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●超少子化の緩和へ、やることはある 司会 それでは、基調講演から始めてまいります。 初めに、国立社会保障・人口問題研究所所長の阿藤誠さんが、日本だけではなく各国で進む少子化の現状と影響を解説されます。 引き続きまして、イタリア・トリノ大学教授のキアラ・サラチェーノさんが、イタリアの家族制度の変化と少子化の進展を中心にお話をされます。 それでは、阿藤誠さんをお招きいたします。皆様、どうぞ拍手でお迎えくださいませ。(拍手) ●日本の人口、100年で半減の可能性 阿藤 早速ですが、本日は、私のほうからこの少子化問題、あるいは、きょうのテーマで言えば、超少子化に関わるさまざまな状況を少し国際比較の視点を交えてお話をしてみたいと思います。 最初に、お断りしておきますが、主催者のほうからさまざまな注文がございまして、つくったパワーポイントの資料が大変長くなっております。従いまして、資料を詳しく説明する時間はとてもございません。お手元のほうに、1枚裏表で、私の報告するお話の資料の一部、半分ぐらいがコピーされておりますので、後でそういうものをご参照になっていただければと思います。
早速ですが、初めに、日本の人口がまずどうなるかということを見てみたいと思います(図1)。 一つは、日本は「人口減少社会」になるということです。私どもの研究所の推計によりますと、日本の人口は2006年、1億2800万人をピークにして減り始めまして、50年後には1億人に達すると見込まれております。2030年代、40年代には、1年間に80万人から90万人の人口が減る、ちょうど政令指定都市が一つぐらい減っていく、そういうことを経験すると予想されます。 そして、100年後には、今の日本の人口の半分ぐらいになる可能性があるということでございますから、21世紀の日本というのは、まさに人口減少社会というふうに特徴づけることができると思います。
国連人口部というところがございますが、そこの推計によりますと、先進諸国の多くは、今後50年間に同じように人口減少社会に突入いたします(図2)。特に、日本、イタリア、スペインなどの人口減少が大きいという予想です。さらには、もう既に子どもが2人以下になったアジア諸国、韓国、中国、シンガポールといった国々も、21世紀半ばまでには、人口減少社会になるという予想です。 もう一つは、ご存じの高齢化であります。日本では、現在、急速な高齢化が進行中です。同じく、私どもの推計によりますと、高齢化率、いわゆる65歳以上人口割合でありますが、それが2000年から2050年で17%から36%へと2倍以上上昇いたします(図3)。 日本の人口の姿は、かつての本当に富士山型から、現在は、まあ、あえて言えば、中年太りの働き手の多い人口でありますが、それが50年後には、このように高齢者の割合が大変高い逆ピラミッド型の人口構造に変わっていくという見通しでございます(図4)。 同じように、先進諸国の多くで、今後、一段と高齢化が進行いたします。これまた日本は、イタリア、スペインと並んで、最も著しい高齢化を経験いたします。 高齢化社会の基本問題というのは、いかにして減少していく働き手、生産年齢人口で、膨れ上がっていく高齢人口を支えるかということであります。これまた、日本、イタリア、スペインなどは、今後最も高齢化が進んで、この高齢者の扶養負担というものが著しく高い、あえて言えば、「超高齢社会」になるという見通しであります。現役の世代が高齢者を支える負担というものは、現在4人で1人を支える状況ですが、それが大まかに言えば、3人で2人を支える状況へ、2.6倍に高まります。 ●「超少子化」の様相、南欧・独語圏・アジアNIESでも それでは、何が今のような「超高齢人口減少社会」を生みだすのでしょうか。その理由は二つあります。一つは長寿化、もう一つが、きょうのテーマの少子化であります。 先進諸国の平均寿命というものは、60年代は割に停滞していたんですが、70年代以降、再び改善の度合いを強めております。近年の平均寿命の伸びの大部分は、ご承知のように、中高年、老年の死亡率の改善によるものでありますから、そのまま長寿化は高齢化の加速要因になっております。
もう一つが、少子化であります。日本では、合計特殊出生率、1人の女性が産む平均の子どもの数ですが、これが1973年までは、私どもの言葉で人口置換水準2.1程度をほぼ維持していましたが、74年にそれを下回って、そのまま低下を続けまして、2002年には、先ほどもご紹介がありましたように、1.32ということで大変低い状況に変わってまいりました。その間、1年間に生まれる赤ちゃんの数も203万人から115万人まで、90万人程度減っております(図7)。 これまた、今日の先進諸国のほとんどは少子化の状況にありますが、かなり多様でもあります。 グループで分けますと、アメリカなどの英語圏の国、スウェーデン、ノルウェーなどの北欧諸国、そして、フランス、ルクセンブルグなどのフランス語圏諸国、これらのグループの国の出生率というのは、現在、1.6から2.1ぐらいと比較的高いのに対しまして、ドイツ語圏、イタリアなどの南ヨーロッパ諸国、日本の出生率は、1.2から1.4というふうに大変低い状況です。 言うまでもなく、少子化が進んでいる国ほど、将来の人口減少は大きく、高齢化は深刻になるということです。 