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朝日新聞シンポジウム「転機の教育」
討論前半:3 「法人化にどんな期待、不安」(2)

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尾池和夫氏

 尾池 それを中で見ていて、この仕組みはどうもまずいと思っていた矢先、実際にふたをあけてみて法人化が行われた途端に何があったか。まず、前の実績をもとに最初のお金を設定しますということで、これは1年前の実績、つまり、決算できてないわけですから、1年前になるわけです。しかし、大体、自然増というのが物事にはあるのです。その自然増をはしょって1年前にまず合わせて、数十億円の減額を生じたんですね、京都大学の場合は。

 「それでもってやります」と言って算定のルールとかいう公式を一生懸命書いて、何かよくわからない式を説明されたのです。まず事業を決めておいて、必要なお金を出す。そして、収入を計算して差額を交付金として手当てします。こういう算定ルールができました。そういうことでやるなら、「まあ、工夫をしましょう」ということになったわけです。しかし、今度は、概算要求して16年度の予算の審議をしている間に、12月になりギリギリ内示の段階になると効率化係数とかいうのが出てきて「毎年1%そこから減らします」と言うんですね。「それはないだろう。これは詐欺だ」という声が、私じゃないですよ、学長さんから出たんですけども。

 そうしたら、今度は「病院の収入に対して、病院収入の2%を経営改善係数というので上乗せして削減します」と言う。これは毎年です。それが出てきて、「へーっ」と思って「本当にこれじゃもう大学はつぶれる可能性があるな」と思っていたのですが、その1年後には、概算要求に書いてなかった授業料収入を1万5000円上乗せして、その分、予算の内示の段階で交付金を減らしますと言うのです。算定ルールをもう忘れちゃったんですね。「去年、一生懸命説明した算定ルールはどうなったんですか」と聞いたら、「それは知らん」と、こうなる。

 そういうことで、どんどん削減を後から後から上乗せしていくというやり方なんですね。そこでは、大学の改革の論議とかそういうことはすっ飛んでしまっているわけです。とにかく今、1年間何をやってきたといったら、足りないお金の穴埋めをどうやってやるかってことばっかりやっているわけで、大学の中身を考えるどころじゃないんです。それで「日本の大学は本当に大丈夫かな」と心配をしている。

 中から見てきたら、愚痴ばっかりになるんですね。そういうのがこの10年、私が中から見てきた印象です。ようわけがわからん印象かもしれませんけど。

 清水 安西先生にお尋ねしたいのですが、私、1つ非常に思い出があります。4年ほど前に大学ランキングで全国の国公私立の学長さんたちに聞いたことがあります。国立大学の法人化に賛成ですか、反対ですかと。その時は、国立大学のほとんどの学長が反対でした。そして、私立大学の学長先生たちのほとんどは賛成でした。

 しかし、実際に、ここ1、2年で聞くと、実は私立大学の先生たちも随分、反対というか、これは話が違うという方もおられる。「どうして賛成から慎重論に変わったのかな」という私の疑問にも答えていただきながら――もしかしから、安西先生の場合は違うかもしれませんけども――この4、5年の法人化の論議を安西先生はどんなふうにお聞きになりましたか。

●私大にとって脅威

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安西祐一郎氏

 安西 国立大学の法人化、また、法案審議を私立大学側がどう思っていたかというのと、第1には脅威になるだろうと。ただし、やはり日本の高等教育の将来を考えると、国公私を問わず、本当に質的に脱皮して大きな前進を遂げていかないと、日本の高等教育がおかしくなってしまうのではないか、そういう二面性があったのではないかと思いますね。それは今でも共通していると思います。先ほど、寺崎先生が連携、連帯の時代だと言われましたけれども、そういうマインドはあると思います。

 ただし、今申し上げたように、まず脅威である。これはやはり投入される税金の絶対額が圧倒的に違います。国立大学の方々は「運営交付金が1%減らされる、それは約束違反だ」と言われますけれども、私大の多くはそれどころではなく、はるかに多くカットしている。バブル崩壊後は大学にも相当の余波が及んでいるわけで、そういう中で努力をしているわけです。

 そういう時に、圧倒的に資産も、あるいは、税金の投下量も違う国立大学が、さらに法人化で自由度だけが増えるということになれば、私立大学は崩壊して、高等教育の質が大きく低下する。

 今、やはりなかなか見えてこないのは、これからの国立大学法人、公立大学法人、それから、学校法人、私立大学、それらがどういう特徴を持って高等教育全体を担っていくのかという問いへの答えです。

 国立大学法人は、既に私学がやってきたことを、例えば慶応がやってきたことを随分やっておられるわけですが、では、慶応と国立大学法人のどこがどう違うのかという問いに対して本質的な答えがあるのか、そのことについては、まだ答えが出ていない状況にあると思います。答えが、もし税金の投下量だけが違うのだということになりますと、やはり国費を使うことに対する説明責任が出てくるかと思います。

 清水 おそらく、後半でまたこの話は語っていただくことになると思いますが、最後に大星さん、法人化の論議をどんなふうにごらんになっていましたか。

 大星 私はあまり詳しいことを存じ上げませんから、いい加減な発言はできないんですけど、一般論として、こういう大きな改革というのは、日本では歴史的にいろいろ議論するけれども、なかなか決まらない。決まってもなかなか実行しない。先延ばしの歴史なんですね。

 それにしては、僕は国立大学の法人化の話というのは、考えていたよりもかなり早く、だからこそ、ちょっと荒っぽかったんじゃないかというような話もあるかもしれないけども、やはりある程度動き出して、やっている中で問題が出たら、それをフィードバックしてその都度直していくということでなければ進歩はないと思います。私はそういう意味で、いろいろご苦労さんだったと思いますけど、尾池先生をはじめ、関係者に多大の敬意を表して高く評価するところであります。

 清水 それでは、20分ほど休憩をして、後半で、いよいよ法人化して、それでどうなったのかという本論のほうに入ります。それまで20分休憩いたします。

 司会 この休憩時間、会場の外に一たんお出になる方は、再入場の際にプログラムを拝見いたしますので、必ずお持ちくださいませ。シンポジウム再開は、3時25分の予定です。

 では、ただいまより休憩に入ります。

( 休 憩 )


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