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「出来損ない」の著作権保護が創造性をダメにする
「FREE CULTURE」を出版したローレンス・レッシグ教授に聞く(上)

asahi.com編集部 平 和博(サンノゼ)

新著「FREE CULTURE」を出版したローレンス・レッシグ教授=米カリフォルニア州のスタンフォード大で

 ファイル交換ソフト「Winny(ウィニー)」の開発者が著作権法違反(公衆送信権の侵害)の幇助(ほうじょ)容疑で逮捕されたが、知的財産権を過剰に保護することは、未来の「自由な文化」の可能性を損なってしまうことにならないか。「ピアツーピア(P2P)を使った違法なファイル交換を認めることはできないが、P2Pそのものはネットワークの可能性を広げる重要な技術革新。デジタル技術を使って、より多くの人たちが文化をつくり、共有できるんだということを、専門家だけではなく、一般の人たちにこそ理解してもらう必要がある。アジテーション? その通りだ」――3月に新著「FREE CULTURE」を有料の書籍版と無料ダウンロードの電子版、両方の形態で出版した米スタンフォード大ロースクールのローレンス・レッシグ教授(サイバー法)に聞いた。


 ――日本では、P2Pのファイル交換ソフト「Winny」の開発者が逮捕されるという事件がありました。

 P2Pは、ネットワークの発展を促進させる、デジタル革命の重要な核心。P2Pの違法な利用を取り上げて開発者を攻撃することは、技術の発展を阻害し、後退させることにつながる。非常に残念な事件だと思う。

 米国でもかつて、アドビ社のソフトウエアの著作権保護技術を迂回(うかい)する技術を開発したプログラマーが、(同行為を禁じたデジタルミレニアム著作権法違反容疑で)逮捕された事例があった。ただ、この事件では逮捕されたプログラマーも、彼が所属していたソフト会社も結局、罪には問われなかった。

 ――インターネットがそもそも持っていた自由さと、急速に規制されていく現状を論じた著作「CODE インターネットの合法・違法・プライバシー」と「コモンズ ネット上の所有権強化は技術革新を殺す」。この2冊に続く新著「FREE CULTURE」の副題は「HOW BIG MEDIA USES TECHNOLOGY AND THE LAW TO LOCK DOWN CULTURE AND CONTROL CREATIVITY」。巨大メディアが進める著作権保護の動きと、創造性、技術革新が阻害されてゆくことへの警鐘、という点は前作にも通じる内容ですが。

 前2作と共通するテーマを描いてはいるが、ポイントは全く違うところにある。「CODE」と「コモンズ」は専門的な内容の本だ。インターネットの設計思想など、ややアカデミックな範畴(はんちゅう)での議論をまとめている。だが「FREE CULTURE」のターゲットは、ごく普通の読者。前著「コモンズ」(原著は01年出版)から3年の間に起こったことを含め、何が問題なのかを一般の人たちに理解してもらいたい、というのがこの本の狙いだ。

 ――「この戦いがいかに大事か、近所の人たちにも教えてあげよう」という書きぶりなど、アジテーションめいた本ですね。

 もちろん。アジテーションだから。

 ――これまでの著作でも論じられ、新著のテーマでもある知的財産権の問題について、一般の人たちはなかなか理解しにくいし、関心も薄いのではないかと思います。特に、著作権保護が、逆に技術革新や創造性を損なってしまう、という議論については。少し説明をしてもらえますか。

 著作権の保護が、創造性を損なうんじゃない。著作権を守る、という考え方そのものは重要だ。問題なのは、「出来損ない」の著作権保護が、創造性をダメにしてしまうという点だ。

 そこで何が起きるか。それは例えば、映像クリエーターの負担に跳ね返ってくる。ヒストリー・チャンネル(米国の歴史専門チャンネル)の多くは、著作権保護のない、無料・無許諾で使うことができるパブリック・ドメイン(公有)のフィルムを編集し、優れた番組に作り上げたものだ。

 米国でもかつては、著作物として認められるためには登録、更新の手続きが必要で、それらの手続きを経ない作品は、パブリック・ドメインに入った。だが議会は、その手続きを、1976年の法改正で撤廃。78年以降の作品は、何らの手続きも経ず、自動的に著作権が保護されるようになってしまった。そのため、クリエーターが過去のフィルムを番組の中で使いたいと思ったら、まず著作権者を探し出すところから始め、それぞれの許諾を取る必要がある。そうは言っても、一体だれが、どの映像の著作権者なのか、どうやって調べたらいいんだ? 何らの登録もなく、著作権表示も、使用条件もわからない。

