【ASAHIパソコン本誌連動企画】
記録型DVD、2層化から始まる多層化、大容量化への道
次世代、次々世代ディスクは100層、テラバイトへ
今年の家電業界最大の話題はDVDレコーダーの大ブレークだろう。VHSからDVDへ、録画メディアの急激な世代交代が進む中、実質2時間程度しか録画できない現在の1層式DVDの容量(4.7GB)への不満も聞こえ始めた。そんな声にこたえて来年にも登場しそうなのが、8.5GBの書き込み容量を持つ2層の書き込み型DVDだ。一方、青色レーザーを使う次世代ディスクであるブルーレイディスク、HD DVD両陣営も着々とフォーマットを策定中。さらに次々世代ディスクと呼ばれる1TB(テラバイト=1000GB)超を目指す大容量ディスクの研究も始まっている。(文・野本響子 写真・吉田早織、鈴木芳果)
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現在の書き込み型DVDの容量は、4.7GB。テレビ放送を標準画質(約4.5Mbps)で録画して、たった2時間しか入らない。DVD-RAMの両面ディスクは9.4GBあるが、手で裏返す必要があり、使い勝手は今ひとつだ。急速に拡大するDVDレコーダー市場で、「もっと長時間録画したい」という要望は大きい。
DVD±Rのいずれも2層化開発に成功
+Rは来年にも製品化へ
パイオニアは10月、現行DVD-Rの2層記録技術の開発に成功したと発表した。容量は2層で8.5GB。
パイオニア研究開発本部総合研究所ナノプロセス第二研究部の滝下俊彦室長は「開発は2年前から進めていた」と明かす。
2層のDVD-Rは再生専用の2層DVDディスクと性質が近いため、現行のDVD再生装置と「物理的に再生互換性は取りやすい」という。ただし現行のレコーダーで記録することはできず、2層録画に対応した新機種が必要になる。
課題もある。1つは量産体制だ。2層のDVD-Rは従来のDVD-Rや2層のDVD-ROMと大きく作り方が違うため、現行の設備そのままでは生産できない。2層になることで、映画などの市販ROMディスクと同じ容量になるため、著作権上の配慮も必要になる。
気になる製品化の時期については、同AV開発センター光ディスク開発部の谷口昭史第二開発室長は「明言できないが、量産体制や著作権管理方法などのめどをつけてから、DVDフォーラムになるべく早く提案し、規格化したい」と意欲を見せる。
フィリップスと三菱化学メディアもほぼ同時期にDVD+Rの2層化(8.5GB)を発表した。
2層化された+Rディスクの物理構造は、-Rと近いものになりそうだ。量産化技術にもある程度のめどはついているようで、「今年中にソニー、リコーなどとともに規格を決めて、2004年の製品化を目指す」(リコーパーソナルマルチメディアカンパニーLSLセンターの大庭秀章課長技師)という。いきなり2.4倍速の書き込みを目指しており、こちらも現行の2層DVD-ROMとの互換性を目標にしている。
では現行DVDはさらに3層、4層と大容量化していくのだろうか。これについては両者とも、答えはノーだ。
「2層ディスクは現行のDVD-ROM(2層)との互換性が必要」というのが共通した考えだ。現在、DVD-ROMは2層までしか規格化されていない。それ以上のものを作っても、DVDプレーヤーで再生できないため、つくる意味がないというわけだ。
次世代ディスクも多層化を視野
ディスク1枚100GBの開発に成功
DVDよりも波長の短い青色レーザーを使い、光スポットを小さくすることで大容量化するのが、次世代の光ディスクだ。ソニーや松下が推進するブルーレイディスク(BD)、東芝やNECが推進するHD DVDがある。後者は暫定的にAOD(次世代光ディスク)と呼ばれていたが、高画質を意味する「HD」を名称にした。
BDはソニーが商品化している(BDZ-S77、45万円)。使えるディスクは現在RE(現行DVDのRWに相当)と呼ばれる書き換え可能型のみで、1層で23GBの容量だ。
来年はBDのR、ROMなどが規格化される予定だが、いずれも2層で40〜50GB程度の容量になりそうだ。対抗するHD DVDもDVDフォーラムで新規格として承認を受けた。容量はBDよりも少ないものの、現行のDVDとの互換性の高さが売り。すでにメディアメーカーのメモリーテックが2層ディスクの量産化に成功しており、1層で15GB程度、2層で30GB程度の容量を見込んでいる。
