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朝日新聞シンポジウム「転機の教育」
討論後半:2 「大学改革をどう進めるか」(1)

 清水 法人化されて1年というのを、経済界から見て、大星さん、どうご覧になりますか。

●荒っぽくやったが、成功と言える
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大星公二氏

 大星 まだ1年程度ですから、外から見て、どうのこうのということはできないと思います。日経新聞だったかな、去年の暮れに「大学の学長さん、どうだった?」というアンケートが出ているんですよ。それを改めて申し上げると、490校の学長さんが答えていますが、まだ1年たってない時点で「法人化が成功した」と44%の国立の大学で言っているんですよね。

 だから、いろいろあるかもしれないけども、問題があったらそれをフィードバックして直していくということで、かなり荒っぽくやった割には成功したというふうに私は見えると思いますね。

 それで、「何がうまくいったんだ」といったら、変な話ですけども、先ほど来、尾池先生からの話を聞いていると、文部科学省からの介入権が減ったというのは、国立大学で6割ぐらい減ったそうですよ。非常に結構な話だと思うんですけどもね。それとの関連から言えるんでしょうけども、「国立大学の裁量権が増えた」と、国立大学の学長さんの78%が言っています。

 だから、やはりこの法人化の最大の目標、大学の自由と主体性でもっていろいろチャレンジするという、そういった目標は、何と8割の学長さんが認めているんですね。ということで、いろいろあるだろうけれども、基本的には成功したと私は思っています。

 我が産業界との関係では、今まで大学というのは、やはり知の殿堂というようなことでクローズドだった。ところが、競争的な資金の問題もあったせいか、国立大学は産業界や地域のコミュニティに目を向け始めた。「これをいいことだ」と学長の75%が自ら言っているんですね。

 ということで、まだ1年足らずで、しかも、かなり荒っぽくやってきたように見えるが、アンケートの結果では大成功だったと言えそうです。

●役員・協議会が一緒に汗をかく

 その中で、しかし、問題点はないのかというと、いっぱいありますが、1つだけ言います。大学の学長さんに権限が集中して、学長さんが責任を持っていろんなことを決めていくという裁量権を持ったんですね。持ったから、学長さんはやっておられるんだろうが、その学長さんに何が問題かと聞いたら、教職員の意識改革が遅れているということを一番最初に挙げているんですね。

 これはまさに学長さんがやることなんですね、教職員の意識改革を。だけど、これが一番できてないと言っていることは、学長さんに少しオーバーロードになっているんじゃないか。役員会だとか経営協議会の、特に学外、民間から行ったような人たちが、学長さんと一緒になって――特に大学の教職員の人たちというのは、我々、民間会社と非常に違った組織ですから――先生方を説得し、汗をかくということをやらなきゃいかんと思うんです。

 ただ、名前だけ連ねて、時々出てきて評論家的なことだけ言っているだけじゃないかという気がしますが、そういう人たちには辞めてもらって、若くて実際に力のある、ブレークスルーするようなパワーのある人を入れてくれればいいんです。

 民間会社から行っている人たち、我々産業界、企業というのは、目標がはっきりしているんですよ。目標がはっきりしていて、それに向かって組織の構成員全員が一丸となって頑張らなければ、負けちゃうんですよ。負けちゃったら、下手すると、会社は倒産するかもしれない。利益が出ないと、ボーナスも出ないかもしれないんですよね。

 そういう組織ですから、知らず知らずのうちに社員全体が1つの目標に向かって、別に社長から言われなくても、組織に対するロイヤリティーというのは自然と澎湃としてあるんですよ。

 ところが、国立大学でロイヤリティーなんて、だれに対するロイヤリティーだということになりますよね。文部科学省からは、大変な金が来ているんだろうけど、それは実は、文部科学省の金じゃなくて、我々納税者の金なんですよ。

 だから、我々納税者に対して大学がロイヤリティーを持たなきゃいかんのかもしれない、要は非常に間接的なものだから、何だか知らんけど、定期的に金もらうわという程度になっちゃっているんじゃないか。

 そういうところで、大学という組織に対するロイヤリティーというのは、もうこれは望めない。しかも、大学の先生方というのは、それは教授、助教授、若い人たちもみんな、企業と違って、1人1人がそれなりに専門の分野でもって、かなりのスペシャリティとセオリーを持っている人たちですよ。

 だから、この人たちを説得するというのは大変なことだと思うんですね。ある国立大学の学長さんに聞いたんだけれども、何か就業規則を今度つくらなきゃならないですね。就業規則をつくる時に、その大学の労働法の専門家にひどい目に遭ったというんですね。

 だから、個々の大学で労働法の専門家と学長さんがヒーヒー言ったり、理科系の大学の学長さんが労働法の専門家とガタガタやるなんて大変で、そういうことこそ文部科学省が全国一律横断的に1つのフォーマットをつくってパッと渡して「文句があったら文部科学省へ言え」というぐらい割り切りらなければ、なかなかできないと思います。

