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うつ病からの回復を携帯メールがサポート
支えてくれる人とのつながりを日々実感 推定患者数200万人ともいわれるうつ病。十分な休養と薬物治療などで大半が治るが、働き盛りのサラリーマンがいったんかかると、職場復帰などで問題を抱え込むことも多い。そんな患者の回復と復職を日々さりげなく、しかし確実にサポートする道具として、携帯電話のメールが注目を集めている。(文・瀬下美和)
携帯メールを使ってうつ病患者の支援をしているのは「うつ・気分障害協会」(MDA-Japan)。日本うつ病学会と日本産業精神保健学会の支援を受け、医療機関や行政とは別のアプローチで、うつ病に悩む人と家族をサポートすることを目的に設立された。精神科医、保健師、産業カウンセラーらがメンバーだ。 携帯向けメールサービスは「うつ病セルフケアメールマラソン」の名で、昨年春から始まった。1カ月5000円の参加費を支払ってメンバー登録すると、1日1回、事務局から「お薬飲みましたか?今日の気分指数は何%?」といった文面のメールが携帯電話に届く。 参加者の返事はまちまちで、ごく簡単に返信するだけの人もいれば、数通にわたって職場の悩みやグチ、その日の精神状態を細かく書いてくる人もいる。 メールをやりとりするのは、カウンセラーや保健師といったメンタルヘルスの専門スタッフ。うつ病の治療に服薬は欠かせないが、自分1人だとどうしても飲み忘れたり、自己流調整をしたくなったりする問題があった。 MDA代表で保健師の山口律子さんはサービスの狙いをこう語る。 「いわば、メールを活用した交換日記。誰かが服薬の有無を確認するだけでも孤独感は減るし、手元にあるケータイの向こうに悩みや不安を聞いてくれる相手がいると思うと安心できるのです」 半年前からサービスを利用している30代のOLは、「周りからダメと言われると、どんどん沈没していきそうになる。でも踏みとどまれるのは、やはり見守ってくれる人がいるから。紙の日記をつけていたこともありますが、相手がいるメールと違って、どうしてもグチや非合理的な思い込みを書き連ねた怨念日記になってしまい、続きませんでした」と話す。 昨年4月、社会経済生産性本部が268社を対象に行った調査では、58%の企業が心の病は増加傾向にあると回答、66.8%の企業がうつ病などで1カ月以上休職している社員がいると回答している。うつ病になると、気分がふさぎ込み、物事への興味がなくなったり、自殺願望が出たりすることがある。行動や思考のスピードが落ちるので、他人とコミュニケートするのがつらくなる。 だが表情も声も伝わらないメールのような道具が、心の病にどこまで効果があるのか。 山口さんはいう。 「相手に気を遣うことなく自分のペースで発信できるのがメールの魅力。だから重いうつ病の人でも、最後まで外部とコミュニケートできる。気分の落ち込みがひどくて家から出られない人でも、理路整然としたメールを送ってきます」 MDAが定期的に開いているセミナーや勉強会には延べ3500人が参加している。特に力を注いでいるのは、休職しているサラリーマンやOLのための復職トレーニングだ。病気や抗うつ薬の知識、キャリアー設計のほか、「職場で上司から飲みに誘われたときどう断るか」といった具体的な対処方法などを学ぶ。参加者の9割は復職を果たしており、携帯へのメールサービスも、この復職プログラム参加者の声にこたえて始めたものだ。 うつ病は現在、薬物療法と十分な休息をとることなどで9割は治るようになった。だが企業側が復職に際して百パーセントの回復を要求するケースが目立つため、無理をして再発を繰り返し、退職に追い込まれるサラリーマンも多い。そんな中で、服薬をきちんと続けられるだけでなく、支えてくれる人とのつながりを日々実感できる携帯メールが、回復の強い味方となってくれているわけだ。 昭和大学医学部の上島国利教授(精神医学)は「大手企業では労務対策の一環として徐々にメンタルヘルス対策が進んでいるものの、中小企業は全く手が回っていない。中小企業に勤務するサラリーマンや主婦でも利用できるMDAは、その落差を埋める役割が期待できる」とMDAの試みを評価している。 ▼MDA-JAPAN http://www.mdajapan.net/ (ASAHIパソコン2005年2月15日号News、News&Viewsから) (2005年2月7日)
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