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オープンソース・アプリケーション財団代表、ミッチェル・ケイパー氏(53)に聞く
(上)「我々には選択肢が必要だ」
asahi.com編集部 平 和博(サンノゼ)
オープンソースによる無料の情報管理ソフト「チャンドラー(Chandler)」。「オープンソース・アプリケーション財団(OSAF)」(http://www.osafoundation.org/)を立ち上げてその開発に携わっているのは、表計算ソフト「ロータス1−2−3」で知られるロータス社創業者、オンラインの人権擁護団体「電子フロンティア財団(EFF)」の共同設立者でもあるミッチェル・ケイパー氏(53)だ。「独占状態はイノベーション(技術革新)を止めてしまう。我々には選択肢が必要だ」と語るケイパー氏は、オープンソースのブラウザー「モジラ(Mozilla)」を開発する「モジラ財団」の会長も務め、さらに11月の米大統領選に向けては「Of,By and For(ob4)」というサイトを開設、政治の選択をも訴えている。「世の中を変えることはできる、という確信を持っている」と言うケイパー氏に聞いた。 ●独占はイノベーションを止めてしまう ――チャンドラーの最新バージョン0.4がそろそろリリースされる予定ですね。 0.4は10月26日にリリースする。およそ3カ月ごとに新しいバージョンをリリースする予定で、来年の1月ごろに0.5、4月か5月ごろには0.6、そして最初の製品版1.0のリリースは2005年の末ぐらいになると思う。 ――0.4は、製品版にかなり近いものになるんでしょうか? ピア・ツー・ピア(P2P)でチャンドラーのユーザー同士が情報を共有したりはできるようになる。だが、まだまだ開発者向けのものだ。カーテンの裏側では様々な動きがあるけれど、一般のユーザーには目に見えて変わった、とは実感しにくいかもしれない。一般ユーザーが実際にソフトとして使える、というのはやはり製品版まで待ってもらうことになるだろう。 ――チャンドラーはどんな使い方ができるソフトウエアなんでしょう。 当面のスケジュールで言えば、まずは電子メールやカレンダーなどの情報管理機能に焦点を絞って開発を進めている。これまでの情報管理ソフトでは、メールはメール、カレンダーはカレンダーと、それぞれ別々の情報として扱われてきた。だがチャンドラーでは、それらのデータを横断的に管理・検索できるようになる。例えば「この日の、この時間からの会議に出席するように」といったスケジュール関連の指示が、メールで来ることもよくあるだろう。そのようなケースでも対応できる。 将来的には、チャンドラーをプラットフォームとして、メールやカレンダーだけではなく、ウェブログやMP3などといった様々なタイプの情報も扱えるよう、開発者たちが取り組んでくれることを期待している。 ウィンドウズ、マック、リナックスに対応していて、幅広いユーザーが利用することができる。まずは一般ユーザー向けのバージョンとなるが、その後は、大学向けのバーションの開発も予定している。 ――マイクロソフトのアウトルック(Outlook)のような同種のソフトがすでに広く使われていますね。 エクスチェンジ(Exchange)サーバーを立てて、専門の技術管理者もいるような大企業ならそれでもいいかもしれない。だが、そのようなシステムを維持しきれない小規模な企業はどうだろう。チャンドラーは、さほどの専門知識がなくても手軽に、オフィスでの情報共有に使うことができる。しかも無料だ。 ――「ロータス1−2−3」を初め、さまざまな開発プロジェクトに携わってきたあなたが、なぜ今、情報管理ソフトの開発を手がけようと思ったのですか。 メールや、それに関連するアプリケーションが、日常の中で、ますます重要になってきている。それにも関わらず、この分野でのイノベーションはほとんど起こっていない。なぜか。事実上のマイクロソフトの独占状態にある中で、ベンチャーがその分野に新規参入することも、投資家がそのようなベンチャーに投資することも、現実的とは言えないからだ。だが、我々には選択肢が必要なんだ。 ●オープンソースの可能性 ――その解がオープンソースということですか。 「リナックス(Linux)」やオープンソースのウェブサーバー「アパッチ(apache)」の成功を見て、オープンソースの可能性に興味を持ったんだ。ボランタリーで広範なコミュニティーを基盤に、優れたプログラムを生み出すこの方式以外、イノベーションの可能性は残っていないんじゃないかと思う。(サン・マイクロシステムズの共同創業者)ビル・ジョイが言うように、「最も有能な人々の多くは、企業のためには働かなくなるだろう」ということだ。 ――チャンドラーはアウトルック・キラーとして開発されるということでしょうか。あるいはロータス1−2−3がパソコン普及のキラー・アプリケーションと呼ばれたように、チャンドラーをオープンソースのデスクトップ用キラーアプリに、という狙いがあるんでしょうか? どちらも違う。チャンドラーは今まさに開発中で、まだ製品版すらできていないんだ。小学校に入ったばかりの子どもをつかまえて、『この子は、大学を出たらこんな業績を残す』なんて言えやしないだろう? まずはちゃんとしたソフトウェアをつくりあげることだ。 ――チャンドラーによる収益モデルは、どのようなものになるんでしょう。 ひとつはライセンスによる収益だ。オープンソースのデータベース「MySQL」が取っているデュアル・ライセンスの形を使おうと思っている。チャンドラーを元に新たなソフトを開発する場合、それもオープンソースとして公開するのならGPL(GNU一般公有使用許諾)のライセンスで、新たに開発部分はプロプライエタリ(占有)なものとして非公開、ということであればライセンス料をもらう、という形だ。 ただ、そもそもこの財団自体は、私が500万ドル(約5億5000万円)を出し、それに加えてアンドリュー・W・メロン財団と25大学のコンソーシアムから合わせて275万ドル(約3億円)の資金提供を受けており、この資金で当面の運営を維持していくことはできる。さらに、プロジェクト運営のためのリソースという意味では、リナックスやアパッチでは、各企業が自社のエンジニアを関連プログラム開発に専従させるようなケースもある。 要は、これらの組み合わせでプロジェクトが回っていけばいいと思っている。 ――チャンドラーを開発する上での課題は? 我々が思い描いた膨大なイメージを損なわず、現実に機能するソフトウェアとして形にしていかなければならないというのが第一の課題。さらにオープンソースではその作業を、コミュニティーをつくり上げ、そこを基盤として進めていくことになる。企業で手がけたプロジェクトの運営とは全く違う。まず重要になってくるのは、プロジェクトの透明性を担保しておくことだ。そのために、OSAFでは、Wikiやメーリングリストなどを使って、プロジェクトの状況をリアルタイムで公開している。 (2004/10/20)
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