 ――今の状況が、将来にわたってどのような影響を及ぼすのか、具体的には、なかなか想像しにくいですが。

 一つのシナリオとして考えられるのは、合法的なクリエーターと、非合法のクリエーターという、二つの階層ができてしまう状況だ。合法クリエーターは巨大メディアに属し、作品をつくる際に要求される様々な規制をクリアできる体力がある。そして、単独で活動し、そのような力を持ち合わせていないのが、非合法クリエーターだ。そもそも、そんな負担をクリエーターたちに課す理由など、全くないのに。そして、我々にも何のメリットもないのに。

 ――約300ページの「FREE CULTURE」の中で、50ページ近くを割いているのが、「エルドレッド裁判」の顛末(てんまつ)です。1998年に著作権の保護期間を20年延長、映画「蒸気船ウィリー」(28年)で登場したミッキーマウスの著作権切れが迫っていたことから「ミッキーマウス保護法」とも呼ばれた著作権期間延長法(CTEA)について、「憲法に違反する」として元プログラマー、エリック・エルドレッド氏らが起こしたのがこの裁判です。レッシグ教授も原告代理人の一人。昨年1月、連邦最高裁は7対2でこの訴えを退け、敗訴が確定しました。この裁判の教訓とは何だったのでしょう?

 まさにあの訴訟こそが、この本を出版する理由の一つとなった。「エルドレッド裁判」の教訓とは、この問題について、一般の人たちが関心を持つようにならなければ、我々に勝ち目はない、ということだ。著作権問題が多くの人たちの関心を引くようになった時、裁判所もまた、この問題を考え始めるだろう。

 ――最高裁判決から半年後の昨年6月には、「パブリック・ドメイン促進法案」を下院に提出しています。著作物の公表から50年後に、更新手続きと1ドルの更新料支払い義務を設け、更新手続きがとられない場合には、その著作物はパブリンク・ドメイン入りになる、というかつての著作権の更新手続きを復活させるような内容です。法案の扱いはどうなっていますか?

 ゾーイ・ロフグレン下院議員(民主)が提出者。徐々に議会の関心を集めており、共同提出者は今のところ18人。上院でもオーリン・ハッチ議員(共和)やパトリック・レイヒー議員(民主)らが関心を示している。ただ、この法案が今後、どのように扱われるのかは、全く予想できない。

 ――そして今年3月、著作権保護をめぐる新たな違憲訴訟を起こしてます。ウェブや書籍、映像などのデータを収蔵する巨大なデジタル博物館「インターネット・アーカイブ」を運営するブルースター・ケイル氏と、映像の収集活動を行うリチャード・プレリンガー氏が原告で、レッシグ教授が再び原告側代理人。この訴訟は「エルドレッド裁判」とどこが違うんでしょう?

 「議会による、現存する著作物の保護期間延長は、認められるべきではない」。これがCTEAに対する「エルドレッド裁判」での主張だ。著作権保護期間を20年延長することによるメリットとデメリットに関する議論だ。

 一方、「ケイル裁判」での主張は、「すべての著作物を無条件に保護するようなシステムは、実質的に『表現の自由』を阻害することになる」というものだ。具体的には、92年のベルヌ条約施行法(BCIA)で、64年から77年末までに公表された著作物について、無条件で著作権保護期間の更新を行うことになった(78年以降の作品は、76年の法改正ですでに登録、更新手続きが撤廃されている)。これまでのデータから見ると、実際に更新手続きがとられる著作物は多くても全体の15%程度。つまり、この期間の著作物の85%は、商業的価値もすでに消え、パブリック・ドメイン入りし、クリエーターたちが自由に再利用できるはずだったものだ。加えて、議会は商業的価値がある15%の著作物保護のために、残る85%の著作物もひっくるめてCTEAで保護期間そのものを延長してしまった。「コラテラル・ダメージ(戦闘などで民間人に大きな被害が出る事態)」と呼ばれる状況だ。

 「ケイル裁判」のターゲットは、(商業的価値がないのに、著作権保護で自由な再利用もできない)「孤児」となってしまったこの85%の著作物だ。

 ――かなり限定的な訴えの内容ですね。

 ターゲットを限定したのは、この問題点を明確に訴えたかったからだ。この訴訟は「エルドレッド裁判」に続く、「次の一手」。これが最後ではない。議会が「パブリック・ドメイン促進法」を成立させるなら、著作権保護は更新手続きのフィルターをくぐることになり、効果的にこの問題を解決することもできるのだが。とにかく、この問題が解決するまで、何度でもやるつもりだ。










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