【シンポジウム】
つくれるか、テロのない社会
緊急連続シンポ 9・11テロ後の世界と日本(第1回)
木村 いわゆる空爆とか軍事力の行使だけではなくて、もう少し総合的な観点、社会全体としての取り組みが必要だというお話、多分、今日、パネリストの方、皆さんそのあたりについては異存はないかと思うんですが、数日前、もう少し前になりますか、国連のアナン事務総長が軍事行動は早急にやめたほうがいいよ、こういう考えを示されたということが報じられておりますけれども、国連は今度のアメリカ軍、イギリス軍による軍事行動にどの程度協調しているのか、どこまでそれにオーソライズといいますか、授権しているのか、そのあたりを川端さんにお尋ねしたいと思うのですが。
川端 協調というご質問ですけれども、協調という言葉ではございません。はっきり申しまして、先ほど安全保障理事会の決議案の中で、憲章七章を発動して、今回のテロは国際の平和と安全に対する脅威であると。その意味において、法的な面はカバーされていると思いますが、その一方で国連事務局ですね、安全保障理事会に対してアナン事務総長が代表します事務局が現在のアメリカが主導しています軍事行動と協調しているということはありません。我々がやっていることは、明らかに軍事行動と区別された、軍事行動以後のアフガニスタンの状況を見据えて、政治的解決と当面の緊急人道援助、そして行く行く望むらくは、この近い将来に起こればいいんですけれども、アフガニスタンの国家としての再建活動、その三つの柱を国連が受け持つと。軍事行動に関して我々が関知することはないと。その旨、はっきりと米国政府には伝えてあります。
それに加えて、ちょっと先ほどご質問があった今回の戦争の性質と、湾岸戦争と、どう違うのかということです。日本のマスコミでよく言われていますように、今回の戦争はほんとにこれは報復戦争であるのかどうかというのは、私、個人的に少し疑問を持っているんです。パネリストの中で岡本さんがちょっと個別的自衛権の発動というようなことをおっしゃいました。これは国連憲章の51条の中にある個々の加盟国が持っている権利ですけれども、個別的、あるいは集団的自衛権の発動、安全保障理事会が行動をとる前に許される個々の加盟国、あるいはその地域の集団安全保障体制に対して許される活動の内容なんですが、その中には、自衛権の発動の中には、予防的措置という解釈もとらえていると思います。つまり、テロの危険が現実のものであって、自国民、あるいは同盟国が緊急の危険にさらされている場合、これは事後ではなくて、将来の危険に対して予防的な措置をとることができると、こういう解釈で今の軍事行動が行われていると思います。
湾岸戦争との違いですけれども、湾岸戦争のときはアメリカ主導の多国籍軍が圧倒的な軍事力を持って、イラン軍を圧倒した。それでそれなりの一件落着を見たということですが、今回も、確かに米主導の軍事活動というのは圧倒的軍事力を持ってやっています。ただ一つの違いは、ブッシュ政権が空爆を始めてから遅まきながら気がついたことであるのですが、軍事行動の後のことを考え、つまりアフガニスタンに安定した、かつ責任のある政権を残さないと、アメリカは永遠にアフガニスタンから足を抜くことができないと。仮に強引に立ち去ったとしても、いつの日か、遅かれ早かれ軍事力を持ってアフガニスタンにもう一度戻らないといけない。そういうことにはたと気がついた。
つまり、アメリカの、特に共和党政権ですけれども、忌み嫌うネーション・ビルディングですね、国家の再建活動。ソマリアで試みて、無残な失敗に終わった。ボスニアでも右往左往しましたけれども、決してスムーズに行われたとはいえない。
で、一時期、ソマリアの経験に基づいて、国連はもう二度とこういうことを、あるいは国際社会はもう二度と一国の国づくりに手を染めてはいけないと、そういう議論が出てきましたけれども、アフガニスタン紛争になって、いま一度我々が気づいたことは、確かに苦しくて矛盾に満ちて、決して安全ではない、ひょっとして自国民、加盟国の間でも犠牲が出る可能性があるけれども、その一方で、やはり国づくりを国際社会が助けることの必要性を改めて思い知らされた。これは軍事行動ということではありません、政治面でアフガン国民を助けて、責任ある国民の大多数が政権に参加できるような、そういった政権を残さないと、結局、テロの本質的な解決はあり得ない。そういうことを改めて思い知らされた機会であったかと思います。
