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●法人化の影響の大きさ それをいちいち説明していくと大変なことなんですが、一体、国立大学法人化、先ほど石先生は2年が勝負だとおっしゃいました。そのほかにさまざまな国公立、私立を問わず、大学としてどういうことが問題なのか、何をしなければならないのかというのは、幾つも前半のお話の中に出てきたわけですが、そういうものに対応する1つのやり方として、内部の人間が処理する、そのプレッシャーとして、法人化が極めて重要なんだと。それは、行政法人化という言葉だけでは見えない、制度運営上の難しさあたりのところから、石先生にご説明いただければと思います。 石 5、6分、時間をいただきます。 確かに、今、血が上っている当事者がいっぱいるんですが、当事者以外わからない面もあります。端的に言いますと、給料の査定は大学で自由です。人事も文科省のほうからいろいろな形で来る人を受け入れる、受け入れないの裁量権も学長にあります。それから、非公務員になりますから、社会的な連携、産学連携もかなり自由になりますし、組織全体が届け出でいいという面、例えば、学科とか学部も、これまで一々大変な許可をもらうべく、大学は文科省にかかわり合ってきたのも完全になくなるという意味では、1つの大きな固まりとして大学の自主自立によって、これから大学運営をせよと言われているんです。 ●大学運営という責任 だから、はっきり言うと研究・教育ということだけやっていた国立大学に、私学同様に大学運営というものの責任も来たと。 ただ、私学と決定的に違うのは、初年度以降数年間は、おそらく、従来と同じように国費投入、つまり税金投入大学なんです。これは私学の方から見ると、とんでもないハンディキャップを負わされているなという感じをお持ちになると思いますので、この辺をどうするかという意味では、これから(国立と私立に投じる国費を同じにする)イコール・フッティング論がさまざま出てくると思います。 そういう意味で、大学という視点を、学生に来てもらう、来てもらわないという視点から見たときに、これをマーケットと言うならば、まさに条件が違う国公立、私立の形態で学生を引き合う。授業料も相変わらず国立のほうが低いと思います。そういう意味で、ここで私学も決して法人化を安閑と見てはならないという危機感をお持ちになっていると思います。 ●教育面のサービスが向上 そこで、何が一番変わるかというと、私は教育面のサービスが向上すると見ています。これはどちらかといいますと、大学の教師は研究至上主義でありまして、先ほど山崎先生のお話にもありましたが、研究者養成という形で大学の教師になりましたから、いい研究をしたいというのは当然なんですが、これからさまざまな形で大学というものは、言葉は悪いですが生き残りをかけるならば、いい学生にどれだけ来てもらって、どれだけいい付加価値をつけて社会に出すかということになりますと、教育をしっかりしなければいけない。 そういう意味で、学生から見て授業評価をさせるとか、あるいはFD(ファカルティ・ディベロップメント。教員が互いに授業参観などをして授業内容の向上を図るもの)、つまり教授法に磨きをかけるとか、さまざまな教育面の改良を考える。これは、まさに大学間の競争が法人化を契機にして起こりますから、その中で出てくることは、おそらくそういう面がある。 もう1点、授業料が、国立大学の場合は今までは国庫に入っていたんですが、今度は各大学の直入になります。そういう意味では、自分たちの払った授業料に対してどれだけ見返りがあるかという視点から、国立大学法人の学生も私学同様に見るでしょう。ということは、大学も教育面においてさまざまな工夫を凝らし、学生にとって魅力のあるものにする必要がある。したがって、大学の教師も従来の研究以外のところで大いに期待されるということだと思います。 これでわかりますかね。要するに自由度が増えて、自主自立で責任を任されるというところで、皆さん、今、頭をひねっている、こういうことです。 山岸 なかなか難しいことを短時間でご説明いただきました。最初にお断りしませんでしたが、あとは、私がいちいち何々先生と言ってご指名申し上げませんので、発言したいという方は、ちょっと合図でもされたり、直接ご発言いただければ幸いです。 清成 今、国立の法人化の問題が出ているんですが、私立から見るとどうかということとも絡むんですが、きょう、これまで日本の高等教育の特徴という点で全く触れられなかったことが1つだけあるんです。それは、日本の学生総数の4分の3以上を私学が引き受けているという事実です。これは、韓国がやや近いわけですが、ほとんど世界に例を見ないわけです。アメリカの有力大学というのは私立大学が多いというのも常識ではあるんですが、学生総数から見たら、圧倒的に州立のほうが多い。ヨーロッパを見ますと、国立ないし州立が圧倒的に多いわけです。ドイツで最近、私立大学設立ブームが起こっておりますが、現時点でも私立大学は70から80校あるんですが、学生総数に占める比率はたった3%にしかすぎないんです。
