの課題について、お話をさせていただきます。

 1つは、産学連携及び大学の社会連携の問題について、昨今、大変盛んに奨励されているものに対して、どう考えるべきかということ。それを受けて、もう少し大学の本質論を今やる必要があるというふうに考えております。一般の方、これだけ多くの方が関心がある大学問題に、もう一回原点に戻って、大学のあり方を考える必要があると思っております。それから、第3のトピックスは、国立大学の法人化後、私立を含めてですけれども、大学の経営のあり方と、法人化後に、じゃあ、国は何をするのか。文科省は高等教育局に大学をたくさん抱えておったんですけれども、その直属から独立法人になるわけですから、国の役割は何かという、このお話をさせていただきたいと思います。

 まず、産学連携でございますけれども、産学連携、新聞紙上をにぎわすときには、一番よく聞きますのは、大学発ベンチャー。1000社を目指すというのは経済産業省が出してる数字ですけれども、この背後には、日本の経済の低迷を、何とかそういうものが救ってくれるのではないかということを考えております。

 景気のいいときには、そんなことは一切言われませんでしたし、大学から技術移転をすることさえ困難でありました。私が東大にいたときにも、そういうことをやるパス(経路)がなくて、ちょっとでもそういうことをやろうとしますと、文科省の役人が飛んで来て、けしからんということを言った時代でございます。

●大学発ベンチャー

 それがまるで、本当に180度変わりまして、今年も京都で3000人を集めまして、産学連携推進会議が開かれました。いかに大学発ベンチャーが増えたかと。ちょっと前で650社と言っておりましたね。最近ですと、もっともっと増えていると思いますけれども。

 これはアメリカのシリコンバレーを目指して、アメリカが1980年代の不況を脱して、90年代に活性化したのは、そういういわゆるスタートアップ・カンパニーですね、新しい技術を持って出て来たベンチャーが牽引したという事情もございますものですから、それをやろうということで、日本でも非常に盛んにそういうことが喧伝されるようになっている。

 しかしながら、よく考えてみますと、大学の役割というのは、本当にそういうものかと。今まであまりにも大学が社会から隔絶していたということの反動で、そういうことがあるということはいいと思うんです。ですから、今まで私はそういうことの推進に旗を振っておりましたけれども、ここらで本当に大学の本質を考え直す必要があると思っております。

 産学連携というときには、産は産業界ですから、大学の中では学部と言いますと、工学部とか農学部とか薬学部、いわゆる実学と私は呼んでいますけれども、そういうところの活動に当てはまると思うんですね。

●産学連携の王道

 やっぱり、産学連携の王道は、教育と研究そのものの中で、産と学が同じような土俵に上がって議論をしながら進めていくというのが、産学連携の王道だと思っております。

 私が東大にいたときには、産学協同の大型基礎共同研究――わざわざ「基礎」をつけたんですね――研究をやりました。今でも産学連携の最も重要なものというのは、研究面では、産と学が同じ土俵に上がって、いろいろな情報をシェアをして、その中で役割分担をして進めていく。すなわち、長期的な研究、あるいは今の産業の直接の役には立ってないんですけれども、その周辺で必要な技術開発、あるいは研究、それから、産ではやりきれない非常に基礎的で学問的で、なおかつ産の技術に重要なもの、こういうものをはっきりさせて、お互いに役割分担をして進めていくべきであると。

 これは、国の研究所も同じでございまして、お互いによく話し合って、尊敬をもって相手を尊重しながら研究を進めていく。これが産学連携の王道でございます。その点が、昨今ちょっと薄められている。

●教育での産学連携

 もっと大事なのは、教育における産学連携でございます。これは何かと申しますと、先ほどちょっと山崎先生も触れましたけれども、大学を卒業した人が、すぐにとは申しませんけれども、何らかの技能、あるいは技術、知識を持って産業界に貢献するような、そういう人材育成。これは、大学の先生自身が産業の動向に疎い場合は、カリキュラムをつくるときにも、旧態依然のカリキュラムをつくってしまう。大学の大衆化で、その年齢の50%の人が、大学に進学する。その人たちは、やっぱり産業界に入るわけですから、カリキュラム作成のときに、産業界の人を入れて、アップ・ツー・デートなカリキュラムをつくる。これを定期的に繰り返す。これが産学連携の一番重要な問題だと思っています。

 それからもう1つは、教え方ですね。教え方も大学の先生というのは、昨今随分それは改善されておりますけれども、本当にそういうスキル、技能、能力、知識を身につけて出ていく、そういう卒業生を送り出してほしい。

 そこはやはり、学生を受け入れる人も、すなわち産の側も、その辺をウオッチしながら、共同歩調を合わせていく。これが実は産学連携の一番重要な問題だと思います。

 産学連携を狭く考えるのではなくて、私は産学連携は、大学の社会貢献の1つ、社会連携の1つというふうに位置づけております。

●社会連携の必要性

 そうしますと、何も産学連携が要求されるのは工学部とか農学部とか、いわゆる実学をやっているところではなくて、文学部をはじめとして、あらゆる大学の学問的な活動で、産学、あるいは社会連携というのが必要になっている。

 これは後でちょっと触れますけれども、それでは、大学の社会貢献は何かということに関係して、この問題は論じられる必要がある。大学の法人化の過程で、よく聞かれたのは、独立行政法人になりますと、基礎的な学問が切られるのではないか。国の財政支出が減って、お金がもうかるようなところばかりの研究をやるのではないかということを危惧する発言が、結構出ておりました。

 特に、例えばインド哲学が1つの象徴的な課題として挙げられたのですね。インド哲学自体は、社会で役に立ってないというふうに、皆さんは思うかもしれませんし、それを実際研究している先生方もあまり考えてないんですけれども、そういう分野も、社会貢献というのから考えますと、例えば、死生観ですね。人間が死に対して一体どういうふうに立ち向かうかというような、一番現代で問題になっているような、そういう問題をインド哲学の先生が取り上げてくれれば、非常に大きな社会貢献になる。

 そういうような観点で、大学をながめてやる必要があるのではないかと思っております。

 産学連携は、後からも触れますけれども、大学の本質から少し外れたところなんですけれども、やはり社会とのきずなをつくるという、1つの手段として使われるべきだと考えております。





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