木村 どうもありがとうございました。
そろそろテロの背景、何が今度の9月11日、これまでにもなかったようなテロをもたらしたのか、その原因のほうに入っていく前に、ちょっとペルテスさんにお伺いしたいんですが、この戦争の目的といいますか、出口は何なんでしょうか。何をもってこの戦争は終わりと言えるんでしょうか。ビンラディンを逮捕して、あるいは国際社会の裁判の場に、司法の場に引き渡すということがほんとうに可能なんでしょうか。
それに関連して、アメリカ、イギリス軍は、中にはアフガンだけではなくて、テロ組織を抱えるようなイラクにも、あるいはまた、ほかの地域にも、いずれ将来は戦争の領域を広げるべきだというような議論もあるようなんですが、こういう議論はドイツとしては耐え得るんでしょうか。
そのあたり、ペルテスさん、ドイツのお立場からですね、アメリカ軍のこれからの展開、それからこの出口という問題についてどのようにお考えになっているのか手短にお答え願えればと思います。
どうかよろしくお願いいたします。
ペルテス はい、ありがとうございます。これは短く、はっきりしたお答えができるかどうかという問題がありますが、試みてみたいと思います。
結局、戦争はいつになったら終わりと言えるのか。今回の戦争に関して言えば、川端さんがおっしゃったこと、つまり信頼できる正当な国づくりが始まったときではないかと思います。いわゆる国づくり、ネーション・ビルディングが始まったときではないかと思います。
しかしながら、もちろんオサマ・ビンラディンが国際法廷の場に引き出されるということ、しかしながら、そういった法廷は存在していません。国際刑事犯罪裁判所というのはまだありませんし、また、米国は刑事裁判所の参加の批准をまだしておりませんので、時間がかかる思います。そのような課題が残っております。
いわゆるグローバル化した世界をいかに制度化していくのかというということです。こうした危機に備えて、今後どのような国際機関をつくっていくか、考えていかなくてはならないのです。
ご質問のほうですが、非常に大きなチャンスが今だと思います。戦争を長引かせず、むしろ国際的な、政治的な反テロリズム同盟を形成すること。そしてその中には、多くのイスラム諸国も参加してもらうことです。必ずしも過去、米国、あるいは西洋諸国のベストフレンドとは言えなかったような国も入れていくことです。そしてその際に、アラブ、イスラム国家の主導者が何を言っているのかということを注意深く聞く必要があると思います。特にイランのハタミ大統領がここ数日間述べていることは興味深いと思いました。
テロリズムに反対しているだけではない、これはイランとかシリア、レバノン、パレスチナの経験からくるように、占領に対する正当な戦いというのは除かれるのですが、しかしながら、ハタミ大統領は、イスラエルの占領に対するパレスチナ人の戦いのように、「外国の占領に対する正当な戦いは存在する」と言いました。しかし、「正当な戦いににおいても、正当化されない手段を用いることに注意しあんければならない」と。さらに、この談話で目新しい部分なのですが、「もちろん、イスラエルの占領と戦うパレスチナ人を支持する。だが、その戦いにおいても、無辜の市民が攻撃されてはならない」と言ったのです。
ですから、イスラム世界の中で、あるいはアラブ世界の中でこういう新しい考えが出てくるならば、いつもながらの西側社会の疑念をはるかに超えた政治的な同盟をつくるチャンスだと思います。日本というのは地理的、文化的には違うとはいえ、今政治的には西側世界の一員です。私たちは、文明というもの、何が重要かを語り、議論するというのであれば、このチャンスを逃してはなりません。
しかし、戦争が他国に向いてしまうと、このチャンスを逃してしまうでしょう。というのも、米国のリーダーの中にはその国でまだ未解決のビジネスがあると考えている人がいるからですが、より具体的に言えば、アフガン問題を軍事的に解決した後に、次に米国がイラク問題を例えば同じように解決しようとしたならば、これは大きな間違いだと思います。
米国政府の中には、そのように唱えている人もいます。常にイラクの解放というようなことを言ってきた人たちであって、今がチャンスじゃないか、湾岸戦争のときのし残したことをやってしまおうと思っているのです。