 いずれにせよ、学長さんに権限は集中していますが、しかし、役員会だとか経営協議会、特に、学外の民間から行った人たちが――マネジメントのノウハウを持っているのだから、評論家的に言うのではなく――そういった理論武装している人たちに向かって一緒に説得する。一緒に汗をかき、行動する必要がある。そういう人を役員会だとか協議会のメンバーにしなくては、いつまでたったって、学長さん、せっかくの権限を持っても、ご苦労されるだけじゃないかと思います。

 もう1つは、先ほど来出ていますけれども、財形基盤の強化の問題ですが、これは非常に大きな問題で、後でまとめて私は提言したいと思いますので。

 清水 何かきっと尾池先生、おっしゃりたいと。どうぞ。

 尾池 まあ、後でもいいんですよ。いいですか。

 清水 はい、どうぞ。

●進まない職員の意識改革

 尾池 まさにおっしゃる通りなんです。今、いろんなことが含まれている非常に大事なことを言っておられるんですが、年末、日経新聞が調査された時に、多くの学長さんたちは本当に自由度が増えたと思っていたと思うんです。私自身は、ちょっとどう答えたか覚えてないんですけれども。

 しかし、実際に時が経って今調査すると、多分その数字は減ると思うんですね。というのは、さっき言ったように、だまし討ちがいろいろあるわけです。授業料の値上げというのはその後で出てきたんですけどね。

 それはいいとして、先生方というのは、1人として同じことをやっていないというのが大学の特徴です。これは研究の面においてですが、同じことをやっていたら研究になりません、評価されませんから、みんな違うことをやるというので、私は大学というのは「零細企業の大団地だ」と言っています。みんな小さい会社の社長さんなんですよ。それで、何人かの会社をずっとやっていて、全部言っていること違うし、やっていることが違うわけですね。法律のところへ行っても、みんな言っていることは違うんです。

 ですから、法律の先生の言うことを聞いて法人化しようと思ったら、これは絶対できないですね、みんな説が違いますから。だから、それは聞かない。それは正しいんですよ。そういうことやっていたらできないんですが、それは前からそうですし、今もそうです。

 だけど、先生方というのは、もう法律ができたということは知っていて、認識しています。国立大学法人法というのはこういう法律だというのはよく理解していて、そういうものだと思っています。役員会が決定権を持っていると認めているわけです。案外、驚くほど非常にわかっている。だから、非常に理解は深いですよ。

 変わらないのは、職員なんですね。例えば、京都大学の例を言いますと、京都大学は2万2000人の学生がおりまして、約3000人の常勤の先生がいます。この3000人の先生たちは、そういうものだと思っていて、ほとんど制度はわかっている状態で研究を営々と同じように続けている。いかに研究を続けるか、教育を続けるかが仕事ですね。

 教育改革をやらないと評価がいずれ来る。必ず毎年のように評価を受けているわけですから、この評価をきちんと受け、耐えるようにしていかないと、いずれまた大変なことになるというのもはっきりわかっておりますから、既に教育改革には非常に熱心に取り組んでいるわけです。それはもうできておりまして、私はほとんど安心をしているんですね。

 変わらないのは、職員の意識改革です。これは本当に進まないですね。日本の官僚組織というのは百何十年の歴史を持っていて、ものすごく強固な、これは世界的にも珍しい官僚社会なんですね。そこでたたき込まれた人たち、大体何十人か、文部科学官僚その他が来ているわけです。全国人事でずっと動いていた人たちが、今もたくさんいるわけですから「もう、そんなの要らん」と言うわけにはいかんので、やっぱり引き受けています。話し合いをしながら、3年ぐらい経つと、本庁へ帰りたいとかいう人がいるわけですね。

 私たちはそういう人たちの世話をしながら、過渡期を過ごしていかなきゃいけないわけですが、それは否定するわけにはいかん。そういう人だってたくさんいるわけですから。

 だけど、その人たちは、京都大学のために、ずっとそこで一生終わろうなんて思ってないわけで、「3年したら、早く東京行きたい」とか思っているわけでしょう。そういう人たちは一生懸命仕事をする、すごく優秀な人たちですが、国家公務員意識は変わらないんですね。そこが一番動きにくいところだと私は思っています。

 ただ、私自身は「部課長の人事にしても協力はするけど、少なくとも複数の候補者をちゃんと用意して、私が判断するようにやってくれ」と文部科学省にも申し上げているわけです。

 制度としては確かにそうなっているんだけれども、実際問題、「じゃあ、今度からそういうふうにいたしましょう」というのができるわけではない。だけど、基本的には、学内で昇格人事を優先するとか、いろんなことを私はやっておりますけれども、数年の間にサッと何かが変わるという状態ではないと思いますね。

 だから、制度もそうは変わらないし、人間の意識って、そうそう変わるもんじゃありませんから、幾ら非公務員になったと口では言っていても、やはりやっていることは公務員時代の名残がそのまま残っているのはたくさんあると思うんですね。だから、そこが一番の大きな問題になっちゃうでしょうね。


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