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NTTドコモ新端末FOMA901iシリーズの誤算
正念場「番号ポータビリティー」に体力温存するも、販売現場に焦り

 NTTドコモの新端末FOMA901iシリーズの評価が低い。発表会見で記者に「小粒だ」と酷評されたニュースが携帯電話ファンのブログや掲示板で飛び交って、前評判は散々だ。実際、901iシリーズは意欲的な新サービスや新機能が乏しい。実はこれは、携帯電話会社を乗り換えても電話番号を変えずにすむ「番号ポータビリティー」実施予定の2006年前半に向けて、ドコモがあえて力を温存しているためだ。だがその間にライバルのauやボーダフォンは力の入った端末を次々発表、ドコモ内部で危機感が高まるという皮肉な現象を生んでいる。(文・神尾 寿)



NTTドコモの冬モデルFOMA901iシリーズ

■ ■ ■ ■ ■

 「ドコモにとって重要なのは、番号ポータビリティー対策。そのため、ドコモも端末メーカーも、05年末発売の902iの方に大きく開発資源を割いている」

 あるドコモ幹部は、匿名を条件にこう語る。番号ポータビリティーは、ユーザーが携帯電話会社を替えても、今の携帯電話番号を変えずにすむ制度で、06年前半の導入が見込まれている。制度導入後最初の商戦である06年春夏の商品である次期902iこそがドコモにとって本命という意味だ。

「902iには、端末からネットワークまで新たなサービスや機能を搭載して勝負に出る。そのために901iは堅実な進化にとどめた」

 と幹部は続ける。言葉は悪いが、901iは902iまでの「つなぎ」の端末なのだ。


発表会見で「他社に比べて小粒」
ネットの中を駆けめぐった酷評


 その「つなぎ」加減は早々に見破られてしまった。

 2004年11月17日に東京都内で開かれた901iシリーズの発表記者会見の質疑応答の冒頭、記者席から「他社の冬商戦モデルと比べて、901iシリーズは小粒ではないのか?」と容赦のない質問が飛んだ。会場は静まりかえり、壇上で質問を受けるNTTドコモプロダクト&サービス本部マルチメディアサービス部の夏野剛部長の笑顔も一瞬凍り付いたように見えた。

 夏野部長は真顔で「技術者から見た小粒、大粒と、ユーザーからみた印象は違う。901iはサービスや利便性で優れている」と反論、「特定分野の技術的先進性ではなく、パッケージ重視です」と語った。

 この模様はその日のうちにニュースで報じられ、携帯電話ファンのブログや掲示板はその話題で持ち切りになった。
 実際、「小粒」と呼ばれるのも無理はない。製品の概要を見てみよう。

 今回投入されるのは5機種。型番末尾に「iC」と付くのが、ドコモが次世代戦略として推進する「おサイフケータイ」だ。サービス面の目玉は3Dサウンドと3Dグラフィックスによる表現力の向上。カメラ機能は全機種200万画素クラスで、着うたや着メロのダウンロードサイズの拡大や、端末側がメモリーカードに保存したAAC音楽ファイルを再生できるシリコンオーディオ機能を持つなど、細かな部分が改良されている。しかし、新分野・新市場を開拓する取り組みはない。

 毎年、年末商戦向けに発表されるいわゆる「冬ケータイ」は、クリスマス商戦から翌年の新生活商戦までをにらみ、ハイエンド製品のフルモデルチェンジや、新サービスを市場提案する。また夏のボーナス商戦前に登場する「夏ケータイ」に最新モデルのバトンを渡すと在庫が値下がりし、最新機能を普及させる役割を果たす。一方、夏ケータイは冬ケータイの改善や実験的な新サービスを投入するマイナーチェンジ。つまり冬ケータイの方向性こそが、翌年のビジネスを方向付けるものになる。その冬ケータイで堅実すぎる内容というのが、失望をより深めたともいえるだろう。


対照的に力入れるauとボーダフォン
デザイン、音楽、メールサイズで特長


 ドコモとは対照的に、ライバルのauとボーダフォンはともに非常に力の入った冬ケータイを発表した。

 auの基本コンセプトは「感動ケータイ」。その柱がデザインと音楽である。

 デザイン面では、大ヒット端末INFOBARを生んだ「au design project」から第3弾「talby」を、「CDMA2000 1x」用に投入した。オーストラリア出身のデザイナーのマーク・ニューソン氏がプロデュースしたモデルで、フラット感を追求した点が特徴だ。talbyだけでなく、すべての端末デザインを社内のプロダクトデザインディレクターがチェックする体制を徹底している。

 ドコモやボーダフォンより通信効率にすぐれた「CDMA 1X WIN」にも4機種を発売、フルサイズの楽曲を配信する新サービス「着うたフル」を開始した。音楽ポータルサイト「EZ MUSIC!」も用意し、検索からダウンロード購入、気に入った曲の音楽CD購入まで一貫したサービスとして利用できる仕組みを作った。携帯電話の課金システムを使い、クレジットカードがなくても音楽配信サービスやCDの通販が利用できる。

 ボーダフォンは、今期最大となる7機種の3G端末を投入、3G携帯電話移行で足踏みした分の巻き返しを図る。

 端末ラインアップでは、ノキアやモトローラなど、他のキャリアーにない海外のフレーバーが特徴。ソニー・エリクソン端末も、日本側の技術者がフィンランドに渡って開発した「日欧合作」だ。いずれも機能面で日本製に見劣りしない。

 メールに添付できるファイルが送受信とも業界最大の300KBになり、パケット料金定額制を導入したうえ、ボーダフォン携帯電話同士ではメール受信料金無料が復活した。定額制ユーザーが、写真付きメールや動画付きメールを定額制未導入のユーザーに送っても、受信するだけならパケット料金負担がない。


ドコモの大きな誤算
予想を超えた端末・サービスの差


 こうしたauとボーダフォンの意欲的な端末とサービスは、番号ポータビリティーに向けた戦略だ、と書くと混乱するだろうか?

 奇妙なことに、今冬のモデルでドコモがあえて力をセーブした理由が番号ポータビリティーなら、auとボーダフォンが目一杯力を注いだ理由も番号ポータビリティーだ。この違いは何なのか。

 ドコモは、番号ポータビリティーが導入されたその時点での端末やサービスの魅力を最も重視している。ドコモは業界のガリバーであり、全国的に圧倒的な知名度・ブランド力を誇っているからだ。逆にauやボーダフォンは、番号ポータビリティー導入前に、自社のブランド力を可能な限りドコモに近づけておかなければ勝負は厳しい。その戦略の違いが、今回の冬ケータイの端末・サービスの差となって表れているわけだ。

 ドコモの誤算は、その「差」が予想をはるかに超えて大きかったことだ。ドコモの営業現場や販売店では「この端末・サービスでは冬商戦を戦えないのではないか」という不安の声も上がっている。「小粒」発言が駆けめぐったことと合わせ、「ユーザーやパートナー企業に、『ドコモはもうやる気がない』『保守的になった』と見られてしまうのが怖い」という焦りも聞く。

 携帯電話業界では長い間、「ドコモの進歩」が「携帯電話の進歩」だった。00年に写メールでJ-フォン(当時)に、02年に着うたでauに先を越され、ドコモ以外が市場をリードする場面が増え始めたのだが、いまだにドコモは他社との競争に慣れていないように見える。901iシリーズは、そうした何重ものエアポケットにはまった、ドコモのジレンマの象徴と言えるのかもしれない。

(ASAHIパソコン2005年1月1日/1月15日合併号News&Viewsから)

(2004/12/27)





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