ヨーロッパの政治勢力、これは英国、それからドイツ、フランスも含めてのことでありますが、ヨーロッパは、この成り行きを間違いとみるでしょう。我々はアメリカとも、同盟国とも対話を続けておりまして、とにかく政治的な同盟を組んでテロに対抗していかなくてはならない。その中にはアラブ諸国、イスラム諸国を包含していかなくてはならない。そして、単にイラクの指導層を未解決の問題があるといって攻撃する理由はないと言っているのです。
もちろん、新しい証拠が出てくれば別ですが、今はそうではありません。今の状況というのは、確かにイラクには大きな問題はあります。しかし、クウェートやサウジアラビアに対して攻撃をする選択肢を持つ非友好的な国ではありますが、違う対処法があると思います。
つまり、抑止という有名なやり方、これは過去十年間機能してきました。いま、イラクに対する戦争を始め、アラブ世界の感情を害する必要はありません。このように、現在のアフガニスタン、タリバーンの戦争に対して、ヨーロッパでは、そういった意味では統一した意見が形成されていると思います。
木村 ちょっとコメントがあるようですので、どうかよろしく。
アイケンベリー 今、ペルテスさんのおっしゃったことのフォローアップなんですが、この点がとても重要だと思います。一連の行動のエンドポイントというのは、もし新しいルール、国際協力に対する理解がもたらされ、それによって我々が、次回同じような問題が出現したときに、こうした協力関係のもとでよりよい取り組みができるようになるのであれば、あの9月11日の出来事からですら、最良の遺産であると考えてもいいでしょう。
実際に私が申し上げたいのは、おそらく歴史家がいつか振り返って、そして、協力的な国際関係が出現したことの記憶が、あの悲劇的事件についての記憶よりも強い、というのであれば、ということです。
よりポジティブな動きが様々な方法で出現すると考えましょう。まずはペルテスさんがおっしゃったように、この種の問題に対処するための世界的な、国際的な社会のコンセンサス。もちろん、このためには、アメリカは軍事力の行使において一線を越えず、協力体制の外にはみ出してはいけない。第2点は、ロシアに関してですが、ロシアは、この危機において、言ってみれば、西側諸国のドアをたたいて、自分もグループに加わりたいということが言えるのです。20年もたてば、あの事件が契機となって、ロシアも西側諸国、安全保障の枠組みに加わるようになったと言われるでしょう。
おそらく先週の最も重要なニュースの一つとして、144カ国が昨日、新しい貿易ラウンドについてその合意に署名しました。もし、その志が実現すれば、15年で1兆5000億ドルにも及ぶ財やサービスが、関税や非関税障壁の引き下げによって生まれるということになります。その多くは、途上国により大きな富をもたらす可能性があります。
それから、4つ目として、ブッシュ政権も大人になりつつある、と思っています。つまり、国際協力関係、特に国連の利用の仕方を学びつつあるということです。9月11日以降、ブッシュ政権は、国連に対して分担金を支払いました。とても重要なことです。国連は解決のための重要な部分を成し、問題が存在する場ではないのだと決めたのです。上院外交委員長として長年批判的であったジェシー・ヘルムズは、もうその職にありません。それも一つですが、同時に、ブッシュ政権は、国際社会というのは友人であって、敵ではないということを理解したのです。ということから、多国主義、関与。それらが教訓であったと願います。
そして、最後に、中東に関してですが、初めて現政権がパレスチナ国家、イスラエルとの共存ということを言い出しました。確かにこれをもって、今回の暴力を使った人に対するご褒美のようにとらえてはいけないわけですが、しかし、賢明な考え方として、政治的な発展がこの中で起こるようにし、そして、その中で、結局、だれもが、これが正当な帰結だと。だれにとっても社会的によいことだということを、だれもが感じるようになればいいと思うんです。
パウエル国務長官が重要な演説を月曜日に行い、その中で、新しいコミットメントというのを示しました。そして、この問題解決について意見を表明したわけですが、今申し上げた五つの分野というのは、9月11日以降のいいニュースだったと思います。
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