ヨーロッパに限らず、アジアNIESと言われる新興工業経済地域、シンガポール、香港、韓国、台湾といったような国・地域の出生率も、本当にこの数年ぐらいに急速に低下をいたしまして、日本と同等どころか、軒並み日本以下に、1.1とか1.2に下がっておりまして、まさに南ヨーロッパ、ドイツ語圏、そして、日本を含む東アジアが少子化を飛び越えて、「超少子化」のグループに固まっているという状況であります。 ●背景に、結婚・出産の先送り・先のばし ちょっと少子化の、あえて言いますと、人口学的な要因というものに簡単に触れておきますと、少子化がなぜ起こっているかと申しますと、ほとんどの国で、出産の高年齢への先送り、先のばし(これはよく晩産化と申しますが)、この晩産化現象によって起こっている部分が大変大きいわけであります。 さらにその晩産化の背後で、先進諸国の多くでは、あるいは、アジアNIESでも結婚の先送り、先のばし、これはまた未婚化とか晩婚化と申しますが、それによって起こっているということであります。
これは、最近では大変有名になっている日本の年齢別の未婚率のグラフ(図12)でありますが、左側の女性のグラフ、真ん中辺の白抜きが20代後半の女性の未婚率ですが、30年前には、2割が未婚、今は実に過半数が未婚という状況に変わっている。未婚率の急上昇は、30代の前半もしかり、30代の後半もしかり、こういう状況であります。 しかし、先ほど見ましたように、同じ少子化の状況でありながら、先進国の間でかなり開きがあります。 その理由を考えてみますと、二つございまして、一つは、出生率の高い国では、20代のところで同棲の広がり、そして、同棲の中で子どもを産む婚外子の増加ということが、この出生率の幾分高い状況に寄与していると見られます。 もう一つは、20代で出産を遅らせた人が30代で子どもを産む、出産の高年齢でのキャッチアップと言われる現象が、そういう比較的出生率の高い国々では起こっております。 それに引きかえて、日本のグラフ(図15)を見ますと、20代の出生率は大変落ち込みが大きいのと、30代の出生率のキャッチアップが大変弱いということが対照的に見てとれます。 ●環境への負荷減るが、経済成長・社会保障維持には逆風 以上で、少子化の状況を終わりまして、この少子化、長寿化がもたらす超高齢人口減少社会がどういう問題を抱えているのかということを若干見てみたいと思いますが、これについては、しばしばプラスの面、マイナスの面が指摘されます。 プラスの面としては、特に人口減少との関係で、空間的、社会的なゆとりが増大するとか、あるいは、エネルギーをはじめとする資源消費が減少するとか、あるいは、そういうエネルギーの消費が減ればCO2の増加が減るということで、環境保全等に役に立つ、そういうふうな側面も指摘されております。 しかし、日本でもっぱらこの問題が取り上げられるのは、マイナス面でありまして、これにはまた幾つかございます。 一つは、全般的に経済の成長を妨げるのではないかということ、あるいは、労働力の調達がなかなか難しいということが一つ。それから、何と言っても、超高齢化によって社会保障制度のサスティナビリティー、持続可能性が大変危機に瀕している。あるいは、もっと言えば、福祉国家の危機と言われるようなことが指摘されているわけであります。 そのほかにも、例えば、自治体をどうやって、特に過疎の自治体を維持していくのか。あるいはもっとさらに敷衍すれば、治安や安全保障のための人材をどうやって確保するのか。あるいは、もっと長期にわたっては、日本社会や日本文化の継承者が減っていくではないかということが指摘される場合がございます。 こういったさまざまな問題に対して、では、どういう対応が考えられるかということであります。 これには、大きく言って二つございまして、一つは、これから50年、あるいは、100年は少し先のほう過ぎますけれども、今後、超高齢・人口減少社会、あるいは、もう少しマイルドに言えば、少子高齢化社会が来るということは避けられない。そういったことを前提にして、どういう対応が考えられるかというのが、ここで書きました社会・経済的対応であります。 そこには幾つか、やはり対応がございまして、女性・高齢者にもっと労働参加をしてもらう。さらには、1人当たりの生産性を高めるという意味で、技術進歩、技術革新というものをますます進めていく必要がある。あるいは、お年寄りが元気で長生きでいてほしいという意味で、平均寿命というよりも健康寿命の増進ということをもっと図るべきだということもございます。 それから、労働以外の高齢者の社会参加をもっともっと促進するということも戦略として挙がってくると思います。 そして、昨年から今年にかけて大議論になっておりますような社会保障制度の持続可能性を高める、そういった改革というものが、何を置いても必要だということなどもございますし、自治体については、ご承知の、今、大幅な再編が進んでいるのも、この問題への一つの対応ではないかと思います。 もう一つ大きな柱は、この超高齢・人口減少社会をもたらす、人口の前提そのものに働きかける政策があり得るかどうか、あるにしても、効果があるかどうかという問題でありまして、ここでは、それを人口政策的な対応と名づけました。それにもさらに二つございまして、一つは、これからお話しする日本でいう少子化対策、広い意味では家族政策でございます。 それから、もう一つが、移民、外国人労働を受け入れるということでございますが、詳しい話はとてもできませんので、以下は、少子化の問題に絞ってお話をしたいと思います。 !--本文-->
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