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コピーコントロールCDを徹底的に総括する
ファンとアーティストを傷つけ、法制度面でも問題山積

 今秋、コピーコントロールCD(CCCD)が大きな節目を迎えた。業界で最初にCCCDを導入し、ほぼすべての新譜をCCCD化してきたエイベックスが「運用の弾力化」を発表、適用を大幅に縮小した。次に、新譜を原則CCCD化していたソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)が全面撤退を表明した。一方、最大手の1つ東芝EMIは引き続き推進する構えだ。議論を呼んだCCCDは、著作権をめぐるビジネス・法・技術に関しても大きな教訓を遺した。この機会に問題を徹底的に整理してみよう。(パート1・津田大介、パート2・丹治吉順)

■ ■ ■ ■ ■

図1 CCCD(CDS)の仕組み
日本のCCCDの大半で採用されているCDS。本来はアのように、パソコン用CDドライブで読み取り・再生を防ぐ一方、音楽用CDプレーヤーでは再生できるはずだったが、実際はイのように、例外が続出した。(クリックで拡大)
パート1 音楽産業・文化編
音楽文化を傷つけた後ろ向きの2年半


 CCCDが登場して約2年半、その間に日本の音楽業界と音楽ファンの間には埋めがたい溝が生まれた。

 CCCDは、あらゆる点で問題だらけだった。一番の問題は、「再生保証プレーヤー」がなかったことだろう。本来パソコンでのコピーを防止するために開発された技術だったはずなのに、ミニコンポやカーステレオなど通常のオーディオ機器で正常に再生できないケースがたくさんあった(図1)。さらに悪質なのは、通常のオーディオ機器で再生できなくても、一切返品を認めなかった点だ。このため、買う段階でリスナーに「再生できるかどうかわからない」というギャンブルを強いることになった(この点の法的問題についてはパート2に詳述)。

 コピー防止技術自体も稚拙だった。「コピー防止」とは名ばかりで、実際には7〜8割のパソコンで通常の音楽CDと同様にコピーできた。確信犯的な違法コピーユーザーにはほとんど効果がなく、きちんとCDを購入する正規購入者にだけ迷惑がかかる……こんなやり方で音楽ファンの支持が得られるわけはない。

 また、日本で導入されているCCCDは、音質が通常のCDより劣っていた。国内盤はCCCDだが、輸入盤は正規CDで発売されたビートルズの「Let It Be Naked.」などは両者にかなりの音質差があり、オーディオ専門誌でも音の悪さが指摘された。音楽業界関係者の中には「違法コピーは反対だし、コピーコントロール自体は賛成だが、現状のCCCDはお粗末過ぎる」と反対する人も多かった。

 エイベックスは方針変更の理由を「ユーザーに著作権意識を根付かせることができたため」としている。そうした啓蒙効果を否定はしないが、代償はあまりに大きかったのではないか。

 一番迷惑を被ったのはほかならぬアーティストだろう。レコード会社の一方的な決断で、望まないCCCD形式でのリリースを余儀なくされたアーティストは少なくない。CCCDのリリースが決まったアーティストの公式サイト掲示板が否定的な書き込みで埋め尽くされ、本来の目的であるファン同士の交流に利用できなくなることも日常茶飯事だった。アーティストは本業である音楽制作に集中できなくなり、音楽ファンは好きなアーティストの作品でも購入を迷わなければならなくなった。これらのことが「音楽文化」に与えた悪影響は計り知れない。


音楽業界の最大の誤算
抗議せず、ただ買わなくなった消費者


 当初はすぐ全体に定着すると見られていたCCCDだが、予想に反してリリース数はあまり増えなかった。2002〜03年こそさまざまなレコード会社が実験的に導入したものの、積極的なのはエイベックス、SME、東芝EMIくらいだった。

 今夏、日本レコード協会が行った調査では、CCCDが新譜に占める割合はタイトル数ベースでわずか1割程度。同協会は当初、加盟レコード会社にCCCD採用を促していたが、結果的に加盟社の半分は導入しなかった。つまり一部のレコード会社以外は、こんな小手先の対策では導入する意味がないと判断していたのだ。

 音楽業界の最大の誤算は「CCCDが消費者に受け入れられる」と早合点したことだろう。日本の消費者の特徴の1つはクールさだ。フランスではCCCDを購入したユーザーが「カーステレオで再生できない」と訴訟を起こした。日本の消費者はこういう行動をあまり取らない。単純に「買わなくなる」のだ。

 「反対の声が少ないのは、受け入れられている証拠」と業界が思っているうちに、いつのまにか客が消え去っている――日本とはそういう市場だ。このことは重い教訓として記憶されるべきだろう。

 もう1つ、音楽業界が読み違えたのは、iPodに代表される、デジタルコピーを活用した音楽の楽しみ方が急速に普及したことだ。これは良くも悪くもCDというパッケージビジネスが曲がり角に来ているということを表している。音楽業界にはこれまで「ネットには無料で入手できる違法コピーがあるから、ノンパッケージは商売にならない」という声が強かった。しかし違法な音楽ファイル交換が日本よりはるかに多い欧米でiTunes Music Storeが成功したように、ニーズに合致したサービスを提供できれば、人々はノンパッケージにもお金を払う。

