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和平へ 憎しみを超えて―― イスラエル・パレスチナ遺族は語る

【討論】 質疑応答(2)



 松本 それでは、ほかのご質問、そちらの真ん中の方、どうぞ。

●パレスチナの独立は和平に本当につながるのか

 質問 フランケンタールさんとブリギスさんにです。

 先ほどからお話を伺っておりますと、「憎しみを超えて」というタイトルを実現するためには、つまり、憎しみというのを国家を超えてという形で、国家を超えた形で、個人と個人との対話によってそれを解決していくという1つのメッセージがあると思うんですが、そこで、ロードマップの最終的な目標として、パレスチナに独立国家をつくるというのがあると思うんです。ところがこれは1つの国家をつくることであって、そうすると、国家の枠組みを超えてやろうとしている1つの流れに反するのではないかと私は思うんです。

 ですから、パレスチナ独立国家をつくることが、本当にイスラエルとパレスチナの和平につながるのかどうか。もしつながるのであれば、何が一番大切なのかということをお2人にお伺いしたいんですが。

●平和達成の前提であり、人々の心底からの希求が重要

 イツハク・フランケンタールさん

 フランケンタール もちろん平和をつくり出すということが目標なんですけれども、そのためにパレスチナ国家が必要だということです。パレスチナ国家ができないと、平和は達成できないということです。

 ロードマップの話ですけれども、何かロードマップが魔法の解決策みたいに見えていますけれども、正直申し上げて、私に言わせれば、唯一ある魔法の方法というのは、世論を変えることであると思っています。イスラエル側、パレスチナ側双方とも人々の考えを変えなくてはいけない、啓蒙が必要だということです。まさに我々はマスコミなどを利用させていただいて、和解の価値を皆さんにわかっていただくために運動しているわけです。

 もちろんロードマップがある、それ自体はすばらしいことだと思います。アメリカがイラクにやってきたと同じようにイスラエルにやってくるのか、パレスチナにやってくるのかわかりませんけれども、アメリカは世界のカウボーイと言われておりますが、あんまり私はこれは気に入っていません。アメリカではなく、国連が世界の「警察官」たるべきです。

 しかし、国連がやってきて、イスラエルとパレスチナに和平を強いたとしても、真の平和が訪れるでしょうか。我々の中の発意として生まれないと平和はやってこないと思うんです。国民自体がそれを望まない限り、当事者が望まない限り、平和はやってこないということです。自分の心に平和を希求する気持ちがわきあがってくれば、他人に対して戦いを挑むことはないでしょう。

 例えば、エサウィさんは4人も家族を失ってしまった。しかし、イスラエルに対し、もう憎しみの気持ちを持っていません。平和が欲しいのです。憎悪の連鎖を断ち、戦いをやめさせたいのです。息子と団欒したいのです。シャハクさんは娘を亡くしました。やはり、憎しみあいはもう終わりにしようと思っています。

 パレスチナであれ、イスラエルであれ、平和と和解に対する教育、啓蒙が必要だと思います。バラク前首相は残念ながら、イスラエル社会の反応が怖かったから、和平合意ができませんでした。イスラエルが悪いとかパレスチナが悪いとかいうことではありません。

●国民同士の信頼と心の通い合いが大切

 ガズィ・ブリギスさん

 ブリギス 私自身は完全にフランケンタールさんが指摘されたことに同意します。国家間の平和と人々同士の平和です。イスラエルとエジプト、イスラエルとヨルダンには平和協定があります。うまくいっていると思いますか。ノーです。政府間、指導者間の合意だからです。我々が必要なのは信頼です。憎しみを乗り超えて過去のすべてを克服して1つになっていくことが必要なんです。心が通い合った真の平和が必要なんです。「遺族の会」は増えています。しかし、手放しで喜べません。犠牲者が増えていることでもあるわけですから。もうこれ以上、遺族が増えるのはご勘弁願いたい。真の平和協定が必要なんです。