青色レーザーを使ったディスクの多層化(4層)実験に成功したのがTDKだ。今年10月に開かれたCEATECでは、無機材料を使った4層(100GB)のブルーレーザーディスクを参考展示。書き込み速度も速く、実験レベルでは、BDの4倍速相当を実現したという。
ブルーレイディスクを推進している松下電器産業のメディア制御システム開発センターの田中伸一所長も「すでに4層まで視野に入れている」と語る。
同社では、ブルーレイで無機材料を使った100GBの4層ライトワンスディスクを試作済み。読み取り専用の4層ディスクはまだ議論されていないが、「ニーズがあれば検討する」という。
ホログラムや高面密度化、多値化など
しのぎをけずる大容量化技術
容量1テラバイトを目指す、次々世代ディスクの研究も進んでいる。
方向は3つある。1つは、スポット径をどんどん小さくする高面密度化。2つ目は記録の値を増やす多値化。3つ目は多層化・体積記録化だ。
多層化技術では日立製作所と日立マクセルが「電圧層選択方式」による多層化基本技術を発表している。
多層化の問題は、何層にもなったときに、読み書きをする光が届かなくなってしまうことだった。そのため、限界は3〜4層といわれてきた。
そこで日立製作所では、電圧によって透明/着色と変化する材質を開発。記録・再生をする層だけに電圧をかけて着色して記録する方式を開発した。電圧のかかっていない他の層は透明になっているわけだ。この方式だと原理的には100層も可能になる。ディスクはそれぞれ電極を持ち、ドライブ側には電圧伝達機構が必要になるものの、従来と同じ装置が使えるうえ、DVD、CDとも互換性が保てるメリットがある。
現在は5層対応のDVD-RAMを元にした装置での実験を進めており、2007年ごろには100〜200GB、5層の実現を目指す。今の段階では電圧伝達機構も大きく、これをいかに小さくするかなどの課題も残るものの、将来が楽しみだ。
一方、リコー研究開発本部で研究している多層化技術は「2光子吸収」と呼ばれる。強い光を当てたときにおきる現象を使って多層ディスクに書き込みをするというもの。素材の焼け焦げを防ぐために、強い光を短い時間当てる「フェムト秒レーザー」を利用する。
研究レベルではすでに30層まで達成しており、将来的には100層も可能になるという。ただし、フェムト秒レーザー装置は非常に大きく(現在は机くらいの大きさがある)、価格も高い、材料をどうするかなど課題も多い。
層を重ねていくのではなく、3次元的にデータを記録することで大容量を達成しようとしているのが「ホログラム体積記録」だ。ホログラムを研究している会社は世界にいくつかあるが、中でも日本のベンチャー企業オプトウエアのドライブが注目されている。
オプトウエアは、ソニー出身の社長率いる社員36人のベンチャー企業。コリニア方式ホログラム記録技術による光ディスク装置の開発をしている。同社では緑色と赤色の2レーザーを使って、光ディスクに立体的に記録する方式を開発。2006〜07年には民生用のドライブを実用化したいという。将来的には1TB、さらに高容量を目指す。
光の波長以下の大きさで記録
究極の「近接場光」技術も開発中
多層化・体積記録以外の道もある。リコー研究開発本部で研究している「近接場光」という技術は、スポット径をさらに小さくすることで、大容量化しようという方法だ。
これは光をディスクに当てる際に、光の波長以下の小さい穴を通し、この穴で光の口径をさらに小さくして、高密度化記録するというもの。これに、光の波長よりも小さい口径のスポットに記録することが可能になる。
ただし、この技術では金属の穴からこぼれ落ちる光の届く距離がごく短い。そこで、金属の穴を通すには、ハードディスクのヘッドに似た装置を使い、ヘッドに空いた小さい穴から漏れる光を使って書き込む。メディアにはカートリッジが必要なので、こちらは光ディスクよりもハードディスクに近いものになりそうで、「実際にハードディスクと融合する可能性もある」という。こちらも実現は2010年以降。
前出の田中氏は「BDは100GBが見えている。次々世代ディスクは別規格だから、最低でもその5倍の500GBはほしい」と断言。「現在、それが達成できそうなのは、多重記録か体積記録のどちらか」と分析する。両方とも超えるべきハードルはまだまだありそうだが、光ディスクの未来に期待したい。
(2003/12/01)

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