 ノンパッケージなら不良在庫を持つリスクがなく、損益分岐点を低く設定できる。CDではあまり利益が出ないアーティストでもコアなファン向けにライブを配信したり、廃盤になった音源を積極的に投入したりすれば、パッケージビジネスと競合せず、広く浅く利益を上げることもできるだろう。デジタルによるビジネスの可能性は大きいのに、この2年半、日本のレコード会社はそれに背を向け立ち止まってしまった。

 11月、日本最大の音楽配信サービス「Mora」は、購入した楽曲をCD-Rに焼いたり、携帯プレーヤーへ無制限に転送したりできるようにソフトを更新した。CCCD撤退の拡大も、Moraの使い勝手向上も、デジタルがもたらす新たなビジネスモデルの可能性に目を向けたためだろう。遅きに失した感は否めないが、手遅れではない。CCCDの「失敗」を教訓として、音楽ファンとアーティストの信頼を取り戻す作業に全力を傾けて欲しい。

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パート2 法制度編
CCCDは法的に「コピーコントロール」だったのか


 CCCDの法制度上の問題点を指摘する意見も多い。以下に列挙してみよう。

 CCCDは正規のCD規格を逸脱しているので、プレーヤーメーカーは再生を保証していない。音源にエラーデータが混入されているため、プレーヤーに負担がかかり、寿命が縮む危険性も指摘されている。だがCCCDでプレーヤーが壊れたとしても、因果関係の立証責任は通常ユーザー側にあり、レコード会社の責任を問うことは困難だ。

 大半のCCCDには「製造工程上の不良品以外、交換・返品・返金に応じない」と表示されている。再生できなくても返品しないという意味だ。民主党の川内博史衆院議員は7月、「この免責表示は消費者契約法上、問題があるのではないか」と政府に質問書を提出した。

 同法は、事業者の債務不履行で消費者に損害が生じた場合、賠償責任をすべて免除する契約は無効としている。CCCDが再生できなかった場合、返金を要求できるのだろうか。

 CCCDは「CD-ROMドライブを利用したプレーヤーなどでは再生に不具合を生じる場合がある」とも表示されている。内閣府消費者企画課によると「再生できない条件をレコード会社が一定程度明らかにしていれば、免責事項の表示が有効とされる場合もあり得る」という。要するに返金してもらえるかどうか、裁判をしないとわからない。3000円のCCCDで、ふつう裁判は起こせないだろう。

 つまり故障であれ、再生不良であれ、消費者側が不利なのだ。公正取引委員会では、別の疑問が指摘された。今年6月に開かれた同委員会著作物再販協議会で、「CCCDは再販制度で保護される音楽CDと言えるのか」という問題提起があったのだ。

 CCCDのコピーコントロール技術(CDS)には利用料を支払う必要がある。CDSは音が悪くなるという声は根強く、宇多田ヒカルや山下達郎ら有名アーティストが、音質悪化を理由にCCCD化を拒否しているほどだ。劣化した音質を改善するのに、さらに費用が必要になる。このように何重にもコストがかかるCCCDの価格を再販で保護する必要があるかどうか、疑問視されたわけだ。


DVDコピーの合法違法にも関連
アクセスコントロールとは何か


図2 MDのSCMS(コピーコントロール)
MDのコピーコントロール(SCMS)の仕組み。 録音の際に「このデータは孫コピー禁止」という情報がディスクに書き込まれ、それを機器が読み取って孫コピーを拒否する。(クリックで拡大)

図3 DVDのCSS(アクセスコントロール)
DVDに使われているCSSの仕組み。コンテンツは暗号化され、ライセンスを受けたプレーヤーでは再生できるが、そうでないプレーヤーでは再生できない。1998年の著作権審議会マルチメディア小委員会ワーキング・グループでアクセスコントロールと位置づけられた。(クリックで拡大)
 もっと複雑な問題がある。CDSは著作権法で保護されるコピーコントロール技術ではないという指摘があるのだ。

 コピーコントロールは、著作権法では「技術的保護手段」という名で、ほぼ次のように定義されている。

「電磁気的等の方法によって、著作権侵害行為を防止・抑止する手段で、機器が特定の反応をする信号を媒体に記録または送信する方式」

 第1の疑問は、CDSが「機器が特定の反応をする信号」に当たるかどうかだ。例えばMDで使われるSCMSは、一度録音すると「これ以上複製禁止」という情報をMDに書き込み、それに機器が反応して孫コピーを拒否する(図2)。だがCDSの基本は規格外のエラー混入で、反応は機器によってまちまちだ。