●私学が学生の4分の3を 日本の特徴というのは、私学が教育の4分の3を引き受けているということです。そこに対して資源配分が極めてアンバランスだということです。ですから、我々はイコール・フッティングという言い方をしているわけですが、この競争条件が、公正でなくて競争させるというのはちょっとむちゃではないかという議論と、もう1つ言えることは、国立の法人化といったって、私は極めて生ぬるいと思っているんです。 というのは、戦前の鉄道は鉄道省直轄でした。それが戦後、日本国有鉄道ということで、公共企業体という形で独立の法人化にしたわけです。それがさらにJRに民営化されたわけです。しかし、公共企業体の場合には独立採算だったわけです。今度、法人化されても、国立はそこまでもいかないということで、私は、中身は当面はあまり変わらないだろうと思います。 実は、先ほどの第1部で取り上げられたのは、日本の大学の国際競争力の低下という問題だったわけです。現行の決まった法人化では、その状況からは脱することができないだろう。それは、先ほど言いましたように、ドイツの場合は圧倒的に国立、州が管理するわけです。入試もない、修業年限もない、学位がはっきりしない、授業料は無料。そうすると、気がついたら失業者のたまり場になってしまうということで、国際競争力が低下する。大学間の競争、学生間の競争もないということで、98年に大学大綱法という法律をつくったわけです。それで知識移転とか技術移転も義務づけ、評価も義務づけるというやり方をやったわけです。しかし、もともと法人化されているわけです。法人化されている状況でそれが起こった。 ●より民営化を ところが昨年、ニーダーザクセン州、一番先進的な教育改革の州ですが、ここに報告書があるんですが、民営化論が起こっているんです。そこまでいかないと、国際競争力はつかないという議論が今、非常に活発になってきているというわけです。 したがって、先ほどキャッチアップ型で、いろいろな改革が凝縮されていると、全くその通りであるわけですが、やはり少し先を見て法人化論というのを議論しておく必要があるのではないか。多分、今回の法人化が到達点ではなかろう。むしろ、旧帝大とか一橋とか東工大という大学に蓄積された人的資源やストックを十分に活用するには、やはりより民営化を進めるべきだろうと思います。 山岸 ありがとうございます。 今、お話しになりました資源という言葉ですが、一般には非常になじみの薄い言葉で、これは予算ばかりではないですが、政府予算と読みかえていただいたほうがいいと思うんです。多分、国立大学には1兆数千億円の国家予算が毎年投じられて、私立大学には経常費は3000億円しかない。それなのに、今、清成先生がおっしゃったように、私学は学生の4分の3を抱えている、そのアンバランスを無視した議論はおかしいのではないか、だから、正当な競争とは言えないのではないかということもあると思うんですが。 天野 国立学校財務センターというところのスタッフがこういう話をすると、あまり説得力がないかもしれませんが、清成先生がおっしゃるように、高等教育人口の4分の3を私学が占めているという国は欧米諸国にはないわけであります。アメリカもせいぜい私学は3割程度であります。山崎先生でしたか、生駒先生でしたか、国民総生産に占める公的な高等教育支出の比率が0.5%である、欧米諸国はこれが1%前後ですから、日本は半分しかない、もっと増やさないといけないという議論があるわけであります。これはまさにその通りでありまして、なぜ0.5%で済んでいるかといえば、国立大学に圧倒的にその大部分を出して、私学が授業料収入で運営を賄うということになっているわけであります。 これは、まさにそういう現実があるんですが、これはそれぞれの国立大学の責任というよりも、政府の政策がそういう形で動いてきた結果であるわけです。戦前期には、国立と私立の比率は半々ぐらいでして、戦後になりましても、何度か文部省は国公立の比率を半分程度まで持ち上げるためのプランをつくらなかったわけではないのですが、全くそれは実現しませんで、増えてくる教育人口を私学が吸収するという形になって、ここまできたわけであります。
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