司会 それでは、ただいまより朝日新聞社主催のシンポジウム「市民とメディアのいま―新聞週間を前に」を始めさせていただきます。私、本日、司会と報告を担当いたします朝日新聞編集委員の河原理子(かわはら・みちこ)と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、最初に、主催者を代表しまして、朝日新聞社専務取締役の君和田正夫(きみわだ・まさお)がごあいさつ申し上げます。
君和田 ご紹介いただきました君和田です。皆さま、ようこそおいでいただきました。このシンポジウムには、定員の3倍のご応募がありまして、3分の2の方々は残念ながらおいでいただくことができませんでした。北海道から九州まで、それから高校生という若い方々も入っていらっしゃいます。本当にありがとうございました。
メディアは今、幾つかの大きな流れの中にあると言ってよろしいかと思います。1つは、やはりデジタル化に伴う多メディア時代という流れです。さまざまな情報がインターネットなどを通じて瞬時に世界中を走りめぐる世界だろうと思います。したがいまして、ある情報があっと言う間にマーケットに影響を及ぼし、政策に影響を及ぼし、そして、私たち国民生活にも影響を及ぼす、こういう状況が生まれようとしております。
また、今まで情報というのは、一人ひとりはむしろ受け手であったわけですけれども、今は個人一人ひとりが、情報を得るだけでなくて、同じように発信することができるようになりました。この大きな流れの一つの特徴は、情報量が飛躍的に増えつつあるということです。情報量の増加に伴いまして、マスメディアのありようについて、市民の皆さま、国民の皆さまから、歓迎する声と同時に厳しい視線を浴びるようになりました。これも一つの大きな流れであろうと思っております。
本日、パネリストとしておいでいただいております河野さんのように、ご自分で報道被害を体験された方を含めまして、報道のありよう、報道の内容の問題、取材の仕方の問題、さまざまな問題が現在私たちに突きつけられていると思っております。人権擁護と言いながら人権を擁護していないではないか、国民が本当に知りたい情報を伝えていないのではないか、こういった根源的な問いも長い間、私たちに問いかけられてきたテーマですが、ここ何年間か急速にそうした問いかけが、量的にも増えましたし、内容的にも非常に鋭いものになってきていると考えております。
新聞に限らずマスメディアというものは本来、国民の側に立って報道するという役割を担ってきたはずなんですけれども、報道することによって国民を被害者にしてしまう、つまり、国民を敵に回すという局面がしばしば現れるようになったと受けとめております。そうした中で、政府によるメディア規制というものが恐らく浮上してきたと考えることができるわけです。これもまた大きな流れの一つであろうと思っております。私たちは、言論の自由が侵されるときには、毅然として闘うつもりでおります。けれども、やはりメディアそのもののありようにもう一つ突っ込んだ議論、突っ込んだ考えをしていかないと、国民の皆さまの共感を得られないということもまた事実であります。
このシンポジウムに先立ち、メディアについて朝日新聞は全国世論調査を行いました。85%の方々が、新聞が、マスメディアが社会に貢献しているという評価を与えてくれている一方で、60%の方々が不満をお持ちでいらっしゃるということがわかりました。また、新聞についての期待をお尋ねしますと、ニュースの解説という項目が33%、約3分の1の方々がニュースの解説を期待しておりまして、次いで独自の調査報道、これもまた26%という数字が出ております。
本日は、そうしたマスメディアの大きな状況の中で、これから私たちはどのような方向を目指したらいいのか、目指すべきかということを中心に、基調講演は柳田邦男さんにお願いいたしました。そして、続くパネル討論には、先ほど申し上げましたサリン事件の被害者であり、また、報道被害者でもあられる河野義行さん、それから、作家の中沢けいさん、それから、メディア研究者でいらっしゃる林香里さんの皆さまにおいでいただいて、討論をしていただきたいと思っております。
こうした基調講演、討論を通じまして、皆さまが、メディアはこれからいかにあるべきか、あるいは、どの方向を進んだらいいのか、これだけ情報があふれた社会の中で、どのように情報を選んだらよいのかといった問題につきまして、ヒントあるいは解答を得てお帰りいただけましたら、私たち主催者の本当の喜びとするものであります。同時に、私たち報道する側といたしまして、こうした基調講演、討論を通じまして、新聞が、読者の皆さまあるいは市民の皆さまと、いい意味の緊張関係を維持しつつ進んでいくにはどうしたらよいかということを考えるチャンスにしたいと考えております。
きょうは、長い時間になりますけれども、皆さま、どうぞ最後までごゆっくりお聞きいただきたいと思います。なお、きょうのシンポジウムの内容は、後日、新聞で報道させていただきますと同時に、インターネットのアサヒコムで載録させていただく予定でございますので、どうぞお読みいただけたらありがたいと思います。どうもありがとうございました。(拍手)