 私はパレスチナに長く住んでいますが、(イスラエルの)占領下に生活している感じはしませんでした。ところが、この2年、3年は違います。オスロ合意後、双方で4000人以上が殺されました。政府間の合意がもたらしたものです。ですから、我々は人と人同士の絆、合意を望んでいます。電話による双方の対話企画をもっとやっていきます。ロードマップではなく、この対話の活動に支援をお願いしたいと思います。

 松本 ほかにございますか。どうぞ。

●日本に期待するものは

 質問 私たち日本人に具体的には何をしてほしいと思いますか。  

 シャハク 今回日本に来た理由の1つは、かつての敵国であった人たちとどうやって仲よくしたのか、そのすべを知りたかったということです。訪問は広島から始まりました。多数の方とお会いしました。昔の敵国に対しても友好的になろうと思えばできるということを学びました。私たちの活動の参考にしていきたいと思っています。平和関係の施設も見ました。将来、祖国にも造ったら、子供たちの教育に役立つだろうなと感じました。

 フランケンタール 私たちは双方の人々との交流、教育活動に物心両面の支援を必要としています。欧州連合(EU)からは100万ドル以上支援を受けました。日本からの支援も期待しています。外交面でもイスラエル、パレスチナ両政府が和平交渉を促進するには日本政府や日本の世論の力が必要だと思います。

 松本 時間がなくなってしまいました。誠に申しわけないんですが、質問は一応これでおしまいにしようと思います。壇上におられる4人の皆さんに一言ずつ、この運動についての、また日本での感想を伺って終わりにしようと思います。  

 ブリギス ありがとうございました。皆さん方に御礼を申し上げます。日本でいい経験、悪い経験、両方しています。広島の平和記念資料館を見学しました。1発の原爆で14万人以上の無辜の市民が殺されたことにものすごい衝撃を受けました。恐ろしいことです。しかし、いいことでもありました。それを見たことで、運動を続けるための力を得ました。ですから、皆様方に御礼を申し上げます。どうぞ、事象は両側から見てください。2つの見方を忘れないでください。いつか和平が成り、皆さんにお客様として来ていただける日が来るかもしれません。ありがとうございました。(拍手)

 エサウィ 改めて、朝日新聞社に御礼申し上げます。おかげさまで、来日もかないました。そして、皆様方のご経験からいろいろ学ばせていただくことができました。戦争を生き抜き、憎しみや嫌悪感などを克服して、営々と国づくりをされてきたことがわかりました。私たちに希望を与えてくださいました。いつかは、ぜひ皆様方のような国になりたいと思います。(拍手)

 松本 シャハクさん、お願いします。

 シャハク 今回の訪問を準備する中で、広島の「原爆の子の像」のモデル、佐々木禎子(さだこ)さんが千羽鶴を折りながら原爆症とたたかい、12歳で亡くなった物語を知りました。そして15歳で死んでいった娘のバトヘンと似ていると思いました。同じくらいの年齢で、死の原因はテロと原爆、つまり平和でなかったということです。

 イスラエルでは6年生の子供たちがこの禎子さんの物語を学んでいます。私たちは今回、広島に千羽鶴を持参しました。パレスチナとイスラエルの子供たちが500羽ずつ、折ったものです。それを禎子さんの像の前に飾りました。(拍手)

 フランケンタール 私は皆さんへの質問を出すことで締めくくりたいと思います。「みなさんは、私たちをどうやって支援なさいますか」。ありがとうございました。(拍手)

 松本 きょうは非常に暑い日だったにもかかわらず、さらに暑い議論が行われたと私は信じています。非常に面白いと言ったら語弊がありますけれども、意味のある土曜日の午後だったと思います。先ほど皆さんがおっしゃられたように、少しでも多くの方がイスラエルとパレスチナの状況に関心を持ち、自分のできることは何かということを考えていただければと思います。それでは、皆さんを拍手をもってお送りいただきたいと思います。ありがとうございました(拍手)

 司会 ありがとうございました。皆様、長時間ご静聴いただきまして、誠にありがとうございました。これをもちまして、朝日新聞フォーラム「和平へ 憎しみを超えて――イスラエル・パレスチナ遺族は語る」を終了させていただきます。





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