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【シンポジウム】

つくれるか、テロのない社会

緊急連続シンポ 9・11テロ後の世界と日本(第1回)



【第1部】

 そろそろテロの背景の問題から、じゃ、これからテロを撲滅する、抑え込むために何が必要か。今までの議論の中でも随分といろいろなヒントが出されたと思いますけれども、その問題に進む前に、一つ川端さんのほうからコメントがあるようですので、どうか手短によろしくお願いいたします。

 川端 テロの原因のことですけれども、今、山内教授からおっしゃられた対アメリカとの関係のみで今回の事件を理解するのはどうかと。また、私の経済的な巨大な格差、それのみで今回の事件を説明するのもいかがなものかと。双方とも原因の一部であるけれども、全部であるとは思いません。

 例えば、アフガニスタン紛争の本質ですけれども、アフガニスタンというのは、ナジブラ政権が92年に崩壊しますけれども、それまで東西冷戦の発火点として、大国の恣意のままに運命を左右されてきました。それが、92年の共産党政権の崩壊とともに、今度は、ソ連が91年に解体しますが、アメリカは、アフガニスタンに興味をなくした。

 政治的な真空地帯ができたわけですけれども、その真空地帯の中に地域大国が介入してきた。つまり、アフガニスタンの周辺国による介入がなされて、子飼いのそれぞれの紛争当事者が地域大国に操られる形で内戦を始めた。その意味で、地域紛争の性格もございます。

 国連ではそういう事情をよく知っております。さらに、アルカイダの危険性ということもたびたびタリバーン、94年に台頭してくるんですけれども、タリバーンのほうに注意を喚起、あるいは警告していた。

 例えば98年3月、アメリカのミサイル攻撃──東アフリカでのアメリカ大使館爆破事件に対する報復の意味でのミサイル攻撃が8月にあるんですけれども、その5カ月前の3月に、我々、タリバーンの指導者を隣国の首都のイスラマバードに呼びまして、どうもタリバーンが今やっていることはおかしいのではないか。

 タリバーン運動というのは、もともと日本語でくだけた表現をしますと、世直し運動であったはず。ムジャヒディン学者がどうしようもない政治をやって、略奪と暴力を繰り返した。その中で、真のイスラム国家をつくる。腐敗したムジャヒディンを追い出して、我々こそが真のイスラム国家をつくる。そういう青年の神学生組織であったわけですね。その運動が、何で、例えばアルカイダのようなゲリラ組織を庇護するのか。98年3月にタリバーンの指導者を呼んで、迫ったことがあります。

 迫った理由は、単にアメリカが懸念しているということではなくて、アラブの諸国自体も、エジプトも、例えばモロッコもアルジェリアも非常に懸念している。一体どうするつもりなのかといったことがあります。

 その同じ年の10月に、今度はタリバーンの最高指導者のオマルにカンダハルで会いまして、そのときも、オマル師は、アルカイダ、あるいはビンラディンのことをみずから客人と呼んでいるんだけれども、ほんとうに彼らは客人なのか。客人であるならば、彼らがやっていることは、招待された家から隣の家に石を投げ込んでいるようなことで、それは客人の行いではないのではないかと。そこまで言って、アルカイダとの決別を我々は迫ったことがあるんですけれども、残念ながら実行されませんでした。

 そういう意味で、単に経済的格差、単にパレスチナ、それだけでは全体像を見切れない。その点を強調しておきたいと思います。

 木村 ありがとうございました。

 それでは、これから後は、休憩までの間に、テロを封じ込めるために、一体どんな国際社会としての行動がこれから望ましいのか。

 アメリカは長い間世界の警察官なんてことを言われてまいりましたけれども、アメリカがいつまでも世界の警察官、あるいは保安官として、世界の紛争の管理に出ていくということが一つのモデルになるのか。それとも、アメリカだけには頼らない新しい国際社会の、テロだけではありませんけれども、いろいろな脅威に戦うという国際的な枠組みというのをつくっていく必要があるのかどうかということにちょっと話を進めてみたいと思います。

 アイケンベリーさん、アメリカは、いつまでも、例えば保安官というような形で、今回は、アメリカが最大の被害者といいますか、大きな被害を受けたということもありまして、自衛権の行使だという形で武力行使に踏み切りましたけれども、ただ、国際社会は、そういうアメリカに、一種の国際的な警察機構の代行をゆだねているようなところもあると思うんですが、これから少し長いターム、時間で見て、アメリカというのが国際紛争の管理するための最大の機関なのか。それとも、いつまでもアメリカに頼っちゃいられないぞ。これからはもっと違った形の枠組みを使っていかないと、どうもうまくないぞというふうにお考えなのか。そのあたりはどういうふうにお考えになっていますでしょうか。

 アイケンベリー 確かに今の世界というのは、いわゆるデファクト、実質的に世界のガバナンス構造が米国のリーダーシップを中心に動いていて、そうすると、人々も米国はどの程度信頼できるのかと緊張して見ます。しかしながら、それに代行するものがあまりない。したがって、これから真のガバナンスの構造にどうやって向かっていけばいいかという話をしたいと思います。

