紙のように曲げられる次世代の薄型ディスプレーの基板づくりに、デザートなどの食材「ナタデココ」が活用できることが、パイオニアと三菱化学、京都大の産学連携の共同研究で分かった。強度や耐熱性などはガラス基板並みという。材料費も安く、開発が急速に進む薄型ディスプレー生産のコスト削減につながりそうだ。
ナタデココは99%が水分、1%が繊維質。基板作りの前処理として、ナタデココを圧縮機でつぶし、水分をとばして乾燥させる。繊維だけが残ってカラカラになったナタデココに、特殊な樹脂を注入すると繊維と繊維の間に浸透し、全体が透明な色になる。そこに紫外光を照射すると、柔らかな基板ができる。有機ELの発光材料を張り付けることで、厚さ1ミリ以下の曲げられる超薄型ディスプレーとなる。周囲の温度が変わっても伸び縮みせず、軽くて壊れにくい特徴があるという。
現在の携帯電話用などで量産されている有機ELディスプレーは基板がガラスで曲げられない。今後、ディスプレーを電子新聞などに応用するには曲げられるディスプレー基板の開発が必要となっている。曲げられる基板材料として天然の繊維が注目されていた。
ナタデココを使えば、既存のガラス基板よりも安くつくれる見込みで、研究グループは早期の実用化を目指す。
ナタデココはココナツミルクに酢酸を加えて発酵させてつくる食品。極細繊維が多く含まれ、健康食品として90年代に人気を集めた。研究に携わる関係者は「身近な食材が最先端技術に応用できると分かり、非常に驚きだ」と話している。
(2005/02/20)
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