 文化庁著作権課は「判断する立場にないが、その点は議論があり得る」という。

 次の疑問は「CDSはアクセスコントロールであって、コピーコントロールではないのではないか」というものだ。

 アクセスコントロールとは著作物の視聴(アクセス)を制御する技術をいう。コピーコントロールとは似ているような似ていないような、微妙な関係にある。

 その微妙な関係が、いま大変ホットな話題になっている。著作権法はコピーコントロールは保護しているがアクセスコントロールは保護していないうえ、DVDのコピーコントロール技術として一般に知られているCSSが、法的にはアクセスコントロールとみなされるためだ。つまりDVDのコピーが合法か違法かという問題にも直結するテーマなのである。

 少々専門的だが詳しく説明しよう。アクセスコントロールで有名なのはWOWOWなどで使われているスクランブル(暗号化)放送だ。WOWOWの受信を契約すると暗号を解除するデコーダーが配られ、これをチューナーにつなぐと放送が見られる。つまりデコーダーのあるチューナーとないチューナーの間で、アクセスに差をつけている。これがアクセスコントロールだ。

 著作権法は、著作物の複製や放送、上演、上映などに関して著作権者の権利を認めているが、利用者が著作物にどうアクセスするかについては権利を認めていない。

 なぜならこれを認めると、例えば友人宅でビデオを見ることや、隣の人の本をのぞき見ることなどにも、著作権者のコントロールが及びかねないからだ。つまり、現行の著作権法の体系を根本から組み直す必要が生じるのである。

 DVDに話を戻そう。DVDはCSSによってデータを暗号化している。DVDプレーヤーは業界団体からライセンスを受けて、解読用の鍵を内蔵している。ライセンスを受けた機器では再生できるが、それ以外では再生できない。つまりCSSはWOWOWのスクランブルと同じアクセスコントロールなのである(図3)。


アクセスコントロールだったCDS
議論がないまま進む規制


 改めて、CCCDに使われているCDSを考えてみよう。図,里茲ΔCDSは音楽用プレーヤーではデータの読み取り・再生ができるが、パソコン用ドライブではできないように作られている。経済産業省知的財産政策室に確認すると「そのような性格のものはアクセスコントロールです」と明快な答えが返ってきた。

 アクセスコントロールを定めた不正競争防止法は、権利のない業者によるアクセスコントロール解除は禁じているが、個人が解除することは禁じていない。

 では、CDSを回避してCCCDをコピーすることは合法なのだろうか。以下は文化庁著作権課との問答の一部である。

 ――CDSがアクセスコントロールだとすると、CCCDのコピーは著作権法違反にならないのではありませんか?

「CSSはコピーはできるが(暗号化されているので)再生できないというもの。逆にCDSは外さなければ再生できないし、コピーもできない。つまり、アクセスをコントロールすることでコピーもコントロールしているとも言えます」

 ――コピーコントロール保護の名目でアクセスコントロール保護も認めてしまうと、著作権法でアクセス権を事実上認めることにつながると思いますが。

「CDSを外してパソコンで音楽を再生するだけなら著作権法上は問題ないはず。アクセス権を保護しているわけではありません。でもその後にコピーしたら問題といえるのではないでしょうか」

 実はCCCDはCDSを外さずに(つまりエラー情報込みで)コピーする方法がある。コピーした後でアクセスコントロールを外すのが合法なら、まずCDSごとコピーしてからCDSを外せばよいことになる。だがそれは、最初にCDSを外してコピーするのと何が違うのか。

「要するに、コピーコントロールやアクセスコントロールは、法と技術のすり合わせがまるでできていないのです」

 と、著作権問題に詳しい弁護士の岡村久道さんは解説する。

「技術者は法解釈など関係なく、コピーを防ぐ技術を考える。法の方は、それを既存の体系の中に強引に押し込もうとする。無理が生じるのは当然です」

 ここまでで、CCCDのさまざまな問題点を列挙してきた。だが最大の問題は、こんな乱暴なものでも、事業者側が一度導入してしまえば、法的な保護が前提となってしまう点だ。そして、こうした問題点は放置したまま、規制をさらに強化しようという動きがある。

 例えば02年9月の文化審議会著作権分科会司法救済制度小委員会で、当時の高杉健二委員(日本レコード協会法務部長代理)は「コピーコントロール回避助長を専ら目的とする情報を公衆に提供する行為の法的規制」を提案した。

 コピーコントロール回避専用の装置・ソフトを売ったり配ったりすることは刑罰の対象だが、それを「情報の提供」まで拡大する狙いだ。つまりCCCDなどのコピー方法を書いた本やサイトを刑罰で規制しようというわけだ。このときは言論の自由との関係で導入は見送られたが、同様の主張はその後も絶えない。

 岡村弁護士はこう疑問を述べる。

「著作権法は文化発達のための道具なのに、その道具が市民に牙をむいている。現行法では、私的利用目的でもコピーコントロールを外して複製したら違法になるが、消費者をそこまで追いつめる必要がどこにあるのでしょうか」

(ASAHIパソコン2004年12月15日号News、News&Viewsから)

(2004/11/30)





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