 確かに米国というのは、普通ではない立場にありまして、自由世界のリーダーであり、過去50年間に築かれてきた世界でありまして、冷戦を戦うために築かれた立場でありました。

 ところが、冷戦が終わって、ソ連が崩壊した。一国が支配する世界になった。超大国が一カ国になってしまった。しかも、力の差が非常に大きくなってしまった。歴史的に見て、経済、軍事的に見て、過去を通じて最大の格差を生じてしまった。米国の軍事力とそれに次ぐ国の軍事力というのは、200年来で最大になっています。つまり、2番目以降、5カ国の軍事費を合わせても米国の軍事費にならない。

 例えば、ヨーロッパがもっと積極的な役割を果たすとしても、もっと軍事費を上げねばなりません。ヨーロッパは、外に向けて軍事力を投射するということができなくなっています。技術的にもはやアメリカについていけない部分があるのです。ですから、例えば、力を使わねばならないような状況になると、米国が役割を果たさねばならない。ある国が別の国を侵略する。クウェートのようなことになってしまう。そうすると、やはり米国が参加してリーダーシップをとらないと対応できなくなるというのが現実だと思います。

 その現実というのは、ほかの国が受け入れてきました。これは、いわば取引であると言っていいと思います。すなわち、米国はその役割を果たそうと。しかし、そのかわりにほかの国は協力するパートナーになる。例えば兵站的な、外交的な、経済的な支援を提供して、米国が安全保障を同盟構造の中で提供していく。  

もう一つの取引は何か。米国は、リーダーシップをとるが、ほかの国もパートナーシップを提供するが、しかしながら、米国は、こういった国々に対してオープンでなければならないということです。これは例えば協議をオープンに受け入れる。共同で意思決定する。米国は他国と協力して、ルールを設け、アメリカの力もユーザーフレンドリーになる。より大きな秩序のなかでは、アメリカの力があっても、世の中が安全に働くように、世界秩序が保たれるようにする。私たちはそういうシステムを今日、持っているのです。これは、最悪ではないと思いますし、比較的機能してきたのだと思います。

 私としては、米国がその責任をこれほどに受け入れてきたということに関しては満足しておりますし、今までつくり上げてきたこの50年の世界というのは、過去のどの国際秩序よりも、安全で、より多くの人が経済的な繁栄を享受していると思います。だから「最悪」ではなかった。確かに疎外されている国々はあるんですが、しかしながら、日本や西欧、アメリカが中核国となって、そして、こういった世界を主導していっている。それを、現在の世界の秩序と呼んでいます。

 ところが、土台が弱い。つまり、竹でできた基礎といいますか、倒れてしまうかもしれない。米国の意思にかかった制度、米国の議会や国民がこの役割を続けてもいいということにかかっております。

 もちろん、いろいろな力の使用、あるいは事件がアメリカ人の犠牲を伴わなかった。アフガニスタンにおいても、この戦争で敵方によって命が奪われていないというのはほとんど信じられないぐらいであります。コソボのときの空爆もそうでした。それほど大きな負担を人的なレベルで、アメリカに課すことはなかったんですね。しかし、それが永続するわけではないということで、そこが問題でした。

 そうすると、21世紀の真のチャレンジは、より深いガバナンス共有構造、統治を共有するような構造を設けていくことだと思います。日本の議論は後半に待ちますが、より大きな地域的なリーダーが必要だと思います。

 南アジアの悲劇は、イスラム諸国で、いわゆるリーダー国になって、この不安定性の問題に対処できる国はないということだと思います。今のアフガニスタンのテロネットワークに対処できない。西側が入ってきて力を行使するといいますと、これは非常にネガティブに見られてしまうんですが、南アジアにそういったリーダーがいない。そういったストラクチャーを構築することができれば、米国あるいはただ一つの国が保安官的機能を果たすということを超えることができると思います。

 ほかの代替策よりもましかもしれませんが、より広い、より深いグローバルなガバナンス構造を模索していかなくてはならないと思います。

 木村 米国の意思にかかわるような、そこだけによっかかるような制度の弱さ、ひ弱さというご指摘とともに、統治、ガバナンスを共有するようなシステムをこれから国際社会の中で打ち立てるべきだというお話でありましたけれども、岡本さん、これは実質上、アメリカが冷戦を生き残った最大のパワーを持って、アメリカ以外に──アメリカを主軸としながら、今アイケンベリーさんがおっしゃったような新しいシステムを国際社会の中につくっていく。これはほんとうにできるというふうにお考えなんでしょうか。

 岡本 これはアイケンベリーさんがさっきおっしゃったんですかね。今度の戦争というのは、ブッシュ政権を外に向かって顔を向かせた。国連というものを重視させるようにした。それは非常にいいことだ。私